OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

スリルとマンネリのライブ音源がマイルスの魅力!?

2010-12-24 15:28:57 | Miles Davis

■Miles Davis Live At Newport 1966 & 1967 (Domino = CD)

結局、サイケおやじは旧弊な人間なので、新譜といっても知っているミュージシャンの音源を優先してしまいます。

例えば本日ご紹介のCDも、様々な新ネタが出回っていた中で、思わずゲットしてしまった悪癖(?)の1枚かもしれませんが、やっばりこれが侮れませんでした。

ご存じ、マイルス・デイビスが1960年代後半に率いていた所謂黄金のクインテットによるライプ音源ですが、モノラルミックスながら、一応はラジオ放送用に録られたということで、音質も普通に聴けるのが嬉しいところ♪♪~♪

☆1966年7月4日、ニューポートジャズ祭でのライプ
 01 introduction into Gingerbread Boy
 02 All Blues
 03 Stella By Starlight
(incomplete)
 メンバーはマイルス・デイビス(tp) 以下、ウェイン・ショーター(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds) という今では夢のクインテットがリアルタイムでやるだけやったっ!
 そんな感じの演奏ではありますが、今となっては微妙なマンネリ感と新鮮な息吹のバランスの良さが、ジャズを聴く楽しみに他ならないと思います。
 まず司会者の短い紹介から間髪を入れずにスタートする「Gingerbread Boy」は、最初の頃にちょいと音が悪いのですが、演奏が進むにつれて改善されていきます。ただし、全体的にベースが前に出たミックスには好き嫌いがあるかもしれません。
 肝心のクインテットは流石の安定感とでも申しましょうか、何時ものとおりのマイルス・デイビスに対し、アグレッシプでミステリアスなウェイン・ショーター、それに呼応するリズム隊は、やっぱりスリルがありますねぇ~♪ もちろんマンネリ気味の心地良さとしてではありますが、未だ伝統芸能になっていなかったモダンジャズの黄金期は確実に素晴らしいっ! 
 ですから続く「All Blues」にしても、イントロから蠢くリズム隊のジャズグルーヴから例によってワルツタイムのブルースがポリリズムに変化しつつ、アドリブパートではストレートな個人技の応酬へと展開する流れは、マイルス・デイビスの如何にも「らしい」味わいとウェイン・ショーターの無理難題が絶妙のコントラスト描き、これまたシビれさせせられますし、ハービー・ハンコックのピアノに続き、最終盤に咆哮するマイルス・デイビスのトランペットも良い感じ♪♪~♪
 しかし、このあたりを、なんだぁ……、またかよ……。
 なぁ~んで言ってはいけませんよねぇ。
 居直ってしまえば、これほどのモダンジャズを演じるバンドが、他にあるでしょうか!?
 と思わず熱くなったところで始まるのが、お待ちかねの「Stella By Starligh」ですから、そのクールな瞬間が本当に素敵です。
 とにかくマイルス・デイビスのトランペットが緊張感と歌心の巧みな融合で、素晴らしいの一言! そしてテンポアップして白熱するアドリブの本筋では、トニー・ウィリアムスの爆発も必然ならば、突進するロン・カーターの4ビートウォーキング! それに引っ張られて破天荒なショーター節を存分に披露する、このテナーサックスの異才も、流石に本領発揮というところでしょうか。
 あぁ、この暗黙の了解が、たまりませんねぇ~~♪
 しかし残念ながら、ハービー・ハンコックのパートに入ってのフェードアウトが未練を残します。

☆1967年7月2日、ニューポートジャズ祭でのライプ
 04 Gingerbread Boy
 05 Footprints
 06 'Round Midnight
(incomplete)
 こちらは1年後、同じメンツによる演奏ながら、結論から言えば、自由度がグッとアップした過激な4ビートジャズが楽しめます。
 なにしろ「Gingerbread Boy」からして、前年のバージョンに比べるとツッコミが露骨になり、ブッ飛ばすマイルス・デイビス、奇々怪々なウェイン・ショーター、ドシャメシャ寸前のトニー・ウィリアムス、彷徨うロン・カーターに何んとか纏めようと奮戦するハービー・ハンコックという5人組各々の思惑が交錯している感じでしょうか。
 う~ん、熱いですねぇ~♪
 ちなみに気になる音質は、前年のソースよりは幾分良好ですから、これもジャズ者ならば普通に聴けるレベルだと思います。
 そして特筆すべきは、1960年代後半から特徴的となるマイルス・デイビスのライプならではの連続演奏が既に始まっていることで、「Gingerbread Boy」のラストテーマから瞬時に突入していく「Footprints」でのテーマアサンブルの即興的な構成力は、これまた暗黙の了解と所謂チームワークの表れでしょう。
 もちろんリズム隊の変幻自在ぶりは、さらに複雑多岐になっているようですが、フロントでアドリブを演じる主役を矢鱈に翻弄するような意地悪はやっていませんから、この時期が、もしかしたら黄金のクインテットの全盛期だったのかもしれません。
 う~ん、ハービー・ハンコックのミステリアスなフィーリンミグが、実に良いですねぇ~♪
 それゆえに続く「'Round Midnigh」は、まさに白眉の名演!
 マイルス・デイビスが十八番の不安定な思わせぶりを存分に発揮するテーマメロディのフェイクはオープントランペットによるものですが、そのサスペンス風味は些かの緩みもありません。忽ちロン・カーターの力強い4ビートを呼び込み、それに呼応するハービー・ハンコックとトニー・ウィリアムスが臨機応変の伴奏ですからねぇ~♪
 もちろん「お約束」のブリッジパートではバンドが一丸となった激情、そこからグッと抜けだしていくウェイン・ショーターの狂ったようなスイング感も凄過ぎますよっ! 当然ながらクールで熱いバッキングは、このリズム隊ならではの魅力でしょう。
 しかし、残念ながら、このトラックも良いところでフェードアウト……。
 実に勿体無いかぎりです。

☆1967年11月1日、フィンランドでのライプ
 07 introduction into Footprints
 08 'Round Midnight
(incomplete)
 これはボーナストラック扱いになっていますが、もちろん黄金のクインテットによる1967年秋巡業時のライプ音源で、一応はステレオミックスという感じでしょうか。どうやらこれもラジオ用録音らしく、音質はそれなりに良好です。
 まず司会者のメンバー紹介と観客の拍手歓声から、期待感と暖かい雰囲気がいっぱい♪♪~♪ それを打ち破るが如き突撃モードの「Footprints」が始まる衝撃も、たまりませんねぇ~♪ 僅か4ヵ月前の演奏だったトラック「05」との比較では、こちらの方がギスギスしたムードが濃厚になり、加えて原曲の持つミステリアスな味わいが意味深な過激さに変換されているように感じます。特にリズム隊のツッコミが意地悪ですよねぇ。
 しかしマイスル・デイビスはともかく、ウェイン・ショーターは作者の強みというか、悠々自適に浮遊感満点のフレーズを積み重ね、リズム隊を必死の境地に追い込んでいく逆煽りが見事! まさに黄金のクインテットならではの瞬間芸じゃないでしょうか。
 実は正直、全く分からなく事さえあるサイケおやじです。
 しかしハービー・ハンコックのアドリブからは、そうした意味不明なものを翻訳し、分かったような気分にさせてくれるプロ意識を感じますねぇ~♪ ある意味では確信犯的な疑似フリーと言うべきなんでしょうが、そういう雰囲気の作り方がハービー・ハンコックの真骨頂だと思うほどです。
 そして続く「'Round Midnight」が、これまた名演!
 未練を残す前曲の最終パートから、いきなりマイルス・デイビスが例の如く思わせぶりを演じれば、流石に親分のクセを知りつくしているリズム隊が絶妙のサポートを演じてくれるあたりの阿吽の呼吸が、必ずやジャズ者の琴線に触れるでしょう。
 こうして熱いブリッジからウェイン・ショーターがトニー・ウィリアムスとの対決姿勢を鮮明にした激しいアドリブを展開する流れこそ、ファンが最も聴きたい部分のはずなんですが、残念ながら、ここでもフェードアウト……。
 う~ん、欲求不満が増幅しますっ!

ということで、どのパートも、最後は必ず満足させてくれないという、なかなか罪作りなブツではありますが、とにかく全盛期だった黄金のクインテットを楽しめる事には間違いありません。

ちなみに、このブツのウリは裏ジャケットに大きく記載された「All Tracks Previously Unissued」という事になっていますが、部分的には既出の音源も含まれています。

しかし、音質もそれなりに良好ですし、なによりも以前に出回っていたものよりは、リマスターに統一感があるんじゃないでしょうか。

あぁ、それにしても最初に書いたとおり、サイケおやじの音楽鑑賞は堂々巡りというか、何時も同じ場所に停滞しているようで、ちょいと自嘲……。もはや居直ることも出来ない境遇ではありますが、その中から少しでも優良な再発&復刻盤を発見することが、ひとつの楽しみになっているのでした。

コメント (2)
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