OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ライオネル・ハンプトンの物凄いカルテット

2010-12-27 14:53:30 | Jazz

The Lionel Hampton Quratet (Clef)

ジャズのヴァイブラフォン奏者といえばミルト・ジャクソンと並んで最も有名なのが、ライオネル・ハンプトンでしょう。

というよりも、ジャズ史の上では明らかにミルト・ジャクソンを凌駕する存在かもしれません。

しかし活躍していたフィールドがモダン期以前というイメージがあり、またビバッが創成されていた頃、同時多発的に生まれたR&Bというアーバンな黒人大衆音楽の世界へ積極的に進出した事もあり、我国のジャズ喫茶を中心とするイノセントなジャズ者の間ではイマイチの評価だったかもしれません。

もちろんベニー・グッドマンのスモールコンポ、あるいはオールスタアズによる1947年のライプステージから生まれた「Stardust」の大名演、そしてクリフォード・ブラウン(tp) を世に出した因縁のパリ巡業楽団による音源等々は認められているとは思いますが、何故かモダンジャズに真っ向から取り組んだレコードは、日本での発売そのものが些か疎かにされていた事もあり、サイケおやじにしても1970年代後半になって、ようやく馴染んだ感があります。

例えば本日ご紹介のLPはタイトルどおり、カルテット編成の長尺演奏を収めた名盤のひとつなんですが、そのメンバーがライオネル・ハンプトン(vib) 以下、オスカー・ピーターソン(p)、レイ・ブラウン(b)、バディ・リッチ(ds) という物凄い面々ですし、録音が1953&1954年というモダンジャズが上昇期であっただけに、それこそ充実の極みというアドリブの至芸が存分に楽しめるのです。

しかも演目が全て、良く知られたメロディのスタンダード曲というのも、嬉しいですねぇ~♪

A-1 Just One Of Those Things (1954年4月12日録音)
 いきなりオスカー・ピーターソンのダイナミックなピアノが強引なイントロを作り出し、続けてスイングしまくったアップテンポでのテーマ変奏がスタートすれば、寄り添うレイ・ブラウンのペースは見事なフォローを展開し、さらにバディ・リッチのブラシがタイトなビートを送り出してくるという、これは素敵な4ビート天国♪♪~♪ もちろん強靭なテクニックで披露される歌心に満ちたアドリブは痛快至極ですから、後を引き継ぐライオネル・ハンプトンも最初っからノリノリですよっ!
 う~ん、この軽快にしてハッピーなフレーズの連続技には、思わずウキウキさせられてしまいますねぇ~♪ 後半で盛り上がるバディ・リッチとの対決も決して意地の張り合いではなく、まさに匠の技の披露宴という感じでしょうか。
 ちなみにライオネル・ハンプトンが演じるヴァイブラフォンはミルト・ジャクソンの余韻を強めた音色とは異なり、実に軽やかで屈託の無いものですから、リズミカルな表現になればなるほど、その魅力と合致するんだと思います。
 そしてカルテットのスピード感が絶対に落ちず、スマートな勢いが最後まで持続していくのは凄いとしか言えません。 

A-2 Stompin' At Savoy (1953年9月2 or 10日録音)
 意外にヘヴィなビートを叩き出すバディ・リッチのブラシがテンポを設定すれば、絶妙なアンサンブルを構築するライオネル・ハンプトンとオスカー・ピーターソン、それを完璧にバックアップするレイ・ブラウンいうテーマ演奏の構図が美しいですねぇ~♪
 それゆえにアドリブパートに移ってからのナチュラルな躍動感は眩しいばかりで、ライオネル・ハンプトンが軽やかな中にも過激な急速フレーズを織り交ぜての歌心優先主義を貫けば、オスカー・ピーターソンがドラムスとベースの共謀を呼び込み、実にドライブ感に満ちた伴奏を披露するという凄さは唯一無二! しかもアドリブパートに至っては、抑え気味にスタートし、そこからグイグイと盛り上げていくという、まさに薬籠中の名演ですよ♪♪~♪
 あぁ、これに生で接していたら、発狂悶絶は必至でしょうねぇ~♪
 後半から終盤にかけてのバンドアンサンブルもメンバー各々の個人技を主体に、最高の極みだと思います。

B-1 How High The Moon (1954年4月12日録音)
 これまたアップテンポで繰り広げられる快演で、そのスタイルは所謂中間派とかモダンスイングに分類されるものかもしれませんが、レイ・ブラウンのペースは明らかにビバップを発展継承させていますし、そんな云々に拘る必要も無いほど、この名人カルテットの技量と音楽的センスは圧巻!
 バンド編成から、どうしてもミルト・ジャクソンが在籍していたモダン・ジャズ・カルテット=MJQとの比較は避けられないところでしょうが、少なくとも演奏のドライブ感やアドリブの瞬間芸の濃さは、完全にこちらが上でしょうねぇ。
 もちろん、そんな比較なんて、最初から意味が無いことは言うまでもありませんが、それはやっぱりジャズ者の哀しい宿業……。
 閑話休題。
 ヴァイブラフォンとピアノのガチンコ対決も強烈ですが、個人的には終盤で完全にバンドをリードしていくバディ・リッチのドラミングに熱くさせられます。凄過ぎっ!!!

B-2 The Nearness Of You (1953年9月2 or 10日録音)
 お馴染みの優しいメロディが余裕綽々で演じられる時、前曲での興奮と熱狂が絶妙の余韻を残しつつクールダウンさせられるわけですが、流石にセッションの仕切りとアルバム構成をプロデュースしたノーマン・グランツは分かっています♪♪~♪
 もちろん参加したメンバーにしても、おそらくは選曲から演奏のアレンジも含めて、現場優先主義を貫いていたのでしょうから、余計な思惑なんかあろうはずもなく、それは純粋にスイングして、充実のアドリブを披露することに全身全霊を傾けた結果だと思いますが、やはり心置きなく演奏に集中出来る環境は、どんな名人にも必要だと思いますねぇ。
 肝心の仕上がりは、スローテンポの中でダブルタイムも駆使するライオネル・ハンプトンのアドリブが目立ちますが、しかし同時に上手いフェイクでリードするテーマ演奏の和み感は絶品ですし、如何にも「らしい」オスカー・ピーターソのピアノも、その手数の多さがイヤミになっていません。

ということで、物凄いジャズが楽しめるアルバムです。

しかし、これはクレフ~ヴァーヴというレコード会社の賛否両論の特質なんですが、オールスタアセッションというプロデュース方針の所為でしょうか、一気呵成な大量録音と発売にあたってのオリジナルと再発の不統一がファンにとっては泣きの涙……。

個人的にも、ハンプトン&ピーターソン物では最初に買ったがこのアルバムとはいえ、実は当時から売り場には同じメンツによる似たような選曲のアルバムが幾つも並んでいて、完全に???の気分でした。

まあ、その時は親切な中古屋の店主からアドバイスされ、これを入手した経緯が結果オーライだったんですが、後に所謂ディスコグラフィーなんていう資料をみると、確かに演目の重複や再発における収録曲の組み換えが、レコードジャケットのデザイン変更共々、相当にあるんですよねぇ……。

しかし現在ではCDによる集大成5枚組セットも出ていますから、そこから楽しまれるのも王道かと思います。

ただし、これも音楽好き人間の宿業とでも申しましょうか、結局はアナログ盤LPが欲しくなってしまう気持も否定出来ません。

実際、サイケおやじは完全に後追いではありますが、良い出会いがあれば、このあたりをボチボチと集めているのでした。

コメント
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