ボントンブランジュリー

2010-02-28 | 日記
市内の信号を曲がって、ブーンと車で行くと視界の左隅に、暖かい灯りの店が見えました。ブランジュリーです。店内には bon ton なご婦人方が何人かおりまして、もうパンはあまりありませんでしたので、 AUGUSTE ROGIN ( 1840-1917 )の彫刻 「 花子 」 のような “ マドモワゼル店員 ” に聞くと、仏蘭西麺麭は 「 もう売れ切れです 」 でした。そこで僕は薄いビニール袋に入った、割りに小さめの、でも見た目重量感のあるクリームパン2個を購入したのでした。その時の紙袋です。

絵の雰囲気が15世紀的で、二人はとぼけた王宮晩餐準備係を思わせます。どなたのイラストでしょうか。それにしてもこのパン、担架で運ぶようなでかいパンですね。たくさんのパンをつなげたようなドーナツ型のパンで、これはパン、なの?

DELICIEUX BOULANGERIE
DELICIEUX Bonton Bakery NAGAOKASHI・KESAJIRO

ところでこの Bonton で気になったのですが、仏蘭西で “ Gazette du Bon Ton ” という大変に美しいモード誌が1912年に創刊されています。上品な雑誌、という意味だそうで、、色彩の印刷といい、レイアウト・造本といい、当時のモードがとても綺麗で誰もがウットリする本ではあります。以前、東京の古書展で拝見しまして垂涎でした。

単に紙袋の印刷に過ぎませんが、デザインは 「 適切で誠実につくられたものであるべきです 」 ( アルヴァー・アアルト ) ですね。
この紙袋、捨てがたいな…。


詩 ( はじまり )

2010-02-27 | 日記
二月のカランドリエの終わりに国道を走る
水晶の小鳥が眠る助手席は
永遠の青空を夢見ている

貴婦人のような遥かな雪の山脈
朝陽は薔薇になる
国道のカアヴは美しい恥らいのようだ

心の苦しみが薔薇の芳香で解かれますように
遠く去ったひとが幸福でありますように
月光を避けて静かに悲しむ人々に恵を与えよ

そうしていつか晴天の日に
超然として MILKY WAY を走行しよう
見える星も見えざる星も光に濡れている

冬の湖の

2010-02-25 | 日記
フィンランド iittala ( イッタラ ) 社のフラワーベースです。デザインは建築家 Alvar Aalto ( 1898-1976 ) 。
彼の住宅デザインは、モダンアートといっても過言ではありません。自然からヒントを得た造形スタイルは、現代建築に大きな影響を与えています。このフラワーベースもフィンランドの湖の地形をデザインしたものだそうです。1930 年代のデザイン。

「 人間の一生は悲劇と喜劇の取りあわせです。私たちの身のまわりにあるデザインや形あるものは、この悲喜こもごもの日々を伴奏する音楽なのです。家具・布・色のスキーム・ 建物は、人間の悲しみや喜びに自然に寄り添えるよう、適切で誠実につくられたものであるべきです。
― アルヴァー・アアルト― 」 ( 齋藤 裕著 『 AALTO 』 )

白い花瓶は雪の湖。静謐な湖水に時折漣がたつ。雪のささやき? 可憐な春のおとずれ?

うすやみ

2010-02-24 | 日記
案内ハガキの裏面に描かれた水彩画のコラージュです。もう5年前の作品で、その画中に歌一首。 

 薄闇にくちびる匂う花びらを 水に濡らして来ぬひとを待つ

当時、竹久夢二 ( 1884-1934 ) の装丁本や挿絵本に興味があって、彼の本は結構高価でしたので、古書目録なんか見てはため息をついていました。唇が匂うなどというのは今思うと何のことか意味不明ですが、こんな歌も作ったりしていましたですね。

 待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草のやるせなさ 今宵は月も出ぬさうな
 ( 竹久夢二 「 宵待草 」 )

しかし今月今夜の月は佳し。冷気あれど暫時月と星辰を賞す。

月のちょうちょう

2010-02-22 | 日記
一日中、空澄みわたる。空青くして地平は白し。福寿草の花のおとずれ間もなし。夜に入りて下弦の月は細く、オリオンは流れる雲に隠れる。

てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った。 
( 安西冬衛 「 春 」 昭和4年 )

写真は、夜空の海峡を行く蝶の光のようにも見えます。かつて、一匹の蝶が韃靼の海を航行したのはなぜ?。詩の題名 「 春 」 は何を意味しているのだろう。春を求めてか、あるいは春になったので、か? 生命の春は、ツガイを求めて命知らずの飛行をするの? そう思うとこのシュルレアリスムの代表作は、実は生命の哀しきレアリスムを象徴しているのかも知れません。下記パラフレーズです。
 
 一匹の雄蝶が死を厭わず 
 一匹の雌蝶を求めて深い海峡を渡った。
 あるうららかな春の日に。

  ( 2月23日夜訂正追記 )