OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

3+3=ロックなソウル

2010-12-01 15:49:56 | Soul

■3+3 / The Isley Brothers (T-Neck / CBS)

何時も拙プログを熱心に読んで下さる某氏からのメールによるリクエストで、本日はアイズリー・ブラザーズを書く次第ですが、どうやら最近、我国では紙ジャケット仕様のCDが纏まって再発されたようですね。

個人的にはアナログ盤を揃えているので、魅力的なボーナストラックでも無い限り、あえて買わないと思いますが、今日では山下達郎の元ネタという以上に、これをきっかけにアイズリー・ブラザーズが再評価される事を願っています。

で、本日のご紹介はアイズリー・ブラザーズが1973年に出した人気盤で、実はサイケおやじがアイズリー・ブラザーズに目覚めたのは、このアルバムの前作だった「ジ・アイズリーズ・ライプ」でしたから、ちょいと遅ればせながらも、一応はリアルタイムで聴けた最初の1枚でした。

 A-1 That Lady
 A-2 Don't Let Me Be Lonely Tonight
 A-3 If You Were There
 A-4 You Walk Your Way
 A-5 Listen To The Music
 B-1 What It Comes Down To
 B-2 Sunshine
 B-3 Summer Breeze / 想い出のサマーブリーズ
 B-4 The Highways Of My Life / 心のハイウェイ

アルバムタイトルとジャケ写からもはっきりしているように、この時期のアイズリーズはボーカルを担当するオケーリー、ルドルフ、ロナルドの年長組とアーニー(g)、マービン(b) の弟2人に従兄弟のクリス・ジャスパー(key) を正式メンバーとした6人組になっていましたが、こういう体制は既に1960年代末から実質的にスタートしていたと言われていますし、前述したライプ盤では、その熱いファミリーの絆が確認出来ました。

しかし、巡業やレコーディングでは、当然ながら助っ人の参加も必須であり、ここではトゥルーマン・トーマス(key)、ジョージ・モーランド(ds,per) 等々の名前がクレジットされています。

そしてますます顕著になっているのが、リアルタイムの我国では「ソウル・ロック」と呼ばれていたファンキー志向のポップなソウル風味です。

このあたりはアイズリーズが1960年代中頃から強く打ち出していた独自の個性ではありますが、それが1970年代に入って発表するアルバム収録曲の中で、例えばキャロル・キングやニール・ヤング、あるいはスティーヴン・スティルスやボブ・ディランあたりのオリジナルを自らのスタイルで演じてしまうという、当時の黒人R&Bのジャンルでは、ある意味での最先端を、アイズリーズとは因縁浅からぬジミ・ヘンドリクスの手法も活かした表現で聞かせるという、実に尖がったやり方でした。

それは前述のライプ盤でも存分に堪能出来るわけですし、サイケおやじを夢中にさせたのも、実はそこにあったのですが、さて、このアルバム「3+3」ではスタジオ録音という事もありましょうが、洗練されたムードと激しく熱い部分が尚更に見事に融合した傑作に仕上がっているのですから、リアルタイムで一聴した瞬間から、歓喜悶絶!

いゃ~、本当に目眩がするほど、シビレましたですねぇ~♪

なにしろA面初っ端の「That Lady」からして、カッコ良すぎるエレキギターのカッティングからアップテンポでブッ飛ばすファンキーロックが大全開! ちなみに演目はアイズリーズが1960年代中頃に出した「Who's That Lady」のセルフリメイクなんですが、後追いで聴いたそこでは幾分ジャズっぽかったアレンジが、ここではタテノリビートとキメのリフを主要武器にしながらも、アーニー・アイズリーの熱血ギターが終始炸裂するという、最高にたまらん世界が展開されていますし、ボーカル&コーラスのソウルフィーリングも言うこと無しですよっ!

ちなみに件の「熱血ギター」は最初、シンセ系のキーボードかと思ったんですが、これがやっぱりギターに他ならず、なかなか新しかったですねぇ~♪

そして曲の終りから間髪を入れずに繋がる「Don't Let Me Be Lonely Tonight」のメロウな世界への場面転換が、実に鮮やか♪♪~♪ もう、この瞬間だけで幸せになれること請け合いなんですが、なんと演目はジェームス・テイラーが「ワンマンドッグ」で発表した畢生の自作自演でありながら、ロナルド・アイズレーの官能的なボーカルによって、ほとんどアイズリーズのオリジナル? そう錯覚させられるほどの素晴らしさですし、ゆったりしたインストパートのタメの効いたグルーヴも流石の一言です。

さらに今日では、山下達郎が率いていたシュガー・ベイブのデビュー曲「Downtown」の元ネタとして有名になってしまった「If You Were There」、そしてドゥービー・ブラザースのヒット曲をカバーした「Listen To The Music」あたりのファンキーでポップな明るさからは、単なる黒人ソウルグループとは一線を画する雰囲気が濃厚に広がっていきますし、ちょっと聞きには正統派R&Bのような「You Walk Your Way」にしても、ニューソウルやブルーアイドソウルに近い表現が滲んでいるように思います。

その意味でB面トップに置かれた「What It Comes Down To」のホノボノした歌と演奏は、トボケたようなイントロも含めて、とても黒人ソウルとは思えないような味わいで、しかも効果的なエレピやキーボード類の使い方、潰れたようなドラムスの音作り等々、なかなかスティーヴィー・ワンダーの世界に近いようなところも散見されますが、実はアルバムクレジットを読んでいたら、ハッとさせられました。

なんとレコーディングエンジニアとして、「心の歌」以降のスティーヴィー・ワンダーを支えていたロバート・マーゴレフとマルコム・セシルの名前があったのですっ!

う~ん、すると特に「Sunshine」で顕著なシンセ系リズムの使い方や曲調そのもののスティーヴー・ワンダー症候群は、その所為!? まあ、曲タイトルも意味深ではありますが!?

なぁ~んて、些か不遜な事まで思ってしまうんですが、実際にこのアルバムの音の新しさは、前述した2人の功績も大きいんでしょうねぇ。

しかし、それでもサイケおやじが一番好きなアイズリーズのスタイルは、激しいエレギギターが唸り、熱いボーカルが心の底から歌いあげるロッキンソウルな世界ですから、ポップスデュオのシールズ&クロフツが放ったロマンチックなヒット曲「想い出のサマーブリーズ」を思い入れたっぷりにカパーしてくれたことには拍手喝采! 確か前述した「That Lady」同様、シングルカットされ、FEN等のラジオによって局地的にヒットしたと記憶していますが、じっくり構えたソウルビートの中で特に後半、ひたすらに燃え上がるアニー・アイズリーのギターは何度聴いても最高ですねぇ~♪

そしてトドメの一撃となるのが、オーラスの「心のハイウェイ / The Highways Of My Life」で、ロナルド・アイズリーの見事な歌いっぷりは、まさにソウル&メロウの極みつき! しかもクリス・ジャスパーが弾くイントロからのピアノと彩りのシンセからは、これまたスティーヴィー・ワンダーを想起させられるんですから、歌と演奏が進むにつれて、それがますます強くなっていくのは絶妙の「お約束」かもしれません。

ということで、今となっては、あちこちに山下達郎がいっぱい!?

そんな感想を抱かれる皆様も大勢いらっしゃるに違いないアルバムだと思いますし、実際、「That Lady」あたりは椎名和夫をギタリストとして起用していた時期の所謂タツローファンクが逆説的に楽しめます。また既に述べた「If You Were There」のシュガーベイブっぽさ、あるいは随所で散見される難波弘之的なピアノ&キーボードの雰囲気、さらにはボーカル&コーラスの山下達郎モロ出しの味わい等々、これは決して不遜ではなく、好きな人にたまらない世界が確かにあるのです。

しかし、このあたりは、あくまでも後追いの結果論である事なのは言わずもがな、実はサイケおやじは初めてシュガー・ベイブの「Downtown」を聴いた時、思わず笑ってしまったですよ。もちろんパクリに呆れたというよりも、ついに我国でもファンキーロックを志向するバンドが登場したのかっ!?! と妙な可笑しみに包まれたのが本音でした。

まあ、それはそれとして、この「3+3」はアルバムの曲順というか、LP片面ずつの流れも秀逸なんですよねぇ~♪ トラックによっては前曲最終パートに次曲のイントロが微妙に重なっているところもありますし、A面からB面への自然な場面転換は、CDでブッ通しに全体を聴けば、尚更に明らかになるんじゃないでしょうか。

ご存じとおり、このアルバムを契機として、アイズリーズはさらなる全盛期に突入したわけですが、日本ではそれほどのブレイクはなかったように思います。

ただし山下達郎という偉人が登場した事により、それなりにアイズリーズが注目され、また同時に、それまでの正統派黒人R&Bやソウルの愛好者をファンキーロックな世界に導いた役割としてのアイズリーズは無視出来ない存在でした。

正直言えば、山下達郎があれだけウケたんですから、アイズリーズも……、という気分は今も打ち消せません。

聴けば、必ずや虜にされる魅力がいっぱいのアイズリーズ! スライやJBよりも確実に親しみ易いはずですから、ぜひとも皆様も、お楽しみ下さいませ。

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