■Johnny Winter (Columbia)
これはサイケおやじが初めて聴いたジョニー・ウィンターのアルバムで、掲載したのは後に買い直したアメリカ盤なんですが、もちろん最初は昭和44(1969)年に我国で発売された国内盤、それも中学の同級生からの借り物でありました。
さて、ここまでの経緯については拙プログでも以前に書いていますが、とにかくジョニー・ウィンターという白人ブルースマンは物凄いギタリストでもありましたから、アメリカでの宣伝文句は「百万ドルのブルースギタリスト」なぁ~んていう衝撃(?)のキャッチフレーズが、そのまんま、我国でも通用していました。
ところがジョニー・ウィンターは、件の巨額契約金で大手レコード会社のコロムビアと契約する以前の下積み時代、幾つかのマイナーレーベルにレコーディングを残していた、如何にも当然の活動がありましたから、メジャーデビューの大宣伝に便乗するような状況で、それらの音源がアルバムに纏められて出回り、なんとっ! 日本では掲載のアルバムよりも早く出たプレデビュー盤に「百万ドル」云々の邦題が用いられていたのですから、穏やかではありません。
そこで日本での発売元であったCBSソニーでは、このアルバムに「世紀のスーパー・スター」という、些か気恥ずかしくなるような邦題を附したわけですが、それはそれとして、確かに中身は強烈でしたっ!
A-1 I'm Yours And I'm Hers
A-2 Be Careful With A Fool
A-3 Dallas
A-4 Mean Mistreater
B-1 Leland Mississippi Blues
B-2 Good Morning Little School Girl
B-3 When You Got A Good Friend
B-4 I'll Drown In My Own Tears
B-5 Back Door Friend
収められている演目はジョニー・ウィンターのオリジナルが「I'm Yours And I'm Hers」「Dallas」「Leland Mississippi Blues」の3曲、それ以外の6曲が、どうやら黒人ブルースやR&Bのカパーという構成ですから、基本的にはブルースロックと思い込んで聴き始めたサイケおやじが、いきなりブッ飛ばされる内容でした。
つまり当時のサイケおやじは、「ブルースロック」が「ブルース」であると勘違いしていたわけで、それは本物の黒人ブルースにほとんど接したことが無かった事が原因でしょう。
ですからジョニー・ウィンターが聴かせてくれた演奏が、それまで体験していたジョン・メイオール、エリック・クラプトンのヤードバーズやクリーム、ピーター・グリーンのフリートウッド・マック等々とは完全にノリが異なっていたのもムペなるかな、ブルースを基本線に据えたニューロックとも全く違った、その小細工の無いストレートな感情の爆発を聞かせてくれるところには、ある種の怖さを感じさせられたほどっ!?
なにしろA面ド頭の「I'm Yours And I'm Hers」からして、ドロドロですからねぇ~~。どっしりヘヴィなドラムスとベースに唸るギターの豪快さは、ちょっぴりストーンズみたいな感じもしましたが、実はこのアルバムがアメリカで発売された1969年6月の直後、ストーンズがブライアン・ジョーンズ追悼で開催した例の「ハイドパーク・コンサート」で、その幕開けにぶっ放したのが「I'm Yours She's Mine」と改題した同曲でありました♪♪~♪
まあ、そういう経緯云々は当時のサイケおやじには知る由も無かったんですが、この曲に限らず、アルバムの随所で聴かれるスライドギターは、それまで知っていたストーンズのブライアン・ジョーンズのプレイとは似て非なるフィーリングであり、しかもこれまたジョニー・ウィンターのオリジナルである「Dallas」におけるアコースティックギターのスライド奏法には、全くどうやって弾いているのか見当すらつかず、困惑させられましたですねぇ~~。
もちろんそういう感じは収録全トラックにおいて、大袈裟ではなく、摩訶不思議の連続であり、告白すればサイケおやじは既にギターを少しは弾けるようになっていた事もありましたから、コピーしようと躍起になればなるほど、ドツボ状態……。
ちなみにその頃、サイケおやじが弾いていたのはエレキでは無く、クラシックギターに鉄弦を張っていたレキントギターのスタイルだったんですが、こういう演奏に触れる度に、あぁ~、エレキが欲しいなぁ~~~、と心底思いつめていた事は言うまでもありません。
そうです、これはやっぱりギタリストがヒーローであった時代なればこその作品であり、かなりダーティーなジョニー・ウィンター本人のボーカルが如何に力んでも、リスナーはギタープレイをメインに聴いてしまうのが本当のところだと思いますし、実際に「Be Careful With A Fool」での冒頭からの弾き倒し、「Mean Mistreate」での粘っこさ、「Leland Mississippi Blues」や「Back Door Friend」における低重心プレイ等々には常に圧倒されるばかり!
また、アップテンポの「Good Morning Little School Girl」では、バンドアンサンブル優先主義が流石ですし、R&B保守本流の「I'll Drown In My Own Tears」がオリジナルのレイ・チャールズに敬意を表するジャズフィールで歌われるのは、濃厚ではあるけれど、違和感を打ち消せなかったのがサイケおやじのその頃の本音でした。
ただし弾き語りスタイルの「When You Got A Good Friend」は、その意味で逆に新鮮というか、こういうブルースもOK♪♪~♪ なぁ~んていう不遜な気持になったのも、この歌が未だ邂逅していなかったロバート・ジョンソンのオリジナルであったのですから、なかなか意味深な感慨かもしれません。
そして書き遅れていましたが、このアルバムセッションを支えたバックミュージシャンはトミー・シャノン(b) とアンクル・ジョン・ターナー(ds) がリアルタイムのバンドレギュラーであり、また随所で活躍する実弟のエドガー・ウィンター(key,sax)、さらにはウィリー・ディクソン(b) やウォルター・ホートン(hmc) という大物黒人ブルースマンの参加も強い印象を残しています。
ということで、これを聴きまくったサイケおやじは若気の至りか、あるいは借物ゆえに自分のお金を払っていない気安もあり、イマイチ馴染めない気分だったのはバチアタリと今は痛切に反省しています。
しかもこれを貸してくたれ友人が、ある日突然に引っ越してしまって、どうやら真相は家族経営の工場が倒産した事が原因らしいのですが、とにかくしばらくの間、それが手元にあったという恵まれた環境での贅沢だったんですから、我ながら呆れた話……。
告白すればサイケおやじが本当にジョニー・ウィンターにシビれきったのは、1971年に世に出たライプアルバムからシングルカットされた「Jumpin' Jack Flash」に接してからであり、同じ頃にようやく弾けるようになったエレキギターがあればこそっ!
現在では自己形成の一端を担ってくれた、その感謝の念を抱くレコードになっているのでした。