目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

川場谷野営場から前武尊山

2018-09-30 | 山行~上州

標高 2040m 群馬県

2018年9月23日(日・祝) 曇りときどき晴れ |

メンバー 山の神と私

コースタイム 8:45川場谷野営場駐車場9:00--9:22不動岳分岐--10:12天狗尾根取付10:21--10:35オグナほたかスキー場分岐--11:30前武尊(昼食)12:15--川場剣ヶ峰手前--前武尊12:25--13:08スキー場分岐13:15--14:05不動岳分岐--14:30駐車場

自宅を車で出発したのは5:03だった。高速に上がると、さすがは3連休、それなりにもう交通量はある。関越に入ると、もう渋滞一歩手前の様相を呈していた。朝食は当初の計画どおり、高坂SAを通り越して上里SAで済ました。

沼田ICを下りてまずは買出し。こんなところにローソンがあったのか、幸先いいなと出口に隣接している店舗に入る。しかしなんということだ、山の神とおにぎりの棚を見渡して愕然とした。ひとつもない! 目立つ店だから皆ここに入るからだろうと自分に言い聞かせ、少し遠回りになるけれども、川場への分岐を通り越したロマンチック街道のファミマへ行くことにした。だが、ここでもアンビリーバボーな光景が待っていた。またもやおにぎりの棚は空っぽ。昨日調べたところでは、この先にコンビニがもう1軒、セブンイレブンがあるはずだ。移動して3度びっくり。棚は隙間風が吹くくらい、がらんとしていた。おにぎりなしかよ。ないものは仕方がない。この先にもう一軒コンビニがあったような気もしたが、あきらめて主食はうどんとそばのカップめんに。いきなりのがっくりスタートとなった。

川場谷野営場に向かうにつれ、なぜなのか察しがついた。「上州武尊山スカイビュー・ウルトラトレイル」というトレランレースがこの23日と24日に開催と道沿いに出ていたのだ。おにぎりゼロの訳は、この大会参加者や関係者が買ったからなのだろう。とんだとばっちりを受けてしまった。

 
左:川場谷野営場 右:登山口

奥利根ゆけむり街道を進んでいくと、川場谷野営場の案内が出てきて、未舗装の林道へと曲がる。しばらくダートコースを走ると、右手に川場谷野営場駐車場の標示があった。かなり広いスペースにゆったりと車が駐車してあり、テントやターフも張られている。後から知ったが、駐車場兼テントサイトなのだ。

避難小屋の建物内にトイレはあるが、それとは別にかなり不衛生な別棟のトイレもある。知らずに不衛生なほうを使って、9:00山の神とともに駐車場を後にした。

 
左:不動岳分岐 右:足場の悪い急な上りが続く

林道をテクテクと歩いていくと、やがて山道になり、手付かずのきれいな樹林帯が出てくる。楽しいハイキング地帯だ。しかし、あっという間に不動岳への分岐に行き当たり、ここから魔の特訓コース(?)が始まる。地図で急登になることはわかっていたのだが、両手両足フル稼働で通過しなければならない箇所がやたらと出てくる。ロープや鎖が設置はされているが、足をどこにかけるか、何を手掛かりに体を引き上げるべきか、ちょっと迷うところもあった。山の神は帰りにまたここを通るかと思うと憂鬱だわとこぼす。

天狗尾根に出たら、休憩にしようと山の神に告げていたのだが、もしかしてまだまだ遠いのではと一瞬脳裏をよぎった。そのうち目の前に巨木が現れ、この木の下で休んでいきなよと言っているように聞こえる。それを振り切るように尾根を目指したのだが、危惧したとおり、いつまで経っても尾根に上がることはできなかった。

 
左:この巨木の下で休憩しようか迷った 右:青空は閉ざされ、真っ白な空に

1時間以上歩いて、ようやく天狗尾根らしきところに出て、そこで本日の初休憩とした。無理をするのは中高年にはよくないのはわかっているが、やはりこの後影響がモロに出た。

天狗尾根を歩き始めると、すぐにオグナほたかスキー場への分岐点に出た。さっき休んだばかりなのに、早くものどが渇いて水分補給。その後は、やたらと足が重い。シャリ欠のようだった。山の神はまったく腹は減っていないと豪語しているが、私はたまらずザックからドラ焼きを出してほおばり、少しばかり回復した。

 前武尊山山頂に鎮座する日本武尊像

登山道横にある祠やお地蔵様を拝みながら、11:30日本武尊像のある前武尊山山頂に着いた。残念ながら展望はなく、山頂近くから出てきたガスが濃くなってきていた。

山頂でくつろいでいた年配の方に話しかけた。もうここに1時間半ほどいるという。これから武尊山へ向かうというのだが、地図をもっていないのか、武尊山まであとどのくらいかかるのだろうかと聞かれる。たぶんここから往復で4時間くらいですよと答えると、時計を見て引き返すかとひとりごち、山の神と私がたったいま登ってきた道を振り返った。私は雨男でねえ、ここに来るといつも雨なんだ。そういい残すと、ザックを背負って下っていった。たしかに目の前の空は、いまにも泣き出しそうな嫌な雲行きだった。


川場剣ヶ峰全貌

山の神と私は、そのおじさんのいた場所に入れ替わりに座り昼食にした。2人でそばやうどんをすすっていると、厚い雲が徐々に流されていき、明るくなってきた。雨男が遠ざかっていくからなのか、、、

昼食を終え、12:15本日のメイン・イベント、川場剣ヶ峰をこの目で見ようと腰を上げた。剣ヶ峰方向に下り始めると、ガスが次々に麓から上がってきて視界は遮られる。たぶん真ん前に見えるはずなのだが……。と、突然ガスがさあっと流れていき、古民家の三角屋根よろしくその姿を突如現した。前武尊山で終了にせず、ここまで足を延ばしてよかった。この威容を見る価値は十分にある。

 
左:青空が覗くも 右:すぐにまたガスってくる

その後一瞬青空まで覗いて、きれいに晴れるのかと期待したが、それはかなわず、あっという間にまたガスが這い上がってきてしまった。さあ、引き返すかと山の神を促す。

引き返しがてら、また姿を現さないかとちらちら振り返っていると、出た!川場剣ヶ峰の再登場。それにしてもすごい岩峰だ!

 
左:前武尊山山頂付近は紅葉が始まっていた 右:再びガスがはれ、川場剣ヶ峰が見えた

この辺りは、少し葉が色づき始めていて、秋の香りを少しだけ感じられた気がする。

 
左:往路ではブラインドになっていて存在に気づかなったお地蔵様 右:回り込んでご尊顔を拝する

前武尊山に戻り、来た道を戻り始める。スキー場の分岐で水分補給。時計を見ると、足場が悪くその分モタモタしたせいか予定よりも少し遅れていた。

そこからしばらく下り、登るときには気づかなかったお地蔵様の後姿を発見した。ちょうどその位置はブラインドになっていたのだ。回り込んでご尊顔を拝すると、なんとも柔和なお顔立ちだった。そしてお地蔵様の視線の先には、山麓のパノラマが広がっていた。麓の集落やスキー客を見守っておられるのか。


樹木がなければ、お地蔵様の視線の先にはこんな風景が広がっている

駐車場に戻ったのは14:30。だいぶ足に応えた登山道だった。

帰途は、山の神のたっての願いを受け入れ、道の駅川場田園プラザに立ち寄った。広い道の駅でいくつも建物があるので、どこに何があるのか探すのがたいへんだ。右往左往して買いものをしているうちに時間は無常にも経過して、ここを出たのは15:00を回っていた。予定より30分くらい遅くなったものの、関越道だからだいじょうぶだろうと思ったのは、大間違いだった。3連休恐るべしだ。ベタベタに渋滞して家にたどり着いたのは、20:00。それから山の神と居酒屋に繰り出したのだった。

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ドイツ森林管理官の第二弾『動物たちの内なる生活』

2018-09-20 | 山・ネイチャー・冒険・探検の本

 『動物たちの内なる生活 森林管理官が聴いた野生の声』ペーター・ヴォールレーベン 本田雅也訳(早川書房)

著者のドイツの森林管理官、ペーター・ヴォールレーベンさんの前作『樹木たちの知られざる生活』を読んだときの衝撃は大きかった。樹木同士でコミュニケーションをとっているなんて初耳だったし、読めば読むだけ驚かされる樹木のワンダーワールドが目の前に広がった。

そして第二弾の『動物たちの内なる生活』。書店の店頭で装丁が前作と雰囲気が似ていて、もしやと思って手にとるとやはり著者は同一人物であることがわかった。期待いっぱいでページをめくり始めたのだが、前作のような衝撃は正直なかった。

ただつまならないことはない。動物好き、自然が好きという人は、総じて興味深く読めるはずだ。

察するに著者は自然が大好きで、よく観察するし、疑問をもつと探究心がもたげてくるようだ。だから、ふだん疑問に思ったり、気になったりしたことはとことん調べてしまうのだろう。いまはネットで何でも調べられ、仮に求める情報がなくても、それに近い情報や周縁の情報には容易にたどりつける。そこから推理をはたらかせて、さらに調べていけば、真実に近づけるというものだ。そんな著者の探究心のおかげで、植物にかんしても、動物にかんしてもわれわれが知りたいと思ったこと、あるいはまったく知らなかったことを垣間見られるのだ。

この本の前半はさらさら読めて、とくにこれはというものは残念ながらなかったけれども、後半で興味深い小ネタをいくつも拾うことができた。

たとえば、冬眠前の動物たちの行動。ミツバチにいたっては、他の弱そうな集団の巣を襲って、蜜を奪うというから恐ろしい。冬を越すのに十分な食糧を得られなかったミツバチの最終手段がこれだという。大挙して押し寄せ、貯蔵庫から蜜を根こそぎもっていく。抵抗するその巣のミツバチは皆殺しだ。

お次はクマ。やはり十分なえさが得られないと、凶暴化するという。それは生きるために是が非でもえさを獲得したいから、人をも襲うことにもなるのだ。

さらに年老いたノロジカはいつも不機嫌というのは笑った。人間と同じなのか。理由はこうだ。メスであれば、年老いても子どもをなすことができるのだが、高齢ともなると、栄養をきちんと摂取できなくなり、体が衰えてくる。そうすると、自分の子どもに栄養満点の乳を与えることができなくなり、当然子どもの成長はよくない。成長が悪ければ、俊敏に動けず肉食動物に狙われて一巻の終わりになってしまう。自らも思ったように動けないし、子どもたちは天敵に食べられてしまう。そりゃあ、不機嫌になってしまうわな。

『樹木』に続いて、この本もドイツや翻訳された各国でベストセラーになっているらしい。たしかに面白いネタが満載されていて、ちまたでは知られていない動物の生態が書かれている。個人的には『樹木』のほうが圧倒的に面白かったが、こちらも読んで損はないと思える。これからの秋の夜長にページを繰る楽しみを提供してくれる価値ある1冊だ。

参考:当ブログ 何も語らぬ樹木を代弁した『樹木たちの知られざる生活』

動物たちの内なる生活――森林管理官が聴いた野生の声
クリエーター情報なし
早川書房
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不動の滝と三階の滝

2018-09-15 | まち歩き

蔵王エコーラインの滝見台 標高 約700m 宮城県

2018年8月15日(水) 晴れのち曇り →  

山寺を後にすると、もうあとは消化試合のようなもの。本日の宿泊地、遠刈田温泉に行くまで、どこで時間をつぶそうかと頭を悩ました。最初は斎藤茂吉記念館に行こうと計画していたのだが、サイトを改めて見て入場料¥600も払って見る価値があるものなのかと思いはじめるともうダメだった。まったくそそらない。全然行きたいと思えなくなる。

昼時を迎え、まずは腹ごしらえと、どでかい店舗で存在感たっぷりの南部屋敷に入ることにした。岩手県を中心に店舗展開しているファミレスチェーンで、そばを中心とした和食のメニューを取り揃えている。広い店内はジモティで混んでいて、賑わっていた。

そばをつるつると食していると、山の神はさっき通り過ぎた食の駅に行きたいといいだす。後から調べたところ、山形県観光物産会館が正式名称(?)のようだ。さっそく南部屋敷を出て元来た道を戻り、巨大駐車場に入る。ジモティの車もあるにはあるが、他県ナンバーの車ばかりが目立つ。しかも満車に近いという人気ぶりだ。

店舗内に入ってびっくりする。大きな売り場スペースには、道の駅ばりの産直品がずらりと並んでいる。そしてフードコートあり、さらには山形のお土産品がお菓子からお酒、工芸品までそろっている。なるほど皆集ってくるわけだ。

山の神が職場や家で食べようと大量のお土産を買っている傍らで、私は焼酎を見ていた。天童の居酒屋でおじさんがうまそうに飲んでいた焼酎のボトルがそこに陳列してあった。東京では見たことのない、グリーンのボトルで「爽」と書かれている。手にとると、さわやかきんりゅうとあり、勝手に「そう」と読んでいたが、「さわやか」だとわかる。原材料がとうもろこしとさとうきびの糖蜜とある。どんな味なのだろうと想像が膨らんで、そのまま1本レジに持っていくことになった。味は、、、最後に。 

食の駅を後にし、刈田岳に行こうという案もいつの間にか疲労とともに却下になり、蔵王エコーラインをドライブする。とはいえ、まっすぐ遠刈田温泉に行ってしまっては物足りない。というわけで、途中滝見台に立ち寄ることにした。でもこの滝見台は曲者で、漫然とエコーラインを走っていると、間違いなく見落としてしまうほど地味で目立たない。そんなこともあり、人は少なかった。この滝見台から見えるのは、不動の滝と三階の滝だ。ただ見えることは見えるけれど、正直なところ遠すぎてちっちゃい滝にしか見えない。植生の勢いで一部お隠れにもなっているのはご愛嬌か。

 不動の滝

 三階の滝

少々不満を抱えながら、遠刈田温泉に向かう。初めての遠刈田温泉だと思っていたら、ぼそりと山の神がいう。
「ほら、そこのロイヤルホテル、宮城蔵王のスキー場に来たときに泊まったよね」
たしかにそうだ。でも温泉じゃないよな。ほどなくして大沼旅館に到着した。しかし駐車場が見当たらない。宿で聞こうと思い、まず真ん前にあった公衆浴場の駐車場に車を停めた。とそれを待っていたかのように雨が降り出したではないか。しかも本降り。もうちょっと待ってくれてもよさそうなものなのに。

教えてもらった宿から50メートルほどの空きスペースに車を置き、無事チェックイン。今晩は、盆踊りがあるので、にぎやかになりますよと宿のスタッフに説明される。たしかに食事中や貸切風呂に入っているときにピーヒャラピーヒャラのお囃子や威勢のいい掛け声が響いていた。この宿は食事に特筆すべきものがあった。ほぼ個室といえる空間で炭火を使う。工夫された素朴な味わいの数々、そして和牛。肝心の温泉は、源泉かけ流しという贅沢さだった。ただ残念なのは、ちょっと熱すぎた。内湯は入れない人もいるかもしれない。ちなみに山の神は、片方の内湯(男湯と女湯が入れ替えになる)に入れなかったそうな。

翌早朝ひと風呂浴びてくつろぎ、ゆっくりとおいしい朝食をとる。大沼旅館は9:00過ぎにチェックアウトし、白石ICから東北道に上がった。すでに交通量が多くて大丈夫かと不安に駆られたが、渋滞にまではならずひと安心。帰宅は16:00頃だった。

その後このブログを書くために過去の記録を調べてわかったが、大沼旅館のすぐ近くにあった旅館三治郎にはロイヤルホテルに泊まった翌日に滞在していた。そのときは微塵も覚えていなかったけれど、いま記憶をたどっていくと、旅館の概観や風呂の様子などがフラッシュバックしてきた。

最後に焼酎「爽」のお味についてひと言。微妙。さっぱりしすぎのような、、、もう少し香りや何か特徴的な味わいがほしい。個性といったほうがいいか。東京で見かけないのは、そのせいなんだろうけど。やみつきになるほどおいしい焼酎であれば、大消費地東京に当然やってくるだろうから。

参考:当ブログ
宮城蔵王~後烏帽子岳スノーシュー

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「閑けさや岩にしみいる蝉の声」 山寺へ

2018-09-10 | まち歩き

立石寺 標高 約400m 山形県

2018年8月15日(水) 晴れ 

行こう行こうと思いながら、天気や日程の都合で行けなかった立石寺(りっしゃくじ)、通称山寺を訪れた。

前泊は天童駅前にあるビジネスホテル、天童セントラルホテル。山の神と6:00頃起床し、館内の自販機で買ったお茶やコーヒーを電熱器で温め、前日に買っておいたパンやおにぎりで朝食をとる。

夏場の山寺は8:00から拝観できるようなので、気温を考えてその時間を目指した。ホテルは7:30にチェックアウトし、20分ほどで山寺の最奥部、根本中堂横の駐車場に入った(¥500)。すでに車は満車に近く、山寺の人気のほどがうかがえる。

 
左:根本中堂 右:「閑けさや岩にしみいる蝉の声」の石碑

山の神も私も、連日の山登りで足がヨレていることもあり、山用のストックを持っていくことにした。当初は登山靴に履きかえることも考えていたが、登山靴で歩いている人なんていないだろうし、それより履きかえるのが面倒だ。そこまでしなくてもいいかとスニーカーでスタートする。

最初は根本中堂。もう目の前で何人も参拝し、記念撮影をしている。今日も暑くなりそうだから、われわれ同様、朝イチをねらって来ているのだろう。


奥の細道の道中を表した松尾芭蕉と弟子の曽良像

お目当ての一つだった芭蕉像はすぐに現れた。隣に弟子の曽良像もあったが、妙に離れて設置されていて、撮影するのに一苦労だった(上の写真)。このためなんだろうけど、通常ネットの山寺案内やガイドブックでは、芭蕉像だけが紹介されていることが多いようだ。

そしてかの有名な句が彫られた石碑が鎮座している。

閑けさや岩にしみいる蝉の声

実際に彼の地は蝉時雨だったが、人が多いだけに「閑けさや」という情感はどこかに行ってしまっていた。

 
左:山門。ここで拝観料を支払う 右:山門からの参道

まだ手持ち無沙汰気味の茶店を越えて進んでいくと、鐘楼、そしていよいよ山門が出てくる。山門で拝観料¥300を支払い、参道へ上がっていく。

 
左:姥堂 右:空也塔

思ったほど暑くないのは、参道の樹木が枝葉を繁らせ、直射日光を遮っているからか。まだ8:00過ぎということもあり、冷んやりとしていて快適だった。 

姥堂や石碑、石仏などを見ながら、階段を上がっていく。

 
左:階段はつづく 右:休憩ポイントのせみ塚

やがて石丈岩が目の前に現れ、しだいに山寺に来たという実感が湧いてくる。石丈岩の直下に来て、その岩の巨大さに圧倒されながら見上げていると、その手前にちんまりと棒状のものが立っているのに気づいた。それがせみ塚だった。地味すぎて見落とすところだった。ここはちょっとした広場になっていて、観光客の休憩ポイントになっている。

 
左:せみ塚の背後にそそりたつ石丈岩 右:弥陀洞の巨岩

せみ塚のすぐ先に弥陀洞(みだほら)がある。案内板によると、長い年月をかけて岩が侵食され、阿弥陀様の姿が形作られたとしていて、そのお姿が見える人には幸せが訪れるのだとか。少なくとも私にはそう見えなかったし、どうすれば、そう見えるのかは不明だった。 

 
左:かなり急な階段を上る 右:五大堂から胎内堂(立入禁止)を望む

急坂に付けられた階段を必死に上っていく。このときにはまだ序の口で、先が長いと思っていたのだが、じつはそうでもなかった。仁王門を過ぎるとゴールは近い。

すぐに左に分かれる道が出てきて、そのまま曲がると、開山堂そして五大堂にたどりついた(冒頭写真)。あっけなくも山寺の象徴、五大堂に着いてしまった。もっとずっとずっと高い場所にあって、そこまで上るには数々の艱難辛苦が待っているのだろうと勝手に思っていたのだが、まったくそんなことはなかった。


五大堂からの眺め。遠くは白く霞んでいた


山寺駅周辺を見下ろす

五大堂で周囲の景色を堪能したあとは、さらに奥の大仏殿へ向かった。天蓋をなしていた樹木がなくなり遮るもののない道は、ただただ暑いだけだ。容赦ない強い日差しを浴び、先ほどの冷んやり感はどこへやら、滂沱の汗に襲われる。 

 最奥部に位置する大仏殿

大仏殿はこれまた意外なほど地味だった。ご開帳もなく、拝むことすらできない。それから三重小塔というなぜか重要文化財であるちっぽけな模型のような塔を見て、山の神とすごすごと戻ることになった。この間気温はだいぶ上昇したようで、すれ違う観光客は皆汗だくだった。われわれは下りなので、まだましだ。最後は立石寺本坊から神楽岩横を通って、お土産店が軒を連ねる通りに出た。ガイドブックでは、全行程1時間半から2時間ほどと出ていたが、1時間くらいで巡ってしまった。香川のこんぴらさんの垂直拡大版のようなところかと期待を膨らませすぎたせいか、少々失望してしまった。その後茶店に寄って、水分補給。時間があるからと、前日天童の居酒屋で教えてもらった後藤美術館に足を延ばすことにした。

後藤美術館(大人¥800)は、バルビゾン派の絵画とアールヌーボーのガラス工芸が目玉のようだ。駐車場には何台か車があったが、客ではなくスタッフと業者の車だったようで、館内に客の姿はなかった。山の神と2人で貸切状態で見学する。説明文が古くて、アールヌーボーは今世紀はじめまで続いたみたいな記述があった。明らかに20世紀のときに書かれたものだ。いまどき宣伝もせず営業努力なしでよく運営できているなと、経営者のお金持ちぶりに驚かされた。とはいえ、空いているからゆっくり見られるし、そこそこの名品が展示されているので、見て損はない。アート好きの方は、山寺とセットでどうぞ。

不動の滝・三階の滝と遠刈田温泉へつづく
鳥海山・月山エピローグ~天童へ戻る

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鳥海山・月山エピローグ~天童へ

2018-09-05 | 山行~東北

 天童の居酒屋たまごへ

2019年8月14日(火) 月山下山後

月山から下山後、112号線をひたすら走って天童へ向かった。途中道の駅にしかわに寄ってみたら、すごかった。何がすごかったかといえば、暑さだ。車を降りると、湿気を含んだ、もあああという空気に包み込まれ、それだけで不快指数はうなぎのぼり。直射日光を浴びた駐車場は焼けるような暑さだった。小走りに建物のなかへ逃げる。冷房の効いた建物内は涼しいものの、疲労困憊の私はお土産を見る元気も余裕もない。ただただ疲れていた。山の神が元気よく、お土産を物色するかたわら、私は手持ちぶさたに座るところはないのかときょろきょろしているだけだった。

休憩らしい休憩にもならず、一路天童のビジネスホテル、天童セントラルホテルを目指す。最初は、月山下山後の宿は山形市内のビジネスホテルを探したのだが、どこも予約でいっぱいだった。代わりにここを見つけたのだが、意外に天童は山形市の隣で交通の便はいい。しかもこのホテルの隣にはコンビニがあって食糧調達にも便利。ということで例によって素泊まりにした。

16:30頃ホテル裏の駐車場に入り(この時点ではガラガラだったが、夜には満車。ホテル横のスペースにもぎっしり車が停められていた)、チェックイン。シャワーを浴びてさっぱりしてから、フロントで教えてもらった地元の居酒屋たまごに山の神とともに繰り出した。

のれんをくぐると、まだ18時くらいにも関わらず、すでにジモティのおじさん2人が生ビールを飲んでいた。お店は女将と若女将の2人で切り盛りしている。女将のほうにお座敷席に案内される。そしてすぐさま、われわれもジモティおじさんに負けじと生ビールで乾杯した。あっという間に飲み干してしまって2杯目へ。 お通しはポテトサラダで、がっつり食べられるほどのボリューム。店に張り出してあった謎のメニュー、長ねぎジョニーは気になって、すぐにオーダーした。ちぢみ風の卵料理だった。ほかにも、にら穂のおひたし(絶品!)、棒だらの煮付けなど、どれもおいしかった。

1時間もすると、ジモティたちで店はあふれ、山形弁が店内を支配していた。いつもにぎわう地元の人気店のようだ。天童の夜はふけていき、山の神とおなかいっぱいだと外に出たときには、月が出ていた。

 セントラルホテルでもらった簡易地図

「閑けさや岩にしみいる蝉の声」の山寺へ つづく
鳥海山・月山Part3~リフトを使って月山へ 戻る
鳥海山・月山Part2~鳥海山七高山へ 戻る
鳥海山・月山Part1~鳥海山舎利坂へ 戻る
鳥海山・月山プロローグ~鳥海山登山口へ 戻る 

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