OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

パリのズート

2006-10-13 17:30:27 | Weblog

気の合う人との仕事は、やっぱり良い!

もちろん馴れ合いになってはいけないわけですが、阿吽の呼吸というか、仕事とは言え、楽しい達成感、みたいなものがありますねぇ。

今日はそんな1枚を――

Zoot Sims On Ducret Thomson (Ducret Thomson)

ズート・シムズとパリは相性が良い♪

確かに、この人のパリ録音には傑作が多いのですが、そう言われるのも本日の1枚があっての事です。

録音は1956年3月16日のパリ、メンバーはジョー・アドレイ(tp)、ズート・シムズ(ts)、アンリ・ルノー(p)、Benoit Quersin(b)、Charles Saudrais(ds) です――

A-1 Captaen Jetter
 アンリー・ルノーが書いた哀愁のハードバップ曲です。
 そしてこういうものなら、ズート・シムズは得意中の得意♪ 淀みなく和みのフレーズを吹きまくって、安らぎのアドリブ天国を現出させています。
 そのスタイルはレスター・ヤング系の柔らかいフレーズが基本になっていますが、やはりモダンジャズ時代の突っ込みのあるテンションが特徴でしょうか、和みの中に潜む刺激がクセになるのです。
 また相方のジョー・アドレイもビバップというよりは、プレモダンの中間派的な響きありますし、リズム隊も若干、その傾向があるので、そういう最高の相性が、この快演を生んだのでしょう♪
 思わずラストテーマを口ずさんでしまいますねぇ~♪

A-2 Muzzolese Blues
 かなりハードボイルドなブルースで、ズート・シムズはサブトーンから思い切った低音域までを駆使して、素晴らしいアドリブを展開しています。それは和んでいながら、かなり黒っぽいところまで行っているのです。
 そして続くジョー・アドレイのトランペットが、また、最高です。決して新しいスタイルではないのですが、チェット・ベイカー味がありますし、それ以前のカンサスシティのスタイルというか、土の感触を様式美として表現しているようです。
 またアンリ・ルノーはニューオリンズ系R&Bの味を漂わせた伴奏とアドリブが、これも素敵ですねぇ~♪ それとなくバックビートを強調したベースとドラムスも良い感じです。本当に何度聴いても飽きません。

A-3 Everything I Love
 これも快適なビートにノッた哀愁のハードバップですから、たまりません。
 こういう味はズート・シムズしか出せないような気がするほどです。
 とは言え、先発でアドリブを聞かせるジョー・アドレイが泣きのフレーズを連発していますし、続くアンリ・ルノーも本当に味わい深い美メロばっかり弾いているのです♪
 そしてズート・シムズ! やっぱりこの人の名演のひとつでしょうねぇ~、これはっ! とにかく聴いて納得のアドリブが完成されているのでした。
 ちなみに作曲はコール・ポーターですが、これが最高のバージョンかもしれません。

B-1 Evening In Paris
 クインシー・ジョーンズが書いた有名なジャズオリジナルを、ズート・シムズはダークに味わい深く演じてくれます。
 あぁ、この音色の魅力に、まずKOされますねぇ~♪ 演奏者の本音とためいき、とでも申しましょうか……。とにかくテーマメロディの解釈が抜群です。
 短い演奏ですが、ズート・シムズの一人舞台が存分に味わえます。

B-2 On The Alamo
 これも哀愁系のスタンダードが和んで演奏されています。
 テーマをリードするジョー・アドレイのトランペットもハスキー味で素晴らしく、アドリブパートでの引っ込み思案な内気の解釈に、胸キュン状態です。
 アンリ・ルノーのピアノも趣味が良く、続くズート・シムズは歌心の塊ですから、いつまでも聴いていたい快演で、全く独自のドライヴ感には脱帽♪ ラストテーマの絡みの上手さも、名人の証明でしょう。

B-3 My Old Flame
 美メロのスタンダードを、より美しく吹奏してしまうズート・シムズ♪ これだけ和んでテンションの高い演奏を残すのですから、この時期は当に神がかりだったのでしょう。
 実際、この1956年をズート・シムズの全盛期とするファンが多く、残された録音は全てが世界遺産という輝きとシブサがあるのです。
 もちろんジョー・アドレイもハスキーな音色で魅力的♪
 そしてラストテーマのブレイクではズート・シムズの真髄がっ!

B-4 Little Jon Special
 アルバムの最後を飾るハードバップはジョー・アドレイの作曲で、溌剌としたテーマからズート・シムズが猛烈なドライブ感に満ちたアドリブに突入するのですから、これが嫌いなジャズ者はいないはずです。
 あぁ、それにしてもここでのズート・シムズは、かなり前衛的なフレーズまでも入れ込んで圧巻の出来! あまりに突進力が強すぎて、途中で我を忘れてしまう場面すらありますが、直ぐに体制を立て直してからはスイング&グルーヴィンの嵐です。
 またジョー・アドレイも思いっきりハードバップしていて爽快ですし、余計な手出しをしないリズム隊が快適なビートを送り出しているのも、高得点♪

ということで、これは文句無しの傑作盤です。

一時は幻化していた作品でもありますが、現在はCD復刻されていますので、聴かずに死ねるかの1枚でしょう。なによりも、聴いているうちに一緒に口ずさめるフレーズばっかりですからねぇ~♪ ジャズの楽しさが、いっぱい、詰まっているのです。

そして個人的にはズート・シムズのベスト5に入れています。

ちなみにズート・シムズとアンリ・ルノーは本当に相性が良いみたいで、5年後には「ズート・シムズ・イン・パリ(United Artists)」なんていう名盤を残しており、それも必聴ですよ。

コメント (2)
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