OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

もっと聴きたいジャズテットのライブ

2010-12-20 15:16:01 | Jazz

The Jazztet At Birdhouse (Argo)

1960年前後のモダンジャズで、ひとつの主流となったのが、所謂三管編成だったと言われていますが、実際、当時のトップバンドだったジャズメッセンジャーズにしろ、またマイルス・デイビスのバンドにしても、フロントの管楽器奏者が3名という豪華なメンツの集合が、今日でも魅力的なのは確かです。

しかし三管編成の本来の目的は、そこから醸し出されるハーモニーの美しさと繰り出されるリフのカッコ良さも、また然りだった事は、後追いで聴くそうした諸作で充分に納得されますし、特に三管編成を大きく広めたベニー・ゴルソンが率いるジャズテットこそ、その魅力を満喫出来るバンドだと思います。

そこで本日ご紹介の1枚は、1962年頃に発売されたライプアルバムで、おそらくジャズテットでは4作目となる人気盤♪♪~♪

録音は1961年5月、シカゴにあったとされるバードハウスという店でのギクから作られていますが、メンバーはアート・ファーマー(tp,flh)、トム・マッキントッシュ(tb,arr)、ベニー・ゴルソン(ts,arr)、シダー・ウォルトン(p)、トーマス・ウィリアムス(b)、アルバート・ヒース(ds) という当時のレギュラーグループだけあって、流石に纏まりのある熱演が楽しめます。

A-1 Junction
 いきなりムード満点のファンキー節はベニー・ゴルソンが書いたものですが、もちろん十八番の所謂ゴルソンハーモニーが存分に楽しめる、実にゴキゲンな名演です。そしてシャープでグルーヴィなリズム隊共々、バンドの意思が統一されたノリは素晴らしい限り♪♪~♪
 さらにベニー・ゴルソン、アート・ファーマーと続くアドリブパートのバックで炸裂するリフのカッコ良さも特筆物でしょう。しかも、これはサイケおやじの独断と偏見かもしれませんが、ベニー・ゴルソンにしろ、アート・ファーマーにしろ、最初っから把握しているアレンジの妙を活かしたアドリブフレーズを吹いているような、つまりはちょいと出来過ぎという感も正直あるんですが、それは最高にスリリングで心地良いという、モダンジャズの楽しみに他ならないと思います。
 ちなみに収録されたトラックは、幾分の編集疑惑もあるんですが、これだけの仕上がりならば、結果オーライでしょうねぇ~♪

A-2 Farmer's Market
 1950年代からアート・ファーマーが書いたオリジナルのビバップ曲として有名な十八番なんですが、ここでも痛烈なアップテンポで爆走するジャズテットの熱演が快感! イントロからのユニゾンリフにビシッとキマッたリズム隊のラテン&4ビートが凄いですねぇ~♪
 そしてアドリブパートでは、先発するベニー・ゴルソンのモリモリ吹きまくるテナーサックスが鬱陶しさギリギリのラインで迫るの対し、熱演ながらも爽やかさが滲むアート・ファーマーのトランペットが良い感じ♪♪~♪
 う~ん、このスピード感は並みのバンドでは出せないでしょうねぇ~♪
 演奏はこの後、アルバート・ヒースのドラムソロから、これまた実にカッコ良いセカンドリフへと続き、さらにシダー・ウォルトンのスマートにドライブするピアノが飛び出せば、もう、辺りはハードバップの熱気で満たされるばかりですよっ!

A-3 Darn That Dream
 そこはかとない哀愁が魅力のスタンダード曲をアート・ファーマーがハートウォームに吹奏するという、如何にもの演出展開が安心感と安らぎを与えてくれます。
 こごては、おそらくフリューゲルホーンを吹いているんでしょうか?
 ソフトな情感が滲む、アート・ファーマー特有のメロディフェイクにジャストミートの音色が、バックを彩るゴルソンハーモニー共々にジャズテットの魅力を如実に表していると思います。
 しかし、こうした方針を「緩い」と感じるジャズ者が存在することも確かでしょう。
 それでもシダー・ウォルトンが地味な名演とでも申しましょうか、爽冷なムードのイントロや絶妙の伴奏、それに寄り添うトーマス・ウィリアムスのベースワーク、そしてダレ無いビートを供給するアルバート・ヒースのドラミングといったリズム隊の動きを中心に聴いてみると、中盤からのテンポアップ等々が実に緻密な纏まりになっていることにハッとさせられるんですねぇ~♪
 まあ、このあたりはサイケおやじの独断だと自嘲するところでもありますが、やっぱり惹きつけられる名演だと確信しています。

B-1 Shutterbug
 さて、B面トッフに収められたのは幾分モード調で演じられるアップテンポのハードバップなんですが、作曲がJ.J.ジョンソンというのがミソでしょうか。というのも、この時期の作者も自らのバンドを三管に増強し、さらに中~大編成のアレンジを使ったレコーディングを積極的に行っていたのですから、ジャズテットのライバルという側面もあったんじゃないかと思います。
 ただし、原盤裏解説によれば、J.J.ジョンソン本人がジャズテットに編曲共々提供したという事らしいので、それに応える立場のバンドも気が抜けないところでしょう。
 そして実際、タイトなテーマサンプルから、しぶといキメを織り交ぜながら得意のアドリブフレーズを連発するアート・ファーマー、煮え切らない音色でウネウネブリブリに吹きまくるベニー・ゴルソン、そして短いドラムスのブレイクからラストテーマに入っていく強烈な演奏が繰り広げられますから、たまりませんねぇ~♪
 個人的にはマイルス・デイビスの「Milestones」にちょいと似ているテーマメロディも、好きです。

B-2 'Round Midnight
 これまた収録曲中ではジャズ者が多いに気になる演目じゃないでしょうか。なにしろモダンジャズではマイルス・デイビスの決定的な名演がありますから、それを当然の如く主役を演じるアート・ファーマーが、どの様に聞かせてくれるのか? はたまたベニー・ゴルソンのアレンジはっ!?
 結論から言えば、これも名演といって過言ではないでしょう。
 ちょっと衝撃的なイントロの一発から白夜のムードで丁寧にメロディ吹奏を演じるアート・ファーマー、中間部でサブトーンを聞かせるベニー・ゴルソンの雰囲気作りもイヤミがありませんし、後半のアンサンブルから意表突いたアドリブパートのスタートも、やはりジャズテット本来の持ち味かと思います。
 ただしマイルス・デイビスのバージョンで活躍していたジョン・コルトレーンのイメージが強いことも確かですから、ベニー・ゴルソンの個性が丸出しになっているモゴモゴしたアドリブには好き嫌いがあるかもしれません。
 しかし続くアート・ファーマーが、クールでハードボイルド、それでいて優しいという、ほとんどフィリッブ・マーロウを想起させる仮想名演を披露しているのは、なんと申しましょうか……。
 その意味で続くシダー・ウォルトンの小粋なピアノが、トーマス・ウィリアムスのペース共々、耳に残ります。

B-3 November Afternoon
 そしてオーラスは、ここまでハーモニー要員としてしか目立った活躍の無かったトム・マッキントッシュのオリジナル! これがなかなかに味わい深い名曲名演になっています。
 まず幾分幾何学的なイントロから静謐なムードが滲むテーマメロディの爽快感が、良いですねぇ~♪ アップテンポながら自然とヘヴィで力強いビートが醸し出されていくのも、この曲の持つ魅力のひとつじゃないでしょうか。
 もちろんゴルソンハーモニーも冴えまくり♪♪~♪
 ですからアドリブパートに入ると、いきなりアート・ファーマーのナチュラルな歌心が全開ですし ここで唯一無二の個性と言って許される音色と完全にリンクしたフレーズの構成力は最高だと思います。
 そして、お待たせしました、いよいよ登場する作者のトロンボーンが、これまた侮れない味わいを聞かせてくれますよ。う~ん、短いのが残念っ! ただし続くベニー・ゴルソンのアドリブが、なかなか良いんで、まあ、いいか♪♪~♪

ということで、LP1枚分しか聴けないのが勿体無いほどの名演集になっています。

既に述べたように、個人的には各トラックに編集疑惑を感じますから、もしも切り取られたアドリブソロがあるのなら、それらを復刻し、また同じ時にレコーディングされた残りの演奏も入れた再発CDが出ないかなぁ~、と切望するほどです。

それとアナログ盤で聴くかぎり、少しばかりベースとピアノの存在感が薄い録音が改善されれば、もっと最高になると思いますが、まあ、それはそれとして、とにかく素敵なモダンジャズが楽しめることに間違いはありません。

ジャズテット、そしてベニー・ゴルソンが主導するモダンジャズは、個人的にはソフトパップという感じがしているのですが、ライプの現場ではたっぷりとハードバップしていますし、それを彩る柔らかなゴルソンハーモニーの魅力も、決して失われていません。

ですから、このアルバムそのものは、名盤ガイド本に登場するような事も無いと思いますが、極めてモダンジャズの良かった時代を記録した1枚として愛聴されているんじゃないでしょうか。

繰り返しますが、完全版を望んでいます。

コメント
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