OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

妖怪列車の快楽グルーヴ

2010-12-25 15:14:02 | Rock Jazz

■Straight Ahead / Brian Auger's Oblivion Express (Gohst Town / RCA)

一般的にブライアン・オーガーの人気を確定したアルバムではありますが、いきなりの個人的な結論を述べさせていただければ、これは決して最高傑作ではありません。

しかしフュージョンブームが上昇期の1974年に制作発売された意義は本当に大きく、それまでに立脚していたロックジャズの地平から、ニューソウルやクロスオーバーといった当時のアメリカが最先端の新分野を見据えた演奏には、なかなかの魅力があることは確かでしょう。

ここまでの流れでは、前作として人気を集めたアルバム「クローサー・トゥ・イット」が充実した内容共々、特にアメリカを中心にライプの評判も高かったことから新作への期待も大きかったわけですが、そこで快演を披露していたドラマーのゴッドフリー・マクレーンが突如の脱退!?!

必然的にメンバーの交代があり、このアルバム制作セッションはブライラン・オーガー(org,el-p,key,vo)、ジャック・ミルズ(g)、バリー・ディーン(b)、レノックス・レイトン(per)、そして新参加のスティーヴ・フェローン(ds) にゲスト扱いのミルザ・アル・シャリフ(per) という布陣になっています。

A-1 Beginning Again
 重いビートと軽やかなパーカッションが彩るブラジリアンフュージョン的な演奏ですが、もちろん英国産ロックジャズのフィーリングが決して忘れられていないという、これは素敵な傑作トラック! フワフワしたボーカル&コーラスが幾分明確ではない曲メロにジャストミートし、タイトなドラミングに煽られて突っ走るグルーヴが、なんとも心地良い限りなんですねぇ~♪
 そしてブライアン・オーガーのエレピがフュージョンの醍醐味というか、実はロックジャズ王道のアドリブを堪能させてくれますし、続くジャック・ミルズのB級ギターソロも良い感じ♪♪~♪
 こういう分かり易さが、頭でっかちになるプログレや既成のクロスオーバーとは明らかに異なる、まさにオブリヴィオン・エクスプレスの持ち味だと思います。
 
A-2 Bumpin' On Sunset
 ご存じ、ウェス・モンゴメリーの代表作であり、それゆえに濃密なアドリブと腰の据わったアンサンブルが求められる名曲として、このアルバムが世に出た当時から評論家の先生方も挙って絶賛したトラックではありますが、個人的には些か冗漫な感じがしないでもありません。
 確かにレイジーなムードが心地良い倦怠感を呼ぶという雰囲気はするんですがねぇ……。
 オルガンが妙に重苦しく、またリズム隊の一本調子なビートの出し方がイマイチの刺戟では、なんだかなぁ……。
 ちなみにブライアン・オーガーは以前にトリニティを率いていた時にも同曲の録音を残し、それは2ndアルバム「デフィニットリー・ホワット」に収録されていますから、聴き比べも一興かと思いますが、個人的にはそっちが好きです。
 似て非なる演奏ではあるんですけどねぇ……。

B-1 Straight Ahead
 ニューソウルのビートに浮ついたボーカルという、この頃から流行し始めた所謂AOR風の演奏なんですが、やはりブライアン・オーガーのエレピが良いですねぇ~♪ そしてドラムスとベースの躍動的なグルーヴ、さらに如何にものリズムギターも素敵ですよ。
 ちょいと短いのが勿体無いほどですが、流石はアルバムタイトルになった曲だと思います。
 終盤でのエレピソロが新主流派になるのは、ご愛嬌というよりも、本音の吐露!?

B-2 Change
 これまたチャカポコリズムが効いたニューソウル風の演奏ではありますが、ボーカルパートからは1980年代後期のサンタナような産業ロック味が滲み出たりする、なかなか面白い仕上がりが侮れません。
 つまりは狙いが多すぎて的が絞れなかったのかもしれませんが、ジャック・ミルズの今となっては情けないギターソロも憎めませんし、バンドアンサンブルのミエミエの仕掛けとか、これはこれでニンマリしてしまうのがファンの心理じゃないでしょうか。
 贔屓の引き倒しではありますが、後半に出てくるブライアン・オーガーのオルガンに免じて、ここはそう納得しています。

B-3 You'll Stay In My Heart
 オーラスは再びAOR丸出しの歌と演奏とはいえ、これをパクッた歌手やバンドが大勢存在していることを忘れてはならないでしょう。尤もブライアン・オーガーだって、どこからかパクッてきたのは明白なのかもしれませんが……。
 それはそれとして、心地良い曲メロを歌うボーカルと浮遊感に満ちたエレピの素敵な味わいは、一度聴いたら決して忘れられないものだと思います。

ということで、これもまたアメリカを中心に売れまくり、いよいよブライアン・オーガーとオブリヴィオン・エクスプレスは全盛期を迎えたのです。そして以降、強烈に素晴らしいライプ盤を含む傑作アルバムを連続して発表していきます。

しかし今日の歴史では既に明らかになっているとおり、それは決して長続きは……。

ですからファンは、この時期に残れされた音源をひたすらに愛聴するわけですが、このあたりのロックジャズやフュージョンを新たに愛好されんとする皆様にとっても、掛け替えの無いものだと思います。

最後になりましたが、このゲゲゲなイラストのジャケットは当時、私の周囲では妖怪列車と呼んでいたことを付記しておきます。

まさに霊界的なグルーヴは快感♪♪~♪

コメント
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