今日も長岡は暑かった、最高気温は35度あったという。残酷な暑さを残して平成23年の8月が去って行く。夜の部屋で、氷をガリガリ齧ると結構大きな音がする。音にも氷の冷たさがして耳がひんやりする。今年は、冷蔵庫の製氷機に感謝しなければならない。とてもじゃないが夜の寝苦しさは圧倒的だったから、夜中、冷蔵庫の製氷機は休み知らずの働きだった。一句出来。
ガリガリと氷を齧る晩夏なり
写真は角川春樹著 『 魂の一行詩 晩夏のカクテル 』 ( 2007年10月 株式会社角川春樹事務所刊 ) のカバー。装丁デザインと写真はデザイナー・写真家の浅沼剛九。著者によると、彼は著者たちの句会のメンバーだそうです。パリの骨董屋でのスナップ写真。さらにその中に写真が写っている。鍵盤を弾いている二つの手。ウラジミール・ホロビッツの手だという。著者はこの写真に魅せられて、この一冊を作ったそうです。むべなるかな、である。角川春樹 ( 1942年生 ) の 「 一行詩 」 をいくつか紹介します。
空き缶を蹴って潰して夏終わる
炎天や少女の腋の暗かりき
晩夏かな指にのこりし檸檬の香
「 蹴って潰した空き缶 」 は、もう顧みられることはないだろう。夏とともに逝ったからだ。 「 空き缶 」 の缶には何が入っていたか、 「 炎天 」 だけが知る思い出か。残ったのは、なぜレモンの香りだけだったのだろう。それも指だけに。今日で夏が終わった。明日から秋になる。もう三つ紹介します。
いっぽんの木の明るさを秋という
秋風や遠くなりゆく人ばかり
こほろぎやカフカの青い夜が来る
著者は 「 魂の一行詩 」 をこんなふうに定義している。 「 日本文化の根源にある 「 いのち 」 と 「 たましい 」 を詠う現代抒情詩のことである。古来から山川草木、人間を含めあらゆる自然の中に見出してきた 「 たましい 」 というものを詠うことである 」 と。今夜も寝苦しそうだけど、カフカを読んで寝ようか。さいわい、外ではコオロギが鳴いてる。一句出来。
コオロギもカフカも夜も鳴きにけり