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どて煮こみ

 
 肉を食うぞ。こう思ったら、豚、鶏を食うことが多い。牛も食いたいが、牛は高いので、小生のごとき貧乏人はおいそれと牛は食えん。それでもたまには牛も食いたいものだ。そんな時、お助けとなるのがスジ肉。
 サーロインなんかでステーキでも焼こうと思って、国産の黒毛和牛なんか買うとサイフがからっぽになる。その点スジ肉なら安い。安いが少々時間がかかる。下ゆでして、最低2時間は煮なくてはならない。素材は安いがガス代がかかる。
 スジ肉の煮たの=ぼっかけは色んな料理のバリエーションに使える。このブログでも、うどんカレーお好み焼きまんじゅうと色々紹介してきた。
 今夜はどて煮こみを作った。スジ肉を甘めの味噌で煮る。これが、また、酒のアテにぴったりだ。ささ、いっぱい。
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ミンチカツ

 
きょうのおかずはミンチカツ。ミンチカツというと、揚げ物を揚げて売ってる店では、たいていコロッケといっしょに売られている。両方食べたい。ご飯前にコロッケとミンチカツ両方食べると、お腹いっぱいになって晩ご飯食べられへん。おかあちゃんに怒られるからコロッケだけにしとこ。という具合に買い食いの時には、どうしてもコロッケの後塵を拝していた。コロッケ=セリーグ、ミンチカツ=パリーグというとパリーグファン諸氏に叱られるかな。そこでやがな、今回はミンチカツに一軍入りをしてもろたわけ。
 ところで関西では「ミンチカツ」という。関東では「メンチカツ」というらしい。関東の人に気をつけてもらいたいが、関西ではあんまり「メンチ」といわんように。関西では「メンチ」はこんなふうに使う。
「なんじゃい。ワレ。なにメンチ切っとんぞ。なんぞ文句でもあんのんか。おんどれが。え、なんやて、顔見ただけやて。ワシの顔になんぞついとんか。けったくそ悪いやっちゃな。ええ、上等やないけ。ケンカ売るゆうんやったら買うで。ごじゃごじゃゆうたら、耳の穴から手突っ込んで奥歯ガタガタいわしたろか。このクソガキが」
 関西ではメンチとは相手の顔を見る/見られた方はにらまれる=ケンカを売られる。と、なる。それに某球団のファンにとって、メンチは禁句である。思い出すのもけったくそ悪い名前である。くれぐれも関西ではこの料理を「メンチカツ」といわないように。
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イカナゴのクギ煮

 
今年初めてイカナゴの新仔が売っていた。早速買って煮る。やっぱり、このイカナゴのクギ煮を作って食べなければ、神戸に春が来たとはいえない。
 毎年、何回か炊くのだが、昨年は1度しか炊けなかった。年々、漁獲量が減っているらしく、毎年値が上がる。今年も高かった。1キロ1800円もした。そのうちイカナゴのクギ煮が食べられなくなるかもしれない。心配だ。イカナゴの新仔が手に入らなければ神戸人はどうして春を迎えればいいのだ。
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とつぜんSFノート 第4回

 理科好きで空想好きな少年雫石鉄也は、「未来」「宇宙」「ロケット」「ロボット」なんかが出てくるお話が大好きな少年だった。それらのお話が「空想科学小説」なるモノであることを知り、それらしい本をながめては喜んでいた。そんな小生を「SF」の世界に吸い込んだのが「SF入門」という本であった。
 発行が1965年。小生が持っている本は再版。初版は1965年5月31日。同年7月10日に再版している。初版に何部刷ったか知らないが、一ヶ月とちょっとで再版。よく売れた本であるらしい。今から44年前の本だ。出版社は早川書房。編者は初代SFマガジン編集長福島正実。SFマガジン創刊が1959年だから、それから5年後。巻末にハヤカワSFシリーズいわゆる銀背の広告が90冊分載っていた。最初のフィニイ「盗まれた街」からワイリー「勝利」まで。このシリーズが軌道に乗っていたことが判る。
 こういう時期タイミングで「SF入門」が出版された。柴野拓美氏、矢野徹氏、野田昌宏氏、星新一氏、光瀬龍氏たちを日本の第1世代のSF者とするのならば、小生は第2世代といっていいだろう。その第2世代のSF者たちがSFの世界へのとば口に立っている時に、ちょうどこの「SF入門」が出版されたのだ。小生にとって、渡りに船的な本となったわけ。上記のような売上げを見ると、小生とおなじ世代のSF者のお歴歴も、この本を買ったムキも多かったのだろう。小生自身にとって、また、日本のSF界にとって、初期の起爆剤として、この本の意義は大きいと思う。
 ではどんな本か紹介しよう。目次を転載する。

1、SFの定義をめぐって
  序にかえて・・・福島正実
2、SFの歴史
  ギリシャ・ローマ・中世・ルネッサンス・・・福島正実
  ジョナサン・スウィフト・・・小泉太郎
  ジュール・ヴェルヌ・・・村上啓夫
  H・G・ウェルズ・・・福島正実
  英米SFの系譜・・・福島正実
  ソビエトSFの系譜・・・袋一平
  フランスのSF作家たち・・・北村良三
  アメリカのSF現代作家・・・福島正実
  ソビエトのSF現代作家・・・飯田規和
  日本SF史の試み・・・石川喬司
3、SFしんぽじうむ
  SFの流行について・・・安部公房
  SFの批評性・・・木島始
  ソビエト・サイエンス・フィクション序文・・・アイザック・アシモフ
  モア・ソビエト・サイエンス・フィクション序文・・・アイザック・アシ
  モフ
  ファンタジーの退屈・・・アーサー・ケストナー、
  社会主義的SF論・・・イワン・エフレーモフ
  拝啓イワン・エフレーモフ様・・・小松左京
  戦略的SF論・・・石川喬司 
  最近のソ連SF・・・袋一平
4、SFかりきゅらむ
  SFマーケット・・・伊藤典夫
  SFコンベンション・・・矢野徹
  SF映画展望・・・岡俊雄
  SF漫画・・・手塚治虫
  SFの英雄たち・・・野田宏一郎
  SFのベムたち・・・伊藤典夫
  SFにあらわれる武器・・・光瀬龍
  SFにあらわれる宇宙船・・・豊田有恒
  SFとESP(超能力)・・・斎藤守弘
  宇宙人類学・・・斎藤守弘
  タイム・トラベル・・・小隅黎
  時間旅行調査委員会報告・・・安部公房+中原佑介
  ロボット物語・・・福島正実
  ファンダム・・・柴野拓美
5、SFをどう書くか
  短編をどう書くか・・・星新一
  長編をどう書くか・・・小松左京
6、SF用語辞典・・・福島正実
付録 
  SF読書の手引き・・・福島正実+石川喬司

 ご覧いただいたように、当時の日本SF界が総力を上げて創りあげたSFの入門書だ。入門書としての過不足ない機能を有すると同時に優れた評論集ともなっている名著だ。

 1章で福島正実がSF観を述べているが、いささか時の流れを感じずにはいられない。「科学」(ここでいう科学とは自然科学)を意識せずにはSFを論じられない。「SFの鬼」いわれた福島正実ですら、この当時は「科学」をまったく無視というか、視野に入れずに創作されたSFは考えられなかったと見える。21世紀の現代においては、「科学」とは全く無縁のSFも多く存在する。早川にて福島の後輩が企画した「想像力の文学」などはその証左ではないだろうか。
 2章の歴史は、やはり一般基礎教養として押さえておくべき内容だろう。これが大学ならば教養課程の必須科目といったところか。
 3章のシンポジウム。主にソビエトSFに言及されている。ソビエトはご承知のような国であった。ソビエトSFは科学に対して全幅の信頼を置いていた。科学技術の発展によって、明るい社会主義の未来が開く。悲観的に科学を見ることが多い英米SFに比べ、ソビエトSFは科学を楽観的に見る。今となっては歴史の巨大な皮肉を感じる。
 エフレーモフは「大文学」なるものを想定して、文学のあらゆるジャンルに科学知識が必要になる。SFは存在意義を失い消滅して「大文学」に吸収される。小松左京がそれに対する反論を書いている。科学が旧来の重苦しい文学を解放した。それがSFだ。SFは「自由」なのだ。イワン・エフレーモフVS小松左京。この2項はなかなか読みでがあった。エフレーモフには気の毒だが、社会主義国家ソ連は崩壊した。
 それにしても昔は、ソビエトSFが英米SFと並んで、論評紹介されることが多かった。最近はSFマガジンが非英語圏SFやロシアSFの企画を思い出したようにやるだけ。ロシアSFなどには面白いものが多いと思うのだが。ソ連崩壊前と崩壊後のロシアSFを比較する企画などは面白いと思うのだが。
 4章SFカリキュラム。この章がいちばん心引かれて読んだ。SFのキモは「センス・オブ・ワンダー」なんだということを、この本のこの章で知った次第。SFの大きなテーマである「破滅」が抜けているが、おおむね必要な項目は網羅されている。
 野田宏一郎(昌宏)担当の「SFの英雄たち」で、キムボール・キニスンという男に興味を持った。彼の出てくる作品を読みたいと思った。その願いはそれからしばらくして実現した。 
  
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神戸の地酒 道灌

 
 小生の住まいおる神戸市東部から西宮にかけては酒どころ。灘の生一本で知られる日本一の日本酒生産地である。量は。質は人によって好みがあるが、灘の酒より越後や土佐の酒のほうが好きな人もいるだろう。小生は魚崎郷の桜正宗、池田の呉春、丹波の小鼓、金沢の天狗舞などが好きだ。
 いわゆる灘五郷。東から今津郷、西宮郷、魚崎郷、御影郷、西郷。西宮市と神戸市東灘区、灘区。これらの地域にある醸造元は、大関、日本盛、菊正宗、白鶴といった大手の酒造メーカー。メジャーな酒である。これらの有名銘柄の酒も、神戸の地酒といえば地酒である。
 神戸には、この灘五郷に属さずあまり知られていない酒もある。例えばこの道灌。醸造地は神戸市東灘区深江南町。灘五郷ではない。酒造会社は太田酒造。名前から推察される通り太田道灌とゆかりのある酒造会社だそうだ。もともと滋賀県の会社だったが、昭和30年代に神戸に進出。五郷以外のこの深江の地で酒造りをはじめた。
 場所は海のきわ。西に神戸大学海事科学部がある。新明和の工場の近く。カミックスという船会社の隣り。このカミックスは元は東神戸造船所といって、造船をやっていたが、今はプレジャーボートやクルーザーといったレジャー用船舶の係留場やメンテナンス修理をしている。
 そのカミックスの隣りに太田酒造灘千代田蔵がある。道灌はここで醸されている。造船所の隣りの蔵元。いかにも神戸の地酒である。
 このあたり、深江南町周辺は深江文化村といって、かっては、細雪でおなじみの戦前の阪神間モダニズムの一翼を担った土地。革命を逃れてきたロシアの文化人や、日本の有名な文化人もこの地に住んでいた。阪神大震災で被害を受けたが、今でも当時のハイカラな建物が残っていて往時をしのぶことができる。
 さて、道灌をさっそく飲んだ。うまい。五郷の酒より澄んだ感じ。重厚ではないが腰は据わっている。それでいて軽快で飲みやすい。肴は天ぷらや焼き物よりも、お刺身が合うかもしれない。お気に入りの酒がひとつ増えた。また酒量が増える。困ったもんだ。まったく。
 
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SFマガジン2010年2月号


SFマガジン2010年2月号№647  早川書房

雫石人気カウンター
1位 地球から来た男        山本弘
2位 アリスマ王の愛した魔物    小川一水
3位 囚人の両刀論法        小林泰三
4位 コンビニエンスなピアピア動画 野尻抱介
5位 マグネフィオ         上田早夕里

 創刊50周年記念特大号PART・Ⅱ。先月号が海外編だった。今号は日本SF篇。総ページ536ページ。読み応えたっぷりであった。今号もごちそうさまである。

 掲載作は次ぎの通り。

フェイス・ゼロ            山田正紀
問題食堂               椎名誠
ロボ                 瀬名秀明
マグネフィオ             上田早夕里
ザナドゥ高地             谷甲州
小指の思い出             牧野修
確かな自己、固定・変換・解放     神林長平 
古の軛                林穣治
路面電車で行く王宮と温泉の旅一泊二日 北野勇作
囚人の両刀論法            小林泰三
カッパの王              田中啓文
メトセラとプラスチックと太陽の臓器  冲方丁
アリスマ王の愛した魔物        小川一水
エデン遡行              円城塔
地球から来た男            山本弘
気まぐれな宇宙にて          森岡浩之
夢                  菅浩江
コンビニエンスなピアピア動画     野尻抱介

 以上読み切りが18編。この他、連載が3本、漫画が5本、記念エッセイが10編。実に豊富な内容で、大満腹。
「地球から来た男」良いお話。最後にホロリとさせられる。小生、山本弘氏はアマチュアのころから知っているが、こんな良いお話が書けるとは。SFの地力だけで充分勝負できる作家だから、「文芸」がプラスされればこんな良いお話ができる。
「アリスマ王の愛した魔物」このくだりは笑わされた。以下、388ページから引用。
「縦と横と高さの三軸からなる空間に存在する幾何学図形集合空間のうち、基本群が自明であるものは三次元球面でしかありえないと思うのですが、いかがでしょう?」
「は?」
 天下無敵の理科系男が天下を握って皇帝になった。隣国に攻め入り、昔、自分をふった隣国の美しき姫に問うた質問と姫の答え。
「囚人の両刀論法」有名な命題の解決法。ロジックの面白さを堪能した。なるほど。
「コンビニエンスなピアピア動画」コンビニの店の中から宇宙へ。コンビニの入り口に仕掛けられた害虫駆除器で蜘蛛だけが生き残っていた。この蜘蛛がとんでもないことに。コンビニという日常空間から宇宙空間へ、そしてまた日常へ。
「マグネフィオ」バスの事故で脳に障害を負った男。友人も同じく脳に障害。友人は植物状態。友人の妻を男は好き。まるでやすでの不倫小説のようだが、よくできたSFに仕上がっていた。
 飛浩隆の連載は今後に期待が持てそう。円城塔、相変わらずなんのことやらさっぱり判らん。円城はファンダムではうけが良いが、小生にはどこがいいのかまったく判らん。菅浩江、まったくダメ。2009年12月号の作品もダメだったし。最近どうした。スランプかスガちゃん。がんばれ。
 先月号はどっちつかずの編集と批判したが、今号は良かった。現在の日本SFの到達点のショーケースであった。見事だ。記念特大号2冊。WBC決勝戦なら日本代表の勝ち。№647号はSFマガジンここ10年のベストではないだろうか。通常号もこの調子でがんばれ。

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ののちゃん復活

 
 作者いしいひさいち氏病気のため、休載していた朝日新聞朝刊の連載漫画「ののちゃん」が3月1日から再会する。小生はこの漫画のファンだから、うれしいニュースだ。朝刊を読む楽しみがひとつ増えた。
 昨年11月に休載の告知がなされ、4ヶ月間朝刊の左上が非常にさみしい状態が続いた。休載直前の回の漫画が意味シンな内容だっただけに、本当に病気なのか、別の理由で休載させられたのか、このまま終了してしまうのか、心配していただけに、ファンとしてはほっとしたしだい。
「ののちゃん」は最初「となりの山田くん」というタイトルで1991年に連載開始。それ以前はサトウサンペイの「フジ三太郎」だった。今年で19年目。朝日新聞の漫画では「サザエさん」が25年。朝日の漫画では2番目の長寿連載漫画となった。
 毒のない四コマ漫画は面白くない。あの「サザエさん」でさえ毒がある。四コマ漫画は毒の強さに比例して、面白さは濃くなる傾向だ。小生は生まれた時から新聞は朝日で、朝日新聞の漫画もいろいろあったが、朝刊いしいひさいち「ののちゃん」夕刊しりあがり寿「地球防衛家のヒトビト」の今のコンビが一番お好みだ。
 それはそれとして、夕刊の前の漫画「Mr.ボオ」はまったくつまらなかった。面白くもなんともない漫画だった。小生、上方落語ファンではあるが、桂文福だけはおもしろくない。「Mr.ボオ」のつまらなさは桂文福のつまらなさに合い通じるのではないか。
 それにしても、いしいひさいちは面白い。小生の知っている限り、今の漫画家では一番毒があるのではないだろうか。「ののちゃん」は新聞連載ということだから、まだ毒性は弱く、これが「ドーナツブックス」などになると、だいじょうぶかいな、これはちょっとヤバイんでは、と思うような猛毒がある。いずれこのブログでレビューしようと思う。

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12人の優しい日本人


監督 中原俊
出演 相島一之、塩見三省、上田耕一、林美智子、二瓶鮫一、中村まり子、大河内浩、梶原善、山下容莉枝、村松克巳、豊川悦司、加藤善博

 シドニー・ルメット監督ヘンリー・フォンダ主演の名作「12人の怒れる男」を本歌として、三谷幸喜がシナリオを書いた。今の日本には陪審員制度はないから架空の裁判の話である。
 本歌はデスカッション、ディベートに慣れているアメリカ人の男ばかりの映画であったから論理が先に立っていた。本作は日本人で女性が3人メンバーにいたためか、どうしても感情が先に立ってしまう。日本人は話し合い、会議といった類いのものは苦手らしい。
 映画の冒頭は、審理を始めるに当たって、陪審員各自好みの飲み物を注文するところから。まったくまとまらない。ころころオーダーを変えるやつ。なかなか決められないやつ。喫茶店の出前にないモノをオーダーするやつ。前途多難。有罪か無罪は陪審員全員の意見一致が必要。果たしてこんな連中に陪審員ができるのか。
 審理が始まった。全員無罪。あっさり決まった。なぜか。被告は若い美人でかわいそうな身の上。被害者は被告の夫で、どうしようもないダメ男。被告がかわいそう。被害者は殺されて当然。よって被告は無罪。
 早く終ったな。やれやれ。ところが陪審員2号が有罪を主張。みんなに説得されるが「話し合いましょう」12人の「話し合い」が始まった。
 この陪審員2号が本歌の陪審員8号ヘンリー・フォンダの役どころだが、フォンダの8号は初老で謹厳真面目実直。本作の2号は若く生真面目そう。キャラが違う。観ていて最初はこの2号に感情移入するが、映画が進むにつれて、感情移入する対象が違ってくる。この12人は典型的な日本人。キャラの書き分けはさすが三谷。有罪無罪を唱える陪審員は12人の中で増えたり減ったり。ころころ意見を変えるやつ。頑固に変えないやつ。議長ではないのに会議を仕切りたがるやつ。われ関せずのやつ。すねるやつ。鼻血を出して寝るやつ。らくがきしてるやつ。もちろん審理は膠着状態。だれがこの状態を動かすか。その興味で映画の中盤は観させられる。
 後半はちょっとしたどんでん返し。もちろん伏線は張ってある。どんなどんでん返しかというと、いえない。映画を観られたし。ヒントを一つ。陪審員2号相島一之は8号ヘンリー・フォンダではなかった。実は陪審員3号リー・J・コップだった。
 非常に面白い会話劇だった。本歌が緊迫した会話劇。本作は脱力した会話劇。日本人は感情の生き物だな。その日本人が現実に裁判員をする。だいじょうぶかな。
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チーズフォンデュ

 
 もうすぐ寒い冬も終る。冬はなんといってもお鍋。かといって、関東煮や寄せ鍋すき焼きばかりじゃ芸がない。たまには毛色の変わった鍋も食べたい。と、いうことで今夜は西洋の鍋にした。夕食はチーズフォンデュ。
 チーズは市販のフォンデュ用のものを使った。具はバゲット、ウィンナソーセージ、うずら卵、ブロッコリー、にんじん、じゃがいも。
 ソーセージはバターで炒めておく。うずら卵、にんじん、ブロッコリー、じゃがいもはゆでておく。バゲットはビゴの店で買ってきた。
 チーズと具の準備ができたら、あとはチーズにつけて食べていく。もちろんワインを飲む。
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チゲ鍋


 今晩の鍋はチゲを用意しましたでな。寒い夜はピリ辛のチゲ鍋が、身体がホコホコとぬくとまりますでな。チゲは美味しいからお酒も進みますでな。
 スープはガラスープですじゃ。スープにコチジャン、醤油、味噌、砂糖、酒で味をつけますでな。隠し味ににんにくをすって入れると良いですじゃ。それと忘れてはならんのがアミの塩辛じゃ。スープにええ塩かげんとコクのある旨みがでるのじゃ。
 ほんで、肝心の具じゃがな、今回は豚肉と豆腐のチゲとするのですじゃ。野菜はキャベツ、ニラ、モヤシ。それにキムチを忘れてはいかんぞな。豚肉は肩ロースの塊を使いますでな。
 まんず、食べやすいように切った豚肉をゴマ油で炒める。そこにキムチを加えて炒め、スープを注ぎますでな。キムチは炒めると旨味が増すのじゃ。
 あとは野菜と豆腐を加えて食べますでな。チゲは旨いですじゃ。シメは韓国のお餅トックを食べたのじゃ。
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鷹匠谷は一人?

 その女性は初めての客だ。この店「海神」に女性の一見さんは珍しい。
 二〇代半ば。独身と思われる。色白で物静かな女性だ。酒場に一人で来るような娘さんには見えない。先客はいない。
「いらっしゃい」
 いごごちが悪そうに、カウンターの端っこに座る娘に、鏑木はやさしく声をかけた。
「だれかとお待ち合わせですか」
「いえ、あ、はい」
 事情がありそうだ。たぶん男性を待っているのだろう。
「なにか飲みます。カクテルでもつくりましょうか」
 鏑木のレシピにも、若い女性好みのものはいくつかある。
「はい。フォアローゼスを」
 バーボンとは意外だ。棚から新しいボトルを出して封を開けようとした。
「あ、あのう。たかしょうだにのボトルありますか」
 そのボトルの持ち主、鷹匠谷はこの町の私立高校で教師をしている男だ。ちょうどこの娘ぐらいの子供がいる歳かっこうだ。若いころは他県の公立高校の教師だったそうだ。
 たかしょうだに。珍しい苗字だ。鷹匠谷は同じ名前の奴にあったことがない。グーグルにもひっかからない。日本で一人だと自慢していた。
 鷹匠谷のボトルを娘の前に置く。娘の顔が明るくなった。
「三軒目だわ」 
 鏑木は鷹匠谷のボトルからフォアローゼスをグラスに入れた。
「愛里さん、ですか」
「はい。鷹匠谷愛里です」
 鷹匠谷は離婚した妻とのあいだに娘があった。離婚した時は娘は一歳だった。
 酔うと「愛里にあいたい。愛里はどんな娘になったのか」と、つぶやきながら海神のカウンターで寝てしまう。
「電話、お嬢さんがします?」
「マスターお願い」
 鷹匠谷の携帯の番号は知っている。
「鏑木です。鷹匠谷さんにお会いしたい方が店でお待ちです」
 ドアが開いた。客は愛里一人。二人の視線があった。
「愛里か」
「おとうさん」
「私、奥で用事がありますので」
 鏑木が席を外す。店には父と娘が残った。 
 しばらくして店に戻る。鷹匠谷一人が残っていた。
「お嬢さんは」
「帰った。時々会う約束をした。母親にはないしょだそうだ」
 愛里は風の噂で、父親がこのS市にいることを知った。その噂を伝えてくれた父の飲み友だちの話では、父は行きつけの飲み屋ではフォアローゼスをキープしていることを聞いた。
 鷹匠谷という珍しい苗字は父しかいない。それにこのS市の駅前商店街にはバーやスナックは三軒しかない。
「この名前に感謝してるよ」
 鷹匠谷はグラスを開けて、カウンターに置いた。そこにはルージュの紅が付いたグラスがまだ置いてある。
「鷹匠谷さんが二人ですね」
「いや。俺一人だ。娘は山本愛里という」
「奥さんの旧姓ですか」
「元奥さんだ。山本?知らない男の名だ」
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細雪の石碑

 
14日の日曜日の午前。お天気が良いので散歩する。芦屋川沿いをぶらぶら。気持ちの良い散歩だ。川沿いに南から北へ歩く。阪急芦屋川駅を過ぎて、西側から東側へ橋を渡って少し北へ歩いたところに、この「細雪」の碑がある。芦有自動車道へ行く道の少し下。ヨドコウ迎賓館の近く。
 原作の地理の記述どおりだと、この場所ではないようだが、イメージ的にはこの場所に幸子宅がある方がぴったりくる。
 映画でワンシーンだけ幸子宅が出てきたが、あの場所はもっと南。国道2号線と芦屋川が交差するあたり。業平橋の近くではないだろうか。その場所には黒べい造りの堂々たるお屋敷が現実にある。
 原作の通りの幸子宅も再現されている。
 この石碑場所から、阪急芦屋川へ戻る。そこから川沿いに南下。すぐ東へ行くと俵美術館。そのまま南下。JRの線路が川の下をくぐる。ルナホールが右手に。業平橋のところで2号線を渡る。このあたりが映画に映ったところ。芦屋カトリック教会を通り過ぎ、芦屋警察を過ぎると阪神芦屋。そこから電車に乗って、深江、青木、つぎの魚崎で下車。住吉川沿いを北へ。頭上を六甲ライナーが走る。川の西側に倚松庵がある。ここが細雪の幸子宅。
 芦屋川沿いは桜の名所。小生のお花見はいつもここ。なお、このルートは芦屋川も住吉川も気持ちの良い川で、絶好のお散歩ルート。お近くに来られれば、ぜひ散策なされることをお勧めする。
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東大に合格すれば54万円

 もし小生の出身高校の同窓会が、こんなことをすれば、小生はただちに同窓会を脱会する。バカの仲間と思われたくない。この同窓会の役員には会計監査がいないのか。いたらなぜこんなバカな金の使い方を止めなかった。
 茨城県の某県立高校。この高校の同窓会が、卒業生で東大に合格すれば、1年分の授業料にあたる54万円を同窓会費から支給する。
 この高校、地元の伝統校。昔は地域で大学を目指す子はみんなこの高校に入学した。ところが、最近は、成績の良い中学卒業生は、他の地域の高校や都内の私立の高校へ行く子が増えてきた。そこで優秀な生徒を集めるために同窓会がこんなことを考えたわけ。
 なぜ東大なんだ、との問いに同窓会長は「大学名を明示した方があとあとまでもめない」もうもめているじゃないか。新聞ダネになるのだから。
 それにしても、ほんと、なぜ東大なんだ。だいたいが東大に行くような子は裕福な家の子弟が多い。子供を東大に行かせようと思えば、塾だなんだと大きなお金がいる。そんな裕福な家の子に54万円をやるぐらいなら、東大志望ではないけれど、家の経済状態で進学が困難な生徒に支給する方がいいだろう。盗人に追い銭的バカな金の使い方だ。
 絵の才能があり、本人も絵の勉強がしたい。でも家が貧乏。そんな子が芸大に合格すればお金をだせばいいだろう。
 クロマグロが食べられなくなる。しかし希望がある。近大の水産学科がクロマグロの完全養殖に成功した。この高校の生徒がこのことを知って、日本の水産業の将来を憂い、近大の水産学科に進学したいとおもったら、近大に合格すればお金をだせばいいだろう。
 東大法学部を出てアル中になって財務大臣になって、外国で酔っぱらって恥をさらしたご仁もいた。
 もし小生がこの高校を卒業して東大に合格しても、そんな金はいらない。そんな金をもらえば、同窓会に借りができ、一生同窓会のひも付きになってしまうではないか。同窓会の犬になるのはごめんだ。
 ともかく、この同窓会の所業に生徒に対する愛情が感じられない。あるのは、大人たちの名誉欲と自分の出身校の体面だけだ。
 お金の使い方を知らんバカもおるもんだ。
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とつぜん対談 第13回 ナットとの対談

 今日の対談の相手は大変に口数が少ない方です。機械の整備関係のお仕事をなさっておられます。縁の下の力持ちのお仕事です。寡黙に黙々と日々の仕事をしておられます。

雫石
 こんにちは。きょうもお仕事ですか。

ナット
 ・・・・・・。

雫石
 毎日ごくろうさまです。あなたが影で支えているから機械がちゃんと動くのですね。

ナット
 ・・・・・。

雫石
 もう何年この仕事やっておられます。

ナット
 18年。

雫石
 18年も!長い間には色々あったでしょう。

ナット
 ない。

雫石
 お仕事やってて報われたと思う時はいつですか。

ナット
 ・・・・・・。

雫石
 大切なお仕事ですから、お給料もたくさんもらっておられるでしょう。

ナット
  少ない。

雫石
 少ないって、どれぐらいですか?

ナット
 ・・・・・。

雫石
 生活苦しいでしょう。

ナット
 苦しい。

雫石
 やってられませんね。

ナット
 オレの仕事だ。

雫石
 引退を考えたことは?

ナット
 ない。

雫石
 お疲れではないですか

ナット
  ・・・・・・。うう。

雫石
 あ、ナットさん、急にどうしました。

 凸山市の凹電力凸原発2号機の冷却水循環用ポンプのシャフトを支えるナットが急に脱落。原子炉内部に水蒸気が充満。炉内の圧力が高まっております。水蒸気爆発は避けられない状況になりました。爆発すると大量の放射能が周囲に飛散して、甚大な被害が予想されます。
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浅倉久志氏ご逝去の報に接する

 翻訳家の浅倉久志氏がご逝去された。日本での英米SFの翻訳紹介では、伊藤典夫氏とともに2本柱ともいうべき存在の翻訳家だった。伊藤氏が先鋭的なSFを紹介翻訳するのに比べ、浅倉氏は広く深く長く仕事をされる翻訳家だった。海外SFを日本語で読もうとすれば、原作のできもさることながら、翻訳のできがものすごく重要。早川書房で成功するまで、海外SFの紹介普及がなかなかできなかったのは翻訳のまずさが大きかっただろう。SFの発展には作家もさることながら、翻訳家の存在も非常に大きい。浅倉久志氏を翻訳家に持ったことは日本のSF界にとって非常に大きな力となった。浅倉氏の翻訳であれば、それだけで/それだから/それだからこそ、そのSFは安心して読めた。
 小生は、直接言葉を交わす機会には恵まれなかったが、SF大会などのイベントでは、何度かお見かけした。
 小生にSFの楽しさを伝えてくれえた先輩が、またお一人なくなった。さみしいかぎりだ。

 浅倉久志氏のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
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