ヤンマ探索記

トンボの観察記録です。

タイトルはヤンマですが、トンボなら何でも撮ります。
勿論、ヤンマが優先です。

セスジイトトンボ・ムスジイトトンボ 番外編

2018-03-11 | イトトンボ科番外編

思い出のトンボ(その4)

過去の画像から、思い出のトンボです。最終回は、セスジイトトンボ、ムスジイトトンボ。

オオイトトンボを含めたクロイトトンボ属3種のうち、この2種の目撃は少なく交尾、産卵がなかなか撮影できません。
シーズン前は撮れるうちにと思いつつ、毎年時期を逸してしまいます。3種を比較しながら過去の画像を振り返ります。
前回、失念したオオイトトンボだけは何度か撮影機会があり、オオイトトンボの記事は14年7月にも掲載しています。

画像を確認するうち、従来あまり記載していない識別に言及することになりましたが、個体差があり、あくまで目安です。

<セスジイトトンボ> 交尾態

2015.6 長野県上田市

<セスジイトトンボ> ♂ 静止


♂ 静止 特徴は三角形状の眼後紋、多くの個体に見られる肩黒条内の淡色条、尾部上付属器の形状


♂ 半成熟 静止 腹部第8節背面に黒い斑紋がある個体

2009.7 埼玉県杉戸町

♂ 静止 腹部第8節背面に一対の点状の斑紋が見られる個体

2011.6 埼玉県嵐山町

以下、オオイトトンボ♂と比較してみます。

<セスジイトトンボ> 一般に見られる♂ 

2009.7 埼玉県杉戸町

上 セスジイトトンボ♂、下 オオイトトンボ♂。

眼後紋の形状が異なり、オオイトトンボの多くの個体は後頭条が明瞭で、肩黒条内に淡色条はありません。
通常は腹部第8節背面に黒い斑紋があり、これを見れば撮影中でも識別できますが、斑紋がない個体もいます。
セスジイトにも黒い斑紋が見られる個体(3つ上の画像)がいますが、通常オオイトのように明瞭ではありません。

<オオイトトンボ> 一般に見られる♂ 

2009.7 栃木県真岡市

♂ 静止


腹部第8節背面の黑斑紋が点状で殆ど見られない個体

2014.7 都区内

腹部第8節背面の黒斑紋の形状は、大別して以下の2パターンが見られます。14年7月上旬は同じ池で混在していました。

連結態 ♂ 一般に見られるウサギの耳状に見える黒斑紋

2009.7 都区内

連結態 ♂ 黒斑紋が細い個体 夏型か否かは不明

2014.7 都区内

次に、オオイトトンボ♂とムスジイトトンボ♂を比較してみます。

<オオイトトンボ> 一般に見られる♂ 

2009.7 都区内

上 オオイトトンボ♂、下 ムスジイトトンボ♂。

ㇺスジイトトンボの眼後紋は細く小さく通常後頭条はありません。また、腹部第8節背面に黒い斑紋がある個体はいません。
肩黒条内に淡色条が僅かにある個体、ない個体(2つ下の画像)がいますが、セスジイトとは眼後紋の違いが明らかです。
ムスジイトは、一見して複眼及び体色のブルーが鮮やかで、フィールドでも他の2種より目立ちます。

<ムスジイトトンボ> 一般に見られる♂ 肩黒条内に短い淡色条がある個体

2011.7 都区内

<ムスジイトトンボ> 一般に見られる♂ 肩黒条内に淡色条がない個体

2010.6 都区内

続いて♀の画像です。セスジイトトンボ、ムスジイトトンボの♀は、♂と異なり背隆線の黒条内に淡色条があります。
セスジイトトンボ♀の多くは黄緑色ですが、稀に青色の♂型が見られます。

<セスジイトトンボ> ♀ 静止 眼後紋は♂と同じ三角形状、後頭条は明瞭


♀ 静止 青色型

2015.6 長野県上田市

09年7月中旬の埼玉、セスジイトトンボの♂、♀が数頭が見られた草叢に珍しくムスジイトトンボの♀が潜んでいました。
♂と成熟♀は見られず、撮影中はセスジイトと思い込んでいましたが、後程画像を見て気が付きました。

同所にいたセスジイトトンボ♀とムスジイトトンボ♀をを比較してみます。いずれも成熟前の個体です。

<セスジイトトンボ> ♀ 半成熟






上 セスジイトトンボ♀、下 ムスジイトトンボ♀。

両種とも背隆線の黒条と肩黒条内に淡色条があり、それぞれ緑色の強い個体と褐色を帯びた個体がいます。
成熟前のセスジイトの褐色みのある個体は、成熟前のムスジイトとよく似ていますが、♂同様、眼後紋で識別できます。

<ムスジイトトンボ> ♀ 半成熟 眼後紋は♂同様細く小さい



2009.7 埼玉県杉戸町

ムスジイトトンボ♀の多くの個体は胸部の褐色が目立ち、成熟すると腹部側面が美しい瑠璃色になります。
稀に青色型がいるとされますが、見たことはありません。以下は成熟♀です。単体の画像がないので、すべて連結態です。

<ムスジイトトンボ> 連結態 ♀

2012.5 横浜市

連結態 ♀


連結態 ♀ 胸部が緑色の個体


連結産卵

2010.6 都区内

連結産卵 ストロボ撮影では♀の腹部側面の瑠璃色が際立つ

2012.5 横浜市

連結態を撮影すれば識別はより明確ですが、セスジイトトンボの連結は次の画像しかありません。河川にいた個体です。

<セスジイトトンボ> 連結態 産卵休止

2011.6 埼玉県嵐山町

オオイトトンボの♀は、胸部の黒条内に淡色条が入らず全体的に黒みが目立つので上の2種とは明らかに印象が異なります。
黄緑色の他、青色の♂型も普通に見られます。

以下はオオイトトンボです。まずは連結産卵、この3種とクロイトトンボは、共通して時に潜水産卵が見られます。

<オオイトトンボ> 連結産卵 ♀は潜水

2008.7 都区内

♀ 静止 眼後紋の形状、後頭条は♂とほぼ同じ


♀ 静止 青色型

2010.7 千葉県野田市

連結態

2009.7 都区内

連結態 ♀は青色型

2014.7 都区内

オオイトトンボ♀とセスジイトトンボ、ムスジイトトンボ♀との識別は容易ですが、厄介なのはクロイトトンボ♀です。
各地で最も普通に見られるクロイトですが、単体の成熟♀には意外に出会えず、画像がありません。連結態で比較します。
連結態を見れば一目瞭然ですが、♀のみに着目すると酷似しています。クロイトも黄緑色と青色の♀が普通に見られます。

上 オオイトトンボ 下 クロイトトンボの連結態。

<クロイトトンボ> 連結態 ♀は青色型

2011.6 都区内

見比べると肩黒条の太さがやや異なりますが、結局、眼後紋の大小、後頭条の有無で識別することになります。
3種と♂の違いが明確なクロイトトンボは、今回採り上げていませんが、以下は参考までに眼後紋が分かる♂と♀の画像です。
いずれも成熟前ですが、♀についても成熟個体よりクロイトの特徴が捉えやすいようです。

クロイトトンボの記事は14年6月、クロイトトンボ属の残る1種オオセスジイトトンボの記事は14年7月に掲載しています。

<クロイトトンボ> ♂ 半成熟 胸部に青白紛が生じる前の個体


♀ 半成熟 静止 

2009.7 埼玉県杉戸町


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