OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

GS幻の名盤・ナポレオン篇

2010-09-18 16:54:58 | 日本のロック

逢いたい逢いたい c/w 恋を消すんだ / ザ・ナポレオン (テイチクユニオン)

既に何度も書いていますが、GSブームによって夥しいバンドがメジャーな会社からデビューを果たした現実は、まさに日本のロックが全盛期!

しかもヒットを飛ばしたバンドよりも、有象無象の方が圧倒的に多いというあたりにも、今から思えば凄い景気の良さがありましたですね。

もちろん、最初っから売れない物を作ろうなんていう意図は微塵も無かったはずですから、残されたレコードには全て、何らかの価値があるに決まっています。

という言い訳を弄して、そんなシングル盤を集めているサイケおやじは、ほとほと自分の姑息さに呆れることも珍しくありませんが、やっぱりお目当てのブツを手にする喜びは、やめられません。

例えば本日ご紹介のシングルは、全く売れなかったザ・ナポレオンという5人組のデビュー盤なんですが、バンドそのものは関西を拠点にした人気があったと言われていますし、ジャケ写を見る限りでもルックスには恵まれていたわけですから、所謂ローカルスタアという位置付けでしょうか。

実際、サイケおやじはライプステージはもちろんのこと、テレビでも全く見ることがありませんでしたし、このデビュー曲「逢いたい逢いたい」もリアルタイムでは聴いたことがありませんでした。

ところが後年、それは1980年代前半のある日だったんですが、ひょんな事から某アマチュアバンドコンテストの手伝いに関わった時、当然ながら若者ばっかりの出演グループのひとつが、この曲をやっていたんですよ!?!

というか、そのバンドはご推察のように所謂パンク系のツッコミバンドだったんですが、その直線的なノリで、逢いたいぃ~~、逢いたいぃ~~♪ と歌っていた、そのエキセントリックな味わいは、パンクなんか大嫌いのサイケおやじを不思議に魅了したのです。

もちろん、その時は件の曲がGS期の演目だったとは知る由もなく、てっきり彼等の自作だと思い込んでいたんですが、それにしては中間部の歌謡曲的な泣き節とか、実に良く出来ていたんで、凄いなぁ~♪ と感心していたのですが……。

そこで尋ねてみると、実はザ・ナポレオンというGSのオリジナルということが判明!? それを彼等なりにアレンジしたのが真相でした。

ちなみにコンテストの結果では、残念ながら何の賞も獲得出来なかった彼等ではありますが、なかなか選曲のセンスは面白いと、妙に感服しましたですねぇ。どうやらバンドリーダーは関西の出身ということで、後に知るザ・ナポレオンの正体からすれば、自然の成り行きだったのかもしれません。

そしてサイケおやじは、そのデビューシングルを探し求めて幾年月……。やっぱり売れていなかったブツを探索するのは、難儀な楽しみ(?)がありました。

で、肝心のザ・ナポレオンは、やはり関西GSの代表格として全国的にも人気があったリンド&リンダーズの弟バンドでした。そして昭和43(1968)年5月、メンバーは福沢光夫(vo)、中島国夫(g)、北井俊(g)、小野良芳彦(b)、溝昭夫(ds,vo) という編成で公式デビューしています。

まずはA面、気になる「逢いたい逢いたい」のオリジナルバージョンは、ノッケから疾走するビートに乗って憧れの女の子に逢いたい気持をストレートにぶっつける潔さが痛快で、鳴り響くファズギターも良い感じ!

さらにサビというか、本メロのパートでは、突如として歌謡GSの保守本流が貫かれるというクドサが絶品ですよ。しかも合間には、恥ずかしくなるような語りの台詞まであるんですから、これはもはや昭和元禄の退廃と爛熟をメジャーに展開したサンプルかもしれません。

古川益雄の作詞に加藤ヒロシの作編曲! 恐るべしです。

ちなみに前述の若者バンドは、当然ながらというか、そのクサ~イ部分をかなりシンプルに改変して歌っていましたし、語りの台詞パートも外していましたから、それが1980年代では正解だったんでしょうねぇ。

ただし現代ならば、オリジナルバージョンに忠実か、もっと濃厚な味付けが必要でしょう。それが「昭和」と「平成」の違いじゃないかと思います。

またB面の「恋を消すんだ」が、これまた素晴らしいんですねぇ~♪

アップテンポで露骨にヤードバーズの路線を狙うはずが、現実的にはジャガーズになってしまったというか、実は逆なのかもしれませんが、それで正解的な魅力が横溢しています。特に弾みまくったエレキベースと神経質なドラムスのビート! エキセントリックに黒っぽいボーカルとサイケデリック一歩手前のコーラス処理やファズギター! 

う~ん、これはA面の「逢いたい逢いたい」よりも、ずぅ~~っとロックしていますよ♪♪~♪ まあ、それゆえにB面扱いなんでしょうが、実に凄いです! もちろん作編曲はA面と同じく加藤ヒロシ! そして作詞は菊原四郎とクレジットされていますが、侮れません!

ということで、これほどの楽曲を収めたシングル盤が売れなかったという現実は、プロモーションの問題もあったのかもしれませんが、それだけ入り込む余地が無かった当時の芸能界の充実も否定出来ません。

それが後年、どこかの誰かに発見され、陽の目を見る事が今日も続いているんじゃないでしょうか?

もしもCD化されているのならば、ぜひともお楽しみ頂きたいと願うばかりです。

ちなみに件の若者バンドの話では、親戚の家に放置してあったレコードを聴いて、やってみようと決意したとか!?

やっぱりGS期は日本のロックが黄金時代であったことが、認識されるのでした。

コメント (2)
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