青空にぽっかり浮かぶパナマ帽。
持ち主は大竹さん。
60年続くバーSの2代目マスター。
偶然にも休日のある日。パタリと出合ったひとこま。
趣味の水彩画をほんわかと描いていはりました。
私は、人というものは人で育つものと思っております。
本物に出会ってこそ、本物の尊さがわかる。
人が人の中に入っていくことで、人は人になる。
さほどもない私が、まがりなりにも世の中を泳げていけるのは、酔い場での勉強のおかげであります。
先出の大竹さんのみならず、わたしがわたしらしく酔うことをお許しくださる本物どころがございます。
昨年創業50年を迎えられた、井畑さん。初代にあたる母君と共に創りあげたバーMの歴史そのものの2代目マスター。
大阪の高級料亭Y屋にはじまり、老舗Fを経て、独立26年目のバーFの初代マスター福永さん。
青きばか者の折より、怒られながらも、なついてしまったどうしようもない私に、今尚本物を見せ続けてくれるバー。
反省する。からはじまり、気付き学び、憂いを落とし、活力を頂く。
二流でも一流の中に入れてもらえることで、努めるべき「らしさ」を知る。
継続される店。継続される顧客。継続される文化。継続される味。
本物でしかありえない何かが詰まっている。それが私の好きな酔い場であります。
よい店には、必ずよい顧客がいる。
私に無いものが私を酔いに導く。
井畑さんと、3代目マー君。
福永さんと、2代目マサやん。
大竹さんと、3代目ジュンペイ君、御伴侶の照枝姉さん。
本物の伝承の姿がそこに垣間見られるのでございます。
がつんと一発やられるのであります。
「酔唄抄」というものを書き綴ってみようと考えたのは、マスターの坂尻さんが手塩にかけて育むSバーでのこと。
酔うほどに、わたしのわたしらしさは酔うことだとおもいつくまま、邪魔にならない程度に、酔うことを唄ってみたいとおもったのであります。
私は何故か、竹笛を今吹いている。
どちらさまにも迷惑をかけている。
よい人にめぐり逢え、よい思い出に吹いている。
本物のホトトギスには程遠いけれど、吹くことに私を動かすものは本当であります。
私の場合。本物を探すと言うことは。
本物の中で酔っ払ってみる。ということなのであります。
よい店とよい顧客の力を借りて、私が私の中に入っていくのであります。
本物の中に身をおくと、偽者はすばらしく偽者になるのです。
弱い私を見つけて叩き直すのであります。
私は幸せですが、皆様にはご迷惑をかけていることの感は禁じえないのであります。
お許しも兼ねて。酔唄抄。