OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

爽快トランペット盤

2006-10-22 17:25:28 | Weblog

昨日、急病で倒れた友人の意識が戻り、お見舞いに行ってきました。

それでも、まだ、思うように喋れず、まだ手足も不自由なんですが、とりあえず命に別状は無いということで、今後の療養とリハビリに頑張ってほしいところです。

まあ、口で言うのは簡単ではありますが、私としては、そう言う他はありません……。

ということで、本日は景気づけの1枚です――

Trumpets & Rhythm Unit / Dusko Gojkovic (RTB)

なんだかんだ言っても、私が一番好きなトランペッターはダスコ・ゴイコビッチです! 基本はマイルス・デイビスなんですが、柔らかな歌心と哀切のフレーズ、リズムへの絶妙なアプローチ、等々が理屈を超えて私の琴線にふれるのです。

さて、このアルバムはユーゴスラビアの国営放送曲が、1979年にラジオ放送用として製作した音源を、勝手に自前のレコード会社で出してしまったブツで、その後の国内事情と内乱により、完全に幻化していた1枚です。

なにしろダスコ・ゴイコビッチ本人が、レコード化されていたのを知らなかったのですから!

しかし内容は素晴らしく、タイトルどおり、4人のトランペッターを起用したアンサンブルと鉄壁のリズム隊が見事に噛合った秀作です。

さらに、私が入手したのはもちろん復刻CDですが、そこには2曲のボーナストラックまで収録されていたのですから、感涙するしかありません。

録音は1979年3月16&17日、メンバーはダスコ・ゴイコビッチ(tp,arr)、ペロ・ユーグリン(tp)、ストイエプコ・ガット(tp)、ラディスラフ・フィドリ(tp)、ボラ・ロコヴィッチ(elp)、クレシミール・レメタ(b)、ブラニスラフ・コヴァセフ(ds) という、舌を噛みそうなメンツです――

01 Quo Vadis Samba
 タイトルどおり、サンバのリズムで繰り広げられる哀愁のマイナーメロディは、ダスコ・ゴイコビッチのオリジナル♪ いきなり胸キュンの世界です。
 もちろんアドリブでも、ソフトな美メロの連続! トランペッターが2人登場しますが、多分、先発がダスコ・ゴイコビッチでしょう。
 リズム隊ではエレピが使われていますが、何の違和感も無く、むしろ効果的で気持ち良いほどです。またホーン・アンサンブルとリズム隊の絡みも素直なアレンジで、疲れません。

02 In The Sign Of Libra
 基本はスローな8ビート、さらにエレキベースにエレピが使われているので、フュージョン色が濃くなっていますが、しかし、これは大野雄二の「ルパン三世」の世界です♪
 つまり、泣きのメロディが際立つテーマから、マイルス・デイビス直系の思わせぶりなトランペット! ダスコ・ゴイコビッチ自らのツボを押さえたアレンジが冴えていますから、もうアドリブの領域を超えた完成度があります。
 またボラ・ロコヴィッチのエレピが良いんです♪

03 Rufus
 マイルス・デイビス風のモードジャズが快適に展開されますが、元ネタは「So What」でしょうか? もちろんダスコ・ゴイコビッチが水を得た魚状態という絶好調のアドリブソロです。
 二番手で登場するトランペッターは誰か不明ですが、この人もまた、マイルス・デイビス系ですし、ここでもボラ・ロコヴィッチのエレピが素晴らしいです!

04 Donna Lee
 説明不要のビバップ名曲ですから、ここでも全員が大ハッスル! 過激なスピードと絶妙なホーンアンサンブルが冴えに冴えていますし、リズム隊もビシッとキメまくりです。
 しかしダスコ・ゴイコビッチは必要以上に熱くならず、基本に忠実なフレーズの連続が潔い限りです。またボラ・ロコヴィッチのエレピが素晴らしく、あぁ、何度も言わせないでくれっ♪ 本当に、グッときますねぇ~♪ 背後で炸裂する4本のトランペットアンサンブルも強烈です。
 そしてクライマックスはダスコ・ゴイコビッチとドラムスの対決です! 爽快地獄ですよぉ~~~♪

05 Adaptation Blues
 オリジナルのアナログ盤では、ここからがB面になっているようです。
 この曲はハードバップがモロ出しの痛快なブルースで、カッコイイとしか言えません♪
 アドリブパートでは3人のトランペッターが登場しますが、ダスコ・ゴイコビッチが、多分、先発でしょう。、もちろん良いフレーズしか吹きません。
 ところが他のメンツが、これまたマイルス・デイビス系の実力者なんですから、嬉しい誤算です。もちろんアンサンブルでも一糸乱れぬ凄さがあります。
 そしてリズム隊のエレピとエレキベースの使用が、ここでは最高に効果的で、現代的なスピード感が増幅された雰囲気ですし、ドラムスが、これまた基本に忠実で凄い実力者なんですねぇ~♪ 世界は広いです。

06 Summertime
 マイルス・デイビスの決定的な名演にダスコ・ゴイコビッチが果敢に挑戦して、見事に答えを出してしまいました。もちろん、ミュートですから、たまりません。
 なにしろアドリブの入りに「You Be So Nice」を引用したり、全篇にタメとツッコミが絶妙の歌心♪ バックのソフトなアンサンブルも好印象です。

07 Majority Of One
 如何にも1970年代というアフリカ風モード曲で、なんと言ってもリズム隊が、まず好演です。重厚なホーンアンサンブルとエレピのコントラストが良いんですねぇ~♪
 曲の展開は途中からマーチアンサンブルに変わり、直後に高速4ビートに転換してのアドリブパートでは、トランペッター4人の激突です。ダスコ・ゴイコビッチは、多分、二番手で登場していると思いますが、全員が強烈なソロの応酬です。
 そして大団円ではドラムスが乱入してのバトル大会! 

08 Festival Blues
 以下の2曲は今回のボーナストラックです。
 この曲はリラックスしたブルースで、4人のトランペッター各々が持ち味を発揮していますが、いずれもマイルス・デイビス系ですからねぇ~♪ 否、ここではダスコ・ゴイコビッチ系というべきでしょうか……。
 肝心のリーダーは最後に登場し、ミュートとオープンの両刀使い!

09 The Ambassador
 アップテンポのハードバッブで、クールで熱い演奏が最高です。
 ダスコ・ゴイコビッチは左チャンネルからアドリブ二番手で登場し、暖かい歌心と泣きのフレーズを存分に聴かせてくれます。もちろんホーンアンサンブルも素晴らしく、リズム隊もキマッていますので、オリジナルLPに入らなかったのは時間的な制約でしょう。CD万歳です!

ということで、ようやく聴けるようになった作品ですが、噂に違わず爽快なアルバムでした。

聴かず嫌いになりそうなエレキベースとエレピの使用は全く気にならず、むしろそれゆえに、このアルバムの演奏が冴えているほどです! 騙されたと思って聴いてみて下さい。

日活や東映あたりのアクション物映画音楽に使われても違和感が無いはずですし、とにかくカッコイイ演奏ばかりなんです♪ タイトなリズム隊にシャープなホーンアンサンブル! 本当にスカッとして和みますよっ!

まあ、本音を言えば、トランペットのアドリブはダスコ・ゴイコビッチだけにして欲しかったところですが、他の3人もなかなかの実力者ですから、寛容な気持ちでノッて下さいませ。

コメント (2)
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