YS Journal アメリカからの雑感

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Elena Kagan 最高裁判所判事候補 公聴会

2010-06-30 23:16:24 | アメリカ政治
まさか、アメリカ最高裁判所判事候補の議会公聴会に、こんなに注目する事になるとは思ってもみなかった。

アメリカにおいて、リベラル勢力は、もう何十年も革命は物理的な闘争では無く法廷闘争で成し遂げようする戦略を展開しており、オバマ政権のやり方にもその傾向が見られる。例としては、テロリストの人権保護、移民法でのアリゾナ州への提訴の動き等などが挙げられる。健康保険改革法で医療ミスの慰謝料への上限設定をしない事は、民主党を支援している弁護士団体へ気遣いだったりする。(PL 訴訟などにも通ずる)

極端な例としては、環境問題関係で、例えば沖縄の基地移転問題でも、沖縄のジュゴンが原告のとなって辺野古埋め立てに反対するなんて裁判ががカリフォルニア州でおきている。(ばかばかしい Court Documentは、こちら

法廷闘争の究極とも言えるのは、裁判官それも最高裁判所判事にリベラルな考えを持った人を送り込もうという物である。これらの裁判官は、憲法や法律を根拠に裁判をするのではなく、自分たちの理性に従って判断をしようとする傾向があので、裁判しながら憲法、法律をおかまいなしに歪めていく。その上、最高裁判事は生涯職なので、一度任命されると何十年も居座る事になる。

一方で、保守の方も憲法を錦の御旗に、法廷闘争を挑もうとしている。特に、今年成立した健康保険改革法案を憲法違反で提訴しようとしており、判事がどのような法理念を持っているのかが、非常に重要になってくる。

オバマ大統領は、現在就任以来二人目の最高裁判事を送り込もうとしている。大統領の任期中に二人も自分の信念に沿う判事を送り込める事は非常にラッキーであろう。一人目は議会承認もスムーズに進み、最高裁判事になっている。で、二人目の Elena Kagan 最高裁判所判事候補の公聴会が、今週から始まった。

彼女は、裁判官の経験が無いまま候補になった珍しいケースである。ハーバード大学法学部の学部長を務めた事があり、その前は、クリントン政権で働き、シカゴ大学でオバマの同僚でもあり、気心もしれているのだろう。昨日の公聴会での質疑応答を聞いていると、オバマがなぜ彼女を選んだのかよく分かる。

健康保険改革法の法廷闘争は、早晩にでも最高裁判所の判断を仰ぐ事になると考えられているが、彼女が判事になった場合、どのような判断をするか、下の映像を見れば誰にでも分かる。

問題なのは、それだけに止まらない。彼女は、個人の自由を制限する法律が出来た場合でも、その内容が自分の信念に沿えば、憲法のCommerce Clauseを曲解してでも支持すると言っているのである。

野菜と果物を三種類づつとらなければならないという法律が成立したとすれば、それはバカらしい法律であると言いながら、野菜と果物を三種類づつとらなければならないという事自体が憲法違反になるとは、どうしても口に出せないらしい。これは、まさに健康保険改革法の核心をつく質問である。比喩的にではあるが、政府が個人に対し健康保険を購入する義務を負わせられるかと聞いているのである。Elena Kagan もその事を理解しているので、困惑しているのである。

彼女の様に頭の良い人は、憲法や法律など、どうでも良いらしい。自分が正しいと思えば、どうにでも解釈出来ると思っているのであろう。

最高裁判所判事は9人で、現在、保守とリベラルは4対4、中道と見られる人が一人いる。彼女は、高齢で引退するリベラル派の後任になるのでバランス自体は変わらないのだが、もし、共和党が健康保険改革法の廃案を真剣に考えているのなら、上院の Filibuster を使ってでも阻止するべきであろう。


オバマ政権 重要案件

2010-06-30 09:54:38 | アメリカ政治
不支持率が支持率を上回ったオバマ大統領だが、現時点での重要案件を4つ挙げておこう。早急に善処しなければならないのだが、大統領として危機に対応する能力もない上に、元々やる気もないので無理であろう。支持率は回復する事は無いであろう。

1)景気、雇用
何をおいても、景気と雇用が目に見える形で回復してこなければどうにもならないであろう。(It's the economy, stupid.)
$780B(約70兆円)の景気刺激策もコストの割に効き目が悪く、財政赤字による累積債務が急激に増加している事から、将来増税の不安から、なかなか個人消費が伸びてこない。成立した健康保険改革法案、大詰めを迎えている金融改革法案など、企業も将来の見通しが悪いために積極的な投資が出来ない環境になっている。

G20 でもただ一国、景気刺激策の続行を訴えたりしてオバマ大統領は、経済音痴ぶりをさらしている。唯一の望みは、逆説的ではあるが、今年秋の中間選挙で共和党が下院の過半数を獲得して、財政再建を目指す予算を組む事である。(アメリカ予算は下院が組む所から始まる。クリントン政権の最後の2年は、同様な状況で好景気を迎えた)

2)メキシコ湾原油流出事故
全力を尽くして噴出する原油を止める事、海上の原油回収、沿岸のクリーンアッップとご立派なテレビ演説であったが、その後は一度も被害の広がるメキシコ湾岸の州を訪問さえしていない。被害を受けている州が全て共和党の州知事である事から、オバマ政権が作為的にサボタージュをしているのではないかという話が出る位、対応が遅い。今日になってやっと諸外国からの原油回収船の提供を受け入れると言う間抜けぶりである。これからハリケーンシーズンでもあり、海上の作業の中断やハリケーンによる沿岸影響拡大心配されているだけに、ここまでの遅れを取り返す様な活動が必要であるが、オバマ大統領は、問題が解決し被害を受けた沿岸が以前より良くなるまで、休み無く活動すると言っていたが、先のテレビ演説で一段落と思っている可能性が高い。

3)国境警備
連邦政府は、今週にもアリゾナ州を提訴するそうだ。オバマ政権だけの責任ではないのであるが、アリゾナ州などの現状を見ると国境の安全保障が、連邦政府としての急務であり、連邦移民法を補強遂行する形での州法を提訴する事など気違い沙汰である。

4)アフガン戦争
駐留米軍トップであったマクリスタル司令官をすげ替えたのだが、表立っては命令系列を乱した事になっているが、昨年暮れに発表したアフガン戦略の進捗具合に不満があるのが、真の理由だと思われる。戦略発表時には、来年の7月に撤退を始める事を言っていたが、一方でペンタゴンは撤退の時期については、状況次第と発表していたりするので、アメリカ軍事史上、一番考え抜かれたという事であったが、基本的に欠陥の有る戦略であった事が伺える。(より良い戦略はあったと思うが、正解は無いとも思う)

オバマ大統領は、行政より健康保険改革法案、金融改革法案の立法の方に興味があるみたいだし、生涯職で大統領任期よりずっと長く影響力を持つ最高裁判所判事の任命に熱心なようである。

目の前にこれだけ重要な危機があるのに、オバマは基本的にどうでも良いのであろう。彼は、アメリカを社会主義的な社会に再構築する事にだけにしか興味が無いので、拙い実務能力の過大自己評価と言い訳で乗り切ろうとしているだけである。ここまで、言う事とやる事の差がハッキリしてくると、盛り返す方法はないと思われる。まあ、最近は本人も割り切っていて、そんな事気にもしてないなだろうけど。

こんなオバマ政権に対して、州と議会(共和党が過半数をとった後になるが)が激しく挑んでいく事になると思う。首脳部がコテコテのリベラルになっている民主党が、下院の過半数、上院のス-パーマジョリティ(今は無い)、そしてホワイトハウスを占めていたので、結構ダメージが大きいのであるが、彼等が押し進めた政策の矛盾や嘘が段々明らかになっているので、アメリカ国民はしばらくその事を忘れないだろうと思う。

問題がこれだけハッキリしているのに、喋る以外何も有効な手を打てないオバマ政権って、情けないとしか言いようが無い。