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今年も桜正宗の酒粕を買いました


 11月も今日で終わり。明日から12月。師走です。これから冬本番、お寒くなりますね。寒い季節、温かい粕汁などは、ありがたいごちそうです。
 毎年、吉例。酒粕の買出しに行きました。会社の帰りに、阪神電車魚崎駅で降りて、国道43号線の下をくぐって少し南に行くと、桜正宗があります。桜正宗は私のお気に入りの日本酒です。
 この桜正宗で酒粕を買いました。これで、今年も酒粕料理をいろいろ楽しめます。今年の絞りたての新酒も買って帰ろうと思いましたが。発売は12月になってからだそうです。予約しました。12月の上旬には桜正宗の絞りたて新酒が送られてきます。楽しみです。
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とつぜんSFノート 第95回

 と、いうわけで、1984年の7月27日の夜は、小生たちは北海道は定山渓温泉の定山渓ホテルで過ごしていたのである。つい先ほど、日本SFファングループ連合会議にて、2年後1986年の第25回日本SF大会を、大阪で開催するとの立候補して承認されたのである。これで第25回日本SF大会DAICON5は正式に始動したわけ。このことは、時刊新聞や、会場内口コミによって、たちまちSF大会会場内に知れ渡ったのである。
 ホテルの小生たちの部屋には、知人、友人、知ってる顔、知らない顔、なんやかんや押しかけて大盛況となったのである。部屋には、どういう原理か知らぬが泉が出現した。酒の泉である。その泉からは缶ビールやウィスキーがこんこんと湧いて出る。さらには、サラミソーセージ、ビーフジャーキ、亀田の柿の種やらカルビーのかっぱえびせんが、部屋の中に実体化。
 DAICON5の前祝いと、飲めや歌えの大宴会となったのである。まさに酒池肉林、馬食鯨飲、葷酒山門になんぼでも入ってこいの、狂乱の一夜となったのである。
 さて、夏の北海道の、狂乱の一夜が明けた。さすがに少々二日酔いである。少し胸がムカムカするが、小生は実行委員会から参加を要請されていた、全国SFファンジン同人誌のパネルディスカッションに出た。あとはSF大会の定番の企画をひととおり観た。で、小生たちは、自主性制作の映画を観に行った。これが間違いであった。
 次々と上映される映画はめっぽう面白い。素人映画ではあるが、SFファンがつくった映画である。SFファンの急所を突くギャグ演出が大うけ。これ観て終わりにしよ。もう1本観よう。飛行機の時間?まだ間に合うやろ。これ観たらホテルを出ような。おもろいやん。あと何本や。え、あとそれだけ。全部観ようやないか。飛行機?もう、ええやん。どないかなるやろ。ええ、飛行機に間に合わん。しゃあないな。と、いうわけで、小生たち3人は大旅行を敢行することとなるのである。
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SFマガジン2017年12月号


SFマガジン2017年12月号 №724 早川書房

雫石鉄也ひとり人気カウンター
1位 新・航空宇宙軍史 ペルソナの影 谷甲州
2位 忘却のワクチン         早瀬耕
3位 花とロボット ブライアン・W・オールディス 小尾芙佐訳
4位 天岩戸              草上仁

連載
プラスチックの恋人(最終回)      山本弘
マルドゥック・アノニマス(第17回)  冲方丁
忘られのリメメント(第5回)      三雲岳斗
幻視百景(第11回)          酉島伝法
筒井康隆自作を語る♯4
「欠陥大百科」「発作的作品群」の時代(後篇) 筒井康隆 聞き手 日下三蔵
近代日本奇想小説史 大正・昭和篇(第33回) 横田順彌
SFのある文学誌(第55回)         長山靖生

オールタイム・ベストSF映画総解説  PART2
「ブレードランナー2049」公開記念特集

追悼 ブライアン・W・オールディス
第5回ハヤカワSFコンテスト受賞作発表!

「小説現代」がリニューアルする。長編連載中心の誌面作りを改め、長編一挙掲載や、中編、短編を掲載して、その号で読み切れる編集にするとか。大変に結構なことだ。SFマガジンもぜひとも見習うべき。
 だいたいが、雑誌の連載小説なんてもんは、読者じゃなくて出版社の都合で掲載されてるものだろう。あとで単行本で出すための原稿確保のために雑誌に連載しているのではないか。週刊誌ならともかく月刊誌で1か月づつコマ切れで小説を読んでも面白くない。特にいまのSFマガジンは隔月刊だから、2か月も前に読んだ小説なんて覚えておらん。
 今月もSF映画総解説。それに「ブレードランナー2049」特集。映画関係にたくさんのページを割いている。
 SFは文芸である。よってSFマガジンは文芸誌とこころえる。映画関係の記事を掲載するなとはいわん。ただ、SF文芸専門誌としての責務を果たしたうえで映像関係にページをさくのはいい。しかし、最近のSFマガジンは文芸誌の責務を果たしていない。例えば、かってやっていたヒューゴー賞ネビュラ賞特集も知らないうちにやらなくなった。これではSF専門誌の責務を果たしたとはいえない。猛省を求める。
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ブレードランナー2049


監督 ドゥニ・ヴィルヌーブ
出演 ライアン・ゴズリング、アナ・デ・アルマス、ロビン・ライト、シルヴィア・フークス、ハリソン・フォード

 傑作である。ひょとすると名作の誉れたかい前作を凌駕しているのではないか。前作「ブレードランナー」は、今までのSF映画にない斬新な映像に感激した。本作では、前作なみの映像はとうぜんのこととして下部構造にあり、上部構造に哀しい物語を構築している。
 人間に反乱を起こす旧型レプリカントは廃棄され、人間に従順な新型レプリカントが生産されるようになった。でも、生き残りの旧型がまだいる。ロス市警のブレードランナーKは、旧型レプリカントを見つけ出して「解任」するのが仕事。「解任」した元兵士のレプリカントの庭から女性の遺骨が発見された。レプリカントの遺骨だ。その女性は出産している。レプリカントが出産!子供がどこかに居るはず。レプリカントの子供が。その子供も処理する必要がある。
 Kは捜査の途上で、30年前のあの伝説のブレードランナー、リック・デッカードにあう。このデッカードが重大な秘密のカギを握っている。
 SFがたいへんに判っている人が、優れたSF映画をつくるんだとの強い意志を持ってつくった映画であることがよく判る。それに、この映画、原作のフィリップ・K・ディックのテーマを非常に良く具現化している。ディックという作家は「アイデンティイ」ということを重く認識している作家である。ディック原作の映画はあまたあるが、この「ブレードランナー2049」が、ものすごくディックがいわんとしていることに忠実である。
 主人公のブレードランナーKの属性は「孤独」である。ラスト。Kは雪の降る中にあお向けに倒れて叫ぶ。彼は無言だが、観客は彼の哀しい叫びを感じることができるだろう。「俺はだれだ」


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獺祭を飲む


獺祭です。たぶん今人気№1の日本酒でしょう。山口県のお酒ですが、古くからの山口の地酒というのではなく、比較的、最近にできた酒だそうです。
 さっそく、飲んでみましょう。まず、最初は常温で。うん、おいしいです。どっちかというと甘口のお酒です。飲みやすいです。
 次に40℃ぐらいのぬるめの燗で飲みました。香りが引き立ちます。燗にすると甘みは少しおさえられますが、香りがいっそう楽しめます。
 3杯目は冷蔵庫に入れておきました。冷やで飲みましょう。うん、常温でも飲みやすかったのが、いっそう飲みやすくなりました。冷やすと香りは少なくなりますが、口当たりがたいへんによくなり、つい杯を重ねたくなります。
 人気があることがよく判ります。たいへんにおいしいお酒です。
 
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ざこば・南光・塩鯛三人会へ行ってきました


 昨夜は、芦屋で落語を聞いておりました。午後6時から。会場は芦屋市民センター大ホールルナホールです。芦屋川のほとりにあるホールです。このあたりは4月ともなると桜の名所です。わたしは毎年ここでお花見をします。
「ざこば・南光・塩鯛三人会」です。この3人は、毎年、11月のこの時期に落語会をやります。昨年は、私は入院してましたので、残念ながら行けませんでした。健康は大切ですね。病気すると好きな落語も楽しめません。
 さて、最初の演者は桂二乗さん。桂米二師匠のお弟子さんです。「阿弥陀池」をやらはりました。しごくまっとうな明朝体の「阿弥陀池」でした。
 次が桂宗助さん。「きょうは珍しい噺をします」ということで、演じたのが「釜猫」でした。若だんさん、お茶屋道楽が過ぎて、親だんさんに禁足をくらい家から一歩もでられません。で、若だんさん、一計を案じ、床屋兼幇間の磯七を使って、味噌豆を炊く大釜に隠れて家を脱出しようと算段します。ところが、このたくらみ親だんさんにばれてしまいます。と、いう噺です。珍しいということはだれもやらない。なぜだれもやらない。おもしろくないから。だそうですが、けっこう面白い噺です。つい最近も宗助さんの「釜猫」を聞いたような気がします。
 中入り前の中トリは桂南光師匠。落語のマクラはその時の話題になっているようなことをネタに話されることが多いです。今の一番話題はなんといっても、横綱日馬富士の暴行事件。きのうの南光師匠も日馬富士から相撲の話をマクラに。テレビではいえない相撲の話など。ははあ、相撲のマクラだから相撲取りの噺をやらはるやろなと思ってました。「ちはやふる」か「花筏」どっちかやなと。で、「花筏」でした。南光師匠、おとついの夜はDVDで観てました。きのうは生南光でした。
 中入り後の最初は、桂ざこば師匠。ざこば師匠、5月に脳梗塞で倒れられて、今もリハビリを続けておられるそうです。日常生活には支障がないほど回復されたのですが、観客の前で落語を演じるのはまだ不安があるとおっしゃってました。「上燗屋」をやらはったのですが、確かに噺に滑らかさが少し足りません。最後、オチでとちりはった。いたしかたございませんね。
 大トリは桂塩鯛師匠。「はてなの茶碗」です。うまいです。この時の「はてなの茶碗」は絶品でした。特に油屋の表情がいい。安物の清水焼の茶碗を茶金さんに3両で引き取ってもろて。それが御所で話題になって、千両で売れた。それを聞いた油屋が茶金さんから、その話を聞くのですが、茶金さんの話を聞いている時の油屋の表情の変化を、あいづちと顔の動きで見事に表現されてます。最初は茶金さんに立腹してて、話を聞いて、納得し、そして茶金さんに敬服するところまで。見事な塩鯛師匠の芸でした。
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大震災のマッチ売りの少女

「おじさん、あたしのおっぱい見たくない」
「なんや、お前、高校生やんか」
「そうよ。女子高生のおっぱい見せたげる」
「かわいい子やな。ほんなら見せてくれ」
「その前に、これ買って」
「なんやマッチ棒やんか。これ、どないすんねん」
「マッチ棒の光であたしのおっぱい見て。マッチが消えたらおしまい」
「ふーん。で、なんぼや」
「1本3000円」
「5000円やったら、どこ見せてくれるんや」
「見せるのはおっぱいだけ」
「1万やるから、あそこを見せろ」
「いやよ」
「ええやんか。減るもんじゃなし」
「ないのよ」
「なにが」
「ともかく、あそこはいや」
「しゃあないな。1本くれ」
「はい、高輝度LEDスティックよ」
 高輝度LEDスティック。いわゆるマッチ棒。夜間や停電した室内で、太陽電池を充電する光源として使われる。長さ5cmの細い棒で、先端の高輝度LEDが光る。あくまで緊急充電用で1分しか光らない。
 
「ナオミ。お前、まだそんなことやってるのか」
「ジュン。なんで、あたしがここにいることが判ったの」
「GPSさ」
「あたしになんの用?」
「きょうはクリスマスイブだよ。二人でケーキでも食べようと思って」
 少女はセーラー服の胸元を直した。ポニーテールを揺らしながら少年から、さっさと離れていった。少女の足もとに何かが落ちた。小さなボルトだ。
「おい。待てよ。ナオミ」
「ごめん。ジュン。あたし、もう少しかせぐわ」
「金ならほれ」
 少女は立ち止まって振り返った。少年はスマホを少女に見せた。
「おれの預金額だ」
「あら、この金額」
「おれ、いっしょうけんめいバイトして貯めたんだ」
「すごいわジュン」
「これで二人ぶんのユニットが買えるよ」
「そうね」
「だからお前がマッチ売りの少女やらなくていいんだよ」
「すてき」
「センター街の月電社で、最新型のハナソニックのユニットが売ってる。二人で買いにいこ」
 少女は少年に抱きついた。ここは地下街だ。二人は手をつないで地上に上がろうとした。地上行きのエスカレーターに乗ったとき、衝撃が襲った。ドスン。下から突き上げるような衝撃。世界が上下に激しくゆすぶられた。
 マグニチュード8震度7の巨大地震がクリスマスイブの夜を襲った。
「何日目かしら」
「さあ、10日ぐらいじゃないかな」
 すぐ上に建つビルが崩壊した。瓦礫が地下街の出口を完全にふさいだ。多くの人が地下街に閉じ込められた。その一角はビルの瓦礫が流れ込んだのと、地下街の天井が崩落したため、そこにいた「人」は「全員」死んだ。
少年と少女の二人はまだ生きている。二人は漆黒の闇に中に13日間生き埋めになった。13日間、光にまったく当たっていない。
「ジュン。バッテリーは」
「もうほとんどない」
「あたしも」
「マッチ棒はあと何本?」
「1本よ」
「つけて」
「うん」
 漆黒の闇の中にポッと小さな明かりが灯った。すぐ消えた。少しだけ充電できた。
「せっかく結婚できるのに」
「わたしたちにもあの世があるのかしら」
「あるよ」

 震災後15日。崩落した地下街にやっと救助隊が入った。16人の遺体と、2体のアンドロイドが発見された。少年型のアンドロイドと少女型アンドロイドはしっかり手を握っていた。太陽光充電のバッテリーは完全に空になっていた。こうなると再び稼動させることは不可能。スクラップとなる。少年型アンドロイドのポケットにはハナソニック製アンドロイド用生殖器ユニットのカタロクがあった。
 アンドロイド同士の結婚は認められている。子供は生まれないが「愛しあう」ことは可能である。♂アンドロイドと♀アンドロイドは外見容貌だけ男女だが、内部構造は共通。下半身に♂生殖器ユニットと♀生殖器ユニットを装着することで性交だけは可能となる。
「かわいそうに。二人は結婚するつもりだったんだな」
 救助に来た自衛隊員がふたりにやさしく毛布をかけた。

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とつぜん上方落語 第18回 胴乱の幸助

「おお、割り木屋のおやっさんが帰ってきたで」
「おやっさん、どやった。首尾は。手打ちでけたんか」
「あたりまえや。ワシをだれやと思うとるねん。胴乱の幸助やで」
「で、北の三代目はどうした」
「おういこっちや」
「うわ。大きなトレーラーがなん台も。なんやこれ、おやっさん」
「最初のトレーラーのは火星14や」
「火星14つうと北のミサイル」
「これ、どないしたんや」
「金さんがワシにくれたんや」

 胴乱の幸助。割り木屋のおやっさんのゆいいつの趣味はケンカの仲裁。丹波の山奥から天秤棒に天保銭2枚くくりつけて大阪へでてきた。それから、働いて働いて、いまの身代を築いた。働くことしか能のない、おやっさんの道楽がケンカの仲裁。
 ワーとケンカしてる間に割って入り、「待て待て。お前らオレをだれか知ってるか」「あ、割り木屋のおやっさんでんな」「胴乱の幸助はんでんな」
 で、近くの小料理屋に連れて行って、胴乱から金だして(胴乱、財布というか小さなバック、昔バスの車掌さんが前にぶら下げてたアレ)、酒飲ませて料理食べさせて「このケンカオレに預けるな」「もうケンカするなよ」
 で、このおやっさん、人呼んで胴乱の幸助。
 大阪じゅうケンカを探して歩いてます。人のケンカがないと犬のケンカの仲裁から、浄瑠璃の架空のケンカの仲裁に京都にまで出張します。
 で、近畿関西いちえんのケンカはひととり納めた。相撲協会と貴乃花のケンカも納めて、日馬富士と貴ノ岩のふたりを改めて呼び出して、改めて仲直りさせた。こうして、割り木屋のおやっさん、日本中のケンカを仲裁してしもて、日本にケンカは無くなった。
 そんな胴乱の幸助はん、あの二人をほっとくわけがありません。北の金さんとメリケンのトラちゃんです。
 おやっさん、もろこしの習さんに話をつけて、もろこしに金さん、トラちゃんを呼びつけます。
「お前ら、オレをだれか知ってるな」「割り木屋のおやっさんでんな」「ミスター・コースケか」
 金さんは苦労知らずの三代目ボン。トラちゃんはしょせんは不動産屋のオヤジ。胴乱の幸助とは人間の出来が違います。胴乱から50兆ドルほど金を出して「これで、このケンカ、オレに任せるか」
「はい」「YES」
「金、ミサイルと核をオレにわたせ」「トラ、空母をオレに預けろ」
 割り木屋のおやっさん。胴乱の幸助が本年度のノーベル平和賞に決まったけれど、おやっさん、辞退しよった。
「ワシはそないなもん欲しくてケンカの仲裁してんのんと違う」
 
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日の名残り


カズオ・イシグロ  土屋政雄訳     早川書房

 この作品、もうずいぶん前に読んだ。映画も観てこのブログでレビューしている。このたびのカズオ・イシグロのノーベル賞受賞をしおに読み直したわけ。
 名作である。執事スティーブンスの独白という表現をしているが、執事という高級雇われ人独特な丁寧言葉が、ある種リズム感を持っていて、読んでいて非常に心地よい。これは訳者の土屋の訳文のうまさのたまものでもあろう。イシグロの作品のほとんどが、土屋の翻訳である。
 新しいご主人、アメリカ人のファラディがしばらく帰国する。その間、フォードを貸してやるから、お前も旅行するがいい。この主人の提案を受けた執事スティーブンスが、昔の仕事仲間で、元女中頭ミス・ケントンに逢いに行く。フォードを運転してイギリスの美しい田園地帯を旅行する。その間、昔のことを回想する。
 自分ではそんなことは決していわないがスティーブンスは名執事である。非常に有能な執事で、しかも更なる高み目指して努力を怠らない。生真面目である。新しいご主人はアメリカ人である。ときどきジョークを飛ばす。執事としては、そのご主人のジョークを受け、ジョークでお応えするのが執事の務め。一生懸命にジョークなるものを考える。前のご主人ダーリントン卿はジョークなんていわなかった。ともかくより良き執事になるために常に考えている。執事にとって最も必要な資質は何か。それは「品格」だ。では「品格」とは何か?
 スティーブンスはプロの執事である。職業人である。でも、それと同時に成人した男性である。
 映画では、スティーブンスがミス・ケントンにほのかな思慕を抱いているところが垣間見える。仕事一途の石頭と思われるが、ミス・ケントンへの想いは観ていて判る。また、ミス・ケントンも盛んに「好き」サインを送っているがスティーブンスはそれに気づかないか、気づいても知らぬふりをしているのか、まことにいじらしい。
 小説は映画のように映像で観るのではなく、文字で読む。しかも、冒頭でいったようにスティーブンスの回想であり独白である。映画よりもスティーブンスの内面本音が判る。映画では 恋≒仕事と見えたが、小説では恋<仕事と見た。
 そもそも、スティーブンはなにが目的で、休暇を費やしてミス・ケントンに逢いに行くか?お屋敷は人手不足。元女中頭のミス・ケントンに復帰してもらったら大助かり。あくまで仕事上必要だからスティーブンはフォードを駆って彼女に逢いに行くのである。それにミス・ケントンはもう人妻で初孫が生まれようとしている。だいたいが、ダーリントン卿時代は、スティーブンスとミス・ケントンはしょっちゅうケンカしている。とは、いいつつもスティーブンスのミス・ケントンへの想いは行間から伝わってくる。このあたりはイシグロのうまいところだろ。
 と、書くと、本書は恋愛小説のようだが、その一面もあるが、お仕事小説であり、第1次世界大戦と第2次世界大戦。二つの大戦のはざまのヨーロッパ情勢といった国際政治小説的な一面もあり、戦後ナチスの理解者として不遇の老後をおくったダーリントン卿という一人のイギリス貴族の役割と生き様。それを近くで見ていた執事の前のご主人への敬愛。執事小説でありつつ歴史小説としても読める。
 イシグロは読者に親切な作家ではないが、本書は判りやすく、イシグロにしては親切な小説である。おすすめ。
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神戸文化ホールが三宮に移転

 神戸市が、神戸文化ホールを三宮に移転させると発表した。反対である。今の神戸文化ホールがある大倉山の地は、中央体育館や中央図書館、神戸大学医学部付属病院などがあり、大倉山公園には緑も多く、このあたりはちょっとした文化的なゾーンとなっている。文化ホールの立地場所としてはふさわしい場所だ。それが三宮に移転。なんでもかんでも三宮に集めればいいというものではない。
 神戸文化ホールには小生もおりにふれて足を運ぶ。落語会に行くことが多いが、小生のような神戸在住のSFファンにとっては、あそこはある種「聖地」のような場所である。
 第14回日本SF大会SHINCONが行われたのが、1975年42年前のここ、神戸文化ホールである。日本SF大会史上初めて参加者1000人を越えた大会。そして、わが街神戸で開催された唯一の日本SF大会である。筒井康隆氏が黒幕で、夭折した畏友清水宏佑が実行委員長を務めた。
第11回SFフェスティバルはSHINCONの10年後1985年に、神戸で開催されたが会場は兵庫県民会館で神戸文化ホールではない。
小生がもう少し若ければ、神戸で2回目の日本SF大会SHINCON2をやりたいなと、ちらっと頭をよぎったりするが、もしそうなら会場は神戸文化ホールだと思っていた。
しかし、新しい神戸文化ホールでは日本SF大会を開催することは不可能だ。神戸市が発表した計画によると、大ホールは三ノ宮駅南東の中央区役所のある所、中ホールは市役所2号館に造るとか。これではSF大会はできない。
日本SF大会は都市型コンベンションとリゾート型コンベンションの2種類ある。リゾート型は温泉地や観光地のホテルや旅館を1軒まるごと借りて、本大会と合宿を1つの施設で行う。都市型の場合、合宿と本大会は別の施設。そして本大会は、大ホールでは、開閉会式、パネルデスカッションや講演、各種表彰式などの企画を行う。それと同時進行で、中ホールではシンポジウム、分科会、ファンジン同人誌即売、映画上映などを行う。だから1000人以上収容できる大ホールと、中小ホール、各会議室などが1つの建物でないとだめだ。
ともあれ、あの大倉山の神戸文化ホールがなくなるのはさみしい。あとには何ができるのだろう。 
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家族はつらいよ2


監督 山田洋次
出演 橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中島朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優、風吹ジュン、小林稔侍

 また、この連中のドタバタコメディである。こんどのドタバタの発端も、やっぱりお父さん。
 平田周造は70を超しているのにまだ車の運転をしている。最近、どうも運転ミスをひんぱんにするようで、周造の車は生キズがたえない。きょうもきょうとて、なじみの飲み屋の女将を助手席に乗せてドライブしてて、ダンプカーに追突。とうぜん家族は心配。重大な事故を起こす前に、お父さんの運転免許をとりあげなくっちゃ。一番いうことを聞きそうな三男の嫁が、猫の首に鈴をつけた。
「オレに運転を止めろというのは死ねということだ」これが、お父さんの返答。お父さん、かなりの運転好きらしく、今度はハイブリットでスポーツタイプの車を買う算段をしとる。
 こういうオヤジだから、たぶんマニュアル車だろう。マニュアル車なら、年寄りがよくやるブレーキとアクセルの踏み間違いはないが、注意力と集中力はおとろえているだろう。この家族の心配は当然のこと。小生も10年前、リストラされて愛車ホンダ・インテグラを手放してから、マイカーを持たず車の運転はまったくしてない。小生は、この映画のオヤジよりだいぶん若いが、10年も運転してないと、さすがの運転好きの小生も自信はない。結局、小生は、40年運転して無事故のままだ、
 で、困った子供たちは家族会議を開いて対策を協議。いかにしてお父さんに運転を止めてもらうか。
 子供らとその配偶者がそんな相談をしてる時、お父さんは高校時代のお友だちと飲み会。酔っぱらった友だちを連れてきて、家に泊めさす。ここから話は急展開。お父さんの運転免許どころじゃなくなる。
 あいかわらずの、わがまま頑固なお父さんと、それに振り回され困る子供たちの様子を見て、アハハハと笑う映画である。この展開では「家族はつらいよ3」は確実につくられるであろう。いや、ひょっとすると長期のシリーズになりそうだ。
  
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ジョニーウォーカー黒ラベルを飲む


ジョニーウォーカー。なんでも、世界で一番売れているスコッチだとか。代表的なスコッチウィスキーである。ジョニーウォーカーには赤ラベルと黒ラベルがあって、赤はノンエイジでお安い。1000円台で買える。黒ラベルは12年物で、2000円とちょっと。
ジョニ黒といえば、昔は、お金持ちしか飲めなかった。社長、重役といったエクゼクティブが飲む酒だった。高根の花のウィスキーで、「サザエさん」にも、客が、サザエにジョニ黒を出されてびっくりするというエピソードがある。 
正月に社長の家に年始のあいさつに行く。りっぱな応接間に通される。ガラスケースに中にジョニ黒がかざってある。
社長が出てくる。立ち上がって「おめでとうございます」「や、おめでとう。ま、座りたまえ」「おそれいります」「きみ、洋酒は飲むかね」「はい」で、社長が、うやうやしくガラスケースからジョニ黒のボトルを出してくる。
ジョニ黒ってそんな酒だったのが、こうして小生にも飲めるようになったのは、関税のなせるワザか。で、あがめたてまつりながらチビチビ飲んでいっても空になる。空になった瓶の中で帆船を作ったりして。
なんて、ごじゃごじゃいいながら、ジョニ黒を飲む。例によって最初はストレート。うん、さすがにうまい。大変に飲みやすくストレートで飲んでも、ノドを刺激するアルコールっ気がない。スムーズに飲める。さすがにジョニ黒。人気№1スコッチはダテではない。 
   
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ローストビーフ丼


 よし、きょうのお昼は牛肉を食うぞ。モンダイは牛肉をどうして食うかだ。まさか、こんな贅沢はしょっちゅうできない。お昼だから丼ものがいいだろう。かといって牛丼も芸がない。う~む。ローストビーフを丼にしてやれ。
 牛肉はもも肉のかたまりを買ってきた。調理はこの方法。タレはグレイビーソースではなく、醬油と味醂で和風のタレを作った。少し片栗粉でとろみをつけた。クレソンをそえてできあがり。うまい。ワシはつねづね思っていたが、牛肉に一番あう調味料は醬油だ。牛肉に醬油味のタレ。ほかほかの炊き立ての白いご飯。最強の丼である。
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とつぜん対談 第106回 ハンマーとの対談

 あ、ここだ。このバーだ。このバーに今回の対談相手がおられるはずです。なんでもお仕事は現場仕事で、毎日の労働の疲れをこのバーでいやしておられるとか。では、入ってみましょう。あ、あそこにおられました。カウンターの隅っこに座っておられます。

雫石 
 あ、わたし、オールド。水割り。横に座っていいですか。

ハンマー
 オレのイスじゃない。勝手に座ればいいだろう。

雫石
 毎日、ここで飲んでおられるのですか。

ハンマー 
 いっとくが、オレは酒は一人で飲むと決めてんだ。

雫石
 すみません。ちょっとお話がしたいんです。

ハンマー
 他をあたってくれ。

雫石
 あなたはハンマーさんですね。

ハンマー
 オレがしゃもじに見えるか。

雫石
 きょうもお仕事ですか。

ハンマー
 あんたは、これが仕事か。

雫石
 はい。

ハンマー
 オレがを酒を飲む手を止めるのがあんたの仕事か。

雫石
 いえ。すみません。飲みながらお話しようと思って。

ハンマー
 他をあたってくれといったぜ。

雫石
 他ではダメなんです。今回はハンマーさんに、ぜひ、お話をうかがいたいのです。

ハンマー
 なぜだ。

雫石
 長年、現場で働いてきた、あなたならではの、お話を聞きたいと思いました。

ハンマー
 あそこを見ろ。

雫石
 あ、溶接面さんですね。

ハンマー
 あいつも現場仕事が長いぞ。

雫石
 溶接面さんには、第62回で対談させていただきました。

ハンマー
 しかたないな。オレに何が聞きたい。

雫石
 最近、日本の製造業の劣化がひどいです。なぜだと思いますか。

ハンマー
 そんなこと、オレにはわからん。

雫石
 そうですか。長年、日本の製造現場で働いてきたハンマーさんなら、なにか感じるところがあると思うのですが。

ハンマー
 そうさな。オレはむつかしいことはわからんが、現場は年寄りが多いということだな。

雫石
 若い人が少ない。

ハンマー
 そういうことだ。

雫石
 後継者不足ということですね。

ハンマー
 オレはいま、造船所で働いてるんだが、水のノズルと加熱器バーナーだけで、鉄板のひずみを取る職人がおる。年寄りだ。そのじいさんが死んだら船はできない。

雫石
 ハンマーさんもいろんな現場で働いてきたのですね。

ハンマー
 街の小さな鉄工所、自動車修理工場、電気機器製造、造船所。いろんな現場を渡り歩いたけれど、オレは鉄を叩くことしかできん。

雫石
 たいへんなお仕事ですね。何年ですか。

ハンマー 
 50年.仕事なんてどれも大変なもんだ。

雫石
 そうですね。

ハンマー
 もういいだろう。

雫石
 はい。ありがとうございました。
 
 
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チャチャヤング・ショートショート・マガジン 5号


チャチャヤング・ショートショートの会

「チャチャヤング・ショートショート・マガジン」第5号が出ました。
 内容は次ぎの通りです。

蔵出しセール・十四品 深田亨
銘銘伝 ほか     柊たんぽぽ
週末は終末      雫石鉄也
猫の王        岡本俊弥
マカオ        岡本俊弥
見習         篁はるか
ラストコンタクト   深田亨
音          大熊宏俊
リンちゃんの鉄塔   和田宜久
蠟石の夢       服部誕

 ショートショート、私小説、ファンタジー、ビジネスSF、お仕事小説、破滅SF,本格宇宙SF、不条理小説、異色短篇。バラエティ豊かな作品集に仕上がっています。
 こちらで、読めます。どうかご一読ください。 
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