OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

サントラ「黄金の犬」の嬉しい復刻

2010-09-17 16:56:09 | Soundtrack

黄金の犬 / 大野雄二 (徳間 / 富士キネマ = CD)

とても嬉しい復刻があったので、ご紹介致します。

それは昭和54(1979)年初夏に公開された映画「黄金の犬(山根成之監督)」のサントラ盤で、今日では「ルパン三世」が代名詞となった大野雄二の隠れ傑作!

もちろんリアルタイムでのLP発売はありましたが、当時はほとんど売れていなかった所為で、幻の名盤化していたアルバムです。

それがなんとリマスター&紙ジャケット仕様でのCD復刻となれば、サイケおやじは先日発見した瞬間、即ゲット!!! 音質も期待を裏切らぬものでした。

 01 「黄金の犬」タイトルテーマ (A-1)
 02 彷徨の日々 (A-2)
 03 非情のチェスカ (A-3)
 04 傷だらけの愛 (A-4)
 05 追いつめる (A-5)
 06 天使の墓標 ~インストゥルメンタル~ (A-6)
 07 偽りへの挑戦 (B-1)
 08 帰らざる愛 (B-2)
 09 大いなる孤独 (B-3)
 10 闇の中の眼 (B-4)
 11 たそがれの向こうに (B-5)
 12 天使の墓標 ~主題歌~ 歌 / 長瀬晴美 (B-6)

上記収録トラックは、いずれも大野雄二らしいジャズテイストに溢れたお洒落メロディのフュージョンや泣きのパラード、さらにソウルフルなボーカルが嬉しい主題歌等々、LP片面が飽きない構成にまで拘った素晴らしい流れで楽しめますが、それに触れるまえに、まずは映画そのものについて、サイケおやじの独り善がりを書きたい思いますので、例によってクドイと思われる皆様は、以下をパスされるのも必然かと、ご容赦を願うのみです。

で、映画「黄金の犬」は、徳間書店25周年記念として企画され、徳間康快社長が自ら制作総指揮という、徳間コミュニケーションズ第1回作品でした。

そして実質的な現場は大映、配給は松竹という体制による邦画大作として封切られたのですが、その原作は当時、大衆小説界ではハードなバイオレンス描写と人間の情念や宿業を主題とした諸作が人気の西村寿行! もちろん、作品タイトルからもご推察のとおり、この巨匠のもうひとつのメインテーマであった自然や動物と人間社会の繋がりや関わりを扱っている事は、ご存じのとおりです。

それが徳間書店の「アサヒ芸能」に連載中だった「黄金の犬」で、不慮の事故により飼い主とはぐれてしまった猟犬のゴロが、自宅へ戻るために北海道から東京へ独り向かう旅の途中、様々な人間模様やトラブルに遭遇するというのが基本の設定ながら、そこは西村寿行ですから、日常生活の裏側に潜む波乱万丈な物語の中で、暴力とセックス、陰謀と裏切り、さらに不条理な人情話や社会批判等々がテンコ盛り!

しかも大自然の中の小さな生命力の尊さも、強く主張されている凄みがあるのです。

そこを映画では特に第1部を中心に改変し、大企業と政官癒着の汚職事件を巡って悪徳記者やクールで熱いベテラン刑事、陰湿な殺し屋、ずる賢い政治家、様々な事情を抱えた美女達が、それぞれに刹那の人間模様を展開するという、なかなか一筋縄ではいかない作品になっています。

そして出演が鶴田浩二、夏木勲(=夏八木勲)、地井武男、待田京介、ハナ肇、森田健作、小沢栄太郎、平田昭彦、岡田英次、等々の個性派男優に加え、島田陽子、宮下順子、三田佳子、池玲子、ひし美ゆり子、等々といった超豪華メンバー!

もちろん西村寿行の原作ですから、前述の女優さん達が様々に美味しいサービス場面を披露しているであろう事は、既に制作段階から大きな話題となって、邦画ファンの期待を集めていたんですが、中でも当時は未だ清純派だった島田陽子のセミヌードは、マスコミでも存分に煽られていましたですねぇ~♪

それと個人的に嬉しかったのは、諸事情からセミリタイア状態だった、ひし美ゆり子が久々の銀幕復帰♪♪~♪

実は、もしかしたら……!?

という期待があったのですが、結論から言えば、脱いでいません。

ところが、これはひし美ゆり子ファンは必見の作品です!

それは彼女が当時、銀座六丁目で経営されていた「パブ・サラレジャン」が撮影に使われているからで、ひし美ゆり子は現実と虚構が一致したというか、その店のママの役で出演されているんですねぇ~♪

現在では、ファンにとっての幻の聖地といったところでしょう。

それがきっちり、映像に残されているだけでも、これは「お宝」です。

と、まあ、些か話がそれてきたところで、肝心のサントラ音源は、既に述べたように大野雄二が十八番のメロディとリズム&ビートを存分に楽しめますが、ご推察のとおり、そこには以前に手掛けた松田優作の「遊戯シリーズ」やアニメの「ルパン三世」で耳に馴染んだ世界が集大成の趣で纏められています。

例えば冒頭「タイトルテーマ」は否定出来ないほど「ルパン三世」していますし、続く「彷徨の日々」は「遊戯シリーズ」で散々使い回されたスローなハードボイルドメロディの変奏としか言えません。

ところが、これはアルバム全篇で感じられることなんですが、それよりもアダルトなムードが強く打ち出されているのは流石だと思います。

おそらくは強い影響を受けているに違いないデイヴ・グルーシンあたりのフュージョン系アレンジや曲構成の妙が、大野雄二特有の胸キュン感覚で再構築されたと言っては不遜でしょう。

それでも随所に滲む涙っぽいフィーリングは、まさに和製フュージョンの証明でもあり、また新感覚の歌謡曲かもしれません。

そしてクレジットはありませんが、凄腕ミュージャンによるタイトな演奏は、アドリブパートの充実も含めて、グッとハードボイルドな雰囲気を増幅させるものばかり♪♪~♪ まさにジャズファンクからソウル歌謡までも包括した音源は、そのまま聴いても楽しめますが、車の中で流していれば、自分が映画の登場人物になった気分に浸れますよ。

告白すれば、サイケおやじがこの復刻CDをゲットしたのは、それが大きな目的でした。いゃ~、ハードボイルドに自己陶酔するわけではないんですが、こんな独り善がりも音楽の力ってやつじゃないでしょうか。

その意味でオーラスに収められたボーカルバージョンの主題歌「天使の墓標」は、ほどよい暑苦しさが独得の持ち味で、その長瀬晴美が会心の歌いっぷりは心に染みます。

ということで、映画本篇も既にDVD化されていますので、どちらを先に楽しんでもOKなんですが、やはりそうなると欲しくなるのが、この音源集!

ちなみに収められた各トラックの演奏は、映画本篇の様々なシーンで、丸ごと使われているわけでは、決してありません。現実的には、その断片であったり、時には一瞬のイメージとしてブレイク的な使われ方も当然なのが、フィルムの世界なのです。

しかし、例えそれであっても、この「黄金の犬」は一般作品とは思えないほどのエグイ描写やエピソードが積み重なっていますから、それを尚更に強烈な印象へと導いたり、あるいは和らげたりする効果にはジャストミートしているはず!?

そして耳と目に焼きつけられた映画本篇の余韻に浸る時、こういうサントラ音源集は必須の楽しみとなるのです。

もちろん、大野雄二ファンにはマストアイテムでしょうし、この手のソウルジャズフュージョンに興味を抱かれる皆様には、絶対に満足の復刻でしょう。

既にサイケおやじは、車の中に常備の1枚になっているのでした。

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