黒い本

2010-08-17 | 日記
『 ざわめく真空 』 2010年5月17日発行 画・有坂ゆかり 文・伴田良輔 発行所・言水制作室。サブタイトルは 「 有坂ゆかりの絵画 」。昨日、ご本人から届きました。

有坂さんは東京在住の画家。僕のお会いしたところでは、とても物静かな知性的な女性という印象です。
しかしその作品を拝見しますと、これは 「 情念 」 の画家であろうと思います。正確には覚えていませんが T.S.エリオット は、一つの芸術作品には主知的なものと情的 ( エロティシズム ) なものとが同時に内在していなければなりません、と書いていたように思います。言葉を勝手に僕が変えているかも知れませんが、以来この思いが僕にとって金科玉条になっています。特に造形作品を見るときの基準にしています。

世界のあらゆるものは、相反するもので構成されています。物質にしても生命現象のことにしてもプラスとマイナス、オスとメス。理性と感情。

有坂さんの芸術は、この相反世界のもたらす秩序の謂いであろうと思います。


「 少年の日 」 の水平線

2010-08-14 | 日記
8月10日の日本海・出雲崎付近の水平線。夏の雲と夏の海。

このブログで以前紹介したマーク・ロスコの抽象色面絵画を彷彿とさせます。実際、ロスコの初期の作品には夕焼けの雲をイメージしたような、色彩豊かな抽象画がありますが、それらが成長して ( ? ) あのロスコ色面絵画になったのでした。彼の作品を見たことがない方には少しわかりかねると思いますが、この写真の、雲を削除したような作品と思ってもらうといいです。

午後の海風は清く、透明な蒼穹と雲の白い輝きは正に Mr. SUMMER TIME であった。夏の海は人をして、少年と少女の時代を鮮明にする。
空と海が広がるばかりのような…ロスコ平面空間の無限性。ある日の夏、ひととき身を委ねたい。


  1 野ゆき山ゆき海辺ゆき 真ひるの丘べ花を敷き
    つぶら瞳の君ゆゑに  うれひは青し空よりも。 
  
  2 影おほき林をたどり  夢ふかきみ瞳を恋ひ
    あたたかき真昼の丘べ 花を敷き、あはれ若き日。

  3 君が瞳はつぶらにて  君が心は知りがたし。
   君を離れて唯ひとり  月夜の海に石を投ぐ。

   ……  ( 佐藤春夫著 『 殉情詩集 』 より 「 少年の日 」 )
  


オリジナリティー

2010-08-08 | 日記
フォーヴ ( 野獣派といわれています ) の画家が描いたような夕焼けの雲。こんなにも空が色彩に彩られている。 「 色彩に彩られている 」 なんて表現があるかどうか、しかし一個の夕陽が沈むその時も時、こんなにも雲が色付くのだった。

自然に包まれていると、夕空を見上げていると、改めて感覚が新鮮になってくるのだった。空間を意識化することは、新しい個性を発見することだった。意識を空間化することは、一つの調和を発見することだった。

空間を意識するということは、新しい精神の誕生を予感することだった。一つの思いとして…。