■My Little Town c/w Rag Doll / You're Kind
/ Simon & Garfunkel (Columbia / CBSソニー)
1970年代の洋楽ファンにとって、ぽっかりと虚ろな気分にさせられたのがビートルズ、そしてサイモンとガーファンクルの活動停止だった事は、独りサイケおやじだけの体験では無いと思います。
その要因は様々に報じられ、各方面でも多様な分析が飛び交うほどの錯綜した物語があろうとは思いますが、ビートルズの場合が人間関係の縺れであった事に対し、サイモンとガーファンクルは???
そんな結論めいた推理が何時しか真相と受け取られたのですから、ファンにとっては溜息しか……。
しかしサイモンとガーファンクルが、1970年に出した傑作アルバム「明日に架ける橋」が今も超絶の存在である以上、ポール・サイモンは音楽的主導権を明示するためでしょうか、以降は逸早く自身名義のレコードを出しているのに対し、アート・ガーファンクルは俳優と歌手の並立活動へと進んだわけですから、なにか独り暮らしの気楽を求めていたような気もします。
つまりビートルズのその後と決定的に違うのは、既に現在までの実績が示されているとおり、サイモンとガーファンクルの活動停止と再結成は、最初っからの「お約束」だった言われても、それは嬉しい誤算だったのかもしれません。
そこで本日掲載のシングル盤は、1975年に発売されたサイモンとガーファンクルの久々の再会を記録したものとして、昔っからのファンには涙の1枚でありました。
とにかく、これが世に出るという報道は、まさにセンセーションだったんですよっ!
そして登場した「My Little Town」は、如何にもサイモンとガーファンクルらしい、穏やかな曲調と辛辣な歌詞の融合がニクイばかりではありますが、やはり5年のブランクがあった所為でしょうか、妙な疎外感が滲む仕上がりは??? という思いが隠せません。
もちろん曲を書いたのはポール・サイモンであり、レコーディングの過程におけるアート・ガーファンクルとの共同作業によって、そのメロディ&ハーモニーが熟成される方法論は、ここでも普遍だったと思います。
一説によると、ソロシンガーとして大傑作アルバム「天使の歌声」を作り出したアート・ガーファンクルに対し、その甘っちょろい歌の中身には苛立ちを隠せなかったポール・サイモンが、あえてダーティーな隠し味が効いた歌詞の「My Little Town」を盟友にやらせようと画策したのが、このシングル制作の発端だった!?
そんな報道もあったのですから、隙間風を感じてしまうのは、ファンなればこその宿業なのかもしれません。
ところが、流石にサイモンとガーファンクルの細工は流々!
なんとっ! 件のシングル盤のB面はアート・ガーファンクルとポール・サイモン各々のリーダーレコーディングが入った2曲仕様なんですから、侮れませんねぇ~♪
特にアート・ガーファンクルの「Rag Doll」は、曲良し、歌良し、雰囲気良しの決定版! ちなみに邦題も「悲しきラグ・ドール」とされながら、フォー・シーズンズの人気ヒットとは別曲なのが要注意! こちらは後にカーペンターズに「ふたりのラブ・ソング / All You Get From Love Is A Love Song」を提供するスティーヴ・イートンの会心作なんで、サイケおやじは一発で気に入ってしまったですよ♪♪~♪
ほとんど、こればっかり聴いていた時期があったほどです。
一方、ポール・サイモンの「You're Kind」は「優しいあなた」の邦題どおり、相手の優しさに感謝しつつも、辟易する男の心情をタイトなリズムセクションをバックに歌った、如何にも「らしい」名曲なんですが、こういうヒネクレタ内向きの表現こそが作者本人の持ち味と思うばかり……。
結局、サイモンとガーファンクルが多くのリスナーの心を捕らえたのは、そういうポール・サイモンのネクラな感性に基づく自作曲を明るく澄んだ声質のアート・ガーファンクルが歌い、ハーモニーを演じてくれる事によるもの!
それが絶対的に再認識させられたのが、このシングル盤の意義じゃ~ないでしょうか?
ということで、そういう共同謀議による「My Little Town」はリアルタイムで世に出たポール・サイモンとアート・ガーファンクルのソロアルバムにも収められ、B面曲も各々同様の扱いになった事は言うまでもありません。それがポール・サイモンの「時の流れに / Still Crazy After All There Years」であり、アート・ガーファンクルの「愛への旅立ち / Breakaway」でありましたが、もちろん前者は内省的、後者は穏やかなポップスフィーリングが滲み出る、共に傑作盤の称号に偽りは無いはずです。
問題は、そこで接着剤の役割を果たした「My Little Town」が、明らかに浮いている現実だと、サイケおやじは思います。
そして皆様がご存じのとおり、サイモンとガーファンクルは時折の再結成巡業、さらにはそこから作られたライプ盤を出しつつも、正式な意味合いでのスタジオレコーディングによる新作アルバムは、未だ姿を見せていません。
それは噂の域を出ないものの、ポール・サイモンは独善的であり、アート・ガーファンクルは頑固な完全主義者という個性が強くては、前述した「明日に架ける橋」のような音楽史に屹立するLPを越えられない以上、何をやっても、サイモン対ガーファンクル!?
ソロレコーディング作品の充実があればこそ、それは解消されない、解消する妥協もしてはならない境地なのでしょう。
う~ん、ますますB面の2曲が愛おしいですねぇ~~♪