OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ビートルズのブート金字塔

2010-12-02 15:23:14 | Beatles

■Ultra Rare Trax 2010 Remaster Vol.1 (TSP / IMP)


ビートルズの海賊盤史上、最もインパクトが強かったブツの中でも、1988年に初出した「ウルトラ・レア・トラックス Vol.1 (掲載ジャケ・下)」は特に大きな衝撃でした。

それはスタジオ録音のアウトテイク集で、しかもCD優先の発売であった事から、正規盤と遜色の無い優良な音質で、これまで聴いたことの無かったビートルズが楽しめたのです。

これは当時、西ドイツにあったとされる The Swing'in Pig = TSP という、ブートでは名門の業者が出した自信作として、その内容の良さもありましたから、忽ち世界中で評判を呼び、売れまくったのは記憶に新しいところです。

なにしろマニアックな音楽雑誌ばかりではなく、欧米では一般新聞の特集記事になるほどの騒ぎでしたし、ブートでありながら普通のレコードショップで堂々と販売されるという実態は、ひとつの事件でもありました。

それは我国でも同様で、ブート屋はもちろんのこと、大手輸入盤屋でも正規盤と同じコーナーで売っていたんですよねぇ~♪

そして同社は続けて「Vol.2」から「Vol.6」まで、シリーズ化してビートルズのアウトテイクを出し、これに他の業者がコピー物を含めて参入したことから、一時は低迷していたブート業界が息を吹き返し、さらに本家のEMIが例の「アンソロジー」シリーズを出す契機になった事実は否定出来ません。

ちなみにソースとなった流出音源の出所は、どう考えてもEMI本社のテープ保管庫しかありえないという結論から、犯人探しとして各方面の関係者が取り沙汰されましたが、未だに真相は不明です。

しかし、こういう違法行為も、実は後の歴史の中では結果オーライというか、それによってファンが喜び、またビートルズ側がレコード会社も含めて、新しい金脈を自らの手で運営管理出来るようになったのですから、世の中は一寸先は闇とばかりは言えないでしょう。

さて、その大ヒットブート「ウルトラ・レア・トラックス」が、ついにというか、恒例のリマスターによって再発されたのが本日ご紹介で、実は1988年に出た最初のシリーズの元ネタとなった6本のマスターリール等を再検証したのでしょうか、そのあたりの事情も含めて、本当に価値のある音源だけを3枚のCDに纏め、ボックスセットにした中から、とりあえず最初の「Vol.1 (掲載ジャケ・上)」を取り上げる事に致します。

 01 I Saw Her Standing There (take 2 / 1963年2月11日録音 / stereo)
 02 One After 909 (take 2 / 1963年3月5日録音 / stereo)
 03 She's A Woman (take 2 / 1964年10月8日録音 / stereo)
 04 I'm Looking Through You (take 1 / 1965年10月24日録音 / stereo)
 05 If You've Got Trouble (1965年2月28日録音 / stereo)
 06 How Do You Do It (1962年9月4日録音 / mono)
 07 Penny Lane (1966年12月29日録音 / mono)
 08 Strawberry Fields Forever (1966年11月28日録音 / stereo)
 09 From Me To You (1963年3月5日録音 /stereo)
 10 Besame Mouho (1962年6月6日録音 /mono)
 11 The Fool On The Hill (1967年9月6日録音 /stereo)
 12 Paperback Writer (1966年4月14日録音 /stereo)

以上の12曲が、初出の「ウルトラ・レア・トラックス Vol.1」に収録されていたものですが、今日のCDの状況を鑑みれば、明らかに収録の曲数が少ないと思う他はありません。

しかし実は、この時には当然ながらというか、アナログ盤も同時発売された事情がありますから、これはこれで商売上の方針として認めざるを得ないでしょうし、リアルタイムでは、既に述べたように内容の衝撃的な素晴らしさから、サイケおやじも含めた大勢のファンは、充分に満足だったんですよっ!

で、肝心の演目については、「Besame Mouho」「How Do You Do It」が後に出た公式盤「アンソロジー 1」に収録されたバージョンと同じですが、音質的には、このリマスターブートの方が迫力のある仕上がりなんですねぇ~♪

ちなみに、その点は初出当時からも言われていたことで、リアルタイムで世に出たばかりの公式盤CDよりもブートの方が高音質という事実には、本当に驚かされたものです。

その意味では「If You've Got Trouble」もテイクそのものは公式盤「アンソロジー 2」に収録された音源と概ねは同一なんですが、こちらではステレオミックスそのものが異なり、極めてモノラルに近いミックスから音圧の高い仕上がりにリマスターされ、これが強烈にR&Rな印象になっています。

そして残りのトラックは、未だに公式バージョンが出ておらず、つまりは珍しくも素晴らしい「お宝」ばかりというところに、このブートの真の価値があるのです。もちろんステレオ&モノラルのミックスが異なっていることも要注意でしょう。

例えば明らかに失敗テイクの「I Saw Her Standing There」にしても、ノリの良さは公式完成テイクよりも素晴らしいほどですし、意想外に粘っこい仕上がりになっている「One After 909」や完成直前のラフな感じが結果オーライの「From Me To You」、さらに試行錯誤も好ましい「She's A Woman」や「I'm Looking Through You」で滲むスタジオでの緊張と緩和の雰囲気良さは、ファンならずとも、思わずニヤリの楽しみだと思います。

そのあたりを個人的に一番楽しめたのが、これぞライプ感覚の「Paperback Writer」で、リードボーカル&コーラスの生々しさが、ドライブする例のエレキベースにビシバシのドラムス共々、ほとんど隠れ名演ですよ。しかも部分的に妙なテープ編集のミスが散見されるという、マニア泣かせの結果オーライ♪♪~♪

しかし、これがサイケデリック期ど真ん中の曲になると、決して一筋縄ではいきません、

「Penny Lane」や「Strawberry Fields Forever」は、ほとんど出来上がっているとはいえ、モノラル&ステレオのミックスが公式バージョンとは完全に異なる部分が多々ありますし、なによりもダビングされたパートや編集作業、そしてミックスダウンそのものの迷い道が面白く聴けると思います。

ですから、ほとんどポールのピアノによる弾き語りで演じられる「The Fool On The Hill」の力強く、シンプルな味わいが愛おしいですねぇ~♪ これだから、ブートはやめられないのです。

 13 I Saw Her Standing There (take 2 / 1963年2月11日録音 / stereo)
 14 There's A Place (take 3)
 15 There's A Place (take 4)
 16 How Do You Do It (1962年9月4日録音 / mono)
 17 Leave My Kitten Alone
 18 One After 909
(take 2 / 1963年3月5日録音 / stereo)
 19 Misery (take 1)

上記の収録トラックは、今回のリマスター再発のボーナスというか、この「ウルトラ・レア・トラックス」が存在するネタばらしという側面からの援護射撃!? 「Reel #1」とジャケットにクレジットされた事から、これが流出したオリジナルソースの最初の1巻をそのまんま、今回リマスターして収めたという趣旨になっています。

ですから、「I Saw Her Standing There」や「How Do You Do It」、さらに「One After 909」がダブり収録なんですが……。

しかし「There's A Place」の2テイク、「Leave My Kitten Alone」、そして「Misery」は続篇となった同シリーズ「Vol.2」に収録され、またまた世界中のファンを歓喜驚愕させる流出バージョンですから、そのリマスター盤も入手してしまえば、これもまたダブリとなるわけですが、まあ、いいか!?▼? とりあず、その元ネタの源流を楽しむという意味では、それなりの意義があろうかと思います。

ということで、繰り返しますが、今も昔も貴重で楽しいブートです。

ちなみに今回のリマスター再発盤は既に述べたとおり、特製の箱に収納された3枚組のセット(下段掲載)がメインで、その3枚目にはオリジナルの「ウルトラ・レア・トラックス」に必ずしも使われなかった音源も入っているのが、巧みなミソかもしれません。

というのも、既に述べたように、このシリーズが大ヒットしてしまった所為により、同業他社が似たような企画のブツを相次いで世に出し、それに伴っての音源流出の更なる増加はまだしも、意図的に業者がフェイクした音源やテレビ&ラジオ出演時のソースまでもが、再利用されるという水増し商品が出回るという始末でした。

ですから元祖「ウルトラ・レア・トラックス」のシリーズにしても、実質的には「Vol.3」あたりまでが本当に価値のあるブツだと、サイケおやじは思っています。

このあたりについては追々、拙ブログで書いていく所存ですが、今回の再発リマスター盤は箱組セットの他にバラ売りもありますので、まずはここからビートルズのブートに入門されるのも素敵な出来事になろうかと思う次第です。

コメント (2)
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