むらさきしきぶのポートレート
誰にもはばかることなく
道端の小石の重量は影を長くする
そこでは風も木々もなにもない
水平線のガケップチに
夕陽がひっかかる
春の日は夕暮れてから
春は深くむらさきになる。
以前、紫式部の空想のデッサンを描いた。今は思い出せないが何かの歌集を読んでいたのだと思う。歌から喚起する彼女のイメージが、現代の道行く女性のリアルな姿と重なってこんなデッサンになった。紫色はノーブルな色だと言われるが、紫さんは名前に違わず才色兼備でソフィストケイトな女性だったに違いない。
道端に転がる小石にも存在があり、その存在に光が当たるとそれは輝き、存在の陰影を長くするのである。夕暮れは、存在の深さを鮮明にするのだった。春はむらさきに暮れて逝 ( ゆ ) く。