近所に花の好きな奥様がいる。雨が降ってほしい庭にはたくさんの花が咲いていた。以前、ターシャ・テューダー ( 1915-2008 ) の本を見せてもらったことがあって、こんなお婆さんになりたいな、と言ってたことがあった。夕方、この星々のような、青春の光の破片のようなミヤコワスレが庭に群生していた。花の名前を伺って、ご苦労のお話も伺っているとすっかり辺りが暗くなってきた。薄闇に光り咲いているこれら地上の星々よ! あまりに無垢に過ぎないか! あまりに可憐に過ぎないか! いつか破片の中の夢は果てて、慕情だけが残るのだった。
ただ意味も無く、 「 赤色赤光白色白光香潔 ( しゃくしきしゃっこうびゃくしきびゃっこうこうけつ ) 」 、と唱う。 都忘れ、夜の闇に照らされる灯火のようだ。
夕暮れのみやこわすれの花の香よ恋しきひとの来たりけむかも