目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

サードマン現る!NHKスペシャル「神の領域を走る~パタゴニア極限レース141Km~」

2016-10-10 | テレビ・映画

10/2(日)放送のNHKスペシャル「神の領域を走る~パタゴニア極限レース141Km~」を録画していて、ほぼ1週間遅れで見た。

パタゴニアといえば、人が住まない地、荒涼とした不毛の地で、年がら年中強風が吹き荒れているところというイメージがあって、そんなところで141Kmも走ると聞いただけで、身震いしてしまった。実際そうなのだが、番組の冒頭を見て、ちょっと様子が違うと思ってしまった。まずコース中に森があることがわかって、あれっと思った。意外にも緑豊かじゃないかと。参加者は、スタート地点から森を駆け上がる。その後に私の知る強風吹き荒れる何もない荒野を進むけれども、ここだけが大変なのではないかと勘違いした。そしてコースの残りは、平坦な大地をほぼまっすぐ走るだけだ。距離は長いけれども、1日を費やせば、なんとか完走できるだろうと、コース説明で思った。存外、いうほどにすさまじくはないのじゃないか。でも、実際はそんな印象は甘々で、すさまじいばかりの過酷さを見せ付けられる。

スタートは参加者全体が、オーバーペースで、後々これが体力の消耗を加速させる結果になる。上位に残った人たちは、皆オーバーペースにならずに、自分があらかじめ決めていたペースで走った人たちばかりだ。オーバーペース組は、森の中で早々に脱落していく。このレースは、棄権者が70%という恐ろしいレースなのだ。登り続ける森の中を越えると、樹木のまったくない、強風の吹きさらしの荒地を走ることになる。雪まで降りはじめて、体温を容赦なく奪っていく。

何とかここを通過すると、神の領域に入るという。なんだそりゃと思ったが、それは疲労の限界で、脳から走るのをやめろという指令が出ているのに、それに抗って走り続けるという状態だ。つまり体のリミッターを自らはずして、走り続ける。いわばガス欠だよとアラートが出ているのに、給油せずにどんどん走りつづけるようなものだ。だから、いつ体が壊れてもおかしくない。

この過酷なレースでトップを維持して走り続けたスイス人は、なんと50代。そして次を走ったのが日本人で、トレイルランナーとして輝かしい実績を残してきた鏑木毅(かぶらきつよし)さん、47歳だ。体力よりも経験がものをいう世界なのだろうか。中高年ががんばっている姿を見ると、私にも励みになる。それはさておき、神の領域に入り込んだ鏑木さんの体験が番組では紹介された。きついなと思って無理を承知で走っていると、途中から伴走してくれる人が出てきたという。それは奥さんのようでもあり、娘さんのようでもあったと。朦朧とした意識のなかで現れた、明らかな幻覚で、サードマン現象だ。以前このブログでもとり上げたサードマンだが、それは、人が苦境に陥ると、経験豊かな人には、サードマン(第三者)が現れて、その人を補佐して救うという。鏑木さんには、その現象が起きたのだ。それこそ、トップアスリートの証であると同時に、極限状態=神の領域に入ってしまったことを示すものだ。

このレース、こうして文章で読むよりも、映像を見たほうが、その過酷さが十二分に伝わる。ふらふらになって走る大勢のランナーたちや、彼らをとりまく厳しい自然を目(ま)の当たりにすれば、すべて得心がいくはずだ。いずれまた再放送をやるよね、NHK様。


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