目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

剣山・三嶺Part1~白髪避難小屋まで

2016-05-29 | 山行~中国・四国地方

剣山 標高 1955m 次郎笈(じろうぎゅう) 1930m 丸石 1684.7m 高ノ瀬(こうのせ) 1741m 三嶺(みうね) 1893.6m 徳島県・高知県

2016年5月5日(木・祝) 晴れながらも強風
5月6日(金) くもり一時雨 |

メンバー 山の神と私

コースタイム 5月5日 見ノ越7:03--7:52リフト西島駅7:57--大剣神社--8:37剣山山頂--8:59大剣神社分岐9:06--9:37次郎笈9:41--10:35丸石10:46--丸石避難小屋--11:34休憩11:40--12:05高ノ瀬--12:34中東山分岐の先、巨岩(昼食)13:00--14:07白髪避難小屋14:14--15:01カヤハゲ(東熊山)15:06--16:00三嶺山頂16:04--16:20三嶺小屋(泊)

5月6日 三嶺小屋5:35--水場分岐--6:48休憩6:54--7:34名頃

出発直前5月3日時点では、車を見ノ越に置いてバスで名頃へ移動。そこから三嶺に登って小屋泊、翌日に剣山まで縦走というコースを予定していた。しかし6日から天候が崩れるという天気予報に接し、逆コースを選択。5日がハードスケジュールとなった。このとき問題になったのは、どこに泊まるかだった。結果は実際歩いてみて、決めようとなった。くたくただったら白髪避難小屋に泊まり、余力があったら三嶺小屋まで行こうと。

 
左:見ノ越駐車場。左端はトイレ 右:登山口の大剣神社鳥居

前泊は徳島市内のビジネスホテルアルファホテル徳島。すでに前日夜にコンビニで買出しを済ませ、4:30にはホテルをチェックアウトした。早朝のほとんど交通量のない道をひたすら剣山の登山口である見ノ越を目指して走る。市街地からすぐに細いクネクネ道に入り、ずっとこのままかと思っていると、突然2車線の広い道や、集落に出てびっくりしながらも、どんどん山中奥深くに分け入っていく。最後は山肌を縫うようなすごい道になり、6:23ようやく見ノ越の駐車場に到着した。

ここで朝食をとり、7:03身支度を済ませ、山の神とともに駐車場を後にした。ほぼ計画どおりの時間ではあったが、少しでも遅れると、三嶺まではたどりつけなくなる、けっこうパツパツのスケジュール。休憩時間を極力短くして進もうと山の神と確認しながらの緊張感のあるスタートになった。


西島キャンプ場から三嶺を望む

大剣神社の鳥居をくぐって、登高が始まる。リフトを横切った頃から、続々と登山者とすれ違う。雲海荘や剣山頂上ヒュッテに宿泊していたのだろうか。ひっきりなしにやってくる登山者に、昨晩の宿泊者の多さがわかる。

やがて2,3張りのテントが見えてきて、リフトの西島駅直下の西島キャンプ場に到着。はるかかなたには三嶺が見えていた。私が山の神にそう告げると、山の神はぼそりといった。あれは、三嶺じゃないんじゃ。近すぎるよ。あれが三嶺なら楽勝だ。もちろん、事実誤認で、山の神自身がそれを思い知ることになる。


大剣神社上部の奇岩

西島駅近辺で少し休憩をとり、大剣神社へと進む。大剣神社からは、お隣の次郎笈がよく見える。

 
左:剣山頂上ヒュッテへの道 右:早朝走り抜けてきた国道438号は、この谷筋と向かって左側の山の中腹につけられている

最後のひと登り。雲海荘、そして剣山頂上ヒュッテと建物を縫って歩き、階段を上がると、もうそこは剣山山頂の草原だ。

 
左:剣山頂上ヒュッテの屋根が連なる 右:奥が剣山頂上

道々、山の神と今日は風が強いなと話していたのだが、剣山の山頂からは、まったく遮るものなしで、まともに風を全身に受けるようになった。写真からはその状況をまったく読み取れないが、信じられないくらいの強い風だった。山の神が得た情報によれば、徳島県には強風注意報だか、警報だかが出ていたようだ。


剣山から次郎笈への美しい稜線

8:37剣山山頂に到着(冒頭写真)。あまりの風に、ここで休憩するのはやめ、早々に次郎笈への稜線をたどり始める。剣山と次郎笈はセットで登る人も多いようで、稜線には点々と登山者の姿が見えた。

 
左:次郎笈頂上 右:丸石へと続く道

先ほどの大剣神社へ戻る登山道と合わさる地点で小休止をし、その後一気に次郎笈へ上がった。剣山と指呼の間ほどの距離だから、こちらも強風が吹き荒れている。山頂には9:37到着。吹きさらしの山頂には1人しかいなくて、ほかの登山者は、風を避けて東の肩寄りで休憩していた。

9:41山の神とまずまずのペースで来ていると確認し、次郎笈を下り始めた。

 
左:PM2.5でも飛んでくるのか?枯れ木群 右:丸石頂上

風は容赦なくほぼ間断なく、山の神と私に襲いかかった。私はキャップをかぶっていて、飛ばされないように時折頭を押さえていたが、あるところからもうダメだと懐に入れて歩いていた。風が凪いでいれば、本当に気持ちのいい稜線歩きなんだろうに。この強風のせいか、前も後ろも登山者はゼロ。しばらくすれ違う人はなかった。

10:35丸石に到着。背後から声が聞こえてくると思ったら、なんと家族連れだった。ものすごいハイペースで、風を避けるためか、3人がほぼくっついて連結した電車のように歩いてくる。さらに荷物を少なくして、スピードアップを図っているようだった。あのくらいのペースで歩けると、この後の行程が楽になるのだろうけど、強風でだいぶ体力を奪われ、この先が思いやられると、このときすでに感じていた。

 
左:樹林帯歩きも 右:丸石避難小屋

丸石からなだらかな稜線歩きが続く。そのうちまだ新緑にはほど遠い樹林帯に入る。一人お食事中の方がいた丸石避難小屋を通過していくと、つつじが咲き誇っている場所に出た。あちこちで花を咲かせていて壮観だ。

 
左:つつじが見事に満開 右:岩場を越える山の神

11:34汗をかいて暑いなとレイヤー調整。水分補給もして少し生き返る。歩き出すと、ちょっとした岩場もあって、意外にバリエーションに富んでいることがわかる。

 
左:高ノ瀬への最後の上り 右:高ノ瀬山頂

草原の山、高ノ瀬(こうのせ)の山頂が見えてきて、さあ、ここでお昼にしようかと山の神にいうと、ここは風が強いから嫌だとあっさり拒否された。たしかに居心地はよくない。


剣山の別称は太郎笈、寄り添うように隣に次郎笈が鎮座している

しばらく歩いて視線を左後方に向けると、ど~んと剣山と次郎笈がまるで双耳峰のように見えていた。なるほど、剣山の別称が太郎笈というのは、わかるな。

 
左:草原の道は続く 右:白髪避難小屋

中東山(なかひがしやま)分岐を越え、ちょうど風をやり過ごせる巨岩が出てきた。しめしめここならばと、山の神とお弁当を広げた。時計はもう12:30を回っている。少しでも早く先へ進もうと、火は使わずに簡単に昼食を済ませる。

13:00腰を上げ、弱まることのない強風との格闘がまた始まった。やがて樹林帯に突入し、山の神がバテ気味でペースダウンしているので、ふと立ち止まると、登山道からはずれた場所で、こんな時間にお茶(昼食?)という夫婦を見かけた。その先では、足をつったという御仁が休憩していた。彼らとは、その後2,3度言葉を交わすことになる。

14:07白髪避難小屋に到着した。笹原のなかの見晴らしのいい場所にある小屋で、テント場もある。さて、進むべきか、ここで停滞すべきか、休憩しながら、山の神と相談した。

Part2三嶺&下山へつづく
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剣山・三嶺~プロローグ徳島入り&眉山

2016-05-21 | まち歩き

眉山(びざん) 標高 290m 徳島県

2016年5月4日(水・祝) 晴れ

メンバー 山の神と私

2016年のゴールデンウィークは、はやばやと四国行きを決めていた。山の神がまだ四国に行ったことがないというのが決め手。すんなりと、行くことは決まったのだが、百名山の剣山や石鎚山には行かないと山の神はいう。石鎚は、すでに私は登っていて、鎖場オンパレードの修験道だと話してしまっていたから、仕方ないとして、剣山はなぜ? そう、名前がよくなかった。その名前から真っ先に思い浮かべるのは、北アルプスの剱岳。カニの横這いに縦這い、垂直に切り立った岩壁が脳裏をよぎる。山の神は、最初から険しい岩峰と決めてかかっていた。そんなことはなく、剣山と二百名山の三嶺(みうね)をセットにして歩けば、気持ちのいい笹原の稜線を歩けるのだというと、目が輝きだして、「行こう!」となった。

早朝4:30自宅を出発した。高速に上がると、まだ暗いながらも、交通量はそれなりにあった。これぞゴールデンウィークだ。そのうちポツリポツリと降っていた雨が土砂降りになる。山の神によると、この時警報が出ていたようだ。その後富士川SAで朝食をとり、 サクサクと順調に進む。しかし予想したとおり伊勢湾岸道路に入ると、交通量がグッと増え、渋滞とまではいかないまでも、一気にスピードダウンとなった。そこから東名阪、新名神を走り、大阪へ入る。そしてとうとう阪神高速でベタベタの渋滞にはまった。だいぶ忍耐力を試されたが、昼ごろには無事解放され、京橋PAに滑り込んで昼食。和風ハンバーグを食べながら、「るるぶ」を開いて、淡路島で目星をつけていたパワースポット、伊弉諾(いざなぎ)神宮へ向かうことにした。

 
左:伊弉諾神宮の参道 右:境内にある夫婦大楠

明石海峡大橋を渡り、淡路島に入る。最初のICの下り口に長い車列ができていて、関西からのレジャー客の多さにのけぞったものの、どうせここだけだろうとタカをくくっていた。ところが、全然そんなことはなく、島中央付近の津名一宮ICで下りると、そこにも車列ができていた。さらには伊弉諾(いざなぎ)神宮へ到着すると、すごい人出で、駐車場に入れずに待つことになった。

やっと順番になって駐車し、山の神としずしずと参道を進んだ。「るるぶ」に出ていたお目当ての夫婦大楠(めおとおおぐす)は、本殿向かって右側にあった。樹齢900年を数える巨木で、幹の太さもすごいが、見上げると大振りな枝を四方に伸ばしている。この巨木はあちこちにとり上げられているようで、人だかりができており、皆写真を撮っていた。幹をなでて、ご利益を願いながら、神宮を後にした。

 
左:La Uhbe ラウーベ 右:眉山ロープウェイの中で、山の神と

このまま徳島に向かうと時間をもてあましそうだから、淡路島のどこかでお茶しようとなる。また「るるぶ」をめくって、これだとラウーベへ向かう。そのカフェは、山道の坂の途中にあった。駐車場が店の反対側にあってわかりにくいのが玉に瑕だが、外観、店内はおしゃれな感じで、居心地がいい。山の神と外のテーブルをチョイスし、ワンちゃんの隣の席を占めた。外だったらペットOKの店なのだ。ケーキセット¥800をオーダーし、しばらくここでくつろいだ。

17:00頃徳島市内に移動し、アルファホテル徳島にチェックイン。当初はまったく興味のなかった眉山が目の前に存在感たっぷりに鎮座していた。急に行ってみたくなって、フロントでロープウェイは何時までやっているのかと聞いてみると、この時期はナイターで営業しているという。それならばと、荷を解くやいなや山の神と出発した。

 眉山山頂にあるストゥーパ

眉山ロープウェイはちょうどナイターに切り替わる時間で、うれしいことに料金も割安になった(往復¥610)。高度をぐんぐん上げて山頂駅に到着。展望台には大勢の人が思い思いに憩っていた。そこからは市街、吉野川、淡路島などを見渡せる。

ストゥーパに移動すると、そこにも大勢の人。カップルからジモティ、観光客、近くにあるかんぽの宿から散策してきたらしい集団などがひしめいていた。

やがて日が傾き、夕焼けになった。さあ、腹も減ったことだし、早く下りてメシだと、山の神とそそくさと繁華街に向かうことにした。ぶらぶら歩いていくと、ホテルでもらったチラシに出ていた「赤おに」の店名が目に飛び込んできた。店を覗くと、カウンターだけかと思いきや、鬼の隠れ家と書かれた裏口から座敷に通される。しゃれた趣向で楽しくなる。そこで徳島の焼酎と海鮮料理に舌鼓を打ち、たらふく食べて大満足。さあ、明日は剣山に向けて出発だ。

剣山・三嶺Part1~白髪避難小屋までへつづく
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嵐から大野山

2016-05-15 | 山行~丹沢・道志

大野山 標高 723.1m 神奈川県

2016年5月1日(日) 晴れ

メンバー 山の神と私

コースタイム 9:42 JR御殿場線谷峨駅9:54--嵐--10:48東屋11:00--11:35大野山山頂(昼食)12:10--地蔵岩コース--13:45カフェ・リーフス(ティータイム)14:10頃--14:40山北駅

花粉最盛期に山登りを避けていた山の神も、少し足慣らしをして、ゴールデンウィーク後半の四国・剣山行きに備えることになった。山の神は、最初奥多摩の丘陵歩きといっていたのだが、コースタイムをみると、やけに短い。これでは足慣らしにならない。私はここのところ連続して丹沢を訪れていたこともあり、丹沢に行こうと提案した。地図を眺めていると、ちょうど10年前に訪れていた大野山が目に付いた。長くもなく、極端に短くもない。ただ前回と同じコースをトレースするのはつまらない。今回は逆回りで登ることにし、急遽計画書をつくった。

さて、当日は自宅で朝食をとり、珍しく計画どおりの7:25に出発した。電車山行だから、遅れてはいけないと気合が入っている。駅に向かう途中のコンビニで買出しをし、電車に乗り込んだ。小田急の新松田駅で下りて、JRに乗り換えようと、松田駅に向かうと、なつかしのマニラ食堂があった。山の神も激しく反応する。山のぼらーは何度も来る場所だからねえ。

 
左:谷峨駅にあった藤棚。座っているのは、地図チェック中の山の神 右:田んぼの中へ移動中

JR松田駅から御殿場線で谷峨駅へ。電車は定刻通りに到着し、乗客がぞろぞろと降りる。皆大野山ハイキングのようで、その多さに驚かされる。トイレに寄る人、すぐに出発する人、バスを待つ人、とにかくすごい人だ。天気は快晴で、まさにハイキング日和!

いろいろなグループが続々と出発していく中、山の神と私も駅を後にした。前方には年配の夫婦と、20代の男ばかりのグループが歩いている。しばらくは舗装された車道歩きだ。田んぼ奥の橋を渡って、山の斜面につけられた道をえっちらおっちらと。やがて民家が出てきて、登山道に分け入る。

 
左:東屋でひと休み。手前の箱には、手作りジャムが 右:草地を登高中

新緑がまぶしい森の中を進んでいく。再び車道に出て少し歩くと、立派な公衆トイレが出てきた。この辺りまで来ると、ハイカーの姿が多く目につくようになる。

そろそろ休憩したいなと思った頃、10:48東屋が現れた。渡りに舟とはまさにこのこと。傍らにあった白い発泡スチロールの箱には自家製ジャムが入っていて、無人販売していた。山の神がほしいといいながら、いくつか手にとっていた。そういや今朝の朝食のジャムは、これだったのかもしれない。 


うっすらと富士山

東屋からは一気に急登になり、樹木のない草地になる。照りつける日差しもなんのその、ジグザグにつけられた登山道を上がっていく。見晴らしは、高度を稼ぐほどにどんどんよくなり、時折振り返っては、山の神といいねえとほくそえむ。かなたに富士山がうすぼんやりと浮かんでいた。


最後のひと登り

登り切ると、見覚えのある場所に出た。ただ前回訪れた10年前とは異なり、フェンスで囲われていてまっすぐは進めず、迂回路がつけられていた(写真左下)。

 
左:山頂へは横移動の迂回路 右:大野山山頂

大野山山頂には、11:35到着した。そこにも、ここにも、向こうにも、人、人、人……。ゴールデンウィークだけのことはある。山の神と唯一空いていた、少し傷んだベンチに座り、昼食にした。

 
左:ワンタンはるさめスープに煮卵を投入 右:ハイカーで賑わう大野山山頂

コンビニで見つけて買った煮卵を山の神と分け、私はワンタンはるさめスープに入れてみた。ちょっといつもと違う味わいで気分も変わる。

 
左:下山路は延々階段 右:至るところにシャガの群落

山頂は相変わらず賑わっていたが、早くも帰りの電車が気になりだし、12:10山の神と早々に腰を上げた。下山路にとった地蔵岩コースは、10年前とは登山道の様相が一変していて、階段が延々と設置されていた。

そのうち野鳥がさえずる山中に入り、しばらくして車道に出る。

 
左:民家に見事なツツジが 右:白い藤の花を発見

上り時にも見たシャガの群落がこちらの道にもあった。民家が出てくると、今度はつつじが咲き誇っていて、目を楽しませてくれる。珍しい白い藤の花も登場して、圧巻だ。思わず写真を撮ってしまった(写真右上)。

その後大きな車道に出て、東名高速をくぐったものの、いつまでもあの喫茶店が出てこない。あれ、おかしい、この道でいいのかと、地図を出して確認する始末だ。後ろを振り返ると、ハイカーがどんどん来ているから、間違いではなさそうだと安心する。

 カフェ・リーフスでシフォンケーキを食べる

車がびゅんびゅん行き交う車道をしばらく歩いて、10年前に入り損ねた、あの喫茶店「カフェ・リーフス」をようやく見つけた。これは入らねばと、階段を上がって、ログハウスふうの店内へ。なかなかおしゃれなお店だ。シフォンケーキとアイスコーヒーを頼んで¥800。おいしいけれど、もう少しボリュームがあってもいいなと思いつつ、時計を気にする。いつまでもくつろいでいたい山の神を急かして、お店を出る。所要30分くらいで山北駅に着いた。

電車は、ラッキーなことにほとんど座って帰ることができた。当然ながら、まぶたがくっつくのだが、自宅最寄駅では目がぱっちり。飲むには、まだ時間がちょっと早いがいいかと、山の神と餃子をつまみにビールで乾杯した。 

参考:当ブログ絵に描いたような牧場と大野山(2006/3/21)

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山手線の怪

2016-05-03 | 山雑記

つい先ごろ、『山怪』というベストセラー本を読んだ。読むまでは、実際にあった怖い話をたくさん味わえるだろうと、いやが上にも期待感が高まっていた。もちろん、このブログでとり上げようと思っていたのだが、読了して気が変わった。狐火や人魂の類がやたら多く、短い目撃談を何の検証もなく(なくてもいいのかもしれないが)、書き連ねてしまっているから、なにか同じ話が連続して出てきているような錯覚にとらわれたのだ。冗長な感じがして、だいぶしらけた気分になってしまった。狐にばかされた話まで出てきて、さらにボルテージは下がった。また著者がこれらすべてのケースを、心底事実であると信じているような書きっぷりもまったく賛同できなかった。

極めつけは、不思議でもなんでもないカーナビの怪異話(?)が何話か挿入されていたこと。決定的にこの本を評価できないという思いに至った。カーナビにしたがって、車を走らせたら、山の奥深くに誘導されそうになったというのだが、たんに精度が低く、低機能な旧式カーナビというだけでしょう。私の車にデフォルトで付いているカーナビも似たようなものなので、まったく不思議ではない。

注:ここから先は、完全なネタばらし

唯一すごかったのは、白山の山小屋のエピソード。話はこうだ。登山道整備の作業員たちがその日の仕事を終えて、今宵の宿となる山小屋に向かう。徐々に悪天になっていく中、山小屋にたどりつくと、なんと扉が開かない。なんとか強引にこじ開けて中に入り、助かったと腰を落ち着けてご飯を食べ始めるのだが、やがて鈴のような音が近づいてくることに気づく。雨風でよく聞き取れないが、近づくにつれ、それは修験者や修行僧が使う錫杖だと判明する。近づいてきた錫杖の音は、山小屋の前でぴたりと止まる。中に入れてあげればいいものを、作業員のなかでだれも立ち上がるものはない。すると、錫杖の音が小屋の周りをぐるぐるとまわりだした。作業員たちが硬直していると、ふいに音が途切れ、立ち止まったのかと思いきや、今度は屋根をどんどん激しく踏みつける音とともに錫杖の音が鳴り響く。作業員たちが凍り付いていると、突然、あの固く閉じていたはずの山小屋の扉がバーンと開いた。恐怖と勢いよく吹き込む雨風で誰も顔を上げることができなかったという。

読んでいるときはスリリングで、かなり怖かった。しかしこれって、鈴をつけた飼い猫かもなと後から思ったりした。

前フリが異常に長くなってしまったが、こんな読書体験をしたせいか、山手線で見てしまったものは、本当にこの世のものなのか、自分を信じられなくなってしまった。それを見たのは、5/2(月)である。連休の狭間の出勤日で、有給をとっている人や会社自体がお休みの人もいて、車内はけっこう空いていた。某ターミナル駅で、山手線の車両に乗り込み、優先席付近のつり革につかまった。すると、隣の車両からわざわざ扉を開けて、こちらに移動してくる人がいた。移動してもどうせ座れないよと思っていると、後ろを通る気配がない。あれっと思って振り返ると、車両の連結のところに20代と見える女性が立っていた。なんでそんなところにいるのだろう。

それから何駅か通過し、優先席に座っていた乗客が一人降りた。私は次で降りるので、今さら座るつもりはない。そういえば、さっきの女性は座らないのかと、振り返ると、異様な姿が目に入った。ちょうど連結部のヒダヒダのところに体をすっぽり埋め込んで、顔を伏せ、膝を抱えていた。状況から見て、明らかに先ほどの女性だ。一瞬見てはいけないものを見たような気がした。そして次の瞬間こう思った。この姿は、私以外の人にもちゃんと見えているのだろうか。こんな疑念をもったのは、この『山怪』のせいかもしれない。

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