もちろん、その理由は分かっている。日本人が勝てなくなったからだ。
日本人が勝てない中継を、誰が2時間半もテレビにかじりついている
もんですか。前に野球中継が長い事を、マラソンを持ち出して
マラソンすら2時間半あれば終わると言ったことがある。
しかしその2時間半が今では苦痛でしかない。
まず、ペースメーカーの登場でつまらなくなった。20kまでは何事も
起こらなくなった。へたすれば、その先頭集団から落ちてしまえば
勝負にも参加させてもらえない。その面白いはずの先頭争いは実に
つまらない。体力温存が一番の目的だからだ。まず、中継を見るなら
前半は飛ばす(この場合はカットする)のがいい。
そして後半だが、これも待ってましたと外人勢がスピードを上げて
ついていける日本人はいなくなる。唯一の楽しみは、こぼれていく選手を
拾って徐々に順位をあげる、マイペースで走った日本人だ。
思うに、トップランナーが現れなくなった理由は、野球に似ていると思う。
野球少年の究極の目的は「甲子園」にある。プロになりたいのは確かだが
その前に甲子園という絶対的な目標がある。甲子園で勝つためにピッチャー
は連投を繰り返すようになった。そして肩を壊して、プロでは成績を上げられなかった。
その苦い経験から、二人以上の投手による勝ち上がり制度ができた。
一方でマラソンを目指す選手の目標は何か。箱根駅伝だろう。これを全国展開
で大きく報道するようになったのは最近のことだ。田舎の人間はつい最近になって
正月の楽しみの一つになった。もしかすると選手にとって、箱根が究極の目的に
なってはしまいか。ふとそう思った。今までどんな競技だって、黄色人種が
劣っていたという例はない。マラソンに限って、高速レースに変わったからって
ケニア勢に黄色人種がかなわないという理由がない。
かつても、シューズの選択で泣いた(という噂の)浅利純子だの、
最初からマイペースで飛ばし過ぎて、息切れした中山竹通のような
世界のトップ選手がいた。あの頃のレースは、ピストルが鳴った瞬間から
目が離せなかった。
ああいうレースが見たいなあ。