目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

アカデミー賞受賞作『フリーソロ』を観る

2019-09-16 | テレビ・映画

話題の映画『フリーソロ』を山の神と観にいった。夫婦50割というのが適用されて安く観られたのはありがたい。

以前このブログでもとりあげた、ヨセミテの大岩壁エル・キャピタン(El Capitan)をフリーソロ(クライミングロープをはじめ登攀用具を使わず、しかもパートナーなしに単独で登ること)で登った男アレックス・ホノルド(Alex Honnold)に密着したドキュメンタリー映画だ。監督&プロデュースは、エリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィ(Elizabeth Chai Vasarhelyi)とジミー・チン(Jimmy Chin)の夫婦コンビ。ジミー・チンはナショジオでおなじみの山岳カメラマンでこの映画では撮影監督も務め、本編にも登場している。

映画は、まずアレックス・ホノルドがフリーソロで有名になるまでの生い立ちをたどる。一人でいるのが好きな、ちょっとネクラでオタクな子どもがはまったのがクライミング。やがてフリーソロのとりこになり、数々の成功を専門誌でとり上げられ有名になる。それとともにラジオ出演や学校で講演をするようになり、社交的な人間に変貌していく。

カメラは、エル・キャピタンに畏怖を感じながらも、魅せられていくアレックスの姿を追いかける。登ってみたいが、いざ実際に登ることを考えると怖いというアレックス。けれど、彼の脳をCTスキャンにかけて判明したのだが、なんと恐怖を感じる脳の部位、扁桃体が普通の人に比べて活性化していないというのだ。つまり恐怖を感じにくい。それは壁にとりつき登攀を続けるアレックスを見ていると、さもありなんと納得できる。足もすくむ高度でわずかな突起に足をかけ、3本の指で壁のへこみにつかまる。挙句は空手の蹴りのように垂直に足をだし、突っ張り棒代わりにする。この大胆さは尋常ではない。

フリーソロ、それはアレックスにとって自然との一体感、あるいは解放感、完登したときの達成感と高揚感、さまざまなものを一度に得られる至福の行為のようだ。ただ、家族をはじめ周囲の者には、受け入れがたいのも事実。アレックスの母親はインタビューで当然のごとく息子はフリーソロでいきいきしているけれども、続けるのは反対している。講演で知り合ったというとっても明るいアレックスのパートナー、サンニ・マッカンドレスは、エル・キャピタンのときには、まさかの事態が脳裏に浮かび、いてもたってもいられない状態だったと告白している。

周囲の人間の心にさざなみを立てるのがフリーソロ。ベテランクライマーのトミー・コールドウェル(Tommy Caldwell)も登場し、アレックスの練習をサポートするとともに、サンニの存在を危ぶみ、アドバイスを送る。エル・キャピタンをやるには、心に鎧が必要。今は鎧をはがされていると暗にいう。

一方でジミー・チンは、撮影することの心理的プレッシャーを危惧し、アレックスが望めば、撮影は控えると言い出す。たしかに撮られていること、人に見られていることはプレッシャーにつながり、登攀中の力み、緊張につながる可能性はある。

それでもアレックス・ホノルドは撮影を受け入れ、2017年6月3日、神がかった集中力で壁を完登した。

ちなみにアレックスの偉業は当然たたえるべきものだが、撮影もすごかった。アクロバティックなカメラワークはジミー・チンならでは。ざまざまな技術を駆使し、また工夫を凝らしての現場だったようだ。

とにかくこの映画のクライミングの迫力は必見。お見逃しなく!

参考:当ブログフリーソロで絶壁900メートルを登った男「ナショジオ」2019年3月号
ナショジオhttps://www.nationalgeographic.com/search?q=alex honnold
『フリーソロ』公式サイトhttp://freesolo-jp.com/


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