河辺の鵜養集落の紅葉で目がくらくらする前、岩見の湯に寄って何かおやつをと探していて、ふじわらのせんべいと出会った。
一枚食べ始めたら、やめられなくなった。薄くて硬くなく、食べやすかった。昔からある、のこぎりせんべいだった。あおさをまぶしたギザギザしたやつだ。 食べた時、田代せんべいを思い出した。店を閉める前に行った時、年代物の機械がガタコン、ガタコン言っていた。
それで住所を確認したら、なんだ秋田市仁井田じゃないか。その時から、店に直接行ってみたいと思った。
場所を見つけるのに、くそ難儀した。住宅地にひっそりあった。袋小路だもんな、分からないはずだ。
看板が無かったら、確実見逃していた。その看板も期待どおり、風景にかすんでいた。
場所はね、秋田南高校を右に見て三叉路を左に入ると、何とかいうタクシー会社があって。そこから左に入る。
窓を開けて親父さんが作業していたので声を掛けた。とても店には見えない。申し訳ないけど。
しかしこちらの期待どおりのクラシックさであった。
写真に取りたい欲求がムラムラと湧いて来た。この風景は、残さねばならない。
手焼きなので、機械は無かった。文字通りの手焼きだった。写真を撮ってもいいか聞いたら、おやじさん戸惑っていた。
入口には何も書いてない。サッシ戸がきつかった。壊してしまいそう。両手でそっと閉める。
千円出したら、おつりが無くて、お母さんが奥に引っ込んだ。その間に写真のパネルを見ていた。500歳野球の記念写真があった。監督がおやじさんらしい。そうだ、仁井田には強いチームがあった。
野球でつながったよ、ヨッシー君。
この焼いたままの耳が、おまけのようにくっついているのが、いいね。
まるで福耳だね。
オレも、お茶菓子の味が分かるように、なったよ。
今では、写真を無理やり撮っておいて良かったと思います。あの時から、終わる日は近いと感じていました。切ないです。
こうやって、大事な文化や風俗は、終わっていくのでしょう。
閉店かと思われます。