OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ユーゴのジャズ

2006-10-17 17:35:24 | Weblog

さて世界は某国の核実験によって、どうにもキナ臭いものが漂いはじめています。

実は私は以前、ボスニア紛争の折にドイツで、避難民が集っているキャンプを訪れたことがありますが、悲惨の一言でした……。

そこで本日は、その国で製作された幻の1枚です――

Meeting In Studio (RTB)

私の大好きなトランペッターのダスコ・ゴイコビッチは、良く知られているようにユーゴスラビア人で、この人の実力はジャズの歴史に残るはずです。ということは、その故国のジャズシーンも非常に充実したものであろうと、推察出来ます。

しかし残念ながら、1980年代後半までは、ユーゴスラビアも含めて、欧州ジャズの実態に触れることは、非常に困難を極めました。しかも諸情勢によってユーゴスラビアの存在が否定される等の動きもあったのです。

ところがバブル期になって、当時の貴重盤が経済力さえあれば聴けるようになったのですから、罪作りです。

しかし救いの神は、必ず現れるというか、本日の1枚は超幻のユーゴスラビア・ジャズシーンを記録した、オリジナルは10 吋盤の復刻CDです。

録音は1960年6月16日、メンバーはボスコ・ペトロビッチ(vib)、ダボール・カイフェス(p) というユーゴ組に加えて、ジェローム・リチャードソン(ts,fl)、ジュリアス・ワトキンス(frh)、バディ・カトレット(b)、ジョー・ハリス(ds) というアメリカ組の共演セッション♪

ちなみにアメリカ組は、当時、欧州巡業中だったクインシー・ジョーンズ楽団からのピックアップメンバーです――

01 Two Songs
 快適なテンポで繰り広げられるソフトバップです。
 つまり柔らかな曲調とアレンジがウエストコースト風でありながら、ビートは黒くて強いビバップという、なかなか好ましい演奏です。
 アドリブの先発はダボール・カイフェスのピアノが良い感じ♪ 続くジェローム・リチャードソンのテナーサックスはハードスイングで、可もなし不可もなしでしょう。
 しかしボスコ・ペトロビッチのヴァイブラフォンは、硬質なファンキー・フィーリンクがたっぷりです。
 そして、それを受け継ぐジュリアス・ワトキンスのフレンチホルンが、これまた妙なスイング感なんですねぇ~♪
 リズム隊のドラムスとベースは新しい感覚ではないのですが、フロント陣に影響されたか、なかなかの好演だと思います。

02 Way In Blues
 ジェローム・リチャードソンのオリジナル曲で、無機質なファンキー・フィーリングが絶妙、というか如何にも1960年という解釈になっています。
 アドリブパートではバディ・カトレットのベースソロに続いて現れるジュリアス・ワトキンスのフレンチホルンが、かなりファンキーです。
 またボスコ・ペトロビッチのヴァイブラフォンもクールで熱く、ミルト・ジャクソンの味わいを脱色したようなフレーズが素敵ですねぇ~♪
 しかしジェローム・リチャドソンが、何を勘違いしたか、妙に古臭いノリに終始してしまうんですよ……。まさか自作のお手本がこれっ、ということは、無いでしょう……。もっと新しい感覚で良かったのでは無いでしょうか?
 なにしろダボール・カイフェスのピアノが引張るリズム隊が、素晴らしいですからねぇ~♪

03 Minor Flute
 タイトルどおりにジェローム・リチャードソンのフルートが活躍する、ミディアムのハードバップです。そして、このマイナー調を大切にして、絶妙のソロを聴かせてくれるのです♪ う~ん、素晴らしい♪
 淡々としたリズム隊のグルーヴも懐が深く、ジュリアス・ワトキンスも深遠な世界を表現しようと苦悶するあたりが、琴線に触れます。
 またダボール・カイフェスのピアノは、ここではビル・エバンス調というか、如何にも欧州のミュージシャンらしいコードの使い方が、新鮮です。
 それとバディ・カトレットのベースソロの背後で絶妙な余韻を漂わせるボスコ・ペトロビッチのヴァイブラフォンが、最高のスパイスですねぇ~♪ なんか映画音楽のようです。

04 Night In Tunisia / チュニジアの夜
 モダンジャズでは定番曲なので、ここには各人のアドリブソロで実力の優劣を判定する楽しみがあります。
 テーマからのブレイク、そして先発のアドリブはボスコ・ペトロビッチのヴァイブラフォンで、これが王道一直線の素晴らしさ! クールで熱いフレーズとノリは楽しい限りです。
 またジュリアス・ワトキンスは本場の底力を発揮していますし、ダボール・カイフェスのピアノも健闘していますが、ジェローム・リチャードソンが、無難過ぎて面白くありません。
 しかしそれを救うのがジョー・ハリスとのソロチェンジ♪ う~ん、演奏時間が短いのが残念至極です。

ということで、オリジナル盤はトラック「02」を境にAB面が分かれているようです。

そして個人的にはアメリカ組より、ユーゴ組に心惹かれてしまいますねぇ~。このシリーズは他に2枚出ていますが、いずれもジャズ者の気を惹く作りになっています。

しかも今回の復刻は、オリジナルジャケットに忠実な紙ジャケット仕様! たまりませんねぇ~。あのバブル期、どうしても手が出なかった高嶺の花が、復刻物とはいえ手元で聴けるこの幸せ♪ 大切にしたいものです。

コメント
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