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とつぜん上方落語 第25回 つる

 いま、神戸新聞の朝刊に「ひょうごの野鳥」というコラムが連載されています。なかなか面白いコラムで毎日愛読してます。
 さて、野鳥の名前がそのまま落語の演目名なった鳥がいます。鶴です。鶴というと笑福亭一門で使われている漢字です。松鶴、仁鶴、鶴光、鶴瓶など。
 それはさておき、つるという落語ですが、おなじみの男が、横町の甚兵衛さんに「つる」の語源を聞きに行く噺です。で、町内の生き地獄、あ、いや生き辞引の甚兵衛さんの説明。昔はつるをつるとはいわなんだ。首長鳥といっておった。
 昔、ひとりの老人が浜辺に立って、はるかもろこしの方をながめていたら、はるか西方より、オンの首長鳥がツーとやってきて、松の木にポイととまった。そしてメンがルーとやって来て松の木にポイととまった。これを見て、首長鳥はつるというようになった。
 と、あるが、この甚兵衛さんは間違ってます。鶴は木にとまりません。首が長い鳥で木にとまるのはコウノトリかサギです。鶴、コウノトリ、サギ、よく似た鳥ですがサギだけが飛び方が違います。サギは首を曲げて飛ぶ。鶴、コウノトリは首をまっすぐ伸ばして飛びます。だからよく日本画で松の木にとまった鶴の絵がありますが、あれは鶴ではなくコウノトリでしょう。
 コウノトリ、日本では特別天然記念物の絶滅危惧種ですが、昔はたくさんいたのでしょう。鶴とコウノトリ、似てるから間違えて絵に描いたのではないでしょうか。
 ところで西洋のコウノトリは赤ちゃんを運んで来ますが、日本のコウノトリはなにを運んでくるのでしょう。日本のコウノトリは老人を運んでくるのです。なんか知らない間に、日本はやたら老人が増えたと思いませんか。これはコウノトリがせっせと老人を日本に運んでくるからです。若いころなにをしてたのか、親はだれなのか、子供はいるのか、身寄りはあるのか、なんにも判らない老人がよくいるでしょう。あれはみんなコウノトリが運んできた老人です。
 昔、姥捨て山に捨てられた老人をせっせとコウノトリが、時空をこえて、この21世紀の日本に運んできているのです。え、そんなん見たことないって。満月の夜、月をよく見てください。何かが月を横切るのが見えます。それが老人を運んでくるコウノトリです。
 
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とつぜん上方落語 第24回 試し酒

 NHK「日本の話芸」で桂塩鯛さんの「試し酒」を観る。絶品であった。塩鯛さんの「試し酒」はなんども観た。落語会で生で観た事も何度かある。そのうちでも、昨夜観た「試し酒」は特に良かった。
 商家近江屋のだんさんが、別の商家のだんさんを訪問する。用があるという近江屋を当家のだんさんがムリいって酒の相手をしてもらうことに。おもてに供の者がいるというと、お供の人にも入ってもらえとなる。この近江屋のお供久蔵がとんでもない大酒のみだという話。
 なんぼ大酒のみでも5升も飲めんやろ。いや久蔵なら飲める。と、いいあらそいに。で、賭けをすることになった。だんさん、久蔵に聞く。どや5升飲むか。ちょっと外で考えさせてくれと久蔵外にでる。
 帰って来た久蔵。おらやりますだ。5升の酒を飲み始める。1升入りの大杯で5杯久蔵が飲めば近江屋のだんさんの勝ち。
 大酒豪久蔵がひたすら大杯で酒を飲んでいるだけの噺だが、ヘタな落語家がやると退屈な話である。塩鯛さんは、5杯の酒、1杯1杯に違う演出をほどこしてあきさせない。また、久蔵は飲みながら双方のだんさんに話しかけるわけだが、この久蔵、田舎者ではあるが、なかなかの教養人で話題も豊富。塩鯛さん演じる、この久蔵の人物造詣が見事。田舎者で言葉はぞんざいだが、二人のだんさんには、それなりの敬意を払っているようでもある。実に魅力的なキャラである。
 上方落語の噺家さんには極めつけというべき噺がある。例えば四天王なら、桂米朝師匠なら「百年目」笑福亭松鶴師匠なら「らくだ」三代目桂春団治師匠「いかけや」5代目桂文枝師匠「たちきれ線香」また、現役の第一線の噺家なら桂南光「初天神」桂雀々「手水まわし」桂ざこば「子はかすがい」など。これらの中に桂塩鯛「試し酒」はまちがいなく入るだろう。
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とつぜん上方落語 第23回 堪忍袋

 えー、落語に「堪忍袋」ちゅうのんがありますな。しょっちゅう夫婦喧嘩しとる夫婦がおりまして、今日も今日とてはでな夫婦喧嘩。家主の平兵衛さんが仲裁に入りますな。で、平兵衛さん、夫婦にアドバイス。「堪忍袋」ちゅうもんを作りなはれ。そんで、ハラの中にたまってるもんをその堪忍袋の中にいれるのです。
 この夫婦、堪忍袋を作って、なにかあるとその袋めがけて怒鳴るんですな。
「この、ド甲斐性なし」
「この、無神経女あああ」
 すると二人ともすっきりして夫婦喧嘩もおさまりました。これが評判になって近郷近在から堪忍袋を貸してくれ。袋はみんなの悪口つげ口不平不満文句クレーム悪評呪いの言葉なんかを詰め込んでパンパンに膨れ上がってしまいます。
ようできた嫁と評判の若いおとなしげな伊勢屋のお嫁さんが堪忍袋を借りにきます。あんたみたいな、できたお人がなんぞ不満がおまんのか。嫁さんに堪忍袋を貸します。嫁さんは息を吸い思い切り堪忍袋に怒鳴りました。
「死ねえ、クソ婆あ」
 星新一の名作ショートショートに「おーい ででこーい」があります。ある村で不思議な穴が発見されました。とても深い穴です。若者が穴に叫びました。
「おーい、ででこーい」なんの反応もありません。石ころを投げ入れました。やはり反応なしです。
 そして人々はなんでもかんでも穴に放り込みました。使用済核燃料。機密書類、死体から都会のゴミ、古い日記。穴にはいくらでもモノが入ります。

 長屋のご夫婦、堪忍袋のおかげですっかり中の良い夫婦になりました。ある日久しぶりに堪忍袋の口を開けると、中から若い人の声が聞こえてきました。
「おーい、ででこーい」
 穴の村の村長さん。村役場の改築工事のさい、建設会社に便宜をはかって、まいないをもらいました。その証拠書類を穴にほかしに来ました。すると穴から若い女の声が聞こえてきました。
「死ねえ、クソ婆あ」

星群の会ホームページ連載の「SFマガジン思い出帳」が更新されました。どうぞ、ご覧になってください。

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とつぜん上方落語 第22回 貧乏花見

 まだ3月ですが、桜が満開でんな。いろんな人がお花見にくりだしております。落語でおなじみの裏長屋のみなさんは、お酒ならぬ「お茶け」かまぼこならぬ「カマゾコ」素麺やのうて「はそうめん」卵の巻き焼きの代わりに「こうこ」を持って桜ノ宮へんにやって来ました。「♪花見じゃ花見じゃ、ちょ
いとちょいと、こらこら……」あ、そのにぎやかなこと。
 この裏長屋のみなさんがお花見をしている桜ノ宮から環状線に乗って大阪まで。梅田で阪急電車に乗り換えて芦屋川。そこで降りてずずと山の方に向かうと、芦屋の六麓荘という街に着きます。大きなお屋敷が立ち並ぶお屋敷街です。
 その六麓荘の住人たちが話し合っております。
「良いお天気ざますね」
「そ、ざます」
「下々の者が行うお花見をわたくしたちもしませんこと」
「賛成ざます」
「では、今度の日曜ということで」
「どこでやるざます」
「手近なとこで芦屋川は」
「いっぱいじゃないですか庶民たちの花見で」
「あ、大臣につないでちょうだい」
「どこに電話してるんですか」
「国交省」
「あ、こんどの日曜、わたくしたち芦屋川でお花見ですのでよろしく」
「河川敷は国交省の管轄だから、大臣が忖度してくれますわ。これで場所取りはOKざます」
「芦屋川まで車で移動するのでしょう。道が混むんじゃないですか」
「あ、長官をお願い」
「警察庁に電話ね」
「あ、芦屋の六麓荘から芦屋川まで交通規制お願いね」
「これで道路は警察庁長官が忖度してくれますわ」
「イシグロ、イシグロ」
「はい奥様」
「こんどの日曜外出しますからロールスを用意しておいてね」
「わたくしは執事のイシグロにロールスを運転してもらいますが、あなたはどうされます」
「わたくしは運転が好きだからランボルギーニを運転していきますわ」
「おくさまは?」
「わたくしは久しぶりにデューセンバーグに乗ってみようかしら」
「こちらは」
「わたくし、ここは、ひとつ優雅に牛車で行くざますわ」

 さて、当日になりました。六麓荘の広場には、ロールスロイス、ランボルギーニ、デューセンバーグ、牛車といった車が並んでおります。ベンツ、BMWといった大衆車はみかけません。ここから芦屋川まで警察庁長官の忖度で交通規制がしかれております。これらの車しか通りません。
「さ、行くざます。ちょっと岩園町のひかりスーパーに寄ってちょっとお買物をしますざます」
「わたくし、スーパーなんかで買物したことないですわ」
「買物は執事のイシグロにやってもらいますわ」
 芦屋川に着きました。花見客でいっぱいですが、芦屋川の月若橋から大正橋の区画に赤い毛氈がひかれております。
「さ、座りましょ」
「まずはビールで乾杯」
「ん。このビールは?」
「ネイル・ブリューイングの『アンタークティック・ネイル・エール』」
「ふうん。ちょっとしたビールね」
「これ、イシグロ、どんなお酒を持ってきたの」
「はい。奥様、ウィスキーはダルモア・シリウスの58年もの。ワインはロマネコンティ1945。日本酒は十四代本丸秘伝玉返しなどを持ってきました」
「さ、乾杯もすんだし何か食べましょう」
「パンパン」
 イシグロが手をたたくと光頭の老人が来た。鮨職人のようだ。
「東京は数寄屋橋の『三郎」から小野三郎さんに来ていただきました。ネタは朝早く明石の漁師に漁に出てもらってとって来た魚です』
「ふうんお料理はお鮨だけ」
「いえ。日本料理の『はだ万』の花板さんを呼んでおります。ステーキは「はら皮のシェフに神戸牛を焼いてもらいます」
「ああ、もうお腹一杯。なにか余興が欲しいね」
「あ、あそこのルナホールで欅麦団治が独演会をやってますが」
「ふうん。たまには落語もいいわね」
「あ、欅麦朝事務所ですか。ちょっとお願いが」
「すぐ来るそうです」
 六甲山が夕陽に染まるころ、六麓荘の住人たちのお花見もめでたくおひらきになりました。みなさん、満足して帰っていったようです。


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とつぜん上方落語 第21回 はてなの茶碗

 京都は衣棚にお住いの金兵衛さん。10年前までは茶道具屋さんを営んでおられました。金兵衛さんは京都一の茶道具屋といわれておりました。京都一ということは日本一の茶道具屋ということです。茶道具屋の金兵衛さん、人呼んで茶金さん。茶金さんが「これは!」と指を差しただけで、なんでもない茶碗が10両にも20両にもなります。
 10年前、水のもれる茶碗を油屋さんが茶金さんの店に持ち込みました。いろいろあって、その水のもれる安物の茶碗が1000両になりました。次に油屋が水のもれる水壷を持ってきました。これは10万8000両になりました。
 それから、いろんな人が水のもれるいろんなモノを茶金さんのところに持ってくるようになったのです。
 電力会社が水のもれる原子炉を運び込んだ時はたいへんでした。烏丸通りを大型トレーラーでしずしずと運びましたが、衣棚通りには入れません。烏丸通りを交通規制して、そこにトレーラーを駐車して、茶金さんに烏丸通りにまで出てきてもらいました。加圧水型原子炉です。放射能もれを測定しましたが放射能はもれてません。原子炉の前に立った茶金さん。「これは?」と指をさしました。それを見ていたインドの電力会社のえらいさんが、2億7千万で買うといいました。売買契約がすんで、トレーラーが移動したあとを見ると、雨が降ったわけでもないのに水のもれたあとが道路に2ヶ所ありました。1ヵ所にはごく微量放射能の反応がありました。原子炉からの水もれのようです。もう1ヵ所はどうも、トレーラーのラジュエーターからの水もれだったのです。9年モノの中古の大型トレーラーが3600万で売れました。
 それから、茶金さんはたいへんに忙しくなりました。世界中から指さし依頼がやってきます。京都の茶金さんから世界の茶金さんになりました。
 先月はオランダに行ってました。オランダは国土の25パーセントが海面下の国です。水もれは国の重大な危機につながります。茶金さんは2年間オランダに滞在してオランダ全土の堤防防波堤を見て回りました。何ヶ所かで「これは?」と指をさしました。見たところ異変はないのですが、くわしく調べるとごくわずかに水もれが。放置しておくとたいへんなことになったところです。茶金さんがオランダを離れたあと、国際的な通貨市場でオランダの資産が4倍になっていました。それが茶金さんのおかげだと知られるのに時間はかかりませんでした。
 オランダから帰国すると、休む間もなく中国に出張です。中国政府の招きで、世界最大のダム三峡ダムの調査です。このダムはなにかと問題の多いダムで水質汚染もありますし、なにせ膨大な水量です。山崩れ、地すべりの原因ともなっています。万が一三峡ダムが決壊すれば下流の上海は壊滅。大きな津波が発生して日本も少なからぬ被害がでます。
 茶金さんが三峡ダムにやってきました。ダムの数ヶ所で「これは?」あぶないところでした。このままでは早ければ1年遅くとも3年以内にダムは決壊するところだったのです。茶金さんが中国を離れたあと人民元の値打ちが大幅に上がったのはいうまでもありません。
 こうなると茶金さん茶道具なんかやってられません。世界水もれ防止財団を設立して理事長になりました。副理事長はあの油屋さんです。世界中の水もれを防ぎ、なおかつ世界の景気を大きく引き上げました。これだけ世界平和に貢献しましたから、茶金さんがノーベル平和賞を受賞したのは当然のことです。
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とつぜん上方落語 第20回 三十石

 カミガタ星雲第3肢の恒星ミヤコは七つの惑星を持っている。そのうち生命が存在する星は、第4惑星フシミである。
 惑星フシミは水もあり、大気、重力は地球型だ。太陽であるミヤコからの日射量も適当な量で、フシミはこの星域のハブ惑星となっている。ここから25光年離れた惑星イセ。そのイセにはカミガタ星雲のみならず、アンドロメダ星雲、銀河系など広く宇宙全域で信仰されているオイセサン信仰の中心地ナイグウがある。そのナイグウを参拝した人々は、フシミで旅の疲れをいやし、それぞれの故郷に帰っていくのだ。
 フシミ最大の空港チュウショジマ。その空港のホテルにはたくさんの人たちが集まっている。
「では宿帳に記載しますので、お名前をいってください。では、そちらのお方から」
「リック・デッカート」「キムボール・キニスン」「アナキン・スカイウォーカー」「ノースウェスト・スミス」「田所優作」「犬神明」「ジョン・カーター」
「そちらのお女中は」
「デジャー・ソリス」「クラリッサ・マクドゥガル」「青鹿晶子」
「そちらのロボットは」
「C3PO」「アトム」「ウラン」「R2D2」「T-2000」
 みんなはこのホテルで一泊。翌日、チュウショジマ宇宙空港には最新の恒星間旅客船「サンジュッコク」が係留されている。1000人の乗客を収容する、その白銀の「サンジュッコク」は太陽ミヤコの陽光を受けてメタリックに輝いている。
 乗客全員が乗りこんだ。船はこれより、航路ヨドを通り3度のワープを経て、カミガタ星雲第7肢の恒星オオザカの第3惑星ハッケンヤへと向かう。
「反重力ジェネレータースイッチオン」
「スイッチオン」
「浮上用意」
「ちょっと待って」
「スイッチオフ。浮上中止」
「どうした」
「女性が1人乗り遅れた。乗船は可能か」
「可能だ。出発を20分遅らせる」
「乗客の皆さんにお知らせします。出発が20分遅れます」
「どうしたんだ」
「なんでも女が1人乗り遅れたらしいぞ」
「あ、CAさん。ここ空いてますよ。その女性、この席にどうですか」
「おまえ、その女知ってるのか」
「ああ、さっきちらと見た。えらいべっぴんやで」
「さあ、この席にどうぞ」
「はいはい。親切なお方」
「うわあ。えらいおばあさんや」
 こうして乗客全員が乗り込んだサンジュッコクはふわりとその巨体を宙に浮かせた。フシミの衛星軌道まで来たサンジュッコクは、核融合エンジンに点火。2光年先のワープポイントまで一気に飛んだ。最初のワープ。実体化したのはヒラカタ星系である。実体化したサンジュッコクはこのヒラカタ星系でしばし停まる。船体のメンテナンスと乗員の休憩のためである。この時、もの売りの小型宇宙船がサンジュッコクに接舷。「くらわんか。くらわんか」とヒラカタの名物を売り歩くのである。
このあとサンジュッコクは2度のワープを経て、カミガタ皇帝タイコー陛下の治めるオオザカはハッケンヤまでの旅となる。 
サンジュッコク夢の通い路なかばでございます。 
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とつぜん上方落語 第19回 七段目

 上方落語には芝居噺というジャンルがおます。だいたいが登場人物が芝居、今でいう歌舞伎が大好きで、「七段目」などは日常生活すべてが芝居になってしまうわけですな。
 上方落語は歌舞伎、浄瑠璃、講談など、他のジャンルの古典芸能をネタにした噺がおおおますが、歌舞伎、芝居だけはちょっと敬意を持っているようですな。講談や浄瑠璃などは、少しからかってバカにしてるのかなと思えたりするのですわ。
 それはそれとして、ここに登場するのは芝居やのうて昔の東映映画が大好きなサラリーマン。これが健さんや鶴田のオジキならば、先代桂春蝶師匠の「昭和残侠伝」ですが、この人はもう少し新しい。文太アニイや、山守のおやっさん、「仁義なき戦い」が大好きというご仁。きょうもきょうとて、おかしげな広島弁をしゃべって「仁義なき戦い」ごっこにひたっておます。
「広田くん。ひさこめ電機の見積もりでけたんか」
「まだですけん。もうちいと待ってつかあさい。それにわしゃ広田やのうて広能ですけん」
「バカいっとらんと広田くん。そんなこっちゃ土井商事に負けるぞ」
「あん外道に好きにさせんぞ。ワシがとっちゃりますけん」
「もう、ええかげんにして仕事せえ仕事」
「山守のおやっさん。いっとくがのう。あんた、ワシらがかついどる神輿やないの。組がここまで大きゅうなるまで誰が血をながしとるんぞ。神輿が勝手に歩く、ゆうんなら歩いてみいや」
「私は山守ではない。田中や。組と違うて会社や」
「ゆうとくがの。狙われるもんより、狙うもんの方が強いんじゃ。そがな考えしとるとスキできるど」
「はいはい。ひさこめ電機の件はもういい。サカイにやらす」
「サカイのてっちゃんは土井の外道にとられたんぞ」
「わかった。わかったから営業にでえ。君たち営業マンは注文とってなんぼや」
「ワシらうまいメシ食って、マブいスケ抱くために生まれてきとるんじゃないの。そがいなこと営業でできますかいのう」
「うんと注文とってきたら給料も上がるぞ。ごじゃごじゃゆうとるとクビだぞ」
「おやっさん。ゆうときますがのう。弾はまだ残っとりますけん」
「ええから、はよ外回りに行け」
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とつぜん上方落語 第18回 胴乱の幸助

「おお、割り木屋のおやっさんが帰ってきたで」
「おやっさん、どやった。首尾は。手打ちでけたんか」
「あたりまえや。ワシをだれやと思うとるねん。胴乱の幸助やで」
「で、北の三代目はどうした」
「おういこっちや」
「うわ。大きなトレーラーがなん台も。なんやこれ、おやっさん」
「最初のトレーラーのは火星14や」
「火星14つうと北のミサイル」
「これ、どないしたんや」
「金さんがワシにくれたんや」

 胴乱の幸助。割り木屋のおやっさんのゆいいつの趣味はケンカの仲裁。丹波の山奥から天秤棒に天保銭2枚くくりつけて大阪へでてきた。それから、働いて働いて、いまの身代を築いた。働くことしか能のない、おやっさんの道楽がケンカの仲裁。
 ワーとケンカしてる間に割って入り、「待て待て。お前らオレをだれか知ってるか」「あ、割り木屋のおやっさんでんな」「胴乱の幸助はんでんな」
 で、近くの小料理屋に連れて行って、胴乱から金だして(胴乱、財布というか小さなバック、昔バスの車掌さんが前にぶら下げてたアレ)、酒飲ませて料理食べさせて「このケンカオレに預けるな」「もうケンカするなよ」
 で、このおやっさん、人呼んで胴乱の幸助。
 大阪じゅうケンカを探して歩いてます。人のケンカがないと犬のケンカの仲裁から、浄瑠璃の架空のケンカの仲裁に京都にまで出張します。
 で、近畿関西いちえんのケンカはひととり納めた。相撲協会と貴乃花のケンカも納めて、日馬富士と貴ノ岩のふたりを改めて呼び出して、改めて仲直りさせた。こうして、割り木屋のおやっさん、日本中のケンカを仲裁してしもて、日本にケンカは無くなった。
 そんな胴乱の幸助はん、あの二人をほっとくわけがありません。北の金さんとメリケンのトラちゃんです。
 おやっさん、もろこしの習さんに話をつけて、もろこしに金さん、トラちゃんを呼びつけます。
「お前ら、オレをだれか知ってるな」「割り木屋のおやっさんでんな」「ミスター・コースケか」
 金さんは苦労知らずの三代目ボン。トラちゃんはしょせんは不動産屋のオヤジ。胴乱の幸助とは人間の出来が違います。胴乱から50兆ドルほど金を出して「これで、このケンカ、オレに任せるか」
「はい」「YES」
「金、ミサイルと核をオレにわたせ」「トラ、空母をオレに預けろ」
 割り木屋のおやっさん。胴乱の幸助が本年度のノーベル平和賞に決まったけれど、おやっさん、辞退しよった。
「ワシはそないなもん欲しくてケンカの仲裁してんのんと違う」
 
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とつぜん上方落語 第17回 猿後家


 べんちゃら。関西弁でんな。おべっか、ゴマすりのことでおます。そういや、植木等の歌でゴマスリ行進曲ちゅうのんがおましたな。
 この、「猿後家」という噺には、べんちゃらで食ってる男が出てきます。さる大店の後家はん(あ、しもた。ゆうてもたワシあかんわ)、ダンナを亡くしたあと、お家はんとしてお店を切り盛りしてます。これがごっつい有能なお家はんで、お店は繁盛してます。
 この、お家はん。ごっついべっぴんです。うしろから見たら。で、前に回ったら、このお家はん、猿みたいな顔してるんですな。本人もそれをえらく気にしてます。
 このお家はんのお店へ出入りしとる男がおるんですな。こいつがお家はんにべんちゃらいうんです。小野小町かてるての姫か、はたまたクレオパトラか楊貴妃か。うんとこさべんちゃらゆうて、お家はんのご機嫌を取る。そうなるとお家はんも気分ええさかい、なんぼか包んで渡す。このおっさん、それで生活しとるわけでんな。で、あるとき、ついうっかり「サル」とゆうてもた。お家はん怒らしてしもて出入り禁止。なんせ、お家はん、「サル」といわれるのんをごっつい気にしてる。「サル」とつく言葉は禁句なんです。そやからワシは冒頭で「さる大店の」ゆうたんはあかんのや。ワシも出入り禁止や。「さるすべり」とか「村田巨人をさる」もあかん。「このぐんにゃりした時計だれの絵や」「ダリや」「え、だりや」「だれや、やろ下手なしゃれゆうな。さるバドール・ダリや」こえもアウト。
 で、この男反省して、こんどは充分気をつけて、伊勢参りした時の話しをお家はんにした。お伊勢さんだけの話をすりゃええもんを、奈良に立ち寄った話しをしおった。これがあかん。この写真の池のことをいいおった。猿沢の池。
 しかし、まあ、なんですな。やっかいなお家はんですな。この家はんにべんちゃらゆうときの、ええ参考書がおます。筒井康隆はんの「残像に口紅を」や。あれは一つづつ文字が消えていき、その文字を含む存在そのものが世界から消えていくという話やった。
 このお家はんにべんちゃらゆうとき「さ」「る」を消してゆうたらええねん。すると「猿」はこの世に存在しないわけ。で、「猿」から進化した人類も消えるわけで、みいいんないのなったとさ。めでたしめでたし。




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とつぜん上方落語 第16回 青菜


「植木屋はん、青菜を食べるかえ」
 仕事を終えた植木屋はんに、だんさんが酒の相手をしてもらう噺です。だんさんの奥方の対応に感心した植木屋、家へ帰って自分の女房に同じことをやらすわけですな。四畳半一間の家です。奥なんかありません。押し入れに女房を入れて「奥や奥や」とやるわけですな。
 これ、ほんとは夏の噺なんです。で、このたび、この噺を再現しようとしました。ウチはマンションなので奥はありません。ダイニングキッチンにおって、ワシが手をたたくと洋間から出てこいといおうと思いましたが、ウチの洋間にはエアコンがありませんので彼女が熱中症になったらいけないので、それはやめました。
 で、青菜とお酒を再現しました。お酒はやなぎかげというお酒ですな。これは判りました。焼酎を味醂で割って冷やしたモノです。やなぎかげを作ったあとの、残った焼酎のしまつに困りました。私は酒は日本酒、ビール、ウィスキーしか飲みません。焼酎は嫌いです。ワインに関しては無知です。捨てるのももったいない。結局、料理の調味料として使いました。
 で、モンダイは青菜です。青菜といえば小松菜、ほうれん草、春菊といったところが代表的な青菜でしょう。だいたいが、かような菜っ葉は冬が旬。しかし、この噺は夏の噺。いろいろ調べたが判りません。どうもカブの葉ではないでしょうか。今の時期、カブの葉は手に入りません。で、小松菜かほうれん草、どっちかということになりました。ほうれん草は原産が外国、小松菜は昔から日本にある野菜。と、いうことで小松菜を使いました。おひたしにして、ゴマをふりました。これをアテにやなぎかげを飲みました。
 ところで、この「青菜」桂米團治さんが、米團治襲名直前の小米朝時代に神戸文化ホールで「青菜」をやらはった。今から9年ほど前のことです。聞きほれてしまいました。名が人を作るとはこういうことです。10月に7代目笑福亭松喬さんの襲名披露公演に行くつもりで前売りを買ってあります。たのしみです。
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とつぜん上方落語 第15回 ちりとてちん


 どこにでも知ったかぶりをするご仁はおるものですな。上方落語で知ったかぶりが出てくる噺といえば「ちりとてちん」でおます。
 だんさんの誕生日に来たきーさん。だんさんが出すものを、なんでも喜んで食べます。こうして、出されたものを喜んで食べると、うれしおます。それに比べて。と、ここからが、この噺のキモになるわけですな。
 それに比べて、あのタケ。何を出しても、食べたことがある。知っとる。ちょっと長崎に行ってました。長崎やったら、こんなもん毎日食べてる。なんてことをいいよる。ほんま、しゃくにさわるヤツやで。
 と、いうことで、だんさんときーさん、共謀してタケをこらしめることになったちゅうことや。で、1週間ほど、戸棚に入れっぱなしになって、腐ってカビが生えた豆腐を、長崎名産「ちりとてちん」やゆうて、タケに食べさせるちゅう噺や。
 ワシは今まで、何度か落語に出てくる食べ物を実際に作って食べてきた。今回もほんまに豆腐を1週間ほど室温で放置しておいて「ちりとてちん」を作ろうと思うとったけど、家人に反対された。臭いし、豆腐がもったいない。その通りや。それに、ほんまに「ちりとてちん」を食って、O157にでもなったら、また入院や。ワシ、もう入院はいや。で、ほんまに食べられるのを作ったのがこれや。
 いわばイタリア風冷やっこ。豆腐の下準備はこうする。赤、緑、黄色のピーマンを小さく刻んでさっと炒める。それを豆腐にかける。ケッパーもかけよう。仕上げにエキストラバージンオリーブ油をたらす。どや、ぱっと見たら「ちりとてちん」に見えるやろ。これはほんまに食べられるし、しかもおいしおまっせ。
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とつぜん上方落語 第14回 千両みかん


みかんや。いまは真夏や。いまは知らんが、昔は真夏にみかんなんか食えんかった。季節はずれのもんを食いとうなるとこまりもんやな。春に松茸が食いたい。秋にたけのこが食いたい。冬にすいかが食いたい。
食いとうても食えん。見とうても見えん。会いとうても会えん。普通の人ならあきらめるけど、どうしてもあきらめ切れん人がおる。その人は大店のボン。あきらめきれんで、想い悩み、とうとう身体を壊しよった。
で、心配した親だんさんが、番頭にボンの悩みを聞きだしてもろたら、みかんが食いたいという。季節は真夏である。みかんなんてない。で、番頭、大阪中駆けずり回って、みかん1個手に入れてきた。みかん1個千両。これ1個千両。だったら1房百両。番頭みかん3房もってどろんしよった。
ちゅうのんが落語「千両みかん」や。で、これが現代では、ようある話やけどアイドルにあこがれ恋し、想い悩むボンやろな。
「総務部長」
「はい。社長」
「シンヤの具合はどや」
「あいかわらず引きこもっておられます」
「シンヤはワシの息子で、この吉田電気の副社長で、次期社長やで。はよナニが悩みか聞きだせ」
「社長、わかりました」
「なんや」
「シンヤくんはHDKのアミちゃんに恋こがれています」
「HDKというと、東淀川の地域限定アイドルのアレか」
「はい」
「いくら金使ってもかまわん、HDKのアミちゃんを連れて来い」
「着きましたよ。すみませね。アミさん」
 吉田電気の吉田社長は息子と握手させるためだけにHDKのアミちゃん呼ぶのに1000万つかった。
 アミちゃんを降ろした後、総務部長が車をガレージに入れようとしたところ、アミちゃんが座っていた後部座席に髪の毛が3本。
「アミちゃん呼ぶのに1000万。だったらこの髪の毛1本100万」
 総務部長、髪の毛3本持ってどろんしよった。
 
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とつぜん上方落語 第13回 代書屋

 こんなことゆうたから、今回は「代書屋」である。上方落語の噺家で、「代書屋」の代表的な演じ手といえば、3代目桂春團治師匠と桂枝雀師匠だろう。この両師匠の「代書屋」は対照的だ。春團治師匠のは、きっちりした端整な「代書屋」枝雀師匠は自由奔放で破天荒な「代書屋」だ。いわば、春團治師匠のがクラシックだとするならば、枝雀師匠はアヴァンギャルドジャズといったところか。
 春團治師匠のが代書屋にポイントが置かれているが、枝雀師匠は客にポイントが置かれている。その客の名も春團治バージョンでは、河合浅治郎。枝雀バージョンでは松本留五郎。河合は春團治師匠の本名。一方、枝雀師匠は本名は前田。松本はどこから来ているのだろう。聞いた話では前田少年のおじいさんの名前だとか。この松本留五郎氏、上方落語きっての名キャラクターだと小生は思う。ボケキャラ。江戸落語では与太郎。上方落語では喜六といったキャラがあるが、枝雀師匠の松本留五郎氏は、ただたんにボケというのではなく、ぶれないボケというか、芯のあるボケっぷりが爆笑をさそう。この留五郎のボケにふりまわされる代書屋の混乱困惑がおかしい。この松本留五郎バージョンの「代書屋」は弟子の桂雀々さんがしっかり受け継いでいる。生年月日をいうのに「セーネンガッピ」といい、生年月日をいうてください「セーネンガッピ、ヲ」と、後半、ポン菓子のポンを「ポン」と大きな声でいうのには、いつも大爆笑する。
 で、河合浅治朗氏の職歴だが、巴焼き、下駄の減り止め売り、ガタロ。松本留五郎氏は巴焼き、下駄の減り止め売りは同じだが、ポン菓子をやっていた。巴焼きは回転焼きあるいは姫路あたりでは御座候ともいう。小生も作ったことがある
ガタロ。ガタロ=河童のことでんな。これは知らない人が多いだろう。春團治師匠は「河川に埋没せる遺失物を回収して生計をたつ」といったはる。今の川はそんなことはないが、昔の川にはいろんなモノが川底に落ちいていた。川の中に胴までの長い長靴をはいて入って、川底をさらって、クズ鉄や金属を集めて売って生活してた人がいた。これをガタロという。
 ポン菓子。これは小生の子供のころによく来ていた。機械をリヤカーに乗せておじさんがやって来る。町の路地なんかに機械を据えて、火を入れる。そこに米を持って、おじさんに渡すと、おじさん、機械に米を入れて圧力を加えつつゴロゴロゴロと米を炒る。そして圧力を一気に抜く。ポンと大きな音がして、機械の中でポン菓子ができているというすんぽうだ。
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とつぜん上方落語 第12回 高津の富


 高津宮、高津神社である。主祭神は仁徳天皇。この神社、小生たち上方落語ファンにとっておなじみの神社である。境内には先代桂文枝師匠の碑もある。
 ぱっと想いつくだけで、「崇徳院」「延陽伯」そして、もちろん「高津の富」といった古典落語が想いつく。
 上方落語好きとしては、いっぺんは高津さんにお参りしなくてはと思うとった。さきの休日に行ったしだい。
 地図を見ると大阪地下鉄谷町九丁目からほど近い。こりゃすぐ判るわいと谷九の駅を出たらよく判らん。ふと気がつくと生国魂神社。ぜんぜん見当違いのところに来ている。それはそれとして、このいくたまさん、彦八まつりにも来たいもんだ。
 小生は極端な方向音痴。山も海も見えないところでは、どっちが北やら南やら、さっぱり判らぬ。小生たち神戸人は、街中、どこにいても六甲山が見える。ちょっと高いところに登れば海が見える。山側=北、海側=南、そう覚えておけば、まず、迷わない。そういう土地で長年生活してるのである。であるからして山も海も見えぬところでは方向がまったく判らぬ。何人かの人に聞いてやっと着いた。
「ちょっとモノをたずねますが」「なんでんねん」「あんた、えらい急いでまんな」「へえ、ウチのかみさんにケがついてまんねん」「どんなケでんねん」「産気」「え?」「サンケ」「なんでっか」「サンケ」「シンブン」てな、問答はなかった。
 高津神社の境内に入っての印象。想像してたより小さな神社やな。ウチの近くの森の稲荷神社とあまり変わらない。
「わらわこんちょ~、たかつがやしろにさんけぇなし、まえなるはくしゅ
ばいさてんにやすろぉ、はるかさいほぉをながむれば、むつのかぶとのいた
だきより、どふぅはげしゅ~してしょ~しゃがんにゅ~す」
 これ「延陽伯」で、言葉の難しいお嬢様がおっしゃった言葉である。日本語に訳すと、「私は今朝、高津さんにお参りしたおり、白酒売ってる店で休憩してたら、遥か西の方をながめてたら、六甲山の頂から強風が吹いて、小砂が眼に入った」
 で、小生もこのお嬢さんにならって、遥か西方をながめたが、六甲山なんかぜんぜん見えない。昔は見えたのであろうか。
 で、「高津の富」である。いろんな噺家が演じているが、小生は6代目笑福亭松喬師匠のが一番好きだな。この噺、「因州鳥取の豪商」の、いかにも大金持ちのお大尽っぷりをうんと強調し、後半、実はすかんぴんのからっけつであった。それが千両くじが当たった。という、2段どんでんであって、この「因州のお大尽」のキャラが面白いのである。桂米朝師匠なら、お大尽がマジ本物のお大尽に見える。松喬師匠の「因州のお大尽」の大物ぶりは、どこかかわいげがある。松喬師匠独特のおとぼけが奥にあって、あんなこというてるけど、このおっさん、ほんまもんやろかと思わせるわけ。
 ところで、小生が「子の1365番」が当たったら。どうするかって?こうするのである。
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とつぜん上方落語 第11回 愛宕山

 愛宕山。上方落語の春の代表的な噺や。京都のだんさんと大阪の太鼓もちの一八と茂八が愛宕山へ野がけピクニックに行く噺ですな。
 春霞がたなびく中、レンゲ、タンポポが花盛り。麦の穂が青々として菜の花が彩っているという、春爛漫の中を室町へんのだんさんが、祇園の芸妓や舞妓はん、太鼓もちの一八茂八を引き連れて愛宕山へとやってまいりました。あ、その道中のにぎやかなこと。
 この噺で京都のだんさんが大阪の太鼓もちに、京都の山自慢をします。「京都には高い山がある。東山、比叡山、鞍馬山、愛宕山。大阪には山はあるか」「大阪にも山はおまっせ。天保山、真田山、茶臼山」「そんなん山やあらへん。地べたのニキビや」
 で、この一行、愛宕山へ登って、かわらけ投げをして遊んで、だんさんが小判を谷底へ投げて、一八が傘につかまって谷底に飛び降りるんや。
 この愛宕山、だんさんが自慢するほど高こうない。標高924メートル。わが街神戸の六甲山は932.1メートル(くさにいちばん、と憶えた)六甲山の方が愛宕山より高い。
 つうわけで、神戸版「愛宕山」上方落語「六甲山」つうのを考えたで。

 神戸は元町で大きな中華料理屋を営むワンさん。きょうはお店はお休み。なじみの三宮へんのスナックやクラブのホステスや、ひいきの阪神タイガースの選手や、北野町のジャズバンドを引きつれて六甲山へ野がけに行きました。その道中の陽気なこと。ブンチャカブンチャ。ブンチャカブンチャ。
「着いたある。これが100万ドルの夜景あるよ」
「だんさん、かわらけ投げはおまへんのか」
「そんなもん、ないあるね」
「ほう、そやったら、ここでなにしまんねん」
「なにもしないある。夜景をめでるあるよろし」
 六甲山の山頂からの夜景は、ほんと、すごいもんです。
「うわあ。きれい。100万ドルの値打ちがあるな。もったいから片目で見まっさ」
「なんで片目で見るあるか」
「今夜は右目で50万ドル」
「で、左目は」
「こんど来た時のために取っておくんです」
「へー、それで」
「だんさん、10ドルほど貸しておくんなはれ」
「なんでや」
「うっかり、左目、うす目あけてしもうた」
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