山上俊夫・日本と世界あちこち

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文化破壊の橋下・松井に関西経済同友会が「大阪府・市の幻術・文化政策に対する緊急アピール」

2016年08月11日 14時31分22秒 | Weblog
 8月4日(2016)関西経済同友会芸術・文化委員会が、「大阪府・市の芸術・文化政策に対する緊急アピール~脱・80円文化政策に向けて~」を発表した。知性や文化とは無縁な橋下・松井府政・市政に対する強烈な批判のアピールだ。言っていることは事実をもとにしているが、松井知事は10日の記者会見で、「府の文化行政の優先度は低くない。大阪へのネガティブキャンペーンでセンスがない」と反論?した。後に見るように優先度は最低だ。80円文化予算がよほど効いたらしく、ネガティブキャンペーンだと筋違いのことを言った。知性や文化やセンスの対極にある松井氏が、センスがないとよくいえたものだ。もっとやわらかくいてほしかったのか。
 関西経済同友会アピールはこういっている。「世界の都市間競争は、芸術文化と地域に固有の歴史文化を融合した創造性による創造都市戦略を競い合う局面に向かっている。しかしながら、現状の大阪府・大阪市の都市づくりの中核となるべき芸術文化振興のための予算は全国で最低のレベル」だと。
 文化庁の「地方における文化行政の状況について」によると大阪府の文化芸術費用(芸術文化事業費、文化施設経費、文化施設建設費)は、府民一人当たり80円(2014年)、大阪市は市民一人当たり814円だ。大阪府は全国最低、大阪市は政令指定都市20市で下から3番目だ。
 国が助成している文化事業の採択は、大阪府は3件、1683万円、全国の1・1%、金額で全国の0・3%。大阪市は申請が0。国の助成文化事業に手も上げない。文化事業をバカにしてやる気もない。野蛮きわまる大阪となりはてた。
 経済同友会は、3つの要望をしている。1)低文化関連予算地域・都市からの脱却。2)国の文化プログラムに積極的に応募申請する、創造都市ネットワーク日本への加盟を。創造都市ネットワークには74自治体が加入しており、大阪市は加入、大阪府は未加入。3)民間のとりくみへのサポート。
 経済力との比較をするとわかりやすい。県内総生産の全国構成比(2014)は、大阪府7・34%(2位)ちなみに東京都18・31%(1位)、愛知県6・97%(3位)、石川県0・89%、高知県0・44%だ。芸術文化費の全国構成比(2014)は、大阪府1・0%、東京都18・4%、愛知県2・6%、石川県5・5%、高知県2・6%だ。
 このまま推移すると、文化の面でも東京の魅力がさらに高まり、東京一極集中がすすむ。大阪は文化最果ての都市、文化さびれた街になることは必定だ。橋下氏はつねに世界の都市間競争に打ち勝つとがなりたてていたが、文化果つる都市に誰が魅力を感じるだろうか。地方の方がずっと文化に力を入れているではないか。石川県はひとつの例だ。金沢などは魅力的な街としてだれもが認めている。それは芸術・文化・伝統を徹底して大事にしてきたことから魅力が発生している。創造都市ネットワークでも注目の成功例となっている。でもやっつけ仕事でうまくいくものではない。精神がないと。
 関西経済同友会が一番問題にするのは、歳出に占める芸術文化費の割合だ。府民一人当たり80円(正確には79・6円)で、歳出に占める比率は、大阪府0・03%(47位)、東京都0・25%、愛知県0・10%、石川県0・82%、高知県0・47%だ。全国最低、正真正銘のビリ。あえてそこまで芸術文化費を削ったのだ。芸術文化に対する憎しみや悪意がないとそこまではいかないと思うがどうだろう。
 松井知事は「他府県の予算には美術館の管理費なども含まれており、単純に比較できない」と反論?した。たしかに大阪府立の美術館はない。だから管理費も発生せず、文化予算は低くなる?ちょっと待て。大阪府にはユニークな「府立現代美術センター」(1974年設立)があったが、橋下知事が2011年度をもって閉館にしたのだ。また大阪センチュリー交響楽団への府の補助金を廃止した。橋下氏はクラシック音楽への無理解と敵意をむき出しにした発言をしていた。金沢市は県と協力をしてオーケストラ・アンサンブル金沢を支えている。橋下氏が就任して最初にやったのが、府立青少年会館の廃止、土地の売却だった。青少年会館は高校生の「総合芸術文化祭典」の会場として、高校生の文科系クラブ・若者の文化のメッカだった。安く借りられる唯一の会場だった。これを情け容赦なく廃止した。
 大阪市においても、文楽技芸員への侮蔑的発言、文楽協会への補助の極限までの削減にすべてが象徴されている。野鳥の楽園であり学習の場であった大阪南港野鳥園の廃止。橋下氏は税金を投入してやることではないと。これでは芸術文化政策の多くは税金を投入してやるべきことではないとなるだろう。柴島浄水場のにあった水道記念館は水道局の事業ではあるが、絶滅危惧種・イタセンパラなど水生生物の育種展示もしており、学習の場であったが、橋下市長は水道局がやる仕事ではないとして2012年4月から休館に追い込んだ。文化の香りのすることに嫌悪感を持つようだ。
 このような都市が21世紀の憧れの都市になりうるだろうか。関西経済同友会の緊急アピールの意義は大きい。
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