マジョルカピンク

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盗作と言わないで

2018-08-24 17:19:31 | 映画
異例のヒットとなっている話題の映画「カメラを止めるな!」
自分は3回見てきました。1回目は前半のいかにも低予算のノンカットゾンビムービーにゲンナリ、途中「?」となり後半は爆笑と驚きと感動。これをネタが全てわかった状態で最初から見たくて2回目鑑賞。その気持ち良さを再度味わいたくて3度目、とすっかり制作側の術中にハマってしまった。全く知らなかった役者さんたちに愛着が湧き、近頃ゲリラ的に上映後出演者が舞台あいさつに登場したりしているという東京をあらためて羨ましく思ってしまったり。
何度見てもその魅力が色あせない傑作だとつくづく思いました。
やはり1度目は噂が先行しているけどどんな映画なの?と疑心暗鬼になって見ているので、色々見落としていることも多いと、後になって気付く。2回3回と見て、ああなるほど!とかそういうことだったのかとか、あらためて緻密に作られた脚本と演出に敬意を表したい。世界的にも通用すると思うし。ただ報道ステーションで親子でとか小さい子供でも楽しめるとか強調していましたけど、さすがにそれは無理が(^^;冒頭37分のゾンビ映画が妙に怖くてグロいので小学生以下にはお勧めしたくないわ。トラウマになるよ。

さて。この間メディアはこの作品の原案とされている演出家の和田氏から盗作と指摘されているなどのイヤなニュースで沸いた。
この作品を見ると、そのアイデアの奇抜さと秀逸さゆえ、監督のインタビューなどを見たくなるし、どこから発想を得たのかと知りたくなる。自分もそうでした。で、インタビューを読んだり見たりしていて、以前に見た舞台からヒントを得たとあって、その時にまるっきりオリジナルというわけではないんだなと自分は理解していました。で、その発想の元になった舞台も見て見たいとも思ったし。舞台関係者も絶賛したとあったので、なんとなくいろんなことが上手く運んで良かったねーぐらいにしか思わず。まさか後々この件で問題になるとはねー。
このニュースを知った時本当に出る杭は打たれる文化だよな日本は、と憤りを覚えました。安易にパクりとか盗作とか、刺激的な言葉を使わないでほしいものだと思う。
この問題はレアケースであると同時に、創作する上で痛し痒しのなかなか難しい部分があると思うのだ。そんな単純な話ではない。

この作品は○○製作委員会などの大手資本で作られたメジャーな作品とは違う。ENBUゼミナールのワークショップの一環で作られたもの。試写で評判がよく、都内2館の上映へ。各映画祭への出品、好評を得て受賞。口コミでじわじわ広がり、全国でのべ200館を超え拡大。なんと興行収入ランキングにまで姿を現した。自主映画作品で、こんな経緯をたどってヒットした作品てかつてないと思う。急な成功ゆえ監督も制作会社も喜びながらもかなり困惑しているように思う。そもそも興行で収入を得ようと想定されてないのだから、権利関係などの面が曖昧だったのも仕方ないと思う。インディーズの危うさであります。

舞台と映画両方を知るネット上の一般の方々(とお見受けする)の話を総合すると、原作だと主張するほどの類似点はなく原案どまりであろうということ。原作にしろと主張している方の劇団はすでに無く、解散した際に舞台のDVDを事前に予約販売しておいてそのお金を持ち逃げしたとの話もある。実際氏はテレビなどに出てはいるが顔を隠している。
真偽のほどは当事者にしかわからない。降ってわいたようなこの作品のバブルにあやかりたい、つまりお金なのかなあと自分は感じる。ただまあ、私も札幌で数々の舞台作品を見ているけど、こういったことは氷山の一角。小劇団あるあるではないかと思う。事実私も札幌の小さな劇団の舞台の話に「そっくりじゃん」と思った映画、ドラマを見たことがある。劇団のほうが先、映像は後。でも映像作品の方はメジャーだ。でも特に話題になったことはない。舞台は見た人の分母があまりに小さい。パクりではないかもしれないし、たまたまなのかもしれない。真相は闇の中だ。今回の騒動もそうだけど、舞台というのはナマモノであり、しっかり映像化してでもいない限り検証が難しいと思う。脚本を読んだとしても作品のビジュアルなことはわからないだろうし演者によって物語のニュアンスまでも変わってくると思う。ここが映像や書籍などと違う難しい所。

せっかくこの作品が盛り上がっているさ中水を差されたようで非常に残念だと思う。
(以下作品ネタバレ多し)
疑惑をかけられ見に行くのを辞めた人も多いのではないかと思う。でもそれはとてももったいない。キャッチコピーにあるように、この映画は二度始まる。そのアイデアを盗まれたと原作を主張する人は言う。でも自分が心を動かされたところはそこじゃない。
映画による映画へのアンチテーゼであるとともに、映画への熱いラブコールであるところが素晴らしいのである。当事者には痛快かつ耳が痛いであろう業界あるあるが面白い。いいかげんなプロデューサー、業界ずれした薄っぺらいアイドル女優、いっぱしの演技派気取りの俳優、脚本に難癖をつけ、これはできない、やりたくないなど文句ばかり。監督は予算も時間もない中そこそこのクオリティの作品を撮ることを求められる。各所に頭を下げ板挟みにあい、頑張って品質の低い仕事に取り組まなければいけないという辛さ。クリエイティブな世界のはずなのにクリエイターの矜持はどこへやら。どこか日本のサラリーマンの理不尽な悲哀を思わせる。
生中継中数々のアクシデントに見舞われながらも番組を成立させるべく、バラバラだった曲者たちがプロ意識でなんとかこの作品を完成させようとするさまは、非常にベタなカタルシスがあり泣けました。このなんだかわかんないけど一致団結してやり遂げよう!というマインド、とても日本人的かもしれません。このお仕事ドラマかつ業界あるあるに親子の絆まで織り交ぜたりして、本当にこの脚本はよくできている。普通ならとっ散らかって収集付かないだろう。
自分はこの辺がこの作品のキモだと思うし、この部分が監督のオリジナルだから原案で十分という話に一票。そんなことを言いだしたらあらゆるケースに適用される。「ナースのお仕事」は佐々木倫子の「おたんこナース」に似てるし、「ライオンキング」は手塚治虫「ジャングル大帝」に似ている。「スターウォーズ」だって元をただせば黒澤明「隠し砦の三悪人」だ。「ゲド戦記」なんかは原作とした作品とジブリアニメは全然別物で原作者は怒っていたというような話も聞いたことがある。今の世の中完全なオリジナルストーリーなんてほとんどないのではないかと思う。
またワンカットの長回し、ゾンビへの偏愛など映画狂の心をくすぐる魅力にあふれ、無名なキャストたちも輝いている。集められた役者さんたちはドキュメンタリー風な演技をしているわけでかなり上手いと感じました。

とにかく監督が言うように、円満な解決になるといいと思う。騒動のおかげで観客が増えている部分もあるかもしれないけど、本意ではないと思うし。作品に傷がつき、監督もちょっとショックだおうと思うなあ。
なんでもそうだけどお金というのは人を変えるし揉め事の元にもなるしつくづく怖い。監督は今回の短期間でアゲてサゲられた顛末を次回作のアイデアにして、1本撮ると面白いかもね。

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