紫色のCD

2014-01-31 | 日記

   

冬の深い夜はバラードを聴く。 B & O のプレイヤーに入っているCDはやっぱり 『 八代亜紀特選集 』 である。まだ借りている期間に間があるからたくさん聴いておこうと思う。毎日々々結構繰り返し聴いているから自分ながらどうかと思うが、まあでも、アキないですね ( 笑 ) 。だから毎日が単々と枯葉のように堆積して行くばかり。冬の季節は枯葉の中に埋まっているのである。芳賀徹著 『 詩歌の森 』 ( 中公新書版 ) から十二世紀の歌人・藤原俊成にこういう歌がある。       

                 埋み火にすこし春ある心ちしてよふかき冬をなぐさむる哉

 一枚のCDは、ここではひとつの 「 埋み火 」 である。

 


句集

2014-01-30 | 日記

さっきまで星が出ていたのに、今は窓に雨打つ音がする深夜、長谷川智弥子著 『 句集 藍の風 』 ( 昭和59年 花神社刊 ) を再読する。雪の国で生れた、著者の処女出版になる句集である。

               リボン解き夏空へ髪抛り出す

僕の好きな一句である。この女性はじゃじゃ馬かも知れないが、しかしここでは潔い女をイメージするのである。ここでのリボンは僕の中では一個の象徴である。常識とか習慣という制約のようなものに違いない。リボンの色が何色であったかはここでは重要ではない。リボンそのものが枷 ( かせ ) なのである。 「 結ぶ 」 なんてクソ食らえ ! である。こんなにも空がサマーじゃないか ( ちょっと意味不明ですみませんが )! と。

でもまあこんなふうに思って見たが、この句はそのまま素直に読んだほうがいいですね。身も心も解放する夏が来たのである! 母や妻であること、そして女からも全てから解き放たれた一瞬があってもいいのである。時には、僕も僕と言うリボンを解いて見たいものである。

( 追記 ) 著者の若き日のこの句に、時間を遡って勝手に返歌をしたいと思っているうちに一日が経ってしまった。それで書名を入れて作って見たのがこんな句である。(1月31日)

                颯爽ときみは夏空藍の風

 


刈谷田川夕景

2014-01-29 | 日記

栃尾の町の中心街を外れて、刈谷田川は流れている。画面右方向が下流であるから、これは右岸からの眺めである。一日天気もよかったから午後五時過ぎの空はまだ明るく透明であった。川面にもまだ日の名残りが映る。薄桃色に暮れて行く青い空に、稜線の裸の木々が産毛のようである。遠く、家の灯りがポツポツ点き始めた。

昼間の何気ない光景が薄闇の夕暮れ時になると俄然、その光景が落ち着きのある優美さで僕らを精神的にも包んでくれるのである。存在が存在のままに自然のなかに消えてゆくような、溶け込んでゆくような、自然との同化を感じずにいられないのである。一日の悔恨と反省もそれはそれでひとつの善良さの証だったかも知れないのだ。全て外観は心の現れである。川の流れは僕を思考させる、柔らかな稜線は僕という運動を静止させてくれる。どこまでも透明なコバルトの空は身の丈のない僕を、純粋な高みに引き上げてくれるのである。1月ももうじき終わろうとするが、まだ雪解けには早いのだ。しかしそれは悔やむことではない、自然がいいようにするのである。夕景には灯りはポツリポツリがいい。

 


多様性

2014-01-28 | 日記

               

紙というものはあらゆるところでいろいろな使い方をされていて、全く多様性に富んだ物質である。よくぞ紙が作られたものである。発明といっていいのか発見といっていいのか解らないが、紙がなければ世界がどんなになっていただろう。まず本がないのである。これはもう生きていてもしようがない程である。捨てられようとしている紙を、改めてスケッチ・ブックに貼って線を描き加えると、これはこれで紙の再生であるに違いない。かつて僕の座右銘のひとつは 「 捨てる紙あれば、拾う神もある 」 であったし、紙だけに限らず僕は拾う神であったのだ。今も掘り出し物にはあまり縁がないが、拾い物には他生でもなく多生でもない、多少の縁がある。いずれにしても、 「 拾う 」 ことは面白い。世界はその気にさえなれば 「 拾い物 」 には相当満ちているだろうから、これだからまだまだ人生捨てたものでもないのである。自嘲的に言うと、多様性は反古にされたものでさえも、である。

 


無題三句

2014-01-27 | 日記

夜の閑寂に熱い珈琲をすすり、窓の外に星明りの雪山をながめる。軒の氷柱が数本、遠く近くの白い屋根々々に突き刺さる。 『 雨の慕情 』 を聴きながら、いまだ夜は深からず。      

      雪明り少し苦しきデスタンス

      ものの情わきまえざるに星は冬

      母の髪僕の髪にも雪は降る