で、前回の続きなんですが、なんで、米国の国務省が、日本での人身売買に目をつけたのかについてですな。
著者が本書で書いているんですが、
著者は、米国出身のユダヤ人、元読売新聞記者、ジェイク・エーデルスタイン氏で、読売を辞めた後ですが、後藤組の元組長がロサンゼルスで肝臓移植を受けたことをすっぱ抜いて有名になりました。犯罪歴があると米国に入国できないはずなのに、FBIが手引きして、とか、元組長がお金を払って移植の順番抜かしをしたんじゃないか、とか。
で、人身売買についてですが、
読売新聞の記者をしている時に、ある日、情報提供の電話がかかってくる。それがきっかけで、外国人売春婦の被害について関わってゆくことになるんですな。海外からホステスとしてリクルートされたにも関わらず、借金を背負わされて、パスポートを取り上げられて、半分監禁状態で売春させられる。文句を言うと暴力。警察も助けてくれない。観光ビザで入国してて、仕事しているのがばれると不法滞在で国外退去処分にされてしまうんで、助けを求められない。
著者は、取材を重ねて、やっとのことで記事にして、結構な反響も得た、そこまでは良かった。
当然、取材して判明した悪事は暴かれて、悪人達は裁かれるものだと思ったら、警察が一切動かない。
警視庁のエライさんに文句を言いに行った。
女性をだまして、誘拐して監禁して、強制売春させている極悪人たちをなぜ逮捕しないのか。
その答えは、
1、悪人達を逮捕するには被害者も逮捕されて国外追放になる。観光ビザで仕事している罪を見逃すことはできない。
2、売春で捕まえて有罪にしても刑が軽いし、起訴されないことも結構多い
3、そんなんいちいち捕まえてる体力は無い
とかなんとかで、著者は納得できなかったが、引き下がるしかなかった。
で、著者がどうしたか。
米国の国務省に記事と、取材で入手した情報を送った。
で、どうなったか。
その結果、国務省のレポートで、日本は、北朝鮮よりちょいと良いくらいのひどいところにランク付けされることになり、ウォッチリストに上がってしまう。前回ご紹介したヤツですね。今は、ウォッチリストからは外れてるみたいですな。記事を書いたのは03年のことです。
それで、米国大使館が人身売買のシンポジウムをやることになって、著者はパネリストとして呼ばれたんだそうで。ジャーナリストとしてではなく、パネリストとして。大変名誉なことだった、著書に書いておられますな。
ILO(国際労働期間)が、日本の人身売買についてレポートを出した。日本政府がスポンサーだったんですが、政府の対応が失敗していると指摘したんで、日本政府は出版されるのを止めたそうで。
これですな。
日本における性的搾取を目的とした人身取引
著者は、これもコピーを入手して記事にした。
で、その後日本では法改正がなされようとしたり、当局も重い腰を上げて・・・。
こんな感じですかね。
人身売買「監視対象国」日本の対応
このような国際社会からの非難を受け、日本政府は、労働基準法や出入国管理法などの現行法の運用を強化したり、被害者をすぐには強制送還しないという方針を打ち出したり、「人身売買罪」を新設する刑法改正案を今国会に提出したりするなど、ようやく重い腰をあげ始めた。これらの対策を進めることで国際社会の要望に答え、上記条約の早期批准・発効を目指すことがまず必要である。
もういっちょ。
まあ何年かかっても、きちんとした対応ってのはムリっぽいですが、まあ、問題は認識されてて、グダグダではあっても全く問題が無視されているわけじゃないって感じですかね。アホくさ。
こういう動きを見てて感じることは、
1、モノゴトが、大新聞の記事になって、騒がれても、問題が解決しない
このことは、大きな欠陥ですな。どんな不正もガラス張りの中では生き伸びることはできない、というのが世界の常識だとしたら、これは常識に反してますね。暴露されても放置されてしまう。どっかおかしい。
2、外圧が決定的に重要
国務省のレポートが、事あるごとに指摘されてます。国務省から指摘されたから動く。そら大変だ、みたいな。本当は国内で犯罪が見逃されて放置されていることが、大問題なはずなんですが、それを指摘しても、インパクトがない。だから、アメリカ様に怒られまっせとアピールするしかない。
3、社会のメインストリームから外れた人間には薄情な社会
ここが、決定的な点ですが、被害者が一般の勤め人で、本当にやくざに襲われて、売春させられたとしたら、社会が怒って警察はヤクザたたきに乗り出すんでしょうが、被害者が外人で、外人と言ってもビンボー国からで、しかもちょいとビザの点で後ろめたいとかいうと、死のうがどうしようが、自分達とは関係ないハナシになってしまうんですな。
社会が公正かどうか、とか、法執行が正しく行われているかどうか、という観点では動かない。不正があからさまになっても自分達に関係がないと一般人に判断されると動かない。
これは外国人売春婦に限らず、同じ日本人でも、どっかにお勤めでなかったり、ドロップアウトや、会社トーサンしたおっさんにめちゃめちゃ厳しいことと関連していて、それは金を持っていようがなかろうが関係ない。
日本の自殺率が、なぜ先進国でダントツなのか。不景気で、ドロップアウトした人が増えたからですな。ドロップアウトしただけで死ぬわけじゃなくても、病気やなんかで、行き詰まると誰もたすけてくれない。ケーサツが売春強要されている外国人売春婦を救出しないのと同じように、行き詰まったドロップアウトに対しては当局も冷たい。
組織にしがみついていないと、地獄に落ちてしまうような社会なわけで、そんな社会にダイナミズムを求めるのはドダイ無理なんじゃないか、と言う風にも思うんですな。
いや、俺は独立してうまくやってる、とか、そんなハナシは別としてですね。
ヤクザを報じるアメリカ人
憚りながら 後藤組元組長
元組長 vs CBS 60ミニッツ
Tokyo Vice 東京バイス ジェイク・エーデルスタイン
『人身売買大国日本』 アメリカ様にチクッたのは誰だ
アメリカ様にチクッたのは誰か その2
著者が本書で書いているんですが、
![]() | Tokyo Vice: An American Reporter on the Police Beat in Japan |
クリエーター情報なし | |
Pantheon |
著者は、米国出身のユダヤ人、元読売新聞記者、ジェイク・エーデルスタイン氏で、読売を辞めた後ですが、後藤組の元組長がロサンゼルスで肝臓移植を受けたことをすっぱ抜いて有名になりました。犯罪歴があると米国に入国できないはずなのに、FBIが手引きして、とか、元組長がお金を払って移植の順番抜かしをしたんじゃないか、とか。
で、人身売買についてですが、
読売新聞の記者をしている時に、ある日、情報提供の電話がかかってくる。それがきっかけで、外国人売春婦の被害について関わってゆくことになるんですな。海外からホステスとしてリクルートされたにも関わらず、借金を背負わされて、パスポートを取り上げられて、半分監禁状態で売春させられる。文句を言うと暴力。警察も助けてくれない。観光ビザで入国してて、仕事しているのがばれると不法滞在で国外退去処分にされてしまうんで、助けを求められない。
著者は、取材を重ねて、やっとのことで記事にして、結構な反響も得た、そこまでは良かった。
当然、取材して判明した悪事は暴かれて、悪人達は裁かれるものだと思ったら、警察が一切動かない。
警視庁のエライさんに文句を言いに行った。
女性をだまして、誘拐して監禁して、強制売春させている極悪人たちをなぜ逮捕しないのか。
その答えは、
1、悪人達を逮捕するには被害者も逮捕されて国外追放になる。観光ビザで仕事している罪を見逃すことはできない。
2、売春で捕まえて有罪にしても刑が軽いし、起訴されないことも結構多い
3、そんなんいちいち捕まえてる体力は無い
とかなんとかで、著者は納得できなかったが、引き下がるしかなかった。
で、著者がどうしたか。
米国の国務省に記事と、取材で入手した情報を送った。
で、どうなったか。
その結果、国務省のレポートで、日本は、北朝鮮よりちょいと良いくらいのひどいところにランク付けされることになり、ウォッチリストに上がってしまう。前回ご紹介したヤツですね。今は、ウォッチリストからは外れてるみたいですな。記事を書いたのは03年のことです。
それで、米国大使館が人身売買のシンポジウムをやることになって、著者はパネリストとして呼ばれたんだそうで。ジャーナリストとしてではなく、パネリストとして。大変名誉なことだった、著書に書いておられますな。
ILO(国際労働期間)が、日本の人身売買についてレポートを出した。日本政府がスポンサーだったんですが、政府の対応が失敗していると指摘したんで、日本政府は出版されるのを止めたそうで。
これですな。
日本における性的搾取を目的とした人身取引
著者は、これもコピーを入手して記事にした。
で、その後日本では法改正がなされようとしたり、当局も重い腰を上げて・・・。
こんな感じですかね。
人身売買「監視対象国」日本の対応
このような国際社会からの非難を受け、日本政府は、労働基準法や出入国管理法などの現行法の運用を強化したり、被害者をすぐには強制送還しないという方針を打ち出したり、「人身売買罪」を新設する刑法改正案を今国会に提出したりするなど、ようやく重い腰をあげ始めた。これらの対策を進めることで国際社会の要望に答え、上記条約の早期批准・発効を目指すことがまず必要である。
もういっちょ。
まあ何年かかっても、きちんとした対応ってのはムリっぽいですが、まあ、問題は認識されてて、グダグダではあっても全く問題が無視されているわけじゃないって感じですかね。アホくさ。
こういう動きを見てて感じることは、
1、モノゴトが、大新聞の記事になって、騒がれても、問題が解決しない
このことは、大きな欠陥ですな。どんな不正もガラス張りの中では生き伸びることはできない、というのが世界の常識だとしたら、これは常識に反してますね。暴露されても放置されてしまう。どっかおかしい。
2、外圧が決定的に重要
国務省のレポートが、事あるごとに指摘されてます。国務省から指摘されたから動く。そら大変だ、みたいな。本当は国内で犯罪が見逃されて放置されていることが、大問題なはずなんですが、それを指摘しても、インパクトがない。だから、アメリカ様に怒られまっせとアピールするしかない。
3、社会のメインストリームから外れた人間には薄情な社会
ここが、決定的な点ですが、被害者が一般の勤め人で、本当にやくざに襲われて、売春させられたとしたら、社会が怒って警察はヤクザたたきに乗り出すんでしょうが、被害者が外人で、外人と言ってもビンボー国からで、しかもちょいとビザの点で後ろめたいとかいうと、死のうがどうしようが、自分達とは関係ないハナシになってしまうんですな。
社会が公正かどうか、とか、法執行が正しく行われているかどうか、という観点では動かない。不正があからさまになっても自分達に関係がないと一般人に判断されると動かない。
これは外国人売春婦に限らず、同じ日本人でも、どっかにお勤めでなかったり、ドロップアウトや、会社トーサンしたおっさんにめちゃめちゃ厳しいことと関連していて、それは金を持っていようがなかろうが関係ない。
日本の自殺率が、なぜ先進国でダントツなのか。不景気で、ドロップアウトした人が増えたからですな。ドロップアウトしただけで死ぬわけじゃなくても、病気やなんかで、行き詰まると誰もたすけてくれない。ケーサツが売春強要されている外国人売春婦を救出しないのと同じように、行き詰まったドロップアウトに対しては当局も冷たい。
組織にしがみついていないと、地獄に落ちてしまうような社会なわけで、そんな社会にダイナミズムを求めるのはドダイ無理なんじゃないか、と言う風にも思うんですな。
いや、俺は独立してうまくやってる、とか、そんなハナシは別としてですね。
ヤクザを報じるアメリカ人
憚りながら 後藤組元組長
元組長 vs CBS 60ミニッツ
Tokyo Vice 東京バイス ジェイク・エーデルスタイン
『人身売買大国日本』 アメリカ様にチクッたのは誰だ
アメリカ様にチクッたのは誰か その2
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