■Bye Bye Love c/w You Don't Know where Your Interest Lies
/ Simon & Garfunkel (Columbia / CBSソニー)
すっかりLP優先主義がまかり通っていた1970年代の洋楽シーンにおいて、しかしそれでもラジオのチャート番組は絶好調でしたから、シングル盤そのものは未だ必要とされていました。
それは例えサイモンとガーファンクルのような、LPが売れまくっていた超人気グループであったとしても、そこからカットされるシングル盤は、また同様の需要があったのです。
何しろ1970年に発表され、忽ち世界中で大ベストセラーとなった傑作アルバム「明日に架ける橋」からは、収録全11曲中、先行シングルも含めて、リアルタイムの我国だけでも、なんと9曲がカットされ、それぞれが大ヒットしている異常事態!?!
おそらく世界中を調べれば、全曲がシングルかコンパクト盤で出されたんじゃないでしょうか。それほど当時のサイモンとガーファンクルは充実した楽曲を生み出していたのです。
さて、その中にあって、本日ご紹介のシングル盤はアメリカではカットされなかった「Bye Bye Love」を、我国独自のカップリングで昭和45(1970)年末に発売したという優れもので、既に前述のLP「明日に架ける橋」を持っていたサイケおやじにしても、買わざるをえないブツでした。
何故ならば、B面収録の「You Don't Know where Your Interest Lies」が、当時はここでしか聴けなくなっていましたからねぇ~♪
というのも、実は本国アメリカでは1967年初夏にシングル「Fakin' It」のB面曲として発売され、我国でも同じカップリングで出されていたのですが、その後の日本では発売権が日本コロムビアからCBSソニーに移った所為で、大袈裟に言えば幻化していたのです。
それがようやく手に入るとあっては、アルバムで聴き過ぎるほど親しんでいた「Bye Bye Love」のB面であろうとも、苦しい経済状態を棚上げにさせる快挙だったのです。
ちなみに日本コロムビア時代の邦題は「涙の瞳」でしたが、このCBSソニー盤では「君の可愛い嘘」に変更されたのもコレクター魂を刺激されるところで、後になって日本コロムビア盤を中古で入手したサイケおやじは、ひとりでニヤニヤしたという嫌な性格です。
肝心の楽曲そのものは、ドラムスとベースを従えながらも、アコースティックギターが全体をリードするシリアスなフォークロックで、如何にもサイモンとガーファンクルらしい厳しさが心地良いんですが、中間部で短く提示されるソフトでお洒落なパートが、これまた「らしく」て素晴らしいですよ。またアコースティックのリズムギターがスカビートっぽいのも要注意でしょう。
現在では、やはり名盤認定のアルバム「ブックエンド」のボーナストラックとしてCD化されていますから。鑑賞は容易です。そしてアナログ7インチでは当然ながらモノラルミックスになっていますので、そのステレオミックスとの聴き比べもマニア心を刺激されますよ♪♪~♪
一方、A面の「Bye Bye Love」がサイケおやじにとっては侮れません。
ご存じのように、この曲は兄弟デュオのエヴァリー・ブラザースが1957年に大ヒットさせた所謂オールデイズのカパー物なんですが、サイモンとガーファンクルがエヴァリーズの影響を受けているのは明々白々ですからねぇ~♪
ここに収録されたのは、恐らくは1969年の巡業で録音されたと思しきライプバージョンで、それゆえに観客の手拍子も楽しく盛り上がった雰囲気の中で、自らネタばらしを演じるという潔さは憎めません。
というか、観客が百も承知の大歓声は、そのまんまレコードを聴いているファンにも共通するものでしょう。
実はサイケおやじが、エヴァリー・ブラザースに真から接したのは、このサイモンとガーファンクルによるところが非常に大きく、そういえばビートルズやピーター&ゴードンも件の兄弟デュオから少なからず影響を受けている云々という洋楽雑誌の記事を実感することになります。
つまり、この「Bye Bye Love」のオリジナルバージョンを聴きたくて、エヴァリー・ブラザースの世界に踏み込んだわけですから、その素晴らしき扉を開けてくれたサイモンとガーファンクルには、いつまでも感謝の気持が絶えないのです。
それと、これが一番重要な事なんですが、前述のLP「明日に架ける橋」に収められているバージョンは、最後の拍手の終りの部分に次曲「Song For The Asking」のイントロが重なっていますから、カセットテープによる自作のベスト選集を作る時は困難を極めるところが、このシングル盤では綺麗に解決出来るんですよねぇ~♪
ということで、実に有用なレコードでした。
思えば当時の我国では、サイモンとガーファンクルがビートルズ以上の人気といって過言ではありませんでした。そこへ加えて歌謡フォークの大ブームが重なり、音楽好きの若者はアコースティックギターを弾きながら彼等の曲を歌っていた中で、この「Bye Bye Love」は覚え易くて楽しいところから、特に人気があったように思います。
というか、実はサイモンとガーファンクルのオリジナル曲は、耳に残る親しみ易さやクールな心地良さとは逆に、演じることは難しいんですよねぇ。特にメロディ展開とリズム感を大切にした語感の歌い回しは、伴奏のギターの巧みさと相まって、なかなかの修練が必要!
ですから、一説によればライプの現場では最後に歌っていたという「Bye Bye Love」のような、皆さんご一緒に歌いましょう~♪ 的な演目は必須だったんでしょうねぇ。また、それが無くては人気が出るはずもないのが、芸能界では当然の掟だったと思います。
今となっては、あんなに凄い「明日に架ける橋」という名盤アルバムに入れられているのも不思議なほどではありますが、あえてオリジナルでは無いオールデイズをラス前に置いた流れの深淵な企みは、このシングル盤だけ聴いていれば、知る由もありません。
そして逆に言えば、それだけサイモンとガーファンクルの「Bye Bye Love」が、如何にシングル向きだったかの証明かもしれないと思うのでした。