目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

服部文祥真っ青のサバイバル生活~「猟師の肉は腐らない」

2015-03-29 | 山・ネイチャー・冒険・探検の本

 『猟師の肉は腐らない』小泉武夫(新潮社)

これは本当に小泉さんが体験した話なのだろうかというくらい現実離れした世界に感じられる。まるでフィクション、小説のようだ。主要登場人物の義(よ)っしゃんが実在の人物とは思えないほどキャラが立ち過ぎている。八溝&阿武隈(茨城・福島)のごっちゃ弁を操り、豪傑な猟師でありながら、非常に繊細な心の持ち主。そして脇を固める猟犬のクマがまた、人なつこくて、義っしゃんに忠実かつ勇敢で、つくってないかと思ってしまう。

小泉さんは、渋谷の居酒屋で知り合った義っしゃんとは赤い糸で結ばれているといってもいいくらい、行動パターンや関心分野が似ているようだ。マグロの買い付けにインドに行った義っしゃんとニアミスしているし、ギリシャではばったりと出会って酒を酌み交わしている。お互い底なしの酒豪で、酒には目がないところまで同じだ。よほど気があったのか、義っしゃんが出身地の八溝山中に引っ込んでから、小泉さんは家を訪ねていく。

まず衝撃を受けるのが、タクシーを拾って義っしゃんの住所を見せると、「ターザンとこに行ぐのか」といわれることだ。地元でターザンと呼ばれているという事実。木から木へと飛び移っていく人間離れしたあれを思い浮かべるのは私だけではないだろう。小泉さんは、くさやの干物と粕取焼酎を土産に持っていくのだが、まずこの取り合わせで身震いしてしまう。山中の家に到着すると、物語は加速度的に面白くなる。毎日山野を駆け巡り、自然の恵みを狩り、採取する。晩には、それを肴に歌も飛び出す大酒盛りだ。クマがとってきた野うさぎを食い、川で取ったどうじょうを食い、近所から借りてきたヤギの乳を飲み、イノシシを食い、セミを食い、蜂の子を食い、赤ガエルを食いと、野趣あふれる料理が次々に登場する。

そうした食材をゲットしてくるシーンは非常に興味深い。セミを取るときは、棒切れで、渾身の力を振り絞って木をたたく。木に止まっていたセミたちは脳震盪を起こして、バラバラと落下してくる。蜂の巣探しには、赤ガエルを蜂のエサに使い一工夫する。小さく刻んだ赤ガエルの肉片に絹糸をくっつけておく。蜂がエサを抱えて飛び立つと、軽い絹糸もいっしょにふわりと舞い上がり、下に長く垂れる。その糸を目印にひたすら追いかけて巣を探し当てるのだ。

ただ楽しい話ばかりではなく、自然の厳しさも綴られている。どじょう取りのときには、毒蛇のヤマガカシに咬まれる。患部の血を吸い出して、歯糞を塗り、おしっこをかける。これが毒消しになる適切な処置なのだ。ヤマガカシに咬まれた同じ日に、今度はまるで棒で突然殴られたような衝撃を味わうのだが、これは地蜂に刺されたのだった。

巻末には、30貫目もある巨大イノシシが登場し、クマが負傷する。義っしゃんとクマがその巨大イノシシと死闘を繰り広げクライマックスを迎える。読後感は、爽快。ちょっとほろりともさせられる。 

参考:サバイバル~服部文祥の世界
http://blog.goo.ne.jp/aim1122/e/3584f7a1a2c26f1c7ce4530134acf60a

猟師の肉は腐らない
小泉 武夫
新潮社
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くさ~、下山後の匂い

2015-03-24 | 山雑記

先日会社からの帰宅途中、電車に乗っていたときのことだ。乗って一駅目で目の前に座っていた女子が降りていった。ラッキーと思って、その席に座ると、隣のおばさんが、「くさ~」という。自分のことか、いやそんなはずは……。しかし、繰り返し「くさ~」といって、これ見よがしに鼻をつまんでいる。アラフィフのおやじだから、加齢臭でもするのかと、自覚症状のないままに気になっていたが、当のおばちゃんは、前かがみになっておもむろにバッグから本を取り出し、本でパタパタ仰ぎながら、こちらの顔を覗き込む。そのときバチバチと視線が交わってわかった。目が逝っている。脳が壊れている人だった。

そんな「くさ~」事件で思い出したのが、旭川喫茶店事件。90年代に層雲峡から入山し、トムラウシまで大雪山系を縦走したことがある。1日雨で停滞し、4泊5日の行程だった。車を旭川市内の無料の公園駐車場に停めたままにし、バスで移動し山歩きをしていた。下山したら、いつもなら真っ先に風呂に浸かっていたのだが、このときは、なぜかそうせずにまっすぐ放置していた車のところに戻った。ザックを車に積んで、近くにあった喫茶店に入った。行ったのは夏場だったのだが、この年は異常気象で、エアコンいらずの北海道がムシまくっていて、連日30度を超えていた。この日も30度を超えていたはずだ。店内に入ると、ウエイターがすぐに来ない。奥に姿が見えているのに、一向に来る気配がない。ジモティの常連以外は受け入れない店なのか? 歓迎されざる客なのか? などとこのときは思ったし、しばらくずっとそう思っていた。

しかし、あるとき山の神と話していた気づいた。

旭川喫茶店事件は、そう、お察しのとおり、私が臭すぎて、ウェイターがしばらく来なかったのだ。毎日汗だくで歩いていたから、レゲエのおじさん並に相当きつい匂いになっていたのだろう。ただそんな激臭は、自分ではわからないんだよねえ。皆さんも下界に下りたら、自分が相当臭いという自覚をもちましょう。ただちに風呂に入ることです!

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『アルピニズムと死』

2015-03-20 | 山・ネイチャー・冒険・探検の本

 『アルピニズムと死 僕が登り続けてこられた理由』山野井泰史(ヤマケイ新書)

先鋭的な登攀を繰り返し、常に死と隣り合わせに生きてきた男の歩みである。20代の若かりし頃のインタビューも併載されていて、当時の矢沢永吉ばりのトンガリぶりが面白い。年齢とともに人間、枯淡の境地を身につけるもので、山野井氏もトンガっていた頃の発言に冷や汗が出ていることだろう。

ところで、山野井氏をはじめとする垂直志向の人の好きな山というのは、私たち常人には想像がまったく及ばない山ばかりで、なんでと思ってしまうのだが、彼の場合は、「アルピニズム=挑戦」、山頂を攻略するという思いがあるようだ。山に登ろうという動機付けがそもそも私のような軟弱登山者とは違う。

山野井氏の好きな山をちょっと抜粋してみよう。
●どっしりとした重量感のある山
 甲斐駒、モン・ブラン、ブロードピーク、チョ・オユー、マカルー、K2、ギャチュン・カン
●ペンのように鋭く尖った山
 ドリュ、マッターホルン、フィッツ・ロイ、アマ・ダブラム、ガッシャーⅣ、レディースフィンガー、西上州一本岩
●巨大な手掛かりの少ないスラブ
 穂高屏風岩、ハーフドーム、エル・キャピタン、トール、ポタラ
●エレガントな氷の筋
 烏帽子大氷柱、錫状1ルンゼ、ベン・ネビス

奥さんとの生還劇を果たした、あのギャチュン・カンも入っていて驚かされる。凍傷で指を失っても、とことんやるのが山野井流。年を重ねても、まだまだ彼の挑戦は続くのだろう。

本書にはギャチュン・カン以外にも、雪崩からの生還劇や、ニュースで話題にもなった奥多摩で熊に襲われた事件についても触れている。何が起きても前向きな彼の姿勢には驚かされる。

アルピニズムと死 僕が登り続けてこられた理由 YS001 (ヤマケイ新書)
クリエーター情報なし
山と渓谷社

 

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北欧ラップランドのトレッキング『北緯66.6°』

2015-03-15 | 山・ネイチャー・冒険・探検の本

 『北緯66.6° 北欧ラップランド歩き旅』森山伸也(本の雑誌社)

フィンランド、ノルウェー、スウェーデンにまたがるラップランド単独行550キロの紀行文だ。トナカイと戯れながら、ひたすらツンドラ地帯を歩く。そこにはアルプスの少女ハイジの世界を彷彿とさせる風景があった。

ちょっとした山登りあり、湿原地帯や草原歩きあり、川の渡渉あり、ボートでの湖水渡りありで、バリエーションに富んだ道行きになる。天候さえよければ、カバー写真のように気分爽快なトレッキングになる。こんな山歩きは理想的だが、当然ながらいいことづくめではない。個体数は少ないが、ブラックベアーやブラウンベアーがいるし、著者が「スポンジ跳び箱」と呼ぶ凸凹の連続地帯があり、登ったり下りたりの繰り返しを強いられる。なぜそんな凸凹ができるかといえば、ツンドラの凍結していた水分が気温の上昇とともに解けるからだ。そんな足場の悪い場所を進めば、問答無用で体力は消耗する。加えて水のあるところには、日本の3倍くらいの大きな蚊が棲息している。ふだんはトナカイを狙っている蚊だが、人間がやってくれば襲いかかってくる。それに雲が沸いてくると、氷河をなめてくる偏西風によって夏でも雪になる。それだけ北緯66.6°の自然環境は厳しいのだ。

でも読んでいると、楽しさだけが伝わってくる。自然に身を投げ出して自由を満喫している感覚がストレートに伝わってくる。たとえば、日本とは異なり、テントはどこにでも、好きな場所に張れる。そして地衣類(コケ)の上に張ったテントの寝心地のよさ。ふかふかしていて、ちょうどいいクッションになるといううらやましい話が出てくる。しかもテントからは神々しい日の出を拝める。ブルーベリーやクラウドベリーの群落を見つければ、食べ放題というのも魅力的だ。またフライフィッシャーや同じトレイルをたどるトレッカーたちとの出会いがまた楽しさを倍増させる。

読んでいくほどに、行ってみたくなるラップランド。彼のように長期間歩こうとは思わないが、4,5日程度でお気楽に歩いてみたいものだ。

北緯66.6°
クリエーター情報なし
本の雑誌社
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浅間嶺

2015-03-07 | 山行~奥多摩・奥武蔵

標高 903m 東京都

2007年4月29日(日) 晴れ

メンバー 山の神と私

コースタイム 7:35払沢の滝入口駐車場7:45--8:28時坂峠8:38--9:50浅間嶺山頂(昼食)11:05--12:45払沢の滝--13:10駐車場

家で朝食をとり6:10頃出発した。途中ガソリンを入れ、コンビニで買出しをし、払沢の滝入口の駐車場には7:35に到着した、と車を停めたときには思ったのだが、手前の茶屋の駐車場だった。歩き出してすぐに本当の払沢の滝入口の駐車場(トイレあり)が現れてわかった。あれれ。

払沢の滝入口の駐車場は、比較的広く何台も停められる。ただ行楽シーズンは、満車になるのだろうけど。

 
左:払沢の滝入口駐車場。奥にもっとスペースが 右:関東ふれあいの道の道標

駐車場には何台か先着様がいた。天気もいいから、われわれ同様浅間嶺か、あるいは反対側の山か、もしかしたら釣りの人もいるのかもしれない。

 
左:山桜が見事 右:明るい気持ちのいい登山道

歩き始めたばっかりなのに、山の神も私ももう疲れたといいながらゆっくり歩いて、8:28時坂峠に到着する。「浅間尾根道」と書かれた解説板があった。「浅間(せんげん)」という名称は富士山が見られるところにつけられていると書かれていて、この尾根もところどころで富士山が見られますとのことだった。

峠で10分ほど休んで、舗装された林道に入る。そのうち茶屋が現れ、再び登山道へ。進んでいくと奥のほうにもまた茶屋があり、さらにもう1軒、全部で3軒も茶屋があった。それだけ行楽シーズンは客が来るということか。

杉林を抜けると、新緑がまぶしい雑木林に入った。


浅間嶺からの富士山

9:50浅間嶺の山頂に到着した。手前の展望台では、巨大なアンテナを立てて、無線を楽しんでいる人がいた。常連さんなのだろうか。会話は滞ることなく、その方の声が山頂を領していた。時間がまだ早いせいか山頂はがらんとしていて、無線の人ともう1グループしかいなかった。山の神と私は重い腰をどっしりと下ろして、早くも昼食にすることにした。遠くには真っ白な富士山が頭を覗かせていた。

 
左2点:山頂にて 右:つつじも咲いていた

長々と休憩して11:05下山開始。ちょうど昼時にさしかかり、続々と登山者が上がってくる。山の神と私はそそくさと東屋側に下り、払沢の滝へ向かった。

滝が目の前に現れると、意外にもそれほどビッグスケールではなかった。いつも勝手な想像をして現物を見て落胆するのだが、今回もそうだった。まあ、でもこんなものか。滝周辺には、大勢の観光客やカップルがいて、マイナスイオン浴。

 マイナスイオンいっぱいの払沢の滝

13:10駐車場に戻り、早々に帰途についた。家に帰りこの日の午後はのんびりした。こんな昼下がりの過ごし方もいいものだ。晩は何かガッツりと食べたいねと、山の神と近所の焼肉屋に繰り出した。

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