知的成長戦略論-クールに生きる

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プラットフォーム戦略から考える司法制度改革の大失敗2

2016年09月19日 | スキルアップ
数々の失敗のうち、最大の失敗は、
 ロースクールを認可しすぎたこと。


一定の要件を満たせば、ロースクールを認可せざるを得ない。
始めは、そんな多くの大学が名乗りを上げるとは考えていなかったはず。

ただ、大学側はビジネスチャンスととらえた。
 弁護士を排出できれば、うちの大学を救うことができる。

今まで司法試験の合格者がいなかった私立大学でさえ、
 ロースクール構想をチャンスととらえた。

当然、あの自分より偏差値の低い大学ですら、ロースクールを作るのだから、
 うちも作らなくては
と意地になって作り始める。

お金を使い、新校舎を立て、有名な元裁判官や検察官や弁護士を呼び、
 認可に向けてアピール。

その結果、ロースクールが乱立した。

確かに、
 お宅の大学は、頭が悪いから、いままで司法試験合格者がいないでしょ。
 だから認可できませんよ。
とはいえない。

ただ、予備校の関与があったロースクールは、
 なんやかんや言って、認可を認めなかった。
ここにロースクール構想の意図が見える。


ロースクールの乱立により受験者も増えた。
このロースクール受験者は、
 司法試験に何度も落ちてあきらめていた人や、
 今までの司法試験なら、自分には絶対無理だから受けるつもりはなかったけど、今度は7割儲かるんだから自分でもなれるかも
という人も含まれていた。

しかし、
 ロースクールが増えすぎた関係で、合格者をそれほど増やせなかった。

当然、受からない人は、話が違うと文句を言いだす。
 受験者数の7割が受かる試験だと言っていたのに・・・
 だまされた・・・


当初のプランは、
 ロースクールに入る人は、そこそこ優秀な人のみ。
 優秀な人が、2~3年間法律の勉強をたたき込まれる。
 ロースクールの卒業試験は、司法試験に近いレベルの問題。
 だから、ロースクール卒業生は、従来の司法試験合格者レベルに近いはず。
そうであれば、
 司法試験は、従来の合格者レベルに達する人だけが受験するので、
 7割が合格しても問題はないはず。

ところが、
 ロースクールの卒業試験は、学部の試験と変わらず、
 到底司法試験レベルではない。

ここで、
 全国統一ロースクール卒業者認定試験
というようなものを設け、
 第一次のスクーリングを実施し、
 ロースクールの卒業者の絞り込んで、
 司法試験受験者のレベルを上げていれば、少しは違った結果になっていたはず。

ロースクールとしては、だれが受かるか分からないので、
 卒業生を絞り込むことはしたくない。
とりあえず、卒業をさせたい。

あのロースクールなかなか卒業させてもらえないらしいとなれば、
 来年のロースクールの入学者も減ってしまう。

あいつもまぐれで受かるかもしれないという期待もある。

とりあえず、みんな試験を受けて来いということになってしまう。
こうなると、
 法務省も、文化省さん話が違うじゃん
となる。

大変だったのは、
 司法研修所の教官。

合格者の中には、圧倒的に知識不足のものもいる。


こいつらを、実務に出しても大丈夫なのか?

ここが最後の砦にならないと、法曹会がまずいことになるのでは?

新司法試験が始まり、合格者が2,000人を超えた平成19年から、
二回試験(司法修習の卒業試験)で不合格者が増えている。
http://media.toriaez.jp/m0530/280631547609.pdf


それでも、一部のレベルの低い合格者が法曹会に入っていくことは
どうしようもなかった。

さらに、質よりも数の方が問題となった。

当初は、企業が企業内弁護士としてかなりの数を採用するという話だった。

しかし、
 新人に、裁判官や検察官や多くの法律事務所レベルの500万円も払う企業は、それほど多くない。

法律事務所の経営も厳しくなっているので、採用は難しくなる。

法律事務所も、
 優秀な人は採用したい

 レベルの低い人はいらない
と考えているので、
 就職条件を厳しく設定した。

その結果、
 知名度がないロースクール出身の弁護士
 司法試験に何度か不合格となった経験がある弁護士
 司法研修所の成績やロースクールの成績が悪い弁護士
 コミュニケーション能力に問題がある弁護士
 年齢が高い弁護士
は、法律事務所に採用されにくくなってしまった。

急激な人数の増加をもたらしたものは、
 新人弁護士の就職難。

ただ、ここでの新人弁護士の就職難を分析的に見ていくと、
 若くて有名なロースクール出身で、
 ロースクールや司法試験の結果がそこそこ良い人は
 結構早く内定を得ている。

何らかの事情で、能力に疑問符をつけられた弁護士は、
 能力に問題があるのではないかと、警戒されて決まらない。 


 高いお金をかけてロースクールに行って、
 無給の司法修習で1年間を犠牲にしても、
 弁護士が稼げないので、投資した資金を回収できない。


20年という流れを得て、新司法試験改革がもたらしたものは、
 結局は、ロースクール受験生が8,000人代に落ち込み、
 何年も合格者を出せないロースクールがいっぱい出て、
 当初のロースクールの3分の1近くが廃校に追い込まれている
という現状です。

今後、さらに廃校に追い込まれるはず。

ロースクール関係者の中では、
 合格者が当初の予定よりも低かったことが失敗の原因だ
と言っている人もいるそうですが、
 事実関係を見誤っています。

仮に、7割に設定していたら、
 あと5年は早く、ロースクール受験生が激減し、廃校に追い込まれていたはずです。


では、何が問題だったのか?

続きは次回。
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