ちょっと気が早いとはいえ、もうそろそろ、年末の宴会芸を考えねばなりません。
毎年、「ひとりジミヘン」とか「不良番長」じゃ、顰蹙になっていますからねぇ……。ギター侍もやったんですが、ウケがイマイチでした……。
ということで、そんな事を思う現在の幸せを大切にしつつ、本日は――
昨日に続いてユーゴのジャズです。
まあ、好きなんですから、ご勘弁を♪ 内容が本当に秀逸なんですよ! もちろんこれも日本でCD復刻されたものですが、オリジナルはウルトラ幻の10吋盤で、現在3枚シリーズになっていますが、この「2」が個人的には一番気に入っています。
録音は1961年3月4&5日、製作の「RTB」とはユーゴの国営放送局のことです。
メンバーはフランスから訪れたジャック・ディーヴァルのクインテット=ジャック・ディーヴァル(p)、ベルナール・ヴィテ(flh)、フランソワ・ジャノー(ts)、ジャック・ヘス(b)、アート・テイラー(ds) に、地元の俊英=プレドラグ・イワノビッチ(tp) とエデゥアルド・サジル(ts) が加わったジャムセッション形式ながら、非常に纏まりのある演奏ばかりです――
01 Pennies From Heaven
初っ端からドラムスとベースにピアノが加わってグルーヴィな雰囲気が提示され、有名なスタンダード曲が和んで演奏されます。
テーマをリードするエデゥアルド・サジルのテナーサックスはデクスター・ゴードンとハンク・モブレーの中間の様な好ましいもので、我国の松本英彦という雰囲気もあります。
続くベルナール・ヴィテはクールなクラーク・テリーという趣で、ちょっとマイルス・デイビスにもなっていますし、フランソワ・ジャノーは当時バリバリのジョン・コルトレーン!
おまけにプレドラグ・イワノビッチはミュートトランペットで、完全にマイルス・デイビスになっていますから、たまりません。
演奏はこの後、フロントのホーン陣が入り乱れてのバトルとなりますが、リズム隊が力強く安定しているので、終始、素晴らしい展開が崩れません。ちなみにドラムスのアート・テイラーは、ハードバップ期に本場アメリカで大活躍した名手で、この頃から頻繁に欧州へ出稼ぎしていた記録が、これです。
あぁ、それにしてもアレンジもほどよく刺激的ですし、欧州でもマイルス・デイビスとその一党の影響が如何に強かったか、窺い知れるのでした。
02 Moonlight In Vermont
スタン・ゲッツの演奏があまりにも有名なスタンダード曲を、ここではプレドラグ・イワノビッチがミュートトランペットでクールに、そして暖かく歌い上げてくれます。
それはもちろん、マイルス・デイビスの影響が色濃いものですが、ハリー・スウィート・エジソンの味さえも感じられます。
03 Gloria
これは前曲からのメドレー形式でスタートするムーディなスロー曲で、エデゥアルド・サジルのテナーサックスが太く逞しい部分からサブトーンの魅力まで、当に王道の響きをたっぷりと聴かせてくれます。
う~ん、やや古いスタイルですが、いつまでも聴いていたい歌心に満ちていますねっ♪
04 Theme No.4
ここからはオリジナル盤ではB面となり、ジャック・ディーヴァル・クインテットの演奏となります。
これはアート・テイラーのハードなドラムスが導く楽しいハードバップのブルースで、アドリブ先発のベルナール・ヴィテが完全にマイルス・デイビス♪ 続くフランソワ・ジャノーは、もちろんジョン・コルトレーンという、当時第一線のスタイルを絶妙にコピーしていますが、憎めません。
リズム隊ではジャック・ヘスのベースがワイルドにドライヴしていますし、アート・テイラーは言わずもがなのタイトなビートを送り出しているのですから、演奏は白熱していくのでした。
それにしても、こんな演奏がブラインドフォールド・テストで出題されたら、誰も当てられないでしょうねぇ……。ジャック・ディーヴァルのピアノはセロニアス・モンクがビル・エバンスしたような、これも憎めないスタイルですから♪
05 My Birthplace
リズム隊だけの演奏で、ちょっとドビッシー風のイントロ~テーマが魅力的です。
ジャック・ディーヴァルはクラシックとジャズの両刀使いらしく、なかなか洒落たスタイルを聴かせてくれますねぇ♪ テンポの選択も好ましく、ストライド~ビバップ、さらにはモード~クラシックと様々なスタイルをゴッタ煮にして聴き手を飽きさせないのは、流石だと思います。
06 Bon Voyage
締め括りは粋なモダンジャズになっています。
まずジャック・ディーヴァル中心のお洒落なビアノトリオが雰囲気を作り出し、ベルナール・ヴィテのフリューゲルホーンが優しく歌い、フランソワ・ジャノーはコルトレーンになっていますが、それはそれとして、アート・テイラーの強靭なリズムに支えられた快演になっています。
ということで、当時の欧州ジャズも、やはりマイルス・デイビス、ジョン・コルトレーン、そしてセロニアス・モンクの影響下にあったことが分かります。
参加ユーゴ組は、当時、国内でジャズが冷遇されていたにもかかわらず、反共ラジオ放送から流れるアメリカのジャズを熱心に聴いてコピーしていたとか! それを完全に自己の表現にしようと奮闘している様が、ここに記録されたのは幸いでした。
私は同じユーゴ人ジャズメンのダスコ・ゴイコビッチというトランペッターが大好きですが、そのマイルス・デイビスに似ている演奏スタイルが、なにもこの人だけでなかったという事実! とりわけプレドラグ・イワノビッチのミュート・トランペットには、あまりにもズバリと核心を突かれて、ドギマギしてしまいました。
機会があれば、ぜひとも聴いてみて下さいませ。ニヤリとして和みますよ♪