アジアと小松

アジアの人々との友好関係を築くために、日本の戦争責任と小松基地の問題について発信します。
小松基地問題研究会

『東京裁判 性暴力関係資料』(案内と目次)

2015年08月14日 | 日本軍性暴力関係原資料
       『東京裁判 性暴力関係資料』(案内と目次)
                      (吉見義明監修 2011年発行 本体価格18000円)

原資料40点の筆耕について
 昨年秋、『東京裁判 性暴力関係資料』を読み、原資料40点の筆耕を始めてから、半年以上かかって終了した。

 スマラン事件や東京裁判の原資料のなかの日本人(兵)は、目を蔽いたくなるほどに醜く、筆耕作業の過程は自分自身の女性にたいする姿勢・態度を問いつづけるものであった。

 かつて私の周辺でもレイプ事件(不同意の性的関係強要)が発生し、これにたいしてどれほど厳格であったか、また被害者にたいして真に誠実であったかを問いながらの筆耕作業になった。

戦時性政策は軍事作戦
 古来戦場における将兵の性管理は戦争遂行上の作戦として講じられてきた。ナチスドイツ軍は「(強かんは)敵方を萎縮させ、犠牲者の抵抗の意気をくじく」とし、ノルマンディ上陸作戦の米軍は「(強かんは)若者たちを鼓舞する即効薬」とし、日本軍の進撃が早いのは「将兵の間に略奪・強かん勝手放題という暗黙の諒解があるからだ」(松本重治)というように、強かんを軍事作戦の一環としてとらえていた。

 極右勢力は決してこの事実を見ようとはせず、軍隊「慰安婦」は強制ではなく、本人の意志であり、商行為であり、国の責任はないと主張し、天皇の軍隊の無謬性・神聖化を私たちに押しつけようとしている。

南京虐殺被害者数を値切る秦郁彦
 日本軍「慰安婦」の強制連行を否定する歴史学者・秦郁彦は南京虐殺被害者の数を4万人に値切るために『南京事件』を著したが、その中で、強かん、「慰安婦」に関する用語を74カ所以上も使っているように日本軍による性犯罪を無視できなかった。

 秦郁彦は極東国際軍事裁判所の判決をもとに、7万の日本軍が12月13日に南京を占領してからの最初の1カ月間に「南京城内では2万件余りの強姦事件が発生」したとしているが、では、7月7日盧溝橋事件から南京入城までの5ヶ月間に、一体どれだけの性犯罪が起こされたのだろうか。上海に上陸した日本軍は「女、子どもにかかわらず中国人は皆殺せ。家は全部焼け」「略奪・強かん勝手放題」として南京に進軍したのだ。

 このように考えると、当時「親切で礼儀正しい日本人」と評されていた日本人(兵)による強かん、性奴隷事件の全体像は未曾有の数値になり、「どこの国でもあった」などと言って、うやむやにしたり、居直ることは絶対に許されない。ましてや、朝鮮や台湾で女性を募集(欺罔)し、はるか6000キロも離れた最前線に強制連行し、慰安所に監禁し、管理していた「慰安婦」政策は軍事作戦として遂行されており、軍の責任を回避することは絶対に出来ない。

原資料で直接確認しよう
 さて、表題の『東京裁判-性暴力関係資料』は解説、原資料(40件)、「東京裁判性暴力関係資料リスト(533件)」、付録からなっている。

 日本の植民地だった朝鮮、台湾にたいする残虐行為は審理から除外されているため、東南アジア各地に連行された朝鮮人、台湾人女性への性暴力・虐待にかんする書類は東京裁判に提出されていない。

 また、「東京裁判性暴力関係資料リスト」中の南京事件関係資料(50数件)は他の資料集などに収録されているので、「原資料」から除外されている(洞富雄編『日中戦争 南京大残虐事件資料集 極東国際軍事裁判関係資料編』に収集されている)。本書は高額(本体価格18000円)であり、図書館にもあまり蔵書されていないので、本書中の原資料40点を筆耕した。

 筆耕にあたって、カタカナをひらがなに変更し、旧仮名遣いはそのままにし、句読点を適当に加えました。●は判読不明の文字。

=================================

『東京裁判-性暴力関係資料』原資料目次

第1 中国における性暴力
 <資料01>謝金華供述書(長沙における残虐行為)
 <資料02>劉耀華供述書(河北省における残虐行為)
 <資料03>●樹栄供述書(河北省における残虐行為)
 <資料04>姜震●大佐の陳述(日本人の非人道的暴行)
 <資料05>鄭恵錫供述書(河北省北平)
 <資料06>王仲夫供述書(河北省北平)
 <資料07>桂林市民9人の供述書(桂林市内における日本軍残虐行為)
 <資料08>韋廖氏、韋鳳琛供述書(広西省における日本軍の残虐行為)
 <資料09>韋李氏、韋鳳琛供述書(広西省における日本軍の残虐行為)
 <資料10>王二旦供述書(五原県における日本軍の残虐行為)
第2 フィリピンにおける性暴力
 <資料11>モレタ邸の虐殺(マニラ)
 <資料12>残虐行為に関する戦犯支部報告
 <資料13>マリアノ・デル・ロザリオの訊問調書
 <資料14>イシドロ・カブサスの訊問調書
 <資料15>ジャスティナ・マンリシックの訊問調書
 <資料16>残虐行為に関する戦犯部報告
 <資料17>ネナ・アルバン(フィリピン婦人)の訊問調書
第3 ビルマにおける性暴力
 <資料18>M.M.ウィリアムス夫人供述書(捕虜虐待致死の確証)
第4 香港における性暴力
 <資料19>香港に於ける残虐行為証拠要約(1~4)
 <資料20>アンドリュー・リーヴィング夫人の陳述書(日本兵による強姦)
 <資料21>A・F・ゴードン嬢の供述書(日本兵による強姦)
第5 アンダマン諸島における性暴力
 <資料22>ザイトウーン・ビビ供述書概略(拷問、虐待、射殺)
第6 オランダ領東インド(含ポルトガル領チモール)における性暴力
 <資料23>林秀一(石川県)の尋問調書(ポンチヤナツク虐殺・強姦事件)
 <資料24>J.N.ヘイヂブロエク陸軍大佐の報告書(ボルネオにおける強制売淫行為に関する報告)
 <資料25>ミッデルカンプ尋問調書(中部ジヤワにおける婦女子その他に対する虐待強姦)
 <資料26>イェ・ベールマン尋問調書(中央ジヤワにおける婦人少女に対する暴行、強制売淫)
 <資料27>F・H・ロウパティ供述書要約
 <資料28>S・バッチナマ訊問概要
 <資料29>R・A・N・ロデリゲス訊問大要
 <資料30>オハラ・セイダイ海軍大尉(熊本県)陳述書
 <資料31>C・H・ウェンズヴィーン証言
第7 フランス領インドシナにおける性暴力
 <資料32>M・ヂャンヌ夫人供述書(日本将校による強姦)
 <資料33>T・ツタニ供述書(日本兵による強姦)
 <資料34>N・T・トン供述書(虐殺、強制売淫)
 <資料35>C・フエルナン供述書(欧州婦人に対する強姦、殺人)
 <資料36>R・ポーレット夫人供述書(仏婦人に対する虐待及び強姦)
 <資料37>C・C・A・ヴァレンチンヌ供述書(河江の安辺橋における仏軍人捕虜の虐殺)
 <資料38>M・A・ルイ供述書(婦人に対する強姦及び捕虜の処刑)
 <資料39>L・フランソア供述書(海防中央監獄における仏人に対する虐待)
 <資料40>G・フェルナン供述書(仏印における残虐行為)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 東京裁判―性暴力関係資料 39... | トップ | 『日中戦争 南京大残虐事件資... »
最新の画像もっと見る

日本軍性暴力関係原資料」カテゴリの最新記事