■クレオパトラの涙 / 由紀さおり (東芝)
由紀さおりが優れたボーカリストである事は言うまでもありませんが、夥しく残されている音源の中には、それゆえに埋もれている名曲名唱が少なくありません。
つまり彼女の場合、歌謡曲やジャズ、あるいは童謡等々に特定のファン層が強く存在している所為でしょうか、例えば本日ご紹介の「クレオパトラの涙」のように、単発で映画主題歌に用いられたものは、あえてヒット街道から離れたところに置き去り(?)にされた感があるのでは……?
と書いたのも、実はサイケおやじが由紀さおりの「クレオパトラの涙」を知ったのは、これが世に出た昭和45(1970)年よりも相当に後であって、虫プロで作られた大人向けのアニメそのものについては観ていたものの、主題歌がレコード化されていたとはっ!?
まさに中古屋での邂逅は青天の霹靂でありました。
もちろん歌の素晴らしさはサイケおやじに染み込んでいましたから、ブツはそのまんま、速攻レジにて、お買い上げ♪♪~♪
それがなんとっ! 先月末のことでありました、はい。
で、肝心の「クレオパトラの夢」は作詞が中山千夏!
さらに作編曲が富田勲という、これぞっ! 驚愕のコンビネーション!
あぁ~、今日は書いていて、思わず「!」を多用している自分に気がついているんですが、実際にそういう気分なんですよねぇ~♪
なにしろ曲メロや演奏パートの雄大さに負けず劣らずのボーカルが、由紀さおりならではの透明感と伸びのある個性で貫かれ、中山千夏の綴った歌詞の意味深なセクシーさも特筆物でしょう。
もう、何度でも繰り返し針を落す作業が、ナイル川の流れの如き永劫と成り得るほどです。
うむ、今年のサイケおやじの猟盤の中では、なかなか上位にランクしたいブツではありますが、決して珍しいレコードではないかもしれませんし、「クレオパトラの夢」にしても、彼女のベストアルバムには定番で収められているにちがいありません。
ただ、それが映画音楽扱いであったがゆえに、イマイチ有名ではなかったという事なのでしょう。
ちなみにレコードのB面に収録されているのが、六文銭というフォークグループが演じた「ゲリラの歌」っていうのも、そっち方面のファンやマニアにはコレクターズアイテムなんでしょうが、サイケおやじは一度聴けば、義理は果たしたというのが本音なんで、悪しからず。
ということで、レコード蒐集の楽しみは、尽きせぬ海の真砂です。
だからこそ、ど~しようもない日常生活に疲れた時、フラフラと入ってしまう中古盤屋がサイケおやじのオアシスであり、絶望も欲望も全ては喜びと快感に転化されるよう、精進を重ねていると言えば、大袈裟ですよねぇ……。
はい、それは自覚しておりますが、それでも本日掲載のシングル盤に出会ってしまうという僥倖があればこそ、乗り越えられるものもあるのでした。