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無知の知

ほたるぶくろの日記

時間薬

2021-03-05 20:25:04 | 日記
この言葉を私はいい齢になるまで知らずにいました。

40代で初めて聞いて「なるほどね」と思ったのでした。
母が急逝した時、義母が言ってくれたのでした。
私にとって必ずしもいい母とは言い難く、どちらかといえば今風の言い方で
『毒親』であったのですが、彼女の生い立ちに思いを馳せますとそれはそれで仕方がない、と思うところもあったのです。
心根は悪い人ではなく、ひたすら前向きに生きていました。毒舌さえなければよかったんですが。

まあ、それはいいとして、その時に私の気分の沈んでいるのを観て、義母が
「『時間薬』があるからね」
と励ましてくれたのでした。
彼女はまだ若い時にお母さまを失くしています。
実体験から来る言葉には力が宿ります。
それでも言われたその時はそんなもんかな、と思う程度だったのですが、何となく心に残り、その後それを強く実感したのでした。

そして、今回のことではさらにその凄さがわかりました。

人間にとって「忘れる」というのはものすごく重要な能力です。
今回の家人の急逝にあたっては、最近やっといろいろな記憶が薄れてきました。それはそれで悲しいことでもあるのですが、「思い出して戦慄する」という時間がなくなって、大分楽になりました。

『時間薬』が効いてきたな。とありがたく思っているところです。


先日は子供と歩きながら、久しぶりに昨年の10、11月の頃についていろいろ話しました。

私はひたすら仕事と片付けをしていて、子供はひたすらアルバイトをしていました。私たちはどちらも何か必死にやって毎日を過ごしていたようです。
「ぼうっとする時間があると、思い出してしまうので、そういう時間ができないくらい疲れて寝てしまおう、という作戦だったのね。」

なんてことをやっと話ができるくらいまでになりました。

昔の変電所だそうです。いい建物ですよね。レンガ作りです。

先日、福島の方の活躍について取り上げた番組で、震災から何とか立ち直りかけた頃に、ご主人とお子さんとお子さんのご主人とを突然の事故で亡くされた方が、民宿を始めて、今も立派に過ごしておられる様子を観せていただきました。

その方が「今は彼らが私と一緒に働いている、と感じられるんです。ここに(胸を指差して)一緒にいることが確信できるので。私と一緒に楽しく働いていることがわかるのです。」とおっしゃってましたが、私も最近そんな風に感じています。

家人は私や子供と一緒に生きている、という実感があるのです。それはとても心強く、幸せな感覚ではあります。生きる力を頂いているといえます。

今回も『時間薬』はとても良く効いたようです。
ありがたいことです。