将棋のプロ4段が世界で5番目に優秀な将棋ソフトを破った。この勝負はもっと
注目されていい。チェスの世界では15年以上前に既にロシアの天才棋士が
IBM社のコンピューターに負けている。それほどチェスと将棋はコンピュータに
とって難易度が違うのだ。将棋は例えば十一手先までの全局面を読むのに
十の十乗から十二乗という膨大な数字を必要とする。これをいちいちチェック
していたのでは時間がかかりすぎるのだ。なお参考文献は地球日本史第2巻
「日本将棋の独創性」である。そう、将棋は日本人の発想の凄さが端的に表れた
ゲームなのです。大陸から伝わった時、飛車、角の大駒はなかった。そして取った
駒を再利用できるというルール、これが将棋を決定的に面白く、難しくしている。
しかも将棋は庶民でも駒や盤を作ろうと思えば簡単にできる。これが今日まで
千年以上にわたって親しまれてきた理由だ。実はオレは将棋ができない。駒の
動き方も飛車や角がひっくり返るとどう動けるのか正確には知らないくらい。
だから大それた事を言っているという自覚はある。でも日本が誇るゲームが簡単に
コンピューターなんかに分かってたまるか、という気持ちは強い。この本には
あと十年は勝てないだろうと書いてある。1998年の出版だからもうそろそろ
互角に戦えると大概の人は考えていたに違いない。おれはコンピューターが
独創性を持つまで勝てない気がする。創造性というか。過去の統計を処理した位では
無理でしょう。大局観という視点を持てない限りは人間に勝ってほしくない。将棋は
序盤、中盤、終盤と進んでいくがコンピューターは中盤が不得意だそうだ。中盤とは
「駒の動きと効率」。将棋にも「形式美」があるのではないだろうか。この形がいい、悪い
という判断。おそらく第6感も使っているかも知れない。無意識という領域だ。これが
機械には無理だろう。いくらなんでも。だから機械には勝ってほしくない。大げさに
言えば人間の尊厳がかかっているのだ。だからこの先、もう4局、次第にレベルが
上がっていくだろうが、その結果がとても興味があるしとても楽しみだ。