読書
2020-03-21 | 日記
『芸術新潮』3月号の特集は「美人画」であった。買うつもりはなかったが、店頭で見ていると、この絵が掲載されていて、僕の知らなかった画家だった。昭和11年作の日本画で『読書』という画題である。画家は中村大三郎(1898-1947)という京都画壇の画家である。見ていると引き込まれてしまっていて、最近はこの雑誌はあまり買ってなくて、しかしどうしようもなくて、小さく掲載されているこの絵のことを知りたくて買うことになったのだった。この平面的画面が一種の知的静謐感を漂わせている。大判の赤い表紙の本は何だろう、画集のようでもあって、しかし、画面の落ち着きのあるトーンを、表紙のこの赤色が女性の隠された「情」を現わしてもいるかのように、口紅の色と共に一枚の画面を、エキサイティングにすることもある。時に読書は、表面性の静かさとはパラドキシカルにも、一個の内面的アヴァンチュールをもたらすこともある。読書の喜びもまたここにある。昭和11年であろうが令和2年であろうが、過去も現代も、読書の楽しみと喜びは不変である。
ところで、この絵(120.8×91.8cm)は東京芸術大学所蔵、とありました。見てみたいな…。