自分の描いた作品に題名を付ける時、あんまり素直な題名だとつまらなくて、やっぱり謎があって作品のヒントになるのが、いいように思う。ズバリ題名だと、そういうものは作品を見れば一目瞭然であるから、もう少し見ることが深まるような、見る人がもっと作品に疑問を呈するような、 「 不可解なタイトル 」 が触媒としてあればいい、と思う。以前、東京で個展をしたとき ( 2001年 ) には、やっぱり作品タイトルで思いわずらったことがある。そういうわけで、夕方紙屑なんか整理していると、もう忘れていたそんな資料が出てきた。これらは作品タイトルの草稿であったから、やはり整理と言う意味で、当時どんな題名にしていたかを書いておくのも、面白いものと思うのである。ありがたいことに、ほとんどの作品が売れてしまっていて写真が掲載できないのは残念であるが、以下個展時の作品タイトル ( オブジェ・絵画 ) である。
① エスプリ・ヌーボー嬢 ( 先立たれた美のために )
② 横顔 ( 決断のために乳首は煌々と固い )
③ ル・バール “ マリアール ” のために ( 夜の贈り物 )
④ セルフ・アトラス ( みざりヨ、アナタニミテイタダキタイモノガアルノデス )
⑤ 深い森の中で鳥になった古木 ( ある鳥類研究者の夢 )
⑥ 一本足でさえもトラベラー ( 願わくば不易流行の旅人 )
⑦ 屹立するシャルドネ像 ( 食事には稀有な液体を )
⑧ 失われた時を求めて ( 見つめる程に時は一層輝くだろう )
⑨ 鳥籠の中の自画像 ( 小さき心の聲 ヨ ! )
⑩ 途上の恋人 ( ガラスビンの中の液体は熱い )
⑪ 傾きを持つ歩行者 ( 慎み深い傾き、ひたむき )
⑫ イリュミナシオン残闕 ( 古代の心臓は未だに鼓動する )
⑬ 天使のトルソー ( 永遠に沈黙する天使 ) etc
個展のタイトルは、長ったらしい 『 ディレッタントの実験詩学 ― ミザリよ! あなたに見ていただきたいものがあるのです ― 』 というのであった。東京・高輪の古書肆・啓祐堂ギャラリーで 2001 . july . 9 - 29 の期間で開催された。