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OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

キャプテン・ゲッツ!

2006-10-11 18:20:05 | Weblog

今日は仕事のダンドリが狂いっぱなしでした。

妙に時間が空いたり、また逆に時間に追われたり、世の中、上手くいきません。

そこで何の脈絡もなく、これ聴きました――

Captain Marvel / Stan Getz (Columbia)

ジャスファンにとってはスタン・ゲッツの凄さ、素晴らしさは言わずもがなですが、その人生と人気は浮沈みが烈しいものでした。

若い頃から天才の名を欲しいままにして悪いクスリに溺れ、ボサノバで世界的に大ブレイクした後も、その悪癖から逃れることが出来ませんでした。しかも1960年代後半からは音楽性も迷い道……。

もちろんスタン・ゲッツは、何をやってもスタン・ゲッツなんですが、それを取り囲むのが現代音楽やソフトロック、さらには模擬新主流派であっては、ねぇ……。

で、その迷走する天才が息を吹き返したのが、このアルバムです。

しかしこれは、皆様が良くご存知のとおり、他人のフンドシという雰囲気が……。それは当時、世界的に大ヒットしていたチック・コリアの「リターン・トゥ・フォーエバー(ECM)」というアルバムに極めて近い内容でした。

録音は1972年3月3日、メンバーはスタン・ゲッツ(ts)、チック・コリア(key)、スタンリー・クラーク(b)、トニー・ウィリアムス(ds)、アイアート・モレイラ(per) という! つまりチック、スタンリー、アイアートが「リターン・トゥ・フォーエバー」からの客演です。

しかも演目までもが、カブっているのです。ちなみに「リターン・トゥ・フォーエバー」の録音日が同年2月2&3日というのも、意味深です。そこにはチック・コリアがスタン・ゲッツの昔の子分だったという因縁までもが含まれています。

そしてここでの演目が、チック・コリアの次のアルバム「ライト・アズ・ア・フェザー(Polydor)」で再演されるのですから、この3枚の作品は兄弟姉妹盤というわけですが、もちろんここでも「B-2」を除いて、全曲がチック・コリアによって書かれたものです――

A-1 La Fiesta
 「リターン・トゥ・フォーエバー」の大団円になっていた永遠の名曲ですが、それをド頭に持って来て爆発的な演奏を聞かせるあたりに、親分スタン・ゲッツの意地と意気ごみが感じられます。
 そしてここでのミソが、トニー・ウィリアムスのビシバシ煩いドラムス! 「リターン・トゥ・フォーエバー」ではアイアート・モレイラがキメまくりのタイコを担当していましたから、その人がパーカーションに専念している分、ここでの爆発力は否が応でも強烈です。
 もちろんスタンリー・クラークの超絶技巧、チック・コリアのスパニッシュモードは全開! しかし、ここはやっぱり、スタン・ゲッツの爆裂テナーサックスでしょう♪ 何時もよりも野太いフレーズと音色で迫っていますし、なんか脂っこいというか、執念深い感じ……!
 ですからチック・コリアがエレピで奮闘するのですが、何故か、録音レベルが低めにミックスされているのが??? しかしここでボリュームを上げると、後が地獄です。スタン・ゲッツが再び、でかい音で吹きまくりですからねぇ♪

A-2 500 Miles High
 チック・コリアの次回作「ライト・アズ・ア・フェザー」の中核となった名曲です。もちろん独自のラテンモードで演奏されていますが、ここでは、より一層のロック的なアプローチが顕著で、それはトニー・ウィリアムスの存在ゆえでしょうか?
 スタンリー・クラークのベースも素晴らしいクルーヴを発散させています。
 肝心のスタン・ゲッツも大奮戦していますが、リズム隊の新しいノリが目立っています。

A-3 Captain Marvel
 これも前述の「ライト・アズ・ア・フェザー」で再演されるラテンモードの名曲ですが、スタン・ゲッツは真摯に演奏に取り組み、苦しんでいるのかもしれません。
 しかしリズム隊は最高ですねぇ~♪ 演奏そのものを楽しんでいる雰囲気で、リーダーが少し、哀れかも……。

B-1 Times Lie
 ワルツ~4ビート系のノリにラテンビートが入ってくるという、なかなか凝った展開です。もちろんチック・コリアの世界が全開していますが、それを強引に自分のペースに引っ張り込むスタン・ゲッツは、流石の貫禄を聴かせてくれます。
 しかし前半の楽しさが後半には疲れに変わるという……。

B-2 Lish Life
 これだけはデューク・エリント楽団のヒット曲のカバーです。
 つまりジャズスタンダートということで、スタン・ゲッツのテナーサックスに和みます。ただし演奏時間が短いのが残念……。
 ちなみに現行CDにはロングバージョンが収録されているらしいのですが、私は持っていないので、ご容赦願います。

B-3 Day Waves
 擬似ボサノバの幻想曲なので、これも和みます。
 しかしスタン・ゲッツはヤル気満々というか、時折、烈しいテンションで攻め込んできますので、油断なりません。

ということで、なかなか凄い内容の作品なんですが、惜しむらくは、チック・コリアのパートが低い録音レペルになっていることです。と言うか、逆にスタン・ゲッツの音が大き過ぎるのでしょうか……?

メジャーレーベルらしからぬバランスの悪い録音で、もしかすると意図的なのかもしれませんが……。

とにかくスタン・ゲッツは、これによって本格的にジャズ界最前線に復帰したように思います。この後はベテラン達との共演や自己のバンドでの活動をバランス良く続けていくのです。

実際、当時は、このバンドメンバーと巡業もやっていましたし、そのライブを元にしたアルバムも発売されています。

そして私は、このアルバムのリミックス&リマスター、さらに残されたライブ音源の集大成を熱望しているのでした。

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スタジオは魔界?

2006-10-10 17:25:33 | Jimi Hendrix

世間は某国の核実験で騒然としており、我国はキツイ態度を表明しておりますが、まずは核実験そのものが本当に行われたのか、間違いない証拠を掴んでからにしてほしいです。

つまり自制をうながしたいですねぇ、某国も含めて世界中に!

もちろん「顔」を潰された大国や戦争で金儲けしたい国の思惑が見えますが、我国としてはねぇ……。

お互い逆の事をやられたら、どう思うのか、熟慮してほしいものです。

と、本日はちょっと政治に走ってしまいましたが、気分はファンキーロックに入っていますので――

Carsh Landing / Jimi Hendrix (Polydor)

夭折した天才ギタリストのジミ・ヘンドリクスが、死後に発表されてしまった作品集です。

「されてしまった」というのは、これがけっしてジミヘン本人が納得して、望んだものではないからです。それはジミヘンが生前に仕上げることが出来なかった、つまり未完成のものばかり……。

しかし、このアルバムがそういうクズや断片ばかりかというと、そうではありません。個人的にはジミヘンの死後に発売されたアルバム中、最高の1枚だと思っています。

その理由と内容は、ジミヘンが残した未完成の録音から、使える部分だけを厳選抽出し、それにスタジオミュージシャンが補完演奏をダビングして完成させたものだからです。

プロデュースはジミヘンの理解者だったアラン・ダグラスとエンジニアのトニー・ボンジョビで、ほとんどの曲がジミヘンの歌とギターしか使っていません。そしてそこにジェフ・ミロノフ(g)、ボブ・バビット(b)、アラン・シュワルツバーグ(ds) という超一流のスタジオミュージシャンがバック演奏をダビングしたわけですが、凄腕の彼等にしても、これは壮絶な仕事だったと、後に語り草になったほどの荒業でした。

そして1975年に発売されたこのアルバムは、忽ち大ヒット! その内容は、あまりの凄さに陶然とするほどです――

A-1 Message To Love / 恋のメッセージ
 この曲にはほとんど手が加えられておらず、ジミヘン(g,vo)、ビリー・コックス(b)、バディ・マイルス(ds,vo)、ジューマ・サルタン(per) というバンド・オブ・ジプシーズが中心のスタジオセッションです。録音はおそらく1970年頃でしょう。
 その演奏はブラックロックの極致で、しなやかなジミヘンのギターが圧巻! 全体の荒っぽさが逆に魅力で、これはあえて残したものでしょうか?
 ちなみに女性コーラスが後のダビングだと思われます。

A-2 Somewhere Over The Rainbow
 さて、こここからがスタジオミュージシャンが仕上げた演奏です。
 オリジナル演奏は1968年3月頃とされていますが、そこからジミヘンのギターと歌だけ取り出し、ジェフ・ミロノフの非常に上手いギターで全体が装飾してあります。流石に間奏のギターソロはジミヘンでしょうが、オカズやリズムギターはジェフ・ミロノフでしょう。
 とても混濁した仕上がりですが、実は最高の素晴らしさです。

A-3 Crash Landing
 オリジナルは1969年に録音されたデモテープとされており、そこにダビングで様々なギターとコーラスを被せ、リズム隊をダビングするためにテープスピードの操作もあるようです。
 しかしこれが、本当に強烈な仕上がりで、おそらくジミヘンが生き続けていたら、このセンをねらった!? という説得力があります。元祖ファンキーロック♪

A-4 Come Down Hard On Me
 これも強烈なファンキーロックです。
 その源はダビングされたドラムスとベースによる16ビートのグルーヴですが、ギターもほとんどジェフ・ミロノフが弾いているように思います。
 つまりジミヘンはボーカルだけ……? しかしこれまた、最高なんですねぇ~!

B-1 Peace In Mississippi
 このアルバムのハイライト!
 初っ端からシャープで重いジミヘンのギターが大爆発です!
 これには凄腕のスタジオミュージシャンも付いていくのがやっと、という雰囲気が充満していますねぇ~♪
 オリジナルは1968年10月の録音とされており、もちろんノエル・レディング(b) &ミッチ・ミッチェル(ds) によるエクスペリエンスの演奏でしたが、きっとジミヘンのギターが凄過ぎたのでしょうかねぇ~、リズムが乱れまくったらしいです。
 したがってここで再生された演奏がベストなんでしょう。実際に物凄い出来です! 必聴ですよ!

B-2 With The Power
 これは「A-1」と同時期・同様のメンツによるバンド・オブ・ジプシーズの演奏ですが、明らかにダビングと手直しが入っています。
 う~ん、それにしてもジミヘンのボーカル♪ 実はギターよりも好きなほどです。もちろんギターも発狂しそうに凄いですよっ! あくまでも推察ですが、「A-1」とカップリングでシングル発売を目論んでいたのかもしれません。

B-3 Stone Free Again
 これはもう、有名な演目の再演バージョンです。
 演奏は完全にスタジオミュージシャン達で、ボーカルだけを加工してオリジナルの別テイクから持って来たのでしょうか?
 なかなかスマートなファンキーロックです。ちょっと綺麗すぎるほどですけどね……。

B-4 Captain Coconut
 さてこれが問題の演奏で、元々は映画「レインボウ・ブリッジ」のためのサントラ音源を加工したものですが、実はそのオリジナル音源にジミヘン本人がどこまで演奏に加わっていたか、明らかにされていないようです。
 しかし実際に聴かれる演奏は非常に魅力的で、宇宙とサイケの有機的化学変化とでも申しましょうか、伸びやかで煮詰まったジミヘンの二律背反するギターが強烈です。もしかすると色々なセッション音源から集めてきたものかもしれません。
 とにかくアルバムの大団円には相応しく、スタジオミュージシャン達も各々の立場をわきまえた好演を聴かせてくれるのでした。

ということで、その経緯から、現在では全く無かったことにされているアルバムで、もちろん廃盤状態かと思われますが、実はこれ以上無いほどに最高の仕上がりです。

イノセントなファンからは忌み嫌われていますが、リアルタイムでは大ヒットしていますし、無残な出来とはいえ、忽ち続篇までもが作られたのですから、天才は死しても名盤を残すという証明の1枚です。

魔界からの贈り物かもしれませんが……♪

機会があれば、ぜひとも聴いてみて下さいませ。アナログ盤なら入手は比較的容易かと思います。

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疲れてブル~ス

2006-10-09 17:58:47 | Weblog

疲れた……。

今日は、これに尽きます……。

もちろん仕事に振り回され……。

あぁ、こんな時にはブル~スだなっ、スロ~なねっ♪

Blues At Sunrise / Stevie Ray Vaughan (Epic)

スティーヴィー・レイ・ヴォーンはテキサス生まれの白人ブルースマン、というよりも、まずはブルースロック・ギタリストとしての認識が強いでしょう。

13歳の頃からアルバート・キングとか、超一流のブルースマンと共演が許された腕前でしたし、プロとして活動を始めた頃には、そのあまりにも過激なスタイルで周囲を驚愕させました。

しかし1990年にヘリコプター事故で早世しています。享年35歳でしたが、その人生はセックス・ドラッグ・ブルースロックに彩られていたと言われています。

そしてその残された録音は、ブルースロックに少しでも興味があるならば、避けて通れないものばかりです。

このCDはその中からスローブルースばかりを集めた内容で、もちろん初CD化や未発表バージョンを含んでいるのです――

01 Ain't Gone 'N' Give Up On Love
02 Leave My Girl Alone
03 Tin Pan Alley
(Live with Johnny Copeland)
04 Chitlins Con Carne
05 The Thing That I Used To Do
06 The Sky Is Crying
07 Texas Flood
(video version)
08 May I Have A Talk With You
09 Dirty Pool
10 Blues At Sunrise
(Live with Albert King)

トラック「03」と「06」が未発表曲です。

トラック「07」はビデオで発売されていたバージョンの初CD化なんですねぇ。

内容的にはスローブルース大会です!

あぁ、疲れています……。

だめだ……、今日は、これぐらいで勘弁して下さい。

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夢の対決part2

2006-10-08 19:48:04 | Weblog

あ~ぁ、なんだか慌しい1日でした。

しかもヤフオクは2連敗……。仕事もハードになってきましたし……。

そこで、変幻自在、ハードな対決盤を――

Tenor Madness / Sonny Rollins (Prestige)

ジャズではテナーサックスの王様2人が対決した歴史的名盤!

と思い込んで、私はこれを買いました。まだジャズを本格的に聴き始めて、間もない頃です。

ところがっ! というのは皆様ご存知のとおりですが、けっこう、いろんなものが潜んでいるアルバムだなぁ……、と聴くほどに思います。

録音は1956年5月24日、メンバーはソニー・ロリンズ(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)、そして1曲だけ、ジョン・コルトレーン(ts) が加わっています――

A-1 Tenor Madness
 これがアルバムのウリになっている、ソニー・ロリンズ対ジョン・コルトレーンの対決演奏です。
 曲は快適なテンポのブルースで、タイトルは「Tenor Madness」と付けられていますが、実はビバップ時代から頻繁に演奏されていた通称「Royal Roost」とか「Rue Chaptal」と同じテーマメロディを持っていますから、おそらく発売時に後付したものでしょう。
 ちなみに後年、ブレスティッジが発売したジャッキー・マクリーン(as) とジョン・ジェンキンス(as) の対決盤が「アルト・マッドネス」と命名されたのは、多分、このアルバムがヒットした所為かもしれません。
 さて肝心の演奏は、ジョン・コルトレーンがアドリブ先発で、ギクシャク・ウネウネという、ハードバップ期特有のフレーズ展開が満載で、なかなか魅力的です。
 ところが次に登場するソニー・ロリンズがウネリとヒネリが効いた余裕のノリを聴かせてしまいますからねぇ~♪ 前者が一途な想いならば、後者は天才の片思いというところでしょうか。
 その2人を支えて煽るリズム隊は、ご存知、当時のマイルス・デイビスのバンドレギュラーでしたから、息はぴったりで素晴らしい快演です。特にポール・チェンバースは唯我独尊ながら、若さに似合わぬ協調性が見事♪
 またフィリー・ジョーはフロントのテナーサックスとソロ交換を行いますが、これも余裕たっぷりでサッときりあげ、いよいよテナーサックスの饗宴が延々と続いていくのです。それは4小節交換の応酬!
 気になる勝負の行方ですが、生硬に迫るジョン・コルトレーンをヒネリ倒すソニー・ロリンズという雰囲気でしょうか……。まあ、ロリンズの判定勝ちは否めないところですが、引分け再試合を希望したいところです。しかし結果的には、これが最初で最後の逢瀬となり、以降、ソニー・ロリンズは徐々にジョン・コルトレーンを意識せざるを得ない立場に追い込まれていくのです。
 つまりジャズ・テナーサックスの主流がジョン・コルトレーンのスタイルに染まっていくのですが、それはそのスタイルが真似しやすいことを意味していると、私は思います。つまり、あの「シーツ・オブ・サウンド」の烈しい運指とタンギングは、練習次第でどうにでもなるのでは? フレーズを構成しているのは、スケール練習の果てに辿り着いたものという気もしています。
 対してソニー・ロリンズのアドリブは感性重視というか、当に瞬間芸の極北でしょう。リズムに対する変幻自在のノリは、真似してやったらデッドコピーにしかなりません。
 ――等と不遜なことを書き連ねてしまいましたが、こういうハードバップ期のジョン・コルトレーンが、実は、私は大好きなのでした。

A-2 When Your Lovee Has Gone
 ここからがソニー・ロリンズのワンホーン体制による演奏です。
 この曲はミディアムテンポの歌物解釈としては、典型的なソニー・ロリンズ節が楽しめます。それはリズムとビートに対して自在にノッて聞かせる余裕のフレーズの連なりです。
 しかし、流石は当時定評のあったリズム隊ですねぇ。ちゃんと鋭いツッコミを入れたり、短いながら各々のアドリブパートでは充実の極みをたっぷり♪

B-1 Paul's Pal
 ソニー・ロリンズが書いた和みのハードバップで、タイトルどおり、ポール・チェンバースに捧げられたようです。
 もちろん、そのベーシストは張り切ったのでしょう、伴奏、アドリブソロともに最高ですが、気負いが感じられないのも流石だと思います。
 逆にレッド・ガーランドとフィリー・ジョーは、やや調子が出ていないような……。しかしソニー・ロリンズは、言わずもがなの名演です。

B-2 My Reverie
 ソニー・ロリンズがテナーサックスの魅力を全開させるスロー曲です。
 ふふふふふふふ~ぅ、というサブトーン、どっしり構えて、ジックリとテーマを変奏していく余裕の展開が何とも心地良いですねぇ。

B-3 The Most Beautiful Girl In The World
 オーラスはソニー・ロリンズが十八番のワルツ~4ビートの展開で、極上のハードバップが演奏されます。
 なにしろリズム隊が素晴らし過ぎですし、送り出される快適なビートを逆に引きずり回すようなソニー・ロリンズのアドリブには、初めて聴いた時、強烈な違和感がありました。特にレッド・ガーランドのアドリブが終わった直後からの猛烈なノリは、痛快至極! 何度聴いても飽きません。
 またラストテーマを導くアドリブパートも眩暈がするほどの激しさです。こんな吹奏が出来るなんて、ソニー・ロリンズは本当の天才だと、聴くたびに思いしらせるのでした。

ということで、ジョン・コルトレーンの参加は1曲だけですが、それはたまたま現場のスタジオに本人が居たという、まあ偶然とされています。録音されたのも、セッションの一番最後らしいのですが、しかし、参加したリズム隊とジョン・コルトレーンは、同じマイルス・デイビスのバンド仲間ですし、この録音の前後にマイルス・デイビスとの仕事があったのかもしれません。

で、この夢の対決は1曲だけでは勿体無い、セッション全部がそうであったらなぁ……。という切望は、ジャズファン全てのものでしょう。

しかし冷静に聴いてみると、時期尚早というか、残念ながらここでのジョン・コルトレーンはソニー・ロリンズの引き立て役という感が強いと思いますが、どうでしょう?

それはもし、ここでの相手役がデクスター・ゴードンであったら? という妄想にも繋がります。

そしてジョン・コルトレーンは、この後もプレスティッジ、ブルーノート、リバーサイドの3大レーベルを中心に、大勢のテナーサックス奏者と対決の修羅場を踏んだ録音を残していくのですが、後年、レギュラーでは最初ワンホーンのバンドを組んだのも、さもありなん……。

それと不思議なのが、このセッションではレッド・ガーランドが十八番のブロックコード弾きを、ほとんど出していません。何故でしょう?

というように、私にとっては妄想・疑念が果てしないアルバムというわけです。

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夢の対決

2006-10-07 18:13:51 | Weblog

世間は連休でも、私は休まず仕事に追われ……。というか、いろんなスケジュールが入りっぱなしなんです。

ところでタイへ出張させた若い者の話では、新しくなったタイの飛行場は、預けた荷物がなかなか出てこなくて、延々と待たされるとか……。クーデター直後とはいえ、日本からの観光客も多いようです。

ということで、本日の1枚は――

Stan Getz & Bill Evens (Verve)

ジャズに限らず、マイナーレーベルが林立するアメリカ音楽産業では、自ずと独自のカラーを持った会社が注目されます。

そして例えばそれがジャズならば、「ヴァーヴ」と言えば夢の共演でしょう。

このアルバムはその最たるもので、テナーサックスとピアノにおいて最高の白人ジャズプレイヤー2人が主役なんですから、その存在を知った瞬間から、もうワクワクものです。

しかし、これはリアルタイムで発売されたブツでは無く、セッションから9年後の1973年になって、ようやく世に出た、所謂「お蔵盤」でした。

う~ん、何故だっ!?

録音は1964年5月5~6日、メンバーはスタン・ゲッツ(ts)、ビル・エバンス(p)、エルビン・ジョーンズ(ds) は不動、そして5日にリチャード・デイビス(b)、6日にロン・カーター(b) が参加という、今では完全に夢の顔合わせです――

A-1 Night And Day (1964年5月6日録音)
 コール・ポーターの名作で、スタン・ゲッツもビル・エバンスもスタンダード曲の解釈は得意中の得意ですから、全く問題無い演奏と思いきや、初っ端からエルビン・ジョーンズのポリリズムに煽られて、2人とも妙に肩に力が入った雰囲気だと思うのは、気のせいでしょうか?
 もちろんテーマをリードするスタン・ゲッツは軽やかですし、先発でアドリブを披露するビル・エバンスも、ブレイクを織込んで十八番のフレーズを連発しているのですが……。
 つまりエルビン・ジョーンズ&ロン・カーターという、黒人強力リズム隊の存在が強すぎるが故に、全体がチグハグのような気がしています。
 ただし凡演ではありません。迫力も歌心もジャズを聴く喜びも、確かにあるのです。

A-2 But Beautiful (1964年5月6日録音)
 これは、良いですねっ♪
 スタン・ゲッツ&ビル・エバンスに私が望むところが存分に発揮されています。
 それは夢見心地の歌心♪
 黒人リズム隊も的確なサポートに撤しています。

A-3 Funkallero (1964年5月6日録音)
 ビル・エバンスが書いた躍動的なハードバップ曲です。
 ところが張り切りすぎて、ビル・エバンスがやや、上ずっている感じがします。
 しかしスタン・ゲッツは快調そのもので、アドリブが止まらない荒っぽさです。そしてそこをエルビン・ジョーンズに突っ込まれ、うろたえながらも我を通す潔さが素敵ですねぇ~。終盤は、ちょっとヤケ気味ですが♪

B-1 My Heart Stood Still (1964年5月5日録音)
 何の気負いも無い演奏が逆に好き勝手になってしまったような、纏まりの無い仕上がりです。つまり荒っぽいのです。
 なにしろスタン・ゲッツのアドリブソロに続いて出るはずのビル・エバンスが、アッと躓いてしまい、リチャード・デイビスのウォーキングが延々と行ってしまいますから! それでも何とか体勢を整えたビル・エバンスは奮闘しますが、一度トチッたものは修整不可能のキズとなって残ります。
 それをジャズの面白さと楽しめるならば、最高の名演でしょう。
 個人的には投げやりな仕上がりだと思いますが、終盤でのスタン・ゲッツとビル・エバンスの対位法的な絡みには、興奮させられます。エルビン・ジョーンズも奮闘していますねっ♪

B-2 Melinda (1964年5月5日録音)
 なんとも雰囲気満点のスロー曲で、情緒たっぷりのスタン・ゲッツに優しさ溢れるビル・エバンスの存在が、最高に上手くいった名演だと思います。あぁ、この歌心♪
 もちろんリチャード・デイビスは縁の下の力持ちですし、エルビン・ジョーンズがブラシで粘っこいビートを送りこんでいるあたりも、最高です。

B-3 Grandfather's Waltz (1964年5月5日録音)
 タイトルどおり、とても愛らしいワルツ曲で、こういうものならビル・エバンスは俺にまかせろっ! 初っ端から無伴奏でテーマを巧みに提示し、黒人リズム隊の力強さを引き出して、スタン・ゲッツにバトンを渡します。
 するとクールで暖かいテナー・サックスが絶妙の歌心でテーマを変奏しつつ、それよりも美しいアドリブメロディを出してしまうのですから、もう最高です。もちろん思い切った跳躍フレーズも入れ込んで、あくまでも甘さに流れない姿勢も聴かせるのです。
 またビル・エバンスも負けじと快演ですが、ここはスタン・ゲッツに軍配が上がるのかもしれません。

ということで、何となくお蔵入りした理由が感じられる演奏集です。

しかし密度の濃さは天下一品! 荒っぽい中にも、それゆえにエキサイトさせられる場面が多々ありますし、スロー曲の解釈と展開は余人の真似出来る境地ではありません。

こういう演奏がリアルタイムで発売されなかったという、当時のジャズ界の充実度は、やはり今では夢の良き時代だったのです。

ちなみに現行CDには、さらに没テイクのオマケ付きですから、そのあたりの妄想を逞しくして聴くのも、ジャズの楽しみだと思います。

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道化師

2006-10-06 18:21:42 | Weblog

仕事でトラブルが連続の今日、気分的には暴走したいところですが、これから偉い人の宴会に出るということで、グッと我慢、これ、聴きました――

The Clown / Chaeles Mingus (Atlantic)

チャールズ・ミンガスは偉大なジャズベース奏者という前に、「怒りの」とか「頑固な」という形容詞がついてしまうほど、暴虐的なエピソードが多い人です。

尤もそんな話はジャズ喫茶やそこに置いてあるジャズ雑誌で仕入れたネタで、実際にはどんな人だったのか、知る由もありませんが、このアルバムを聴くと、さもありなんと感じます。

なにしろ蠢いて爆発し、泣いて、また呻くというような演奏ですから!

録音は1957年2月13日&3月12日、メンバーはジミー・ネッパー(tb)、カーティス・ポーター(as,ts)、ウェイド・レグ(p)、チャールズ・ミンガス(b)、そしてダニー・リッチモンド(ds) という、いささかシブイところが集っています――

A-1 Haitian Fight Song / ハイチ人の戦闘の歌 (1957年3月12日録音)
 いきなり無伴奏でチャールズ・ミンガスのベースが蠢きます。それは打ち震えるような繊細な響きから、豪胆な地鳴りのような表現まで幅広く、ついには暗い情念に満ちたテーマメロディを導き出すのです。
 そこでは混濁したホーンセクションの合奏に多重録音が用いられ、リズム隊と意地の張り合いを聞かせてくれます。
 そしてアドリブパートでは、急にテンポが速くなったり、遅くなったりしますが、その度に統制のとれたリズム隊が絶妙のリフやビートを送り出してくるので、乱れるどころかキツイ締めつけから逃れんとするエルネギーが噴出するのです。
 中でも仄かな哀愁を滲ませるウェイド・レグには琴線が刺激されますし、あまり有名ではないカーティス・ポーターのアルトサックスが、意想外に泣きます。
 またチャールズ・ミンガスのベースは親分の貫禄ですし、その代貸しというダニー・リッチモンドは親分の意図を充分に理解したサポートが見事だと思います。

A-2 Blue Cee (1957年3月12日録音)
 ちょっと変則的なブルースですが、個人的にはシンプルな響きが気に入っています。なんと、ウェイド・レグのピアノはカウント・ベイシー調ですからねぇ~♪ 狙ったんでしょうか……? もちろん中身はハードバップですが!
 またカーティス・ポーターは艶やかなジャッキー・マクリーン(as) というか、もちろんセンは細いのですが、なかなか魅力があります。
 そしてジミー・ネッパーはオトボケで迫りつつも、要所でピリッとしたアクセントを入れる好演です。しかも全体に漂う脱力感が絶妙♪ そこがジャズのブルースかもしれません。

B-1 Reincarnation Of A Lovebird (1957年2月13日録音)
 タイトルどおり、バードが愛称だった天才のチャーリー・パーカー(as) に捧げた演奏です。
 出だしからメンバーそれぞれが音のコラージュというか、フリーなフレーズのぶっつけ合いを演じ、哀愁のテーマが導きだされる時には、リスナー皆がその世界の虜になってしまう仕掛けです。
 特にカーティス・ポーターのアルトサックスが泣きながらスローなパートを吹くあたりは、胸が締めつけられるような気分に……。あぁ、かすれたような音色と涙をこらえたフレーズの妙は、最高です!
 またウェイド・レグも哀愁モードが全開♪ 余計な手出しをしないベースとドラムスも分かっています。 

B-2 The Clown / 道化師 (1957年2月13日録音)
 これが非常に芝居がかった演奏で、ジーン・ジェファードという漫談家の語りが入り、予め用意されたシナリオにしたがってバンドのメンバーがそれぞれのパートをこなしているらしいです。
 それは確かにタイトルどおり、サーカスの道化師を模している雰囲気ですし、陽気さと哀しい部分が、音のコラージュで表現されていますが、さて、これがジャズかと自問すると、苦しくなります。
 それでも4分30秒を過ぎた頃からはアドリブの応酬が楽しめます。
 カーティス・ポーターは擬似ハンク・モブレーという風情ですし、ウェイド・レグはマル・ウォルドロンに成り切ったつもりでしょうが、う~ん……。
 しかしジミー・ネッパーが熱演です。多分このアルバムの中では、一番良いところかもしれません。
 とは言え、こんな演奏は嫌いです! もっと素直にやっていれば、快演になったはずなんですが、こういう実験精神がチャールズ・ミンガスの評価を高めているのも、また事実なんですねぇ……。実際、ジャズ喫茶ではこの曲が流れると、お客さんが帰り仕度を始めるのでしたが……。

ということで、最後は???ですが「Reincarnation Of A Lovebird」はノー文句で素晴らしい演奏だと思います。幸いなことにCD時代の今日、ラストのタイトル曲を簡単にすっ飛ばして聴くことが出来ますから、これは冒涜でも何でもなく、好きなジャズを好きなように楽しむ基本と考えて、さしつかえ無いはずです。ホーナストラックの存在も嬉しいところ♪

あぁ、なんだか今日は、自分自身が「怒りの」というモードに入りそうですので、ここまでに致します。

私は決して道化師では無いのだ!

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追悼・田中登監督

2006-10-05 18:15:56 | Weblog

日活ロマンポルノを代表する田中登監督が急逝しました……。

享年69歳! 実際、驚愕しましたですねぇ……。

最近は映画本編の仕事よりもテレビドラマの演出で頑張っていたようですが、もう一度銀幕作品を作って欲しかったところです。

いみじくも、先月は復刻DVDで田中登監督作品が、幾つか発売されました。

その独自の拘りに満ちた映像美学は、アクが強すぎる時もありましたが、総じて1970年代日本映画のひとつの到達点を示していたと思います。つまり抵抗無く、凄いっ! と思わせられる映像が少なくありません。

ただし、個人的には物語展開が観念的で、取っ付き難いところも感じています。

中でも実在の責め絵画家である伊藤晴雨を描いた「責める!」は、SM物の体裁をとりながら、一筋縄でいかない雰囲気が濃厚でした。しかし中島葵や宮下順子が雪中に氷の池に浸けられたりするハードな責めは強烈で、全く田中登という映像美学が表出していました。

当時のSMの女王だった谷ナオミを、あえて起用しなかったあたりも、印象的です。おそらく虚構の様式美を避けたのでしょうが、それだけ独自の美意識に自信があったのかもしれません。

また田中真理主演の「夜汽車の女」は、暗黙の了解が求められる展開とオチが気になりますが、映像そのもので、そのあたりを納得させようとするイジマシサが、逆に見事だと……。田中真理の存在感も際立つています。

ということで、機会があれば、田中登監督作品をご覧下さいませ。孤高の前衛とか言われていますが、あくまでも正統派だと思います。

合掌……。



 

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バイアグラはいらない

2006-10-04 18:06:51 | Weblog

最近、バイアグラとか得体の知れない精力剤のオススメメールがガンガン来ます。

俺には必要ないんだぜっ! と声を大にしても、相手は電脳世界の遥か彼方ですから、届くわけもなし……。

結局、自動的に振り分けて消去される運命ですから、儲かっているのは通信会社だけという虚しさです。

ちなみに「必要ない」というのは、またまだ十分に使用可能という意味で、気力が無いという事ではありませんから、念のため! いや、これは言い訳ではないのです。

と苦し紛れになったので、本日は痛快な1枚を――

Memphis Underground / Herbie Mann (Atlantic)

ジャズ喫茶全盛期の我国で、徹底的に軽く見られていたのが、ハービー・マンでしょう。

なにしろその姿勢はシャリコマ、と言われてバカにされていましたからねぇ。ちなみに「その姿勢」とはR&Bやロックのリズムを大胆に使った演奏、「シャリコマ」とは商業主義にジャズ魂を売り渡した軟弱者という意味合いです。

実際、ハービー・マンの演奏はラジオからも流れるほどに楽しく、分かり易いノリでしたから、ビヤガーデンやゴーゴー喫茶のハコバンでは定番演目でしたし、日本映画のサントラにも、良く似た演奏が用いられていましたので、ジャズは悩んで聴くものという風潮が強かった当時、つまり1970年前後のジャズ第一線では、コケにされて当然だったのです。

しかし本当は皆、この人の演奏が好きなはずですよ♪ 特にロックやソウルからジャズに入ったファンには、かけがえのない傑作として、このアルバムが存在していると思います。

録音は1968年8月21日のニューヨーク、メンバーはハービー・マン(fl)、そしてリズム隊はレジー・ヤング(g)、ボビー・エモンズ(org)、ボビー・ウッド(p,elp)、トミー・コグビル(b)、マイク・リーチ(b)、ジーン・クリストマン(ds) という、わざわざメンフィスから呼び寄せた現地の凄腕達を起用しています。そしてさらにロイ・エアーズ(vib,per)、ソニー・シャーロック(g)、ラリー・コリエル(g)、ミロスラフ・ビトウス(b) という、当時のバンドレギュラーも加わる強力セッションでした――

A-1 Memphis Underground
 メンフィスのリズム隊が作り出す、分厚く横揺れするリズムとビートが、まず最高です。このシンプルでノリの良い8ビートこそが、当時の最先端でした。それはズバリ、南部ソウルです!
 ハービー・マンが書いたテーマメロディはモードでありながら親しみやすく、それはアドリブパートの祭囃子みたいフレーズでさえも、抜群のグルーヴに煽られてクールに熱く深化していきます。
 しかし続くギターソロは多分、ラリー・コリエルでしょうか? 烈しくフリーに近いサイケ感覚で燃え上がります。そしてそれをジャズに引き戻すのが、ロイ・エアーズのクールなヴァイブラフォンという仕掛けも冴えています。
 ただしここでの一番の聞き物は、右チャンネルから終始、どっしりとしたグルーヴを叩きだしてくれるメンフィスのリズム隊♪
 彼等は名プロデューサーのチップス・モーマンが運営するアメリカン・スタジオ子飼いのミュージシャンで、R&Bからカントリー、ゴスペル、そして後にはエルビス・プレスリーのレコーディングまでも支えていた名手達です。もちろん当時流行していた南部系ヒット曲の大半に参加していたのは言わずもがなで、流行り物に敏感なハービー・マンが目をつけたのもムベなるかなです♪ 果たして結果は大成功! それは地元南部では無く、ニューヨーク録音というあたりに抑制の効いた仕上がりの秘密があるようです。

A-2 New Orleans
 タイトルどおり、ニューオリンズ・サウンドに根ざしたブルースですが、ここでは特にロック感覚も打ち出した痛快な演奏になっています。
 バンド全体のノリも良く、途中1分31秒目あたりからのハービー・マンのブレイクとジーン・クリストマンのドラムスのツッコミが痛快の極み♪

A-3 Hold On, I'm Conin'
 ダブル・ダイナマイトこと、サム&デイブのあまりにも有名なヒット曲を、熱く聴かせてくれます。もちろんリズム隊のグルーヴは最高で、なにしろミロスラフ・ビトウスがエレキベースで加わっていますから、分厚いビートがさらに重厚さを増しています。
 ハービー・マンは例の小刻みなお祭フレーズで勝負していますが、ここでも1分36秒目から始まる、ジーン・クリストマンとの対決がクライマックスです。もちろん続けて入ってくるオルガンやリズムギターの存在も強烈です。
 また後半に登場するラリー・コリエルのジャズロック丸出しのギターソロが、如何にも当時のノリで憎めません♪ そしてロイ・エアーズも張り切り過ぎて暴走し、つられてミロスラフ・ビトウスも我を忘れてしまう瞬間がっ!
 さらに大団円に登場するソニー・シャーロックのフリーロックなエレキギターソロは、ご愛嬌を超越した凄さ! ジミヘン真っ青ですよ、本当に! 勝負させてみたかったですねぇ~♪ もちろん刺激された他のメンバーも爆裂大会に雪崩込み、またまたメンフィスのリズム隊の冷静さが光るのでした。
 何事もなかったかのように終わるラストも流石です。

B-1 Chain Of Fool
 ソウルの女王=アレサ・フランクリンがリアルタイムでヒットさせていた名曲をカバーしています。
 ここでは南部ソウルの重いノリに加えて、全体にゴッタ煮状態のポリリズム・グルーヴが発生しています。それはロックやソウルに加えてフリーやラテンの要素も混ぜ込んだ、当にこのメンツでなければ生み出しえないものでしょう。なんとなく1973年頃のマイルス・デイビスのバンドのようでもあります。
 その中で暴走するラリー・コリエルのギターソロは、今聴くと本当にニューロック丸出しで微笑ましくもありますが、現代のファンにはどう聞こえるのでしょうか……?
 とにかくメンバー全員が熱演の連続で、肝心のハービー・マンは完全に影が薄くなっています。

B-2 Battle Hyme Of The Republic / リパブリック賛歌
 爆裂演奏が続いた後の和みの時間というか、有名な伝承ゴスペル歌が厳かにスタートします。
 もちろんこういう演奏が十八番のリズム隊はソツが無く、自在なテンポで熱く盛り上げていくところが快感です。
 ハービー・マンのフルートからも正統派のフレーズが流れてきますし、ロイ・エアーズのラテン系パーカッションが、これまた快感を呼びます。しかもかなりハードな演奏なんですよっ、これがっ! ジーン・クリストマンのドラムスの重さも特筆物です。

ということで、これは軟弱どころか、とんでも無く硬派な演奏集だと思います。シャリコマとしてジャズ喫茶で敬遠されていたのは、タイトル曲がシングル盤として発売されヒツトしたことに加えて、ラリー・コリエルやソニー・シャーロックのギターからニューロックの臭いがプンプンしたからでしょう。なにしろ当時は、ここまでガチガチに素直なロックギターは、イノセントなジャズ者の敵でしたから!

しかし虚心坦懐に聴いてみれば、これほど強烈なアルバムは滅多にありません。後年の軟弱フュージョン等、足元にも及ばないクールでハードな演奏ばかりです。こういうブツが遠ざけられていた所為で、ハービー・マンの我国における評価が真っ当ではなかったと、今にして痛感しています。

機会があれば、ぜひとも体験していただきたい世界が、このアルバムにはあります。それは当時のニューロックと南部ソウルの融合から生み出された新しいジャズです。カッコイイ、もう、その一言♪

バイアグラなんて必要無しです。

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黒の楽しさ♪

2006-10-03 18:32:22 | Weblog

ようやく黒い演奏が、すんなりと体に馴染む季節になったようです。

今日も今朝からファンキー&グルーヴィンな音を体が要求する雰囲気で、仕事に向かう車の中では、これを聴き狂いました――

Face To Face / Babyface Willette (Blue Note)

ジャズオルガンの世界にはジミー・スミスという大名人がいるので、後発のプレイヤーは、どんなに頑張っても旗色が悪くなります。

それゆえに、ジョン・コルトレーンの世界を追求してみたり、ファンクの世界に流れてみたり、はたまたモロR&Bへ回帰してみたり、様々なスタイルが模索されましたが、もっと素直に! という雰囲気を濃厚に漂わせてファンを魅了したのが、ベビィフェイス・ウィレットです。

この人はシカゴ辺りのローカル・ミュージャンで、ピアノやオルガンの弾語りでマイナーレーベルにも録音を残しているらしいのですが、とにかく本場ニューヨークへ出てきたのが1960年秋頃だと言われています。

それはルー・ドナルドソン(as) の手引きもあったらしく、忽ちブルーノート・レーベルと契約してのレコーディングセッション参加は、その実力が評価された証でしょう。

もちろん当時バリバリの看板だったジミー・スミスに続く、オルガン界の新スタアという位置付けですが、ベビィフェイス・ウィレットは、よりソウル度の高いフィーリングが持ち味です。

このアルバムは、多分、本格的なリーダー盤としては最初のLP企画だと思われますが、製作者側は前述したように、まずルー・ドナルドソンやグラント・グリーンのセッションに起用して、その資質を見極めていたようです。

ですから集められたメンバーは、何の違和感も無く、ベビィフェイス・ウィレットの音楽性に付き合える者ばかりで、、名演を生み出したのもムベなるかな! 1曲を除いて全てがオリジナルというあたりも、気合が入っています。

録音は1961年1月30日、メンバーはベビィフェイス・ウィレット(org) 以下、グラント・グリーン(g)、ベン・ディクソン(ds)、そしてフレッド・ジャクソン(ts) となっています――

A-1 Swingin' At Sugar Ray's
 アップテンポのブルースで、もちろんR&B感覚が満点です。
 ベビィフェイス・ウィレットのオルガンからは分かり易いフレーズばかりが溢れ出し、もちろんその中にはジミー・スミスのリックも含まれていますが、けっこうトリッキーな音使いがあったりして、飽きさせません。
 またグラント・グリーンは単音弾きのアドリブソロに加えて、左チャンネルで聞かれるサイドギターとしてのキザミも楽しいところ♪
 そして満を持して登場するテナーサックスのフレッド・ジャクソンは、初っ端から馬力全開のブッ飛ばしです! この人はジャズというよりもR&B畑で活躍していたらしいのですが、そのツボを押さえたブローは魅力満点です。
 しかもそのバックでは、要所でベビィフェイス・ウィレットが自己主張! 4分目辺りの暴れは痛快です♪ 

A-2 Goin' Down
 一転して、これはもう、お約束のスローブルース大会です。
 グラント・グリーンとペン・ディクソンのビートの刻みも逞しく、ベビィフェイス・ウィレットは真っ黒なフレーズを出しまくり! それはスタッカートを巧みに使ったタメとツッコミで、黒人音楽好きを狂喜乱舞させるのです。ツタタタタッ、と突っ込んで、次の瞬間、ヒィ~ッと泣くオルガンは、もう、最高です。
 そして次に出るフレッド・ジャクソンが分かっているというか、これまたR&B丸出しで、最初の柔らさも好ましく、3分38秒目と4分18秒目からのキメのフレーズは、もちろんスタッカートを使ったものですから、グッときます♪ しかも途中には、ご丁寧にジョン・コルトレーンのフレーズまで出してしまうのです。
 またグラント・グリーンも、相当に過激なアタックを聞かせてくれます。

A-3 Whatever Lola Wants
 出たっ! 下世話なキャバレームードがたっぷりの名曲名演です。
 あぁ、このメロディ展開の妙なんか、一緒に口ずさんで恥かしくなるほどのアナクロ感覚♪ ベン・ディクソンの残響音が印象的なドラムスも良い感じです。
 もちろんアドリブパートではフレッド・ジャクソンが呻き泣き、グラント・グリーンは例の針飛びフレーズで応戦、そしてベビィフェイス・ウィレットがジワジワッとくる歌心を披露します。
 しかも全員がアクセントの付けどころを心得ているので、必要以上にクサミがありません。そして適度なスピード感がブルーノートならではの演奏になっています。さあ、皆さん、ご一緒に踊りましょう♪

B-1 Face To Face
 アルバムタイトル曲は、ズンドコ&ファンキーなゴスペル・ハードバップです。
 まずベン・ディクソンの擬似ドドンパのピートが心地良く、フレッド・ジャクソンのテナーサックスからは、これ以上無いほどの楽しいフレーズが連発されていきます♪ あぁ、このウネリ、この歌心、そしてタメとツッコミは、ひとつの芸術でしょう。
 もちろん、そのあたりはベビィフェイス・ウィレットも充分心得ています。全く良いフレーズの洪水で、リズム的な興奮まであるんですから、たまりません。
 そしてやっぱりこの人! グラント・グリーンがバリバリと弾きまくれば、その場は完全に黒人音楽の楽しさに満たされるのでした♪

B-2 Somethin' Strange
 これまた日活アクションを連想してしまうゴッタ煮のブルースです。
 なにしろ初っ端から埃っぽいような合奏があって、ベビィフェイス・ウィレットのアドリブソロに突入しますが、ここでのフットペタルでのベースのグルーヴが強烈です。もちろんアドリブそのものもソツが無いどころか、弾くほどにエグイ雰囲気が溢れてきます、
 それはグラント・グリーンとても同じことですが、なんとバックで伴奏するオルガンの方が目立ってしまうという恐ろしさ!
 そしていよいよ登場するフレッド・ジャクソンは、全く期待どおりの大活躍で場を盛り上げています。音色も逞しく、あぁ、この人とティナ・ブルックス(ts) のバトル盤が作られていたらなぁ……、と無いものねだりをしてしまいますねぇ。

B-3 High`N Low
 オーラスは、勢いと哀愁が同時進行するハードバップですが、黒っぽい中にもソフトな感覚の滲みが都会的♪ これはベビィフェイス・ウィレットの好ましい資質だと思います。
 フレッド・ジャクソンも気持ち良くアドリブしていますし、グラント・グリーンもほどよく肩の力が抜けた好演です。

ということで、これはなかなか黒っぽい演奏で、なによりの魅力は素直なR&B感覚でしょう。つまり楽しく分かり易いジャズなんで、本当に踊りだしたくなる瞬間が多々あります。

ですからジャズ喫茶全盛期の我国では、ブルーノート製作であるにも関わらず無視されていたアルバムです。それが今日、ちゃんとCD化されているのは、イギリスを中心とした「ジャズで踊ろう」ブームのおかげです♪

ちなみに私はグラント・グリーン蒐集の過程でこれに辿り着きましたが、1980年代では高嶺の花どころか、幻中の幻というブツで、実は初めて聴いたのが、イギリス人コレクターから貰ったカセットテープのコピーでした。そしてもちろん、1回聴いて忽ち虜の愛聴作品となり、現在では車に常備のCDで聴きまくりというわけです。

本当に楽しいジャズですよ♪

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ダスコ♪

2006-10-02 17:53:59 | Weblog

早朝から仕事でバタついて……。

でも、なんかジャズモードが戻ってきましたんで、今日は、これを――

Slavic Mood / Dusko Gojkovic (RCA)

現代ジャズ界の人気トランペッターと言えば、ダスコ・ゴイコビッチでしょう!

と、いきなり決め付けましたが、そのマイルス・デイビス系の歌心の妙、そして時にバリバリと突進するシャープなノリ、さらに重心の低いハードな演奏まで、ジャズ者の琴線を知り尽くした吹奏には、心底、シビレる他はありません。

このアルバムは1975年に欧州で発売されていますが、ちょうどその頃に、我国ではジャズ喫茶を中心として「アフターアワーズ(Enja)」というワンホーン盤が人気を呼んでいました。もちろん日本では、それがあって初めて、ダスコ・ゴイコビッチという聴きなれない名前が、ジャズファンの心に刻まれたのです。

しかし当時の日本では、欧州プレスの輸入盤は簡単に入手出来るものではなく、ましてジャズともなれば、極一部の店にひっそりと入荷しただけだったと思います。

実際、私がこのアルバムの現物を見たのは1980年代に入ってからでした。そして製作年代の割には妙に高値が付いていたので敬遠していたのですが、本音は聴きたい!

その夢が叶って、なんとCD復刻されました♪ それが本日の1枚です。

録音は1975年10月24&25日のローマ、メンバーはダスコ・ゴイコビッチ(tp)、Ben Thompson(ts,ss)、Vince Benedetti(p)、Joe Nay(b)、Andy Scherrer(ds) となっています。そして演目は全てがダスコ・ゴイコビッチのオリジナルです。

ちなみにオリジナルアナログ盤では、トラック「01」~「03」がA面に、「04」~「07」がB面に収録されているようです――

01 Slavic Mood
 タイトルどおり、如何にも「東欧」というモードが漂う、重い演奏です。
 ダスコ・ゴイコビッチの演奏からは、マイルス・デイビスの「アランフェス」っぽいノリが感じられ、それなりに楽します。またリズム隊のヘヴィなグルーヴも1970年代中期の王道モダンジャズそのもの!
 しかし失礼ながら Ben Thompson のソプラノサックスに、イマイチ個性とキレがありません。ちょっと学生っぽいというか……。
 それゆえに途中から助け舟のように絡んでくるダスコ・ゴイコビッチが見事というか、上手く山場を作っています。
 まあ、あの時代を体験していればニヤリとしますが、今ではどうでしょう、精彩の無い演奏に聞こえてしまうのが、本音ではないでしょうか……。

02 Got No Money
 ゴスペルワルツっぽいビートのハードバップですが、意図的にミステリアスな雰囲気を作り出そうとしたのが、やや裏目でしょうか……。
 しかし刺激的なキメのフレーズからアドリブパートに入るあたりの興奮度は高く、Ben Thompson も健闘しています。
 もちろんダスコ・ゴイコビッチは柔軟でファンキーなフレーズを連発♪ 思わずグッときます。そしてリズム隊は録音の所為か、ややバラけて聞こえますが、各々が熱演で、特にジョー・ナイのヘヴィなベースは、なかなかの味です。

03 No Love Without Tears
 出ましたっ! ダスコ・ゴイコビッチが十八番のダークで哀しいバラードの妙技♪
 とにかくスローでタメたテーマメロディの歌わせ方だけで、参ってしまいます。
 またジョー・ナイのベースが絶妙の絡み♪ この2人は前述の名盤「アフターアワーズ」でも共演していますからねっ♪
 あぁ、この1曲だけで、私は満足です。

04 Old Fisherman's Daughter
 ダスコ・ゴイコビッチの人気演目のひとつで、マイルス・デイビス系のミュートと歌心が堪能出来ます。ちなみに、これは前述の「アフターアワーズ」でのバージョンが決定版とされていますが、これはこれで、良い味が出ていると思います。
 ただしアドリブパートがほとんど無い、テーマ中心の吹奏です。しかしそれゆえに良いという、逆もまた、真なりです。

05 Kosmet
 またまた1970年代ノリのモード演奏です。それはもちろん「東欧」がキーワードでしょうか、とにかく聴いているうちに、当時のジャズ喫茶にタイムスリップする感覚に捕らわれます。
 ただしダスコ・ゴイコビッチのトランペットからは、温か味が失われることがありません。本当に良いフレーズの連発です!
 そして中間では、この頃のお約束的なテンポフリーの展開から、一転して激烈ビートでのサックスが突進という展開にっ! もちろん、その後はドラムスが炎のソロを展開するのでした。 

06 East Of Montenegro
 ちょっとホレス・シルバー(p) みたいなリズムパターンとメロディを持った曲です。しかも中間部はマーチテンポになったりして変化があります。
 したがってアドリブパートでも、そこが待ち遠しい展開です。
 相変わらず Ben Thompson のサックスは学生っぽいのですが、ダスコ・ゴイコビッチは流石のハードバップ魂を炸裂させていますし、リズム隊もソツがありません。

07 Flying Rome
 オーラスは痛快なハードバップです!
 しかも、これまたホレス・シルバー調ですから、たまりません♪
 こういう曲では Ben Thompson もボロを出していませんし、リズム隊もバカノリ寸前です。しかしダスコ・ゴイコビッチは、落ち着きを失いません。ソロリと出て、徐々に熱くなっていくという、これが当にベテランの味です。そして終盤のドラムスとの対決では、いきなりマグマの噴出! う~ん、演奏時間が短いのが残念無念です。

ということで、正直いうと、それほどの仕上がりではありません。分離し過ぎている録音にも好き嫌いか分かれるでしょう。オリジナルのアナログ盤を聴いたことはありませんが、マスタリングもまあまあだと思います。

しかし、やっぱり、聴きたいでしょう、なにせ、ダスコ・ゴイコビッチですからっ♪ ズバリ、この人が中心となった演奏ならば、全部OK! というのが私です。

ちょっと贔屓の引き倒しでしょうかねぇ。好きなんだから、今日はご容赦願います。

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