エッセイ : 蛍
里山歩きの友人達と、蛍を見に行った。
今年で3回目なので、蛍を見るこつが、少し分かってきた。
6月終わりから7月初めの日、曇って蒸し暑い晩、7時半から9時ぐら
いまでの時間、雨が降っては飛ばない。そして、多分月夜では飛ばない
ような気がする。
今回は一昨年に行った、あきる野市の山間の谷戸に行った。
昼間暑かったし、平日の晩ということもあって、見学をする人も少なか
った。
ボランティアの人たちが沢山いたので、大きな声を控え、山間に入った。
昼間の様子は分からないが、昔は田んぼだったと思われる湿地帯の端は、
草に足をとられる。小さなライトを手がかりに歩いていくが、雑木に、
夏草が茂っていて谷戸に入る道に迷った。
先に入ったグループの明りが見える。
「いた」直ぐ近くの枝に、小さな光が見えた。
嬉しくなる。毎回思うのだが、最初に会った蛍には、説明しがたい感動
を感じる。自然界の蛍に会いえた、私も生きている、なんて。
夕闇が濃くなると、あちこちが光る。
「飛んだ」
「あっ、あそこ」
「大きいのはゲンジボタルよ」
土手にシートを敷いてしゃがみこむ。
蛙の声と、蛍の乱舞、午後8時ごろがピークのような気がした。
「蛍になって帰ってくるって、話があったわよね」と誰かが言う。
終戦間近、特攻隊員がお母さんと呼んだ、知覧、「富屋食堂」の主人ト
メさんと、隊員たちとの交流の話だ。
戦闘機に片道の燃料だけを積んで、明日は飛び立つという隊員が、「明
日の晩、蛍になって帰ってきます」と言う。そして次の晩、店の引き戸
の隙間から、一匹の蛍がスーッ舞いこんで来たという。
こんな話も、じわじわと心に響く、蛍の夜だ。
今年は蛍の乱舞と言うような光景を堪能しました。
夫に自慢をしたら、「自分だけ楽しんで」と言うので
次の日、夫と姉を誘って、またまた蛍の晩でした。
※ 谷戸に入る所を迷ったのは、次の日です。
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