“ クラシック音楽と本さえあれば ”

2013-01-31 | 日記

               

                  『 考える人 』 ( 季刊誌2007年夏号 新潮社刊 )

表紙の写真は、チェロ演奏家のアンナー・ビルスマ ( 1934年オランダ・ハーグ生まれ )。背景のシェルフにギッシリと楽譜が詰まる。

 


BANG & OLUFSEN

2013-01-29 | 日記

人は、それぞれにいろいろな価値基準を持っているだろうけど、デンマークのバング&オルフセン社のオーディオから、僕は simplicity ( 単純平明さ ) 、originality ( 独創性 ) 、quality ( 良質であること ) という三つの事を、感覚的なものではあるけど、学んだように思う。何か問題があって迷ったら、いつもこのオーディオで、その時に相応しい好きな音楽を聴くのである。いつからか、もう10数年も前になるだろうか、B&O のオーディオは僕の一つの憧れだった。表参道にあった B&O ショップにはよく立寄って、そのデザインと音響にゾッコンするのだった。ショップは、今思えば、僕の重大な発見だったのである。よくぞ出合ったものだと思う。この出会いは僕にとっての “ 一つの事件 ” と言ってもいいのだった。

                 

           マリメッコ社女性社長のキルスティ・パッカーネンさんの自邸。

プロダクトデザインや建築デザイン、食器や家具デザイン、他の工業デザインを見るとき僕の価値基準と判断は、この “ S・O・Q” による。S には機能性と美がある。O には源流を遡りつつ常に前衛であろうとする精神がある。Q は別言すればヒューマニティのことである。

 


『 余白に書く 』

2013-01-28 | 日記

瀧口修造が本のために書いた文章ではなく、ましてやジャーナリズムのためのものではない、実に私信のようなプライベートな文章を集めた本である。短文あり、詩文あり、詩がある。それは著者の “ 内的要請 ” によってのみ書かれたものであった。1966年 ( 1982年新装版 ) みすず書房刊。

「 人は薄明のうちに、謎とともに生まれる。もし運命という石が見出されたとしたら、人はそれを限りなく透明になるまで、飽くことなく磨きつづけることだろう。ある人にとって、絵を描く行為は、このような薄明のなかから生まれるのだ。その種子は無心の巣のなかで芽生え、やがて運命の樹として繁茂するだろう。 」

 「 高橋アキのために   野の鍵を 

               叩け無言歌

                  夢厳華苑 」  

 


朝食

2013-01-27 | 日記

          

                 江藤淳著 『 渚ホテルの朝食 』 ( 1996年 ㈱文藝春秋社刊 )

昭和13年、著者はその前年に母を亡くしていた。父に連れられて祖母と三人で逗子の 「 渚ホテル 」 に海水浴に来た時のことである。以下、本のタイトルとなったエッセイ 「 渚ホテルの朝食 」 から引用する。

「 その日の朝食は私が味わった、最初の西洋式の朝食だった。トーストも紅茶も、もちろん半熟の卵もまるっ切りお馴染みのない食物だというのではない。しかし、銀のエッグ・スタンドに半熟卵がたててあって、しかもお皿の上には更にもう一つ卵が添えられているというのは、何とまた豪奢な朝食だろう!  ( 中略 ) 私は、泳ぎができて英語も話せる父が誇らしかった。今の父のようになりたいと思った。今の父のように、泳ぎも英語もできるようになりたいと思った。その後英語は話せるようになったけれども、泳ぎはいまだに出来ない。それにしても、あれは父と私が一番近くにいた時間だった。そういう時間があったから、私は今まで生きてこられたのである。 」