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中国との米国貿易赤字をどう見るか

2012-02-08 07:02:06 | ロンドンエコノミスト
さて、中国の経済の先行きに心配があるとかないとかは別として、米国の対中貿易赤字について。

あるいは人民元が過小評価されている、とか、いうハナシについて、実態がどうなのか。


米国の対中赤字だけを問題にしないで、多国間でみるべきだ、みたいなハナシは、胡錦濤自身が言ってたような気もしますなあ。

iPadded





AMERICA’S trade deficit with China hit another record last year. Estimated at almost $300 billion, it made up over 40% of America’s total deficit. Yet official data grossly overstate US imports from China.

昨年、米国の対中赤字はまた記録を塗り替えた。3千億ドルと見積もられているが赤字全体の40%。しかし、当局のデータはひどく過大に記録されている。

Take the iPad, which America imports from China even though it is entirely designed and owned by Apple, an American company. iPads are assembled in Chinese factories owned by Foxconn, a Taiwanese firm, largely from parts produced outside China.

iPadは中国から輸入されているが、米国でデザインされ、米国のアップル社のものだ。中国で生産されていても、工場は台湾のFoxconnのものだ。そのパーツも多くは中国の外から輸入されている。

According to a study by the Personal Computing Industry Centre, each iPad sold in America adds $275, the total production cost, to America’s trade deficit with China, yet the value of the actual work performed in China accounts for only $10.

米国で売られるiPadはそのコスト275$が中国との貿易赤字に加算されるが、中国内の作業で加えられる価値は10$に過ぎない。

Using these numbers, The Economist estimates that iPads accounted for around $4 billion of America’s reported trade deficit with China in 2011; but if China’s exports were measured on a value-added basis, the deficit was only $150m.

この数字を使って見積もれば、米国の対中赤字のうち40憶ドルがiPadによるものだが、もし、中国での付加価値ベースで計測すれば、対中赤字はたった1億5千万ドルに過ぎなくなる。


China’s small contribution to total costs suggests that a yuan appreciation would have little impact on its exports. A 20% rise in the yuan would add less than 1% to the import price of an iPad.

中国内の付加価値が小さいということは、人民元を高くしてもほとんど中国の輸出には影響しないということを示唆している。人民元が20%高くなっても、iPadの輸入価格は1%高くなるに過ぎない。

For imports such as clothing and toys the Chinese value added is much higher. But electrical machinery and equipment, with more complex cross-border supply chains, make up one-quarter of China’s exports to America.

衣料や玩具などだと中国の付加価値はずっと高くなるが、国をまたぐ複雑なサプライチェーンををもっている電気機器は、中国の対米輸出の4分の1を占めている。


Pascal Lamy, the head of the World Trade Organisation, has suggested that if trade statistics reflected true domestic content, America’s deficit with China might be more than halved.


もし貿易統計が、本当にその国の国内の生産額に限った内容を反映すれば、米国の対中貿易赤字は半分以下になるかも知れない。

というわけで、

この記事からは、いろんなことが読みとれますな。

米国の貿易赤字は、対中が多い、と言っても、実際には中国が輸入している中国以外の国からの赤字だと考えることもできるわけだし、中国の得ている利益は極めて小さい、とも言えますね。工場さえ、台湾の会社が経営しているので、中国に落ちる利益は労働者への分配分だけなんですな。

最終的に米国が得ている利益が圧倒的に多い、という話もありますな。
その利益はアップルのような多国籍企業の経営者や従業員や株主に分配される。利益は分厚くても製造部門は海外なので、売上規模からみた米国内での付加価値は、その分だけ減っているかもしれないが、それは製造部門の労働者が得たであろう報酬分であって、もともと製造部門でない人達にとっては影響が無い、てか、製造コストが安くなる分プラスの影響があるだけ。

米国国内経済が今一つでも株価が強いのは、何も金融緩和だけの影響じゃない、かもだし、格差拡大問題にも関連してきますね。多国籍企業に対する反感というのは、こういうのが背景にあるんでしょうな。

この記事では触れられてませんが、iPadは全世界で売られているわけですが、恐らく、その数字は米国の輸出として計上されるのではなく、中国からの輸出として計上されるんでしょう。

貿易赤字だけみて米国が弱った、みたいなハナシはしちゃいけないんで。


中国の輸出の勢いは、ゆるくなっているようではあるんですがね。
China's Export Sector Faces Headwinds in the New Year


それにしても、日本の名前は出てきませんなあ。


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