昨日の朝の写真。寒い朝だと思ったら雪が積もっていたのだった。今朝なんかも霜が降りていてひんやりの空気だったが、このところ大きな雷鳴もあったりして気象が穏やかではないようである。でも、僕はこういう冷めた緊張している空気をおいしく思う。玄関前の植え込みに、水仙の青い茎がかたまって抒情している。もうすぐ花をつけるに違いない。そして咲いた可憐な花は、誰も訪れない僕の家の玄関の春の夜の微かな明かりになるだろう。尊きものは、小さきものの白昼のランプの如き取るに足らない生命。風景、記憶、忘却。刈谷田川の朝の川べりに雪が白く濡れていた。
入口の踏段に
石に刻まれた若き恋人の
抱擁の中から苔のさがり
黄色い菫の咲く
春のせつなさ [ 西脇順三郎全詩集「旅人かへらず」より ]