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3・11の未来 日本・SF・創造力


海老原豊/藤田直哉 編集  笠井潔/巽孝之 監修       作品社

 今年の3月11日。この日は間違いなく歴史に残る日だろう。この日を境に何かが変わった。何が変わったのだろう。何が変わらなかったのだろう。
 2011年3月11日に発生した東日本大震災。地震と津波は広範囲に甚大な被害を及ぼし、そして破損した原子力発電所はいまも放射能を垂れ流し続けている。原子炉を完全に廃炉するには30年かかるという。このような未曾有の大災害に対峙してSF者として考えることは大切だ、と小生はSFマガジン2011年7月号のレビューで記したが、それに対する応えが本書だといっていいだろう。
 様々なメディアで発せられる発言で、あの地震・津波・原発事故を表現する時に枕詞として必ずといっていいほどいわれるのは「想定外」「予想されなかった」「設定値をはるかにオーバー」という言葉だ。かような災害に向き合って、考え、発言するのはSF者としての責務ではないだろうか。
「想定外」「予想されなかった」「設定値をはるかにオーバー」こういうことをカバーしてきたのがSFだ。「想定外」のこの事態にSF者が言及しなかったら誰が言及する。
 内容は4部で構成されている。第1部は「SFから3・11への応答責任」と題して、笠井潔の論評、笠井、巽孝之、山田正紀の鼎談。豊田有恒のエッセイ。ここで、小生が上記でいったSF者としての責務を果たそうとの姿勢が見える。
 第2部は「科学のことば、SFのことば」瀬名秀明の論評。谷甲州、森下一仁、小谷真里、石和義之の座談会。この座談会では、小松左京+谷の「日本沈没第2部」を引き合いに出し、日本人と災害、災害に対した日本人を考察していた。あと、八代嘉美、長谷敏司、田中秀臣、仲正昌樹、海老原豊のエッセイ。
 第3部「SFが体験した3・11」では、新井素子、押井守、野尻抱介、大原まり子たちが、東日本大震災を直に体験して何を考え、何をしたかが記されている。新井の素直な感想と、大原の正直な告白が印象に残る。
 小生(雫石)は阪神大震災の被災者である。16年前の震災直後、めったに接触しない遠方の親戚が、お見舞いと称してやって来た。見舞いの言葉もそこそこに、さも興味深そうに、小生宅周辺の地震でぐちゃぐちゃになった街を写真に撮りはじめた。正直不愉快であった。こいつ、興味本意で地震見物に来たのかと思った。野尻の一文を読むと、小生が感じた不愉快を感じる被災者もいるだろう。
 第4部は「3・11以降の未来へ」桜坂洋、新城カズマ、鼎元享、藤田直哉が、3・11を経験したこれからの日本について考える。鼎の論考があまりに、ひとりよがりで、出来の悪い改変歴史モノを見ているようであった。
 小生が読んでいて、ひっかかる所もあったが、震災後1年以内にこういう本が出たことは大変に有意義なことだ。海老原、藤田、笠井、巽の4人には敬意を払う。
 序文は2011年7月の日付で小松左京が書いている。この文の末尾で小松は「私は、まだ人間の知性と日本人の情念を信じたい。この困難をどのように解決していくのか、もう少し生きていて見届けたいと思っている」と記している。たぶん、この文が小松の絶筆だろう。見届けられなかった。小松の分までしっかりとわれわれが見届けなければならない。
 


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100億円取材費を使った小説

 小生は小説を読むのが大好きだ。小説を読む醍醐味は、絶対自分では体験できない体験を、読書を通じて疑似体験できることだ。
 秘密情報部員となって、世界制覇を企む悪の秘密結社と戦い、合間に美女といちゃつき、アストンマーチンにうち乗って、うまい酒を飲みうまいものを食う。こんな体験ができるわけだ。動乱の幕末で、勤皇の志士となり、新撰組とちゃんばらもできる。どんな体験だってできる。
 作家は、これらの小説を、取材をし、資料を調べ、想像力をフルに働かせて書いているわけだ。なかには自分自身の体験を素材として作品を書いている作家もいる。そういう作品は、作者が実際に体験しただけに、リアルな迫力が楽しめる。もちろん、作家が100%架空のもので構築した作品も、創りものの面白さが満喫できる。そのへんはプロの作家の職人芸だ。
 作者が絶対体験できないことを書いた小説も多々ある。殺人事件をあつかうミステリーの作家は実際に殺人を犯しているわけではない。それでも殺人犯の内面を描くわけだ。
 殺人は極端だが、それ以外でも、体験できない場面を描かねばならない時もあろう。このような場面は資料を調べ想像で書くしかない。たとえばカジノで100億もの金を散在するなんて経験できない。
 冲方丁の「マルドゥック・スクランブル」といえば、カジノのシーンがすごい迫力だ。もし冲方氏に100億円取材費を使ってもらって、カジノのシーンを書き直してもらうと、もっと迫力が出るかも知れない。しかし100億も取材費を費やして本を出したら、いくら売れても大赤字。100億円カジノで使うことは非現実的なわけ。ところが、実際に100億円以上の金をカジノで使ったご仁がいる。ご存知の通り、大王製紙の元会長井川意高氏(もう容疑者だな)だ。なにせドラエモンのポケットのように、お金が無限に出てくる財布を持っていて、思う存分カジノで博打をしたわけだ。井川氏にはぜひとも、この体験を小説にしてもらいたい。なにせだれでも出来ない体験をしたご仁だから、それはそれは面白いカジノ小説になるだろう。楽しみにしておるぞ。
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切腹


監督 小林正樹
出演 仲代達矢、三國連太郎、石浜朗、岩下志麻、丹波哲郎

 武門の誉れ高き譜代の井伊家に初老の浪人がやって来た。見るからに食い詰め貧乏浪人。浪人は庭先を拝借して切腹したいといった。食い詰め浪人がこんなことをいって、大名屋敷に押しかけ、いくばくかの金をせしめるのが流行っている。
 応対に出た家老は切腹を実行させることにした。家老は先日、同様のことをいって来た若い浪人を切腹させたことを浪人にいった。若い浪人は竹光しか持っておらず、切れない竹光で強引に腹を刺した。周りの井伊家中のものは嘲笑しているだけ。介錯人はなかなか首を斬らない。
 浪人は井伊家きっての剣の達人3人を介錯人に指名。ところが3人とも病気で欠勤。どうしてもとの頼み。3人を呼びにいっている間に、浪人は身の上話を始めた。
 竹光で切腹した若い浪人は、幼い病気の子と労咳の妻をかかえ、金に困って狂言切腹を企んだ。小生も浪人の経験がある。妻子をかかえ無職無収入のつらさはよく判る。だから竹光切腹浪人の心情もよく判るが、それはあくまで浪人側の都合であって、押しかけられた井伊家は大きな迷惑である。
 映画を観る楽しみは、登場人物に感情移入して、映画を観ている間、わが身に置き換え、怒ったり泣いたり笑ったり憤ったりするのが大きな楽しみだが、竹光切腹浪人も初老浪人も、その事情都合心情はよっく判る。同情する。しかしなぜか感情移入はできなかった。それよりも、浪人の応対に当たった家老に感情移入した。
 初老浪人と家老の対話劇である。この二人の対話によってドラマが盛り上がり、テーマが浮き彫りになる。個人の都合と組織の都合がバッティングした。
 徳川譜代の大名で、武骨でなる井伊家だ。狂言切腹に乗せられて金を出すわけにはいかん。浪人も切腹するつもりだが、武士の誇りを保つため、自分とそれからもう一人のため、だまって腹を切るわけにはいかない。
 家老の対応が実に見事である。一見冷酷非常に見えるが、井伊家という組織を守るためには、これが最良の対処だっただろう。結果として多くの家来を死傷させられたが、さすがは武門の誉れ高き井伊様との評判を得た。この勝負、井伊家家老の勝ちである。
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小松菜のみそ汁

 
 一汁一菜といって、いくら質素な食事でもおかず一つに汁物がつきます。汁物、特に味噌汁は日本人のおかずには欠かせません。
 さてさて、今日のご飯にもみそ汁をつけましょう。このところ野菜が不足しがちですから、緑の野菜のみそ汁がいいですね。小松菜のみそ汁をしましょう。
 まず、出汁が要ります。私は、みそ汁の出汁はいりこと昆布で取ります。いりこと昆布を半日ほど水につけておきます。いりこの頭とお腹を取った方がすっきりとした出汁になるのですが、私は取りません。そう味の違いは感じないし、いりこの頭だって出汁の素じゃないですか。これを火にかけます。鰹節の出汁なら沸騰寸前にさっと火を止めますが、いりこ出汁の場合、私は少し煮こみます。そうですね。7分ぐらいでしょうか。あ、これは私のやり方であって、どうやって出汁を取ってもいいと思います。料理に正解はないのです。あなたがおいしいと感じるやり方が正解なのです。
 さて、これで出汁は取れました。小松菜を食べやすい長さに切ります。切ったあとは葉っぱと軸を分けておいた方がいいでしょう。私は、小松菜やほうれん草などの葉モノの野菜は、葉っぱと軸は違う野菜だと思って扱います。だって、火の通りがぜんぜん違うでしょう。
 出汁を火にかけ、小松菜の軸を入れます。時間差をつけて葉っぱを入れましょう。で、次にみそを溶き入れます。私んちは、信州みそ、八丁みそ、西京みその3種類のみそを使っています。適宜、この3種類のみそをブレンドしております。今回は、八丁みそと信州みそを使いました。こし器にみそを入れ、泡だて器で溶かし入れます。
 みそを入れたらすぐ火を止め、お椀にいれましょう。みそを入れてから、グラグラ煮え立たせると、みその香りが飛んでしまいます。
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横溝正史先生生誕地碑建立7周年記念イベント

 横溝正史先生生誕地碑建立7周年記念イベントへ行ってきた。今回は「続・横溝正史と江戸川乱歩」講師は去年に引き続いて、江戸川乱歩研究家の中相作氏。会場は神戸市中央区東川崎町の東川崎地域福祉センター。この東川崎町は横溝正史が生まれた土地。主催が神戸探偵小説愛好会。とうぜんながら、来場者のほとんどは探偵小説の愛好家ばかりと見受ける。SF者の小生が、なぜこのような探偵小説関係のイベントに出席したか。生誕地碑建立に尽力され、神戸探偵小説愛好会の代表の野村恒彦氏とは懇意にさせていただいている。また、講師の中相作氏とは、小生はチャチャヤングの同窓生である。
 今回は横溝正史のご長男の横溝亮一氏もご臨席され、横溝を最も身近で接してこられた方ならではの興味深いお話も聞けた。
 中氏の話は去年の続き。去年が戦前編だから、今回は戦後編。まず、この講演の基本コンセプトとして、名は体を表すということで、横溝正史の「正」と江戸川乱歩の「乱」横溝は正しく乱歩は乱れているということ。これはその小説のというか、本格探偵小説として、横溝は「正」で乱歩は「乱」ということ。どういうことかというと、横溝正史は本格探偵小説の作家であり、乱歩は本格からちょっとずれているということ。
 乱歩は日本の探偵小説王国の国王であった。「日本探偵小説傑作集」を編纂して、それぞれの領地を分け与えた。横溝に振り分けられた領地は「怪奇」であったとのこと。
この部分を聞いている時、小生(雫石)が思ったこと。アメリカのSF大会から帰国後乱歩に相談に行った矢野徹はSFという領地を振り向けられたのだろう。この領地から星新一が生まれ筒井康隆が生まれた。また、これと並行して福島正実がSFマガジンを創刊しプロダムを形成し、柴野拓美が宇宙塵を発刊してファンダムを形成した。
SFの話は関係ないから横へ置いといて。乱歩はエログロの通俗小説を書きすぎた反省からか、創作から評論に軸足を移した。横溝がこれが不満であった。ことあるごとに乱歩は書くべきだといっていたし、本人にも直接いった。もちろん横溝自身も書いた。
横溝亮一氏も子供のころから乱歩にはかわいがられた。二人をごく身近に見ていた亮一氏によれば、二人はケンカしては仲直りしケンカしては仲直りしていた。乱歩が亡くなった時横溝は遺体に取りすがって号泣した
 小生(雫石)思うに、横溝は本格、乱歩は変格ということか。SF者の小生としてはこれで良かったと思う。横溝の叱責に応え、乱歩が本格謎解き探偵小説を本腰を入れて、バリバリ書いていたら、矢野徹は相談に行っただろうか。星新一、筒井康隆は生まれていただろうか。またSF作家ではないが大藪春彦も生まれていただろうか。疑問である。彼岸の横溝正史には悪いが、SF者としては乱歩はこれで良かった。
 

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サバのみそ煮


 今の時期、サバがうまいで。旬のサバはどないに料理してもええけど、やっぱ定番の味噌煮にしよやないけ。
 煮汁は酒と昆布だしを同量。味噌は八丁味噌を使こうたで。砂糖もちょっといれる。
 しょうがを入れて汁を煮たてる。そこにサバの切り身を入れるんや。煮魚は煮汁を熱くしてから魚を入れるんやで。冷たい煮汁に魚を入れてもたもた加熱しとったらあかん。魚のうまみが汁に出てしまうからや。熱くなった煮汁に魚を入れてガーと一気に煮るんや。サバ味噌もそうして煮るんやで。10分も煮ればええやろ。
 煮えたらお皿に盛って、しらがネギをそたらできあがりや。晩秋のサバはうまいで。
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NHKクローズアップ現代「想像力が未来を拓く~小松左京からのメッセージ」

昨日、NHKクローズアップ現代「想像力が未来を拓く~小松左京からのメッセージ」を観る。ニュースを観て寺川さんの天気予報を観て、さて小松さんの番組だと思って楽しみに待っていた。いつもはこの時間は「美の壺」を観ているのだが、「美の壺」は録画して後で観よう。ところが地震速報、北海道で震度5マグヌチュード6。こりゃ小松さんの番組は飛ばされるかなと思っていたら、予定通り放送が始まった。さしたる被害もないらしくとりあえず安心す。
小松さんはある意味阪神大震災の関連死かもしれない。もし阪神大震災がなければ小松さんはもうちょっと長生きできていたかもしれない。
小松さんは阪神大震災の3か月後、現場、被災者、関係者、有識者、行政を綿密に取材して、毎日新聞に連載した。この仕事のあと小松さんの具合がおかしくなった。決定的なのはある学者のひとことだった。
 地震で倒れるはずのない日本の高速道路が倒れた。阪神大震災で、神戸市東灘の阪神高速が600mにわたって横倒しになった。小松さんはある学者に、なぜ阪神高速は倒れたのか共同で研究しようと持ちかけた。するとその学者は「わたしたちの想定外の地震が起きた。私たちの責任じゃない」この言葉に小松さんは大きなショックを受けた。
これは小生=雫石の考えだが、確かにその学者に阪神高速横倒しの責任はないが、そのご仁は学者としての資質に欠ける学者だったのかもしれない。資質はあったかもしれないが、保身の方が先立つ学者だったのだろう。科学者にとって一番大切な資質、それは小松さんが「日本沈没」の中で田所博士にいわしている。田所博士は渡老人の問いにこう答えた。「直観とイマジネーション」「直観とイマジネーション」はぼーとしていては得られない。「なんでやろ」「なぜだろう」「なぜこうなったのだ」「なぜ」「なぜ」「なぜ」こう疑問を感じそれを追求しなくてはおれないことが科学者としての本能だと思うが。小松さんに問いかけられた件の科学者は、本能よりも先に保身が先に立ったのではないか。
 

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談志師匠が亡くならはった

 立川談志師匠が亡くならはった。ワシは落語好きではあるけど、アズマエビスは草深い武蔵野のイナカ落語は好かん。けど、談志師匠、談志師匠のおっしょはん柳家小さん師匠、古今亭志ん朝師匠のお三方の落語は好きやった。
 残念ながら、談志師匠の高座をナマで観る機会には恵まれなかったけど、テレビで放映されたら必ず観とったな。
 談志師匠というと、生意気、傲慢、えらそう、と何かと悪口をいわれるご仁やった。確かに談志師匠はどっから観ても謙虚なお人には見えんかった。けど、それらの悪口を吹き飛ばす圧倒的な落語のテクニックがあった。ただ、上手い噺家さんだけに、技術に溺れる時もあったな。ご本人もマクラがお好きらしく、やたらとマクラが長かった。確かに談志師匠のマクラは面白かった。ひどいときはマクラばっかりで本題に入らへん高座もあったな。
 なんやったか忘れたけど、「オールナイト日本」やったかな。談志師匠が深夜ラジオのパーソナリティをやらはったことがあった。そん中でディーン・マーチンの曲をかけはった。ご承知のごとくディーン・マーチンは酒飲みで有名、師匠はそのことについてふれ「これをレコーディングする時はな、ディーン・マーチンは酔っぱらってたんだってよ。だからオレもこれから飲む」はんまに談志師匠が放送中に飲んではったか知れんけど、その後の師匠のおしゃべりが、いっそう、なめらかになったんを憶えている。
 立川談志師匠のご冥福をお祈りする。
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とつぜんSFノート 第25回

 星群の会に入会して、毎月第1日曜に京都へ行くのが、その月一番の楽しみとなった。会場は烏丸丸太町にあった、今は亡き京都府立勤労会会館。午後1時からだった。当時は京都には地下鉄はなく、阪急の烏丸駅で降りてバスで丸太町まで行った。西宮生まれで神戸育ちの小生は、それまで京都には縁がなく、確か、子供のころ遠足で来たのと、ウチの宗旨が浄土宗なので、知恩院での法事に出た記憶があるぐらい。烏丸通りを北上するバスの車窓から見える京都が興味深かった。あれから40年近く経った、今ではおりにふれて京都へは行っている。以前は、多い時は週に一度は京都をうろついていた。
 例会の開始時間が午後1時からだから、丸太町でバスから降りて、まず昼食を食べた。烏丸丸太町交差点の北西の角にある、西洋軒という洋食屋によく入った。今の感覚でいうと、レトロな昭和の洋食屋さんといった店だった。いや、実際、その当時は昭和だったが。安くて量が多くておいしかった。確か容器に寿司桶が使われていたと記憶する。このお店今も有るのではないか。
 昼食が終れば勤労会館に入る。1970年代初頭の星群の会はまだ会員数も少なく、例会も京都だけで行われていた。勤労会館の遅いエレベーターに乗って、小さな会議室に入る。小生が初めて、この勤労会館の例会に参加したときは5人ほどだった。出たばかりの「宇宙塵」が話題になっていた。宮武一貴さんの「スーパーバード」「コッペリア」が掲載されていて、宮武さん自身のイラストが載っていた。あと、具体的にはどんな話をしていたか忘れたが、まじめにSFの話をしていたようだ。それから、星群祭をどうしようかといっていた。
 第1回星群祭は成功との認識だった。第2回をしようかどうかということが、話し合われた。結局、第2回目も行われ、星群祭は地方コンベンションとしては、日本を代表するSFコンベンションに成長するのだが、このころは、第1回が終ったばかりで、2回目の開催決定すらなされていなかった。
 勤労会館での例会が終ると、それでおひらきということでは、もちろんない。二次会三次会が必ず行われるのである。この当時の2次会は烏丸御池の「ビッグ」という喫茶店でやっていた。建物は細長いが、座席数が多く、どやどやと多人数で行っても、必ず同じテーブルで座れた。ここで、コーヒーなどを飲んだあと、三次会へと移る。
 御池通りをぶらぶらと歩く。寺町を通って河原町へと出る。京都書院、駸々堂、丸善などの書店をのぞく。あのころの京都河原町には書店がたくさん有った。おおどころの書店をひと通りのぞいたあと、いよいよ一番のお楽しみ、飲み会となる。当初は、いろんな飲み屋に行ったが「凱旋門」という西洋風の名前でありながら、和風の居酒屋という店に落ち着いた。
 充分に飲み食いして、腹もふくれ、いい気持ちに酔っぱらって、阪急の四条河原町まで、夜風にふかれながら歩く。実に気持ちがいい。日曜の深夜、阪急電車で京都から大阪は梅田まで。梅田で大阪組と別れて、小生は阪神で神戸まで帰る。
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寒うなった

 ここ数日で急に寒くなった。今日、会社でストーブを出した。家ではだいぶ以前から出していたが、まだ点けていない。ウチは暖かいのである。会社の小生がいる部屋はけっこう寒く、がまんできずにストーブを出して点けた。温かい。暖房のありがたさが判る。
 小生、暑いのには強く、40℃になっても平気だが、寒いには極めて弱く、パッチは11月に入った時からはいている。正直、パッチをはいていて暑く感じる時もあった。考えてみれば、これが異常であって、11月としては高すぎた気温だったのではないか。やっと、まともな気温に戻ったというべきだろう。
 夏に「節電のお願い」を関西電力がやっていたが、冬もやるだろう。夏にエアコンの設定温度を上げるのはがまんできる。なんなら、小生一人ならエアコンなしでも一向に困らない。ところが、寒がりの小生は、冬に暖房を制限させるのは困る。これって、ほんとに節電しなくてはならないのか。「寒くてかなわん。暖房させてくれ。電気が必要なら原発再稼動もやむをえない」と、みんながいい出すのを期待しているのかどっちだろう。原発でいったん不具合が起きると、どれだけ大変なことになるか、イヤというほど判った。素直に考えて原発で電気を起こすのは容認しがたい。少々寒くても節電するか。パッチを2枚はこうかな。
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ブレードランナー


監督 リドリー・スコット
出演 ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー、ショーン・ヤング

 ものすごく久しぶりに観た。これで3回目のはずだ。最初は封切り時に映画館で観た。浅倉久志訳フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢の見るか?」が映画化されることは知っていた。原作はディックの作品の中で小生の最もお気に入り。いそいそと映画館に出かけた。今はなき神戸は三宮の阪急会館だったと記憶する。ディックの原作と少し違い、なによりそれまでのSF映画の概念とはまったく違う映像に仰天した。
 2回目はベータのテープで観た。今回、ファイナルカット版がBSで放送されたから観た。改めて斬新な映像の映画であることに感心したしだい。
 ストーリーは脱走したレプリカントをブレードランナーが、見つけ出し判別し抹殺するという、カムイ外伝のような話だが、この映画の眼目はストーリーだけではない。なんといっても映像である。薄汚くカビ臭く、しょっちゅう雨が降っていて猥雑な近未来のロスアンゼルスは、非常にリアルに見える。「強力わかもと」の巨大な電飾看板の前を、飛行機械がゆっくりと飛び交い、地上では、フォード扮するデッカードが屋台でうどんを食っている。
 また、本作はSF映画として優れているが、スコットの抑えた演出と、インディ・ジョーンズやスターウォーズとはうって変わったフォードの大人しい演技で、出色のハードボイルド映画の側面も持っているのではないか。
 本作は時代劇における黒澤映画に相当するのではないか。それまでの時代劇が、東映時代劇にみられる歌舞伎の伝統を受け継ぐ、様式美の「きれいな」時代劇であったのが、「七人の侍」「用心棒」「椿三十郎」の黒澤時代劇では、生活臭がただよう、薄汚れた「きたない」時代劇で、まったく新しい時代劇を創造したように、キューブリックの「2001年宇宙の旅」に代表されるそれまでのSF映画はメタリックな輝きを持つ、無機的な「きれいな」SF映画であったのが、本作では「きたない」有機的なSF映画となっている。
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かつめし


 B級グルメが人気だ。先般、姫路で行われたB-1グランプリでは50万人の来場者があったとか。しかし、このB級グルメとはおかしな言葉だ。ようするに、全国の各地方で親しまれた名物料理や郷土料理のことだろう。おいしいわけだ。まずけりゃ人々に忘れ去られるだろう。時間の流れに淘汰されてきたわけだろう。だったらA級ではないのか。A級グルメとは、フランスのゴム輪帯屋のPR誌に載っているような食べ物ばかりではないだろう。えべっさんの屋台のタコヤキでも、絶品のおいしさであればA級だろう。
 それはさておき、かつめしだ。兵庫県は加古川の名物である。カツ、ドミグラスソース、ご飯。この三つの組み合わせを見ると、岡山のドミカツ丼と同じだが、かつめしはドミカツ丼とは違う。まず、かつめしは牛のカツ、ドミカツ丼は豚カツ。食器が違う。ドミカツ丼は丼、かつめしは皿に盛る。共通点もある。両方とも箸で食べる。かつめしはお皿に盛られているけれど箸で食べるのだ。そして、かつめしはゆでたキャベツが添えられている。
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きのこの八宝菜

 
 このブログで何度かいってますが、私はきのこが大好きです。今夜は中華料理が食べたい気分です。きのこを使った中華料理をしましょう。
 お料理は何にしましょうか。代表的な中華料理がいいですね。八宝菜にしましょうか。きのこの八宝菜にしましょう。
 きのこは、しめじ、えのき、干し椎茸を準備しました。干し椎茸は半日ほど水につけて戻しておきます。しめじは空炒りします。良い香りがたちます。他に野菜は長ネギとにんじんを入れましょう。お肉は、中華では豚肉を使うことが多いですが、鶏肉を使います。胸肉です。鶏胸肉は五香粉を振って八角といっしょに電子レンジで軽く加熱します。鶏の胸肉はパサパサして嫌だという人がいますが、脂分がないからパサパサするのです。油を足してやればいいのです。食べやすい大きさに切ったら、少しごま油を胸肉にふって手でかきまぜます。にんじんはうすく切り、長ネギは斜め切りにします。
 スープを作ります。私は中華のスープはガラスープの素と味覇で作ります。干し椎茸の戻し汁と、鶏肉をチンした時に出た汁も入れましょう。調味料はオイスターソース、醤油、砂糖、紹興酒を合わせて1つの容器に入れておきます。
 さて、これで準備はOKです。中華料理は段取りが大切です。調理に取りかかったら一気に仕上げなければなりません。調理の途中でモタモタと材料を探すようではおいしい中華はできません。準備を完全に整えて、材料、調味料を手近に置いて調理にかかりましょう。
 まず、中華鍋をカンカンに熱します。油を入れて鍋全体に行き渡らせ、油をいったん出して、炒め用の油を少量入れます。これを油ならしといいます。こうすることで油が鍋の内面をコーティングして焦げつきにくくなり、しかも鍋をしっかり高熱にできます。ご家庭のガスレンジはプロが使う業務用のレンジのような強い火力ではないので、鍋の温度を高熱に保つ工夫が必要です。私は富くじの子の一三六五番を当てたら業務用の高カロリーのレンジを買いたいと思っています。
 最初ににんにくとしょうがを鍋に入れて香りをだします。あと、長ネギ、にんじん、きのこ3種を入れ、最後に鶏肉を入れてスープを注ぎます。ちょっと煮て、水溶き片栗粉でとろみをつけて、ゴマ油で照りを出し、最後にゆできぬさやを散らしてできあがりです。
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SFマガジン2011年12月号


SFマガジン2011年12月号 №669     早川書房

雫石鉄也ひとり人気カウンター
1位 小さき女神      中村仁美訳 イアン・マクドナルド
2位 トロイカ       中原尚哉訳 アリステア・レナルズ
3位 ハリーの災難     内田昌之訳 ジョン・スコルジー
4位 可能性はゼロじゃない 市田泉訳  N・K・ジェミシン
5位 懐かしき主人の声   酒井昭伸訳 ハンヌ・ライアニエミ

特集 
The Best of 2005-2010

特集
第50回日本SF大会「ドンブラコンL」特集
SFのSは、ステキのS(特別版) 池澤春菜
企画レポート 北原尚彦/八代嘉美/編集部

連載
(椎名誠のニュートラル・コーナー)第28回
なぜまんじゅうは怖かったのか。
輝きの七日間(第8回)   山本弘
十五夜物語 第十二章 夢枕獏-寺田克也
完璧な涙(第20回) 東城和実/原作=神林長平
連載評論 第11回 マイクル・クライトン論
「大量破壊兵器に潜むジェンダー戦略-『アンドロメダ病原体』を読む」
小谷真里

 まずほめておく。このブログではSFマガジンに対しては苦言を呈することが多いが、今号はなかなかよろしい。
 第一特集は「The Best of 2005-2010」ということで、海外のここ5年間の短編を5編掲載している。海外といってもイギリス、アメリカといった英語圏だが。できればロシア東欧中国といった国の最新SFも知りたいものだ。
 中途半端な企画や、他の本を売るためのちょうちん企画など、読み切り短編が少なく、お腹一杯になることがなかったSFマガジンだが、やればできるやないの早川さん。こういう具合に、奇をてらわず、素直に「最近の選りすぐり」としてストレートに出せばいいのだ。さて、この5編だが、なかなかバラエティに富んでいて楽しかった。
「小さき女神」
 舞台は近未来のインド亜大陸。ネパールの少女が、幼くして生き神様に祭り上げられた。しかし、掟を破り宮殿を追放された。幼い少女が、元女神という立場を利して、売春宿まがいの結婚紹介所にもぐりこむ。AIが身近にある近未来のインドで元女神の少女が成長していく。理科系王国でありIT立国を目指すインドで少女は大人になっていく。傑作。
「トロイカ」
「病院」を脱走し、ヒッチハイクで逃げる男。目的はある老婦人に会うこと。彼は第2ソビエトの3人乗り宇宙船「テレシコワ」の元宇宙飛行士。他の二人は死んだ。彼らのミッションは外宇宙から飛来した物体「マトリョーシカ」を調査することだった。このミッションと、これから会う老婦人はどう関連するのか。読者を引っ張るフックを持った作品。宇宙SFと思って読むことをお勧めする。なかなか・・・。
「ハリーの災難」
 コロニー防衛軍のハリー・ウィルスン中尉が外交任務を命じられた。コルバ族との1対1の格闘を行うのが任務。外交だから惨敗はいかん。勝ってもいかん。ギリギリ惜しい負け方をせよ。相手はチビの異星人。楽な試合と思ったが。
「可能性はゼロじゃない」
 杞憂は杞憂じゃないんだ。本当に天が落ちてくる。という話。
「懐かしき主人の声」
 あの犬がご主人様を助けに行く。どの犬だって。あの有名な犬。本号56ページのイラストを見れば判る。
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とつぜん対談 第34回 ある会社員との対談

 今日の対談相手には、相談に乗って欲しいといわれています。その人は、以前からそのことで悩んでいて、ずっともんもんと暮らしていたそうです。ところが、悩みが悩みだけに、相談する人がいなくて、今まで自分ひとり苦しんでいたそうです。ツテを頼って私のことを聞き、今日の対談相手となったのです。もうすぐ、来られるころです。あ、来ました。あのポルシェです。今日の対談相手、ある会社員さんです。

雫石
 ある会社員さんの車はポルシェですか。

ある会社員
 そうです。

雫石
 すごいなあ。ポルシェがマイカーだなんて。うらやましい。

ある会社員
 そうかな。ウチの会社には外車乗ってるやつ多いですよ。

雫石
 どんな車ですか。

ある会社員
 別にめずらしい車じゃないよ。フェラーリとかベンツとかランボルギーニとかに乗ってるよ。みんな。

雫石
 ランボルギーニで通勤ですか。

ある会社員
 そ。

雫石
 すごいなあ。お金持ちの社員ばっかりの会社ですね。

ある会社員
 そんなことはない。みんな普通の家の子だよ。

雫石
 普通の家の子がランボルギーニやポルシェは買えません。

ある会社員
 ぼくもそうだけど、みんな親の金じゃなくて自分の給料で買ってるよ。

雫石
 ええ!どんだけ給料もらってるんですか。

ある会社員
 そんなにもらってません。ぼくで手取り120万かな。

雫石
 信じられない。どんな会社ですか。

ある会社員
 普通の会社ですよ。製造業です。

雫石
 何を造っている会社ですか。

ある会社員
 雨合羽。

雫石
 雨合羽造ってる会社で、そんなに給料もらえるのですか。で、あなたは何をしてるのですか。

ある会社員
営業してるけど。

雫石
 営業でそれだけ給料ですから、ものすごいノルマを毎月クリアしてるんでしょ。

ある会社員
 ぼくの担当は、5軒のホームセンターやスーパーです。1日にその5軒を回って注文を聞いてくるだけです。

雫石
 それじゃ、たんなる御用聞きじゃないですか。それでたくさん売上げが上がるんですか。

ある会社員
 1日に1つも売れない時もあります。

雫石
 上司は厳しくないんですか。

ある会社員
 課長は優しいです。また、がんばればいい、と慰めてくれます。

雫石
 社長がおかしな人でしょう。カルト宗教にこって社員に入信を強要するとか。

ある会社員
 社長の趣味は天体観測です。超新星爆発とかを見つけるのが好きだそうで、会社が終ると毎晩山に観測に行きます。かといって、会社の仕事をおろそかにする人ではありません。毎日社員より1時間早く出社して仕事をしておられます。もちろん、ぼくたちに天体観測を強要したりしません。趣味と仕事を完全に分けておられます。そしてなにより、社員のことを考えています。人間として尊敬できる人です。

雫石
 課長が優しく、社長は尊敬できる。だったらものすごく嫌なヤツがいるとか。

ある会社員
 みんないい人です。ぼくのいとこが、先月手術したのです。緊急に輸血用の血液が必要になったのですが、深夜、病院に駆けつけてくれて、型があった人が血液を提供してくれました。

雫石
 で、私に相談とはなんですか?

ある会社員
 ぼく、これでいいんでしょうか。ぼくみたいな者がこの会社にいていいんでしょうか。

雫石
 会社はなんにもいってないんでしょう。

ある会社員
 ウチは定年がないんです。希望すれば死ぬまで働いてくれといってます。社長の方針で縁のできた社員を年齢が来たからといって、ムゲに会社を追い出すわけにはいかないと、おっしゃってます。80過ぎの社員もいます。

雫石
 何が悩みなんですか。

ある会社員
 こんなぬるま湯の人生でいいのでしょうか。

雫石
 で、どうしたいのですか。

ある会社員
 辞めて別の会社に行くとか。

雫石
 辞めなさい辞めなさい。あんたの代りに私がその会社に入ります。
 
 
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